61話 遭遇戦と逃走する者
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「ミウ、動き始めたね」
「はい。右側から私達を襲う感じですね・・」
「そんな感じだね、あの2人は斥候かな?」
「2人の近くを走り抜けてますから、斥候に間違いないですね」
「りょーかい」
「リュートさん・・」
魔眼を発動し前を見ていたミウは、光り輝く瞳でリュートを見上げ視線を重ねる。
「・・どうした?」
「行商人ですよね?一瞬、冒険者かと思いました」
「まぁ、元Fランク冒険者だからな」
リュートは苦笑いしながらミウに告げrうと、ミウは不思議そうな表情を見せる。
「ホントに元Fランクですか?もっと上位ランク冒険者に見えますよ」
「あはは・・気のせいだよ、ミウ。それよりも10人の動きに注意して・・」
「は、はい!リュートさん」
「それと、ルカ!レナ!・・この先に斥候の2人が潜んでいるから、襲って来た場合は、撃退を頼む!」
「はい、リュート様」
「承った、主様!」
リュート達がまだ姿を視認できない集団に対して対応を取り始めた同じ頃に、同じくリュート達を見つけた集団も警戒し始めていた。
「おい、馬車が1台やって来るぞ!?」
集団の先頭にいた男が声を上げて周囲の仲間に伝えると、集団のリーダは予想外の展開に愚痴をこぼす。
「クソッ・・このタイミングで通るのかよ。おい!!どんな奴らなんだ!?」
苛立ちを見せたのは、この集団を率いるリーダーのゾクシスという屈強な体格を持つ男で、赤い髪を短く刈り上げ鋭い眼光で相手を怯えさせる山賊で、過去に彼の襲撃で死んだ冒険者の数は2桁以上とも言われ恐れられている。
「はい!レコンドの情報では、若い女2人が御者をする商人馬車とのことです!」
「はぁ?・・この道を冒険者の護衛も無く走る商人馬車だと?そんな無謀な商人がいるのか?・・ラヤード!てめぇ、嘘をついてないよな?」
「ヒッ・・あ、あいつが嘘をつくとは思えません」
「ちっ!・・あと少しであの女を捕まえれるところだったのに邪魔しやがって・・」
ゾクシスは、近くにあった木を蹴飛ばし鬱憤を晴らしながら、邪魔するリュート達の対応を決めた。
「てめぇら!!・・容赦無く殺せ!!」
ゾクシスの一声で、部下の9人はそれぞれの武器を手に構え茂みを走り降りて、山道を走るリュート達の馬車へと迫る。
リュート達が集団の斥候と勘違いしていた2人と、ゾクシス達が追っていた女は同一人物の存在で、その2人は急に自分達を街から追いかけていた男達が、急に山道へと駆け出す光景に驚いていた。
「ねぇ、アイツら山道へ走っているよリコ!」
「シッ!・・そんな声出したら、見つかっちゃうよ」
「だいじょうぶ。このマントがあれば、見つからないでしょ?」
「そ、そうだけどぉ・・あの男に捕まったら、もう女として生きていけないよ」
茂みの窪地に息を潜める2人は、街から執拗に追いかけて来たゾクシス達から山へと逃走し、持っていた使い捨て魔法マントを纏い隠れていた時に、ゾクシス達がリュートへの対応のため動きだした。
「あっ・・あの馬車を襲うみたいよ・・どうしようゼナ!?」
「リコ・・私達だけじゃ、助けることなんて無理よ・・このまま街に帰るよ!」
「えっ?・・でも・・」
「リコ!生きるためなの!」
「・・う、うん!」
ゼナとリコはゾクシス達がリュート達の馬車を襲撃する光景に背を向けて、自分たちが生き残るため街がある方向へと夢中で走り出す。
彼女達が山の頂を超えた辺りで身に纏っていた使い捨てマントの隠蔽効果は切れてしまい泥だらけの少女2人が山を駆け下りる姿を誰も見ることはなかった。
ゾクシス達の追跡から逃れることができた、ゼナとリコが必死に走っている頃に包囲されつつあるリュート達は警戒感を強め、馬車の速度を落としながら走っていた。
「リュートさん!そろそろ見える距離です!」
ミウが警告した直後に、馬車の進路を塞ぐようにゾクシスが道の中央に立ち、そして横に並ぶ部下2人が風魔法ウインドカッターを放ち馬の命を狙う。
「レナ、リュート様を狙うあの風の刃を斬り捨てなさい」
「はい、ルカお姉様」
レナはルカの指示を素直に了承し、御者台に立ち上がると自身の魔力で片手剣を実体化させ右手で抜刀し切っ先を前に向ける。
「主様の命を狙う者は、剣士レナが成敗する」
レナはゆっくりと瞳を閉じて、自身に言い聞かせるように呟いた後に鋭い眼差しを迫り来るウインドカッターに視線を向け、腰を低くした構えを取り一気に前へと飛び出す。
馬の頭上を超えて数メートル先に着地したレナは、馬よりも速く走りながら片手剣を背中へと引いて、全身を左に回転させながら刀身を目視できない程の速さで水平に斬り裂くと、刀身の周囲にあった空気が急速に乱れ、乱気流が発生し前方へと加速して行く。
ドンッ!!
男2人が放ったウインドカッターとレナが発生させた乱気流が正面衝突し爆音を轟かせた後に、威力が勝るレナの乱気流がウインドカッターを飛散させ消滅させると、威力を残したままゾクシス達へと襲いかかる。
「バカなっ!!」
自分の部下でも上位の強さを持つ2人の風魔法ウインドカッターが、御者台から飛び降りた女1人を視界に捉えた後に飛散し消えたことにゾクシスと部下2人は驚愕し動けずにいた。
ゾクシスの他の部下である男達は、事前に受けていた命令通り仲間の2人がウインドカッターを放つと同時に茂みから飛び出し馬車の右側から襲撃する計画を実行していた。
「き、消えた?」
時間差で襲撃していた7人の中で、唯一副リーダーの男が、ウインドカッターが飛散したことに気付くものの、襲撃へと動き出した部下達の統制も取れず、作戦は実行されて行く。
ミウの警告で荷台の後ろから顔を出し、外の状況を見張っていたリュートは、茂みから飛び出す男達の姿を発見し迎撃へと飛び出そうと足に力を入れた瞬間に襲いかかる男達の視線が同時に進路方向へと向いたことに、リュートは顔を進路方向へと向けると、レナが走る後ろ姿があった。
「前は、レナに 任せて問題なさそうだな・・」
そう呟いたリュートは、馬車を狙う7人の男達へと片手剣を持ち排除するため荷台から飛び降りたのだった・・・・。




