45話 討伐祭2日目・・遭遇
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ミーシャを先頭に魔物を探し歩くリュートは、気配探知スキルを発動し周囲にいる魔物や離れた場所に点在する学園生徒達のパーティーを把握するも、能力を隠すためミーシャには伝えていない。
ミーシャは目視で躊躇うことなく茂みをかき分けながら先頭を歩くも、魔物がいる方向から逸れるように歩いているため魔物と遭遇できないでいる。
「・・おかしいわね。そろそろ魔物と遭遇してもいいのに」
2時間近く森を歩き続け、森の最深部に来た辺りでミーシャは足を止めた。
「ミーシャ、そろそろ休憩しない?」
「・・そうね、ここで互いに背中を向け合って周りを警戒しながら休憩するわ」
少し息の上がっているミーシャの指示に従いリュート達は背中を向け合って座る。ちょうど4人パーティーのため同じ間隔を警戒する。
それぞれが水筒を取り出し渇いた喉を潤していると、魔眼を発動していたミウが、小声でリュートに告げた。
「リュートさん、魔物とは違う反応を6つ見つけました」
「どっちの方向?」
「あっちです」
ミウが指差した方向は、彼女の正面だった。
「あっちか・・他の学園生パーティーだな・・このまま注意してて」
「はいです」
2人の会話をミーシャは、今後の方策を考え込んでいたため背後にいる会話を耳にしていても聞いておらず気付いていなかった。
そして疲労が自然回復したミーシャは、立ち上がり振り向く。
「みんな、このまま森のさらに深部まで行くわよ。地上と違って、ここに夜はこないから」
リュート達が頷きながら立ち上がると、ミーシャは森の深部であろう方向へと歩き出す。
「・・・・ここが、森の深部のようね」
森を抜け出したミーシャ達の目の前には、見上げても頂が見えないほど高い絶壁がその姿を現した。
「この独特な壁を見たら、洞窟の壁って感じだな・・」
「そうですね、硬いですけどヒンヤリと冷たくてなかなかですよ、リュート様」
ルカは、珍しくリュートより前に出て灰色の絶壁を触り感触を楽しんでいると、リュートも近づき壁を触る。
「ホントだ・・昔に潜ったダンジョンの壁とは、また違う感じだ・・」
リュートとルカが絶壁を触っている2人の背後で見ているミウと、少し3人から離れた場所で腕組みをしているミーシャの耳に何かが近づく物音が聞こえ顔を向ける。
ミーシャから離れた茂みが揺れ、何者かが出てくるのを察知したミーシャは振り向きリュート達を見ると、3人並んで壁を触っている姿があり、落胆しつつ顔を戻し警戒する・・。
茂みから姿を現したのは、ミーシャと同じクラスで、幼馴染の短髪赤髪少年のガイアスだった。
ガイアスは茂みから出ると、ミーシャのパーティーを見つけ両手を広げ戦意が無いことをアピールしながら近寄って来た。
「なんだ、ミーシャじゃないか・・棄権する噂を聞いていたから、心配していたんだぜ」
「ガイアス・・一応、私のことを心配してくれたんだ・・」
「当然じゃないか、僕達は許婚だろ?」
「そんな、親同士が決めた婚約なんて・・・・」
ガイアスの許婚という言葉を聞いて表情を歪めるミーシャの視線は、ガイアスの背後から姿を見せる女冒険者5人に向けられた。
「・・彼女達は、僕の夜・・護衛さ。みんなAランクで強いんだ」
「へぇ・・」
ミーシャは、ガイアスに興味を失ったような返事をすると背後からリュートの声が聞こえる。
「おぉ!・・・・アレって、ハーレムだよな?」
「リュートさん、声が大きいですよ」
「あっ・・ゴメン」
慌てて口を押さえたリュートだったが、すでにあとの祭でガイアス達にも聞こえていた。
「ミーシャ・・僕という男がいながら、パーティーメンバーに男を?」
「それが、どうしたのよ?」
「ご両親には伝えてるのか?」
「言うわけないじゃない・・」
「そっか・・・・」
ガイアスは、後ろにいる冒険者達にここで待つように伝え、ミーシャの横を通り過ぎリュートの前に立つ。
「俺は、ガイアス。ミーシャの許婚なんだ・・君の名前は?」
「リュート」
リュートはガイアスの質問に、ただ名前だけを教えた。
