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42話 討伐祭 洞窟へ

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 地方都市アーガリンを出発してレッドダニーの森を目指すリュート達の馬車は、3時間かけて移動し陽が沈む前に野営地としていた街道の分岐路に辿り着いた。


「ルカ、あの分岐路で野営するわ」


「わかりました・・リュート様!そろそろ野営地に到着します」


「はぁ〜い」


 荷台からやる気の無い返事が聞こえ、ミーシャは振り向くとリュートが笑顔で手を振っている。


(・・もう。どうして、森の近くに来ているのにそんなに余裕なのよ?)


 学園でトップクラスの実力を持つ生徒会長ヨルンを赤子のように軽く倒したリュートの姿を見たミーシャは、ただの行商人では無いとわかっているものの魔物相手に通用するのか不安に思っている。


 ヒヒィィン・・


 馬が鳴いて馬車が止まった・・。


「リーダー・・野営の準備するよ?」


「リ、リーダー?・・そ、そうね・・お願いするわ」


 リュートにリーダーと呼ばれたミーシャは戸惑いつつ、皆に指示を出した。


 リュートとルカは、アイテムボックスから野営グッズを取り出した後にテントを2人で設営し、ミーシャとミウは集めた薪に火つけるのに過大な炎をミウが放ち一瞬で薪が燃え尽き炭化させることを数回繰り返したところで、やっと火力調整がうまくいき焚火がうまくできた・・。


「ふぅ・・暗くなるまでに終わったわね」


「ミーシャさんは、野営の経験あるのですか?」


「学園で何度かはね・・もう携行食が不味くて最悪だったわ」


「あははは・・魔物討伐は、携行食から逃げられませんよ?」


「そうだけど・・ねぇ、ミウ。あの2人は何をしているのかしら?」


 やっとの思いで火起こしが終わりリュートが置いていた野外イスを並べ座っているミーシャは、少し離れた場所で背を向け何かをしているリュートとルカのことを聞いた。


「さぁ・・何をしているんでしょうね・・」


 それから雑談をしていたミーシャとミウは、2人の事に興味をなくし話しに夢中になっているとリュートとルカが戻って来たようだ。


「お待たせ〜!飯にしようぜ」


「どうして鍋を持っているのよ?」


「え?夕食を作ったからだけど・・」


「「 ・・・・ 」」


 野営には携行食が当たり前だと思っていたミーシャとミウは、鍋から漂う美味しそうな香りにゴクリと生唾を呑んでいた。


 リュートが作ったフォレストボアの肉入りシチューをお腹一杯食べた4人は、夜警の順番を決めてテントへと入って行く。


「ルカ、リュートもこのテントで寝るの?」


「ミーシャさん、リュート様は馬車の荷台でお休みになります」


「そう・・」


「大丈夫ですよ、私もリュート様と一緒に寝ますからミーシャさんの純潔が散らされることは皆無です」


「・・・・・」


 テントの屋根から吊り下げられているランタンの灯りに照らされたミーシャの顔は赤くなっていた・・。


 1人焚火の前に座るリュートは、気配探知スキルを発動し周囲を警戒しながら目を閉じている。


 ジャリッ・・ジャリ・・


  テントの方から足音が聞こえ顔を向けると、薄着のルカがリュートの傍へとやってくる。


「どうした?」


「2人が寝ましたので、リュート様のお傍にと思いまして」


「そっか・・」


 ルカは、少し離れていたイスをリュートが座るイスにくっつけるように置いて座る。


「リュート様、明日からは魔物討伐が始まりますね・・ミーシャ様に見せるのですか?」


「ん〜極力それは避けたいから、ミウに全面的に戦ってもらってルカがサポートする感じで行こうかと・・俺は行商人だしな」


「そうですね・・」


 リュートは、ルカの夜警時間も一緒に過ごし夜明け前にミウと夜警を交代した2人は、馬車の荷台へと移動し眠りについたのだった。


 

「リュート様、おはようございます」


「・・・・ん、おはよう」


 空が薄明るくなった頃にルカはリュートを優しく起こす。


 荷台から外へと出ると、夜景をしていたはずのミウはイスに座り爆睡している。


「寝てるのかよ・・」


 ミウの寝顔を見ながらリュートは呟き、優しく頬を突く。


「んにゃ・・もう食べれにゃいよ・・」


「ミウ、起きる時間だぞ?」


「んはっ!」


「「 ・・・・ 」」


「寝てませんよ、リュートさん」


「・・はいはい、さっさと支度しろよ」


「はい」


 ミウはテントへと入っていき、しばらくしてからミーシャと一緒に出てくる。


「おはよう、リュート」


「おはよう、ミーシャ」


「今日は、森を走り抜けて洞窟へと行くわよ」


「あぁ、飯食って片付けたら出発だな」


 朝食を食べ終え撤収が終えたリュート達は、野営地を出発し森へと続く道を移動する。


「リュート、ここから魔物の襲撃と他の学園生パーティーからの牽制に注意して!」


「あいよ〜!」


 リュートは気配探知スキルを発動し、影響がありそうな存在に対してミウに対処するよう伝える。


「ミウ、魔眼を使って周囲にいる魔物を風魔法で蹴散らして」


「はいです」


 ミウは立ち上がり荷台の幌へと登ろうとするも、背が低いため手が届かず涙目でリュートを見る。


「そうだよな・・ゴメン」


 リュートはミウの腰を持って抱き上げ、幌を掴んだミウは必死に上がろうと足をバタつかせ、リュートの肩を踏み台にして幌の上に上がった。


「リュートさん、見ました?」


「うん、バッチリ白いのをね」


「・・えっちです」


「ゴメン・・」


「別に良いですけど・・オシリも触られましたし」


「うん・・柔らかかった」


「か、感想を口にしないでください・・この気持ちは、魔物に発散させます」


 ミウは不安定な幌の上を移動し足場を固めると魔眼を発動させ周囲の姿を見せない魔物を捉え位置を把握する。


「リュートさん、魔物を12匹見つけました!」


「・・ミウ、やっちまいな!」


「はい、やっちまいます!」


 ミウは右手に持った魔法杖をグルリと1周回し、魔眼を通して脳内で把握した魔物の位置情報を魔法杖に埋め込まれた魔石へと伝達し詠唱する。


「風穴を開けて吹き飛ばせ・・風魔法ウインドショット!」


 魔法杖の先端から高圧縮された拳ほどの大きさの空気が12発連続で放たれ、それぞれが意志を持っているかのように軌道を描いていき草木を飛散させながら魔物へと襲いかかる。


「全滅か・・」


 リュートが気配探知スキルで捉えていた魔物達が絶命し気配が消えていくのを確認する。


「ミウ、お疲れ様・・降りておいで」


「はい・・ミウは全部倒しました」


 魔法で固めていた足場を解放し、揺れ動く幌の上を移動してリュートへと両腕を伸ばしその腕を掴むリュートはゆっくりと彼女を荷台へと下ろす。


 それから魔物の襲撃を受けることなく1時間ほど森を走り抜けたところで、目的地であった洞窟へと辿り着いたのだった・・・・。


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