58話 覚えのない同期との再会
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「こんにちは、リュートくん。はじめましてだね。ギルド長のパウエルです」
「どうも、行商人のリュートです。隣りにいるのは、ルカとミウそしてレナです」
ギルド長室に入ったリュートは、パウエルに挨拶をした後に3人を紹介しソファに座る。
「今回の依頼受理を感謝するよ。空間魔法を持つ商人は貴重だからね」
「・・そうですか・それで、今回の依頼主を教えてもらっても?」
「はい。依頼主は・・この街の領主様です」
「領主・・さまですか」
「はい。それで、急ぎの依頼内容なんですが・・・・」
ギルド長パウエルはソファを立ち上がり、執務をしていた机の引き出しから紙を取り出しリュートに手渡す。
「その紙に依頼内容が書いてあります」
リュートはパウエルに手渡された依頼票に目を通す。
「・・貴族令嬢の荷物を中央都市に運ぶ・・ですか」
「リュート君は、ミーシャ様と顔見知りのようですからね」
「あぁ、たしかにそうですね・・出会ったのも偶然ですが。それに、彼女はなぜ中央都市に?」
「はい、討伐祭で優秀な成績を収めたようで騎士団への入団が確約されたそうです」
「そうですか・・荷物を運ぶのに彼女も同行するのですか?」
「いえ、ミーシャ様は別行動です。指定された日時に屋敷へ行けば運ぶ荷物と送り先を教えてもらうことになっています」
リュートが手に持つ紙には、この依頼が受理された場合に指定された日時に屋敷へと来るようにと書いてある。
「ギルド長、この依頼を正式に受けますね」
「ありがとうございます」
パウエルと握手をしたリュートは、ギルドを出て宿屋へと戻り受付で事務仕事をしていた宿主に未払金の宿代を支払う。
「今日までの宿代です」
「あぁ、そうだったな」
リュートは、ルカから聞いていた額を宿主に手渡す。
「今日も泊まるのか?」
「お願いします。明日には、他の街に行くので」
「そうか・・それは残念だ。君のような長期利用者は、なかなかいないからな」
1日分の宿代を支払ったリュートは、ルカ達を連れて商店へと向かい依頼の準備のため必要な物を買いに行くため宿主と別れ宿を出た。
「ルカ、それなりの路銀の蓄えがあるから必要な物があったら教えてくれる?」
「そうですね、討伐祭で消費したのでその補充と着替えの買い足しくらいですね」
「なら、買い物はルカに任せた方が良さそうだね。依頼主の屋敷に行くの今日の夕方に指定されているし」
「わかりました、リュート様」
リュートはルカに金貨20枚を手渡し買い物を任せると、ルカは嬉しそうに金貨を受け取りレナをの方を見る。
「レナ、今日は私と2人で旅に必要な物を買いに行きます」
「はい、お姉様」
「ルカさん、私は?」
「ミウさんは、リュート様と一緒にいてください」
「まかせてください。リュートさんの傍にずっといますね」
リュートの少し後ろにいたミウは笑顔で横に立つ姿に、ルカとレナの心に僅かに嫉妬心が初めて芽生えたことに本人らは気付いていなかった。
リュートと別れたルカとレナは2人で必要な物を買いに商店へと移動する。
「お姉様、さっきから胸のこの辺りがモヤモヤします」
「レナなの?私もよ・・ミウさんが、リュート様の隣りに立った時の2人の姿を見た瞬間にレナと同じところに違和感を感じたわ・・でもその意味がわからないの」
「お姉様もですか・・」
2人で胸を押さえながら歩く姿を、すれ違う男冒険者達の視線を集めてながら商店へと入って行き日用品と野営で必要と思った物を購入した後に武器屋へと向かう。
「お姉様、どうして武器屋に?」
「あなたの武器を買うためよ」
「え?武器なら主様から受け継いだ片手剣を持っています」
「その剣は、今はあなたの魔力で形成しているでしょ?普段使いとして一般的な剣を帯刀していないと、リュート様に迷惑がかかるけどいいの?」
「そ、それはダメですお姉様!」
「でしょ?ならこれ以上言わなくてもわかるわよね?」
「は、はい!主様のため、剣を探して来ます」
武器屋の店先にいたレナは急ぎ足で先に店に入って行く後ろ姿を、ルカは1人笑みを浮かべながら店へと入って行った。
男ばかりしか来ない店に、不意に来店した美少女2人に店主の老人は細い目を限界まで見開き、人並みの大きさで2人を見ていると、後から入って来たルカに話しかけられ思わず立ち上がった。
「こんにちは、片手剣はどこかしら?」
「ぅへぇ・・あそこだ・・」
「ありがとうございます」
震える右手を必死に上げて売り場へと指差す店主の手に、優しく触れて笑顔を見せながら売り場へ行くルカに店主の老人は全身に雷撃を受けたようにビクンと震わせ椅子へと座り、老人を高窓から差し込む陽射しが天からの迎えの光へと変わり始めていた・・。