「リュート・・・・ギルドで聞いたことが無い名前だね・・今のランクは?」
「ランク?・・・・俺は、行商人なので」
「行商人?・・えっ?・・どう言うこと?」
「俺は、冒険者じゃなくて商人だよ」
ガイアスは大笑いして、リュートの右肩をポンポンと叩きながら赤い瞳から溢れる涙を拭く。
「あ〜久しぶりに笑ったよ・・リュートくんは、行商人なんだね。どうしてミーシャのパーティーに?」
「ん〜成り行きかな?」
「ぷっ・・成り行きね・・」
ガイアスは、リュートから離れミーシャの前へと移動する。この時のルカとミウは、リュートが馬鹿にされたことに苛立っていた。
「ミーシャ、今からでも遅く無いからさ・・ボクと一緒に討伐しないか?」
「合同パーティーってこと?」
「ん?・・まさか、彼らを抹消して僕の下に付かないかってことに決まっているだろ?」
「そ・・そんなことできるわけないじゃないの!」
ミーシャは、ガイアスを睨みつけるもガイアスは余裕の表情で続ける。
「そんなに怒らなくても・・・・ミーシャ、許婚のキミだから1つだけ教えてあげよう」
「・・なにを?」
「この洞窟の高ランクの魔物は、僕達が初日にほとんど討伐したよ・・・・気付いてないのかい?魔物となかなか遭遇しないことにさ・・」
「そ、それは・・」
ミーシャは、この数時間森を歩いてもフォレストベアを倒しただけで、他の魔物と遭遇していない。
「もう、討伐祭2日目にしてミーシャが上位ランクになれる可能性は、ゼロなんだよ・・もしあるとすれば、僕のパーティーに無条件で加入すること、ただ一つなんだ」
「そんな・・・・」
ガイアスの言葉にミーシャは愕然として心が折れそうになる。
そんな今にも倒れそうなミーシャの背中をみたリュートは、ミーシャの傍に寄り添い腰に手を回し支える。
「ミーシャ・・」
「・・リュート」
ミーシャとリュートの近い距離感と、自分には見せたことのない表情をするミーシャに対して、ガイアスの嫉妬心が急激に膨れ上がった。
「おい!僕のミーシャに気安く触れるな!!」
「・・ミーシャは、君の物じゃないよ。ミーシャは、ミーシャだ」
「リュート・・」
ガイアスを見ていたリュートは、見上げているミーシャと見つめていると激昂したガイアスに腹部を蹴飛ばされ吹き飛び背中を地面に強打する。
「離れろって言ってるだろうが、クソ商人風情がぁ〜!」
吠えるガイアスと地面に倒れたリュートを交互にみたミーシャは、リュートの元へと駆け出そうとした時に左手をガイアスに捕まれ身動きが取れなくなる。
「痛い・・」
「リュート様!」
「リュートさん!」
数メートル先に仰向けに倒れ上半身を起こしかけているリュートの傍に駆け寄るルカとミウの姿を見るミーシャは、ガイアスに左手を握られ逃れられないことが悔しい。
「お前がいるのは、こっち側だろ?勘違いするな・・」
ガイアスは、掴んでいたミーシャの左手を解放するも、すぐに彼女の腰に腕を回し抱き寄せる。
「いたたた・・」
「リュート様、お怪我はありませんか?」
「なんとかね・・不意打ち食らっちゃったよ」
リュートは、差し伸ばすルカの手を掴み立ち上がると汚れた背中をミウが優しくサッサッと払う。
「ありがとう、ミウ」
「いえ・・これで大丈夫です」
3人の様子を見ていたガイアスは、ミーシャとの関係を見せつけるかのように体を密着させていた。
「・・ミーシャってあれ?・・仲直りしたの?」
2人の姿を見たリュートは、とりあえず惚けて反応をみせる。
「もう、お前らは用無しだから街へ帰れ」
「帰っていいの?」
「当然だ・・ミーシャは、俺の許婚でありパーティーメンバーだからな」
「ミーシャ、パーティーは解散でいいの?」
「・・・・・」
ミーシャは黙ったままリュートを見つめている。
「ミーシャが否定しないのが答えだ・・だから、とっとと帰れ!」
「そうですかそうですか・・」
リュートは急に笑みを浮かべる。
「なにがおかしいんだ?」
「・・実はですね、ミーシャ様には未払いの商品がありますのでパーティー解散となれば、新たな代表の方に支払い義務が発生します」
