41話 討伐祭 出発
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ランオン学園から離れたリュート達は、街の中央地区にある飯屋ハンクマイ亭の店内で朝食を食べている中で、1人ミーシャは浮いた存在となっている。
「ミーシャ・・そういえば、討伐祭ってどこでやるの?」
「街の東側にある森とその先の山になるわ」
「かなり広い範囲だね・・」
「だから10日間もあるんですよ、リュートさん」
「そっか、ミウは参加した事があるんだよな」
「はい・・」
「10日も続くんなら、それなりに物を揃えないとな・・」
「そうですね、リュート様・・それと、ミーシャ様がパーティーリーダーとなりますので今後の方針を決めていただきたいのですが?」
「そ、そうね・・リュート達は野営に必要なグッズと携行食を揃えてくれる?」
「問題ないよ」
「お金は後払いになるけど」
「りょーかい」
「ありがとう。もう討伐祭は始まっているから昼には街を出発しましょう」
「馬車は俺達のを使うでいい?」
「もちろん・・お願いするわ。それと、お昼に東門前に集合ね」
「わかった」
食事を終えたリュート達は、店先でミーシャと別れ最寄りの商店へと移動する。1人となったミーシャは、屋敷へと帰り両親に討伐祭参加を報告し身支度を整えて東門へと向かう。
商店で自身もまだ購入していなかった、テント一式と寝具類そして野営グッズを予備を含めた数を購入した後に食料を買うため他の商店へと移動する。
「ミウ、野菜と肉はこんなもんでいいかな?」
「そうですね・・肉は討伐した魔物を解体すれば確保できますし・・それよりも」
「それよりも?」
「・・ミードも買って行きませんか?」
「おぉ・・いいね!果実酒も買っていこうぜ!」
「はいっ!」
リュートに断られると思っていたミウは、想定外の反応に喜んで重い樽を必死に運び出していた。
食料を買い込んだリュートは馬車を引き取るため、馬車預かり所へと歩いている途中にあった武器屋が気になりルカとミウに馬車のことを任せ1人武器屋へと入った。
「いらっしゃい、お兄さん」
「こんちわ〜」
茶髪茶目の女性店員がリュートを出迎える。
「見た感じ冒険者じゃなそうそうね?」
「おぉ・・わかります?」
「長年冒険者を見てきたからね」
「実は、行商人なんですよ・・護身用の武器を見にきたんです」
「そうかいそうかい・・ゆっくり見ていきな」
「ありがとうございます」
リュートの欲しい武器はなく、何も買わずに店を出る勇気がないためたまたま目についたダガーナイフ2本と解体用ナイフ2本を手にしてカウンターへとむかう。
「決まったみたいだね・・」
「はい。コレをください」
「な、なかなかのセンスね・・本当に行商人?」
「どういう事ですか?」
「解体用ナイフはどこにでもあるやつだけどね、このダガーナイフ2本は流し込んだ魔法属性を付与することができるのよ」
「高価なナイフですね・・」
「金貨1枚でいいわ」
「いいんですか?」
「いいのよ。このナイフを製作した鍛冶師と賭けをしていたから・・同時にこの2本を購入する客には金貨1枚で売るってね」
リュートは金貨1枚と銀貨1枚を支払い武器屋を出て、ルカとミウが待つ馬車預かり所へと向かった。
「リュートさん、こっちですよ〜」
通りの向こう側からミウの声が聞こえリュートが向けた視線の先に、桃色の髪を揺らしながら手を振るミウの姿を見て、リュートは手を上げて応え流れいく人並みを抜けてミウの傍に立つ。
「待った?」
「待ってませんよ。さぁ、ルカさんが裏で馬車の支度を終わらせています」
ミウについて歩き、家屋の横を抜けると出発準備を終わらせたルカが笑顔でリュートを出迎える。
「リュート様。いつでも出発できます」
「ありがとうルカ・・東門へ行こう」
「はい」
ミウとリュートが荷台に乗ったことを確認したルカは馬車を走らせ東門へと向かう。