背後で老人が天へ召される様子に気付かないルカとレナは、壁に立て掛けられた片手剣を選んでいると他の客の金髪男冒険者に声をかけられる。
「やぁ、片手剣を買うのかい?」
「はい。妹の剣を選んでいるところですが、あなたは?」
「俺は、ソロ冒険者のシュリプス・・よろしく」
「ソロ冒険者さんでしたか・・私はルカです」
「レナだ・・」
シュリプスに対し当たり障りの無い対応をするルカに対して、レナは不信感表情に出しながらシュリプスを見つめる。
「いい名前だね・・レナちゃんの武器を買いに来たのかな?」
「そんなところですね・・」
シュリプスは、ルカの反応に自信を持ったのか2人に近寄りレナの全身を見ながら口を開く。
「・・剣士よりの体格だね・・確かに両手剣より片手剣の方が適正がありそうだな」
「うむ・・主様もそう言っていたからな」
レナの言葉にシュリプスの表情は、僅かに固まりレナを見る。
「主様?・・誰かに仕えているのかい?」
「主様は、主様だ・・」
「レナ・・それでは伝わりませんよ?シュリプスさん、私達が仕えているのは行商人の主です。なので、私達は冒険者ではありません」
「あぁ、そういうことか・・どこかの貴族家の使用人かと思ったよ。それなら安心だよ」
「安心・・ですか?」
ルカは、彼の言葉に一気に警戒し身構える。
「買い物が終わったらさ、俺と少し付き合ってくれない?」
「無理です。この後に約束がありますから」
「約束ってさー嘘でしょ?」
「・・嘘ではありません」
「まぁまぁ、そんな怖い顔しないでさ?ちょっとだけでいいから」
ルカとレナがシュリプスの誘いを断っている頃に武器屋のドアが開き新たな客が入って来た。
「ルカさん、レナここにいたんですね〜」
名前を呼ばれた2人が振り向くと、そこには桃色の髪を揺らすミウが狭い店内を小走りに近寄って来る。
「「 ミウ 」」
「あれ?お話中でしたか?」
「こんにちは、キミは2人と知り合いかい?」
「そうですけど・・あなたは誰ですか?」
「ソロ冒険者のシュリプスさ」
「・・・・あぁ!Sランク冒険者のシュリプス本人さんですか?」
「俺のこと知ってるの?嬉しいね〜」
「はい、私も冒険者なのでギルドで活躍は耳にしていました」
シュリプスは、自分のことを知っているミウの右肩を軽く叩きながら距離を近づけ親近感を持たせていく姿にルカは少しだけ警戒感を緩めていた。
しばらくミウとシュリプスの会話を聞いていたルカに対して、マイペースなレナは自分の気に入る片手剣を見つけたようで、刀身で日差しを反射させてニヤニヤしていると、再び店に客が入って来る。
「ミウ〜そろそろ行くぞ〜?」
ドアを開き覗き込むようにしてミウの名を呼ぶのは、黒髪黒目のリュートだ。
「・・リュートさん!ここですよ〜」
「リュート?」
自分の会話を強制的に終わらせた男の名前を聞いて顔を見たシュリプスは、その存在の名前を呟きながら顔を見て過去の記憶が蘇ってきていた。
「リュート様、私達がお迎えにいく予定でしたけど・・」
「いやぁ、2人が武器屋に入る気配を感じてね・・ミウも武器屋に行きたいって言うから来たんだよ」
「そうですか・・」
「レナ、欲しい剣は決まった・・ようだね?」
「主様・・この剣が、私を呼んでいるのです!」
片手剣を嬉しそうに眺め、瞳を輝かせているレナを見たリュートは彼女の戦闘狂の一端を垣間見た気がして相槌を打つだけだった・・。
「リュート・・君は、あのリュートなのか?」
ただ近くにいた客と思って気にしていなかったリュートは、その男の口から出た自分の名前を聞いて初めてここで男の顔を意識して見て視線が重なる。
「・・どちら様で?」
「お、俺を忘れたのかよ・・まぁ、実力もなく底辺のFランクで冒険者を辞めたお前が同期の俺を覚えてないなんてな・・」
「・・悪いな、覚えて無いよ・・いろいろあったし。それじゃ、そろそろ帰ろう」
「ちょい待てよ・・まだ俺は、2人に用があるんだよ」
「2人に?・・ルカとレナに?」
リュートは、ルカとレナの瞳を見る。
「私は、あなたに用はありません」
「私も無いぞ」
「だってさ・・俺らは用事があるから帰るよ」
リュートは、ルカとレナを先に行かせ死にかけていた店主を叩き起こしてから片手剣を購入させ店から出て行くも後ろからシュリプスは付いて来る。
「リュート様、まだあの男が付いて来ます」
「・・面倒な奴だな。ちょっと路地裏に入るよ。みんな手を繋いで」
4人で手を繋ぎ、シュリプスの視界から姿を消した後に隠密スキルを発動して家屋の壁際で息を潜め待つと、数秒遅れてシュリプスがリュート達を追って裏路地に入るも見失い立ち止まる。
「クソッ!逃げやがったか・・なんで俺よりアイツが良い女を連れていやがるんだ・・絶対にモノにしてやる」
隠密スキルで姿を消している4人の前でそう呟いてから去って行くシュリプスの姿を見たルカ達女3人は、シュリプスを敵認定してリュートをギュッと抱き締めていたのだった・・・・。