「はぁ?・・どうせ、ポーションなんだろ?」
「はい、HP回復ポーションとMP回復ポーションです」
「わかったわかった・・俺が一括で払う。いくらだ?」
「ガイアス様が、本当に一括でお支払いして頂けるのですか?」
「あぁ、いいから早く値段を教えろ」
「はい、両方のポーションを合わせて600本で品質は全て上級です。これは全て学園長様も確認されていますので事実です。金額については、白金貨60枚となります。契約通り一括払いでお支払い願います」
ポーションの膨大な量と支払い金額を聞いて、ガイアスの顔は一気に青白くなりミーシャの腰に回していた腕の力が抜け、ミーシャはガイアスから逃げるように離れた。
「まてまてまて!・・そんな大金が、今ここで払えるわけないだろ!?・・ふざけんな!」
「そう言われましても・・ついさっき支払うと宣言されたではありませんか。ミーシャ様も聞いていましたよね?」
「えぇ、聞いたわ」
「ガイアス様・・ここにいるあなたの許婚である、ミーシャ様が証人であります」
「ミーシャ・・お前!俺を騙したのか?」
「私は、騙してなんかいないわ!・・勝手にガイアスが払うって言ったじゃない!」
「ガイアス様、貴族の振る舞いとして見苦しいですよ?」
「クソ・・・・お前達、あの3人を亡き者にしろ!命令だ!」
ガイアスの背後のいた女冒険者5人は、帯剣していた剣を抜刀しリュート達を囲む。
「ガイアスやめて!リュート達は、学園と無関係なのよ!」
「そんなもん関係ない・・ここでこの男を殺して一緒にいる女を奴隷として飼い慣らせばいいんだ・・」
「な、なにを言っているの?ガイアス・・奴隷って」
ガイアスの言葉にミーシャは身震いし後退る。
「リュート様・・」
囲まれてしまったことにルカは、リュートへと寄り呟く。
「まさかのピンチだね・・自称Aランク冒険者相手を5人は厳しいな・・」
リュートはそう呟きながら抜刀すると、ルカも太腿に忍ばせていたダガーナイフを手にして構える。
「リュートさんルカさん、伏せてください!・・ウインド・カッター!」
大人しい顔をしているミウが、まさかの先制攻撃を放ちリュートとルカは驚きながらもミウの指示通りに伏せると、ブワッと頭上に空気の塊が通過したのを感じる。
んきゃっ!!!
ミウが放った風魔法ウインド・カッターが近くにいた3人に擦り傷を負わせ戦線離脱させることに成功すると、残り2人が反撃のため魔法士のミウへと襲いかかる。
「いや〜来ないで〜!」
対人戦闘に不向きなミウは、魔法杖を抱いてしゃがみ込むと、ダガーナイフを持つルカが女冒険者2人の相手をする。
「くっ・・なんなの、この女は」
ガイアスに雇われた女冒険者の1人は、防御に徹するルカの剣技を上回ることができず苦戦する。
2対1と不利な状況のルカを救うため、リュートはガイアスを背にしてルカの元へと駆け出すと背後からガイアスの声がした。
「商人風情が、いっちょまえに片手剣を振り回すんじゃねーよ!」
隙だらけのリュートの背中をガイアスは両手剣で斬る。
ザシュッ!
シャツを斬り裂きリュートの背中を赤い血で染めるものの傷は浅い。
「くっ・・」
背中を斬られ、身体を捻るリュートは痛みのあまり足を止めてガイアスと再び対峙すると不意に背中の傷に痛みが無くなり温もりを感じた。
女冒険者2人を相手にしながらも、リュートの背中の傷を見たルカが治癒魔法をリュートへと放ち治癒させたようだ。
「商人!よくも俺の女達を傷つけたな・・絶対に殺す!」
対峙するリュートに、ガイアスは容赦無くリュートへと襲い掛かる。
「ちょっ・・学園生同士なら・・」
ガッガン・・
「まだしも・・部外者の商人を殺すのは・・」
ガンッ!
リュートの持つ片手剣とガイアスが持つ両手剣の刀身がぶつかり合い、衝撃で2人は離れる。
「なしなんじゃないの?」
「はぁ・・はぁ・・そんなの関係ねぇ・・」
ランオン学園生ガイアスは息を切らしていることに対し、行商人リュートは少しも息を切らしてはいない。
「さすが、貴族思考だな・・・・」
「黙れ平民が・・」
そして、ここからリュートとガイアスの第二ラウンドが始まったのだった・・・・。




