5話 2人のはじまり
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住み込みで働く事が決まってしまったリーナは、リュートの店を出てあてもなく街並みを見渡しながら歩き独り呟く。
「荷物なんて無いし。何やってるんだろ・・わたし」
リーナは、この街に辿り着き野宿をしながら生活した中で1番のお気に入りの場所で過ごし夕陽を眺め時間を浪費させリュートの店に向かうことにした。
「はぁ、緊張してきちゃったな」
店の入り口ドア前でリーナは不安な言葉を吐き捨てドアを開ける。
ガチャッ
「戻りました〜」
「・・・・・・」
「リュートさん?」
リュートからの返事が無いため、リーナはまさかと思いながらソファのある店の奥へと進むと、店を出た時と何も変わらないリュートが居た。
「何してるんですか?」
「ん?ちゃんと帰ってきたんだな」
「・・は、はい」
リュートが不意にソファから立ち上がり背伸びをして見つめられたリーナは驚き一歩後ずさる。
「・・・・」
「な、なんでしょうか?」
「2人で2階の部屋に行くぞ」
リュートに左手を掴み店内奥へ連れて行かれるリーナは理解できず、うまく喋れない。
「はぇ?えっ?いきなし・・ぬぁ?」
リュートとリーナは階段を上がり2階住宅スペースに行き、とある部屋のドアの前で止まったところでリュートが告げる。
「決まってるだろ?2人で部屋に来たんだから」
リュートの言葉に心の準備ができていないミーナは顔を真っ赤にさせ口を開く。
「えっ?まだ出会ったばかりで・・わたし、その・・経験が・・」
繋がれていない右手をギュッと握り締めるリーナは、心を落ち着かせようと必死だ。
「さぁ、入るぞ」
「ちょっ・・待って・・きゃっ」
リュートと部屋に入った瞬間に背後に回られ両肩を掴まれたリーナは驚き目を瞑り小さく短い悲鳴をあげる。
「まずは、始める前に綺麗にしないとな。気持ちよく過ごせないし」
「・・はい」
リーナは、リュートのペースに乗せられてしまい、承諾の返事をしてしまった。
(どうしよう、わたしこのままじゃ・・)
チャポン・・
「よし、始めようか?いつまでも目を瞑っていたら終わらないぞ?」
「・・はい。わかりました」
リーナは、恐る恐る目を開けると目の前にリュートが立っていることを認識し右手に何かを握らされている事に気づき下を見る。
「えっ?」
「それじゃー頼んだぞ!早く終わらせてスッキリしてくれ」
「・・こ、コレは?」
「ん?知らないのか?雑巾だよ。ここが、お前の部屋になるんだから掃除しないとな。ちなみに、水はこの桶にあるからよろしく。俺は、店番に戻るから」
リュートは、そう言い残し部屋を出て下へと降りて行き、リーナは部屋に1人残されへたり込む。
「わ・・わたしの勝手な勘違いだったんだ・・」
力なく小さく呟いたリーナは、恥ずかしさのあまりそのまま床に伏せるように顔を隠して動けなくなったのだった・・・・。