50話 討伐祭3日目・・消えゆく命
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馬車へ運ばれていたミウは1人身体を震わせながら、あの時感じた死の恐怖に包まれていた。
「死にたくない・・死にたくないよ・・」
静かな時間が経ち、少しづつ落ち着きを取り戻した頃に再びあの悍しい唸り声が聞こえ全身が強張るミウは、膨大に膨れ上がる魔力を感じ取った。
「リュートさん?」
ここにはいない黒髪黒目の少年の名前を呟き顔を上げると、衝動的に行かなきゃと言う想いが勝り荷台を飛び降りて魔力を感じた位置を魔眼で捉えた。
「ルカさんの魔力?違う、この魔力はリュートさん?・・でも、2人の魔力が・・」
夢中で走るミウは、ただ2つの弱っていく魔力の持ち主がいる元へと急ぎ、やっとの思いで辿り着くと一直線上に薙ぎ倒されていた多くの木を見て、こうなった原因を理解する。
「・・リュートさん、ルカさん」
血溜まりの中で仰向けに倒れているリュートに覆い被さるようにルカが伏せている光景に呼吸をするのを忘れたままゆっくりと歩み寄る。
立ち止まり2人を見つけた位置から薙ぎ倒された木々に驚愕して気付かなかったリュートの異様にミウは、傍に寄ってから遅れて気が付いた。
「・・な、無い・・なんでないの?・・・・どうして!?」
ミウは、覆い被さるルカの背中で死角となっていた左腕が二の腕の途中から千切れ短くなっていることと、泥と血溜まりで見落としていると思っていた両足が膝上から存在していないことを。
魔眼を発動していたミウは、涙ながらリュートのステータスを覗きこんでHPを確認した・・。
「残りHPが、20?・・13・・9・・止まって!なんとかしなきゃ・・3・・ダメー!!」
灰色の空から降ってくる雨が、幌の端から荷台へとしずくが垂れてくるように、リュートのHPが減っていき治癒魔法の適性が無いミウに回復させる術は持っていない。
「ぅ・・」
ミウの悲痛な叫び声にルカの意識が覚醒し、止められていた治癒魔法が自動的に再開されリュートの全身を薄緑色の光が包み込む。
「ルカさん、リュートさんが!」
ミウに揺すられたルカは、リュートの赤い血で染まった顔を見上げ泣いているミウの顔を見て微笑む。
「ミウさんのおかげです・・これで、リュート様を助けられます」
「でも、リュートさんの傷は・・」
ミウは、リュートの失っている足へと視線を向ける。
「大丈夫です。きっと、私の治癒魔法で復活します・・いえ、させます」
「はいです」
顔面蒼白だったリュートの顔に血の気が戻り、いつもの顔色へと戻り始めるも目覚める気配はなかった。
「ミウさん、漆黒のドラゴンを見ませんでしたか?」
「漆黒のドラゴン?・・の姿は見てませんが、唸り声を上げながら空へと飛び去っていく気配は感じて、何かがいなくなったのは知っています」
「そうですか・・それを聞いて安心しました。その気配が、漆黒のドラゴンだったのでしょう」
ルカは、深く溜息をついて、脅威が去ったことに安堵するものの目の前のリュートのことですぐにドラゴンの存在が頭から消えて行く。
「ルカさん、これからどうすれば・・」
「リュート様の治療はとりあえず落ち着きました・・ルカさん、リュート様のステータスはどうでしょうか?」
「うん、HPは120まで回復してるけど・・状態のところに身体の欠損の表示が消えないよ・・」
「そうですか。このままでは、これ以上の回復は見られませんから馬車へと戻りましょう」
「そうですね」
ルカは、小さくなり軽くなったリュートの身体を優しく抱き抱え立ち上がり、前を歩くミウの後ろを歩く。
「リュート様、必ずこのルカが完治させることを約束します」
そう小さく呟いたルカの青紫色の瞳には諦めの色はなかったのだった・・・・。




