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43話 討伐祭 2日目・・始まりからのトラブル

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 リュート達が洞窟前にたどり着くと数台の馬車が並んで止まっていて、その左端に馬車の横に止めるようにと冒険者の男が誘導している。


「きっと学園に雇われた冒険者だから、彼の誘導に従って馬車を止めて」


「・・あの冒険者を信じていいんですね?」


「うん・・きっと問題無いと思うわ」


「わかりました・・」


 リュートから見知らぬ冒険者には警戒するようにと教えられているルカは、馬車の速度を落とし隣りにいるミーシャに聞いてから警戒しながら男冒険者の誘導に従って馬車を移動させた。


「パーティーリーダーは誰だい?」


「私ですが・・」


 ミーシャは御者台から立ち上がる。


「参加資格を証明するバッジを見せてくれる?」


 制服から動きやすい普段着へと着替えていたミーシャは、胸元につけているバッジを男冒険者に見せる。


「・・あぁ、たしかに。君の名前は?」


「ミーシャ=アヴィエーティよ」


「りょ、領主様のお嬢様でしたか・・失礼しました。他の学園生は昨日から洞窟へと入っています」


「ありがとう。いいの?そんな情報を私達に教えても?」


「はい。何組のパーティーメンバーが入ったこと等の、詳細を教えることはできません」


「わかったわ・・みんな、洞窟へ行くわよ!」


「「 おー!! 」」


 リュートとミウは、片手を上げて声を上げながらミーシャの後ろを付いて歩き、ルカはただ無反応のままリュートの後ろを付いて歩いて行った。



 カツカツ・・カツカツ・・


 洞窟内の階段を下りる4人の足音が響き渡る。


 階段を降りたリュート達の視線の先にあったのは、薄暗い道が奥まで続いている。


「ミーシャ?・・本当に行くの?戻るなら今のうちじゃない?」


「男が何を怖がってるのよ!」


「だってさ・・薄暗いし気味が悪いよ」


「グズグズ言わない!・・さっさと行くわよ!」


 ミーシャは先頭を歩き、ズンズンと先に進む・・・・。


「行っちゃたね・・」


「行っちゃいましたね」


「行きましたね」


 ・・・・・・


 ルカとミウは足を止めたリュートの横に並び立ち、1人で歩き進んで見えなくなっていくミーシャの背を見送る。


 しばらく意気揚々と歩くミーシャは、ふと背中にあった気配が急にいなくなったことに気付き、まさかと思い振り向いた彼女は、3人の姿が遠く小さくなっていることに気付き、一人ぼっちになっていた現実に一気に不安になり全力でリュート達の元へと走り出す。



「あっ・・戻って来たみたいですよ、リュート様」


「見たいだね・・なんか泣いてない?」


「泣いていますね・・」


「号泣してますよ、リュートさん」


「うん、あれはマジ泣きだ・・」


「リュート様、止まる気配が・・」


「ん?どういうこと?」


 リュートは、ルカを見ると、2人は壁沿いに移動し笑顔でリュートを見た後に指を差す。


 ルカとミウが指差した方向に顔を向けると、数歩先に全力で泣きながら走るミーシャの姿があった。


「ミーシャ・・ぐへぇっ!」


 ドゴォッ!・・・・ズザザァァァァァ!!!!・・ゴンッ!


 涙目のまま全力で走りきったミーシャは、視界が滲んでいたため距離感が掴めないまま茫然と立ち尽くすリュートの無防備な胸元へと突撃し吹き飛ばす。


 数メートル後方へ吹き飛ばされたリュートは、肺に残っていた空気を全て強制的吐き出しながらも背中へと回しているミーシャの両腕が地面と背中に挟まれ怪我を避けるため素早く解き、ミーシャを庇いながら背中を地面に叩きつけ滑走する。


 リュートの思っていた以上に滑走しているため、両足を地面に立てて減速しようとした瞬間に予想外のことがリュートを襲った・・。


 リュートは降りて来た階段に激しく頭を叩きつけられ、抗うこともできず一瞬のうちに意識を手放すも本能的に彼の身体は、勢いを殺しきれていないミーシャの身体が階段へと叩き付けられないよう防いでいたのだ。


 見事にミーシャに吹き飛ばされ滑っていくリュートを笑いながら見ていたルカ達だったが、最後に鈍い音を聞いた瞬間に笑っていた表情が凍りつき、全力でリュートの元へと駆け出した。


「リュート様!」


 ほぼ同時に走り出したルカとミウだったが、ルカの速さに付いてないミウはどんどん離され、ルカがリュートの元へ辿り着いてから30秒以上も遅れてミウは辿り着いたのだった。


「リュート様!目を覚ましてください!リュート様!!」


「んぅ・・」


 ルカの声に先に反応したのは、リュートに突撃したミーシャだった。


「ここは?・・リュート?ちょっと、あなた血が・・」


「ミーシャさん、そこを退いてください!」


 ルカが強引にリュートの身体の上に乗っているミーシャを退かして、治癒魔法ハイヒールをリュートにかけるとリュートの身体が薄緑色の光に包まれ消えていくと同時に頭から出ていた血は止まった。


「リュート様」


 ルカは傷が治癒されても目を覚さないリュートを抱き起こし抱き締める。


「くっ・・」


 リュートの口から声が漏れたのを聞いたルカは、抱き締めていた腕の力を抜いて胸元からリュートの顔をゆっくりと離すと、リュートが虚な瞳でルカを見上げていた。


「リュート様・・」


「ルカ・・ここは?」


「洞窟の中です」


「あぁ・・そうか、洞窟に来てたんだよな・・・・ちょっと記憶が飛んだかも」


「私がいるので大丈夫です」


「そうだね・・ありがとう」


「リュートさん・・」


「・・えっと」


「ミウです!」


「ミ・・ウ?・・リーナじゃなくて?」


「リーナ?・・違いますよ、ミウです。リュートさんに命を助けてもらった」


 ミウは桜色の瞳を潤ませながら、リュートの黒い瞳を見つめる。


「・・・・・・あぁ、ミウだったね」


「思い出してくれたんですか?」


「・・あぁ。 ゴホッ、ゴホッ」


 リュートは右手で口を押さえ吐血する。


「リュート様!もう一度治癒魔法を」


「ルカ、大丈夫だよ・・傷は完治してるから」


 3人のやりとりを見ていたミーシャは、一人ぼっちにされたことへの対しての怒りさえも消え去り、リュートにこんな怪我をさせたことを悔いていた。


「リュート・・」


「ミーシャ、ナイスなタックル突撃だったよ・・」


「怒らないの?」


「怒ってないさ・・悪いけど、少し休憩してから出発でいい?」


「うん」


 十数分休んだリュート達は、ミーシャを先導で洞窟の奥へと進んで行き、奥にあった階段を降りると草原が広がっている光景に驚き立ち止まっていた。


「ここは・・洞窟だよな・・・・地上と同じ風景が広がってる」


 リュートのお驚きの声にミーシャが口を開く。


「この洞窟は、空間魔法の影響で外の世界と同じような感じになっているそうなの・・詳しいことはわからないけど。だから草原や森そして川が存在してるみたい・・ただ、街は存在してないけどね」


「それは凄いな・・」


「さぁ、戦闘態勢を整えて魔物を探すわよ」


 ミーシャは帯剣していた片手剣を抜刀し歩き出す。それに続くようにミウは魔法杖を手にそしてリュートは片手剣を腰に帯剣し固定し、ルカはダガーナイフを左足の太腿の内側に固定しスカートで隠したのだった・・・・。


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