街中の大通りではゆっくりとした速度で移動するため、歩く速度とほとんど変わらないため、荷台にいるリュート達へと自然と周囲の人の視線が集まる。
「・・見られてますね、リュートさん」
「だな・・ここは耐えるしかないよ」
「そうですね・・そういえば、武器屋で何か買ったのですか?」
「解体用ナイフとダガーナイフを買ったよ」
「ダガーナイフをですか?・・リュートさんは、冒険者の時の職業は、斥候だったのです?」
「違うよ・・俺は、魔法剣士だったのさ」
「凄い・・魔法と剣技を併せ持つ職業じゃないですか!」
「そう?どちらも中途半端にしか成長しない不遇の職業だよ」
「そ、そんなことはないですよ・・」
「まぁ、それも今は過去の話し・・今は商人だからね」
「でも、微塵も商人らしくないステータスじゃないですか」
「たしかにな・・ステータスを見たら、そこらへんの商人と同じじゃないな」
「そうですよ。普通に冒険者より、かなり強いステータスじゃないですか!」
「やっぱり?・・内緒にしててくれよ、ミウ」
「もちろんです」
ミウの無垢な笑顔に癒されるリュートは、ミウの頭を撫でているとミウはリュートに身体を委ね目を閉じる。
しばらく街中を馬車移動した後に、ルカが馬車を止めた。
「リュートさん、まだミーシャさんは来てないようですね」
「そっか・・ちょっと早かったかな?とりあえず、ここで待っていよう」
「はい」
ルカは止まった位置から壁へと小移動させて馬をロープで固定すると荷台へと上がりリュートの隣りに座る。
東門に到着してから2時間が経過し昼の時間を過ぎた・・。
「リュートさん、ミーシャさん来ないですね・・」
「飯でも食ってから来るんじゃないか?」
「え?・・私達は昼ご飯まだなのにですか?」
「ん〜貴族は平民を待たせる存在だからな・・まぁ、夕方までに来なかった今日は宿に帰ろう」
「はぁ・・」
約束の時間を過ぎても姿を見せないミーシャに対して、ミウは少し苛立っている。
「あっ・・来たみたいですよ、リュート様」
「来たんだ・・もう来ないかと思ってたけど」
「・・ごめーーん!! 遅くなったぁ〜!・・お昼ご飯まだでしょ?コレ買ってきたから食べて」
遠くから走ってくる姿を見ていたリュート達は、彼女が両手に持っている紙袋が気になり遅れた理由を聞かずミーシャの言い訳を聞く事にしていた。
「ミーシャ、コレはなに?」
「白パンの肉サンドと野菜揚げ饅頭と・・果実水よ・・はぁ・・はぁ」
「ありがと・・いただくよ」
大きな紙袋を受け取ったリュートは、3人分を取り袋をミーシャに返す。
「・・え?」
ミーシャも昼飯を食べず準備していたが、遅れた自分悪いと思い足りないといけないと思い余分に買っていた物も食べてもらおうと思っていたのに、リュートに返され驚いた。
「ミーシャも食べてないだろ?」
「でも・・」
「パーティーは、皆平等なの知らないのか?」
「そうなの?」
「もちろん、互いの命を預けている仲間だからな」
「でも、冒険者の事情を行商人のリュートが知っているの?」
「まぁ、それはアレだ・・幼馴染の冒険者によく聞かされたからな」
「そ、そう・・」
「だから、ミーシャも一緒に食べようぜ」
「うん、ありがとう」
昼飯を食べ終わった頃にミーシャが遅れた理由を口にする。
「約束の時間に遅れてごめんなさい・・地図をもらうのに時間がかかったの」
「地図?」
「そう・・討伐祭の範囲が書かれた地図」
ミーシャは背負っていた大きなリュックから丸められた地図を取り出し、床に広げる。
「私達がいる街アーガリン・・そこから東に延びる街道を走って、ここから南北に広がる森が・・」
「レッドダニーの森ですね」
地図に記載されている森の名前を探しているミーシャをサポートするようにミウが告げた。
「そう、レッドダニーの森よ・・この森が主に活動する森になるわ・・でも高ランクの魔物を討伐’するには、森を抜けた先にある洞窟と山の中腹にある湖に住むらしいドラゴン」
「そんな近い山にドラゴンが住んでいるのか?」
「リュート、ドラゴンは不確定情報なの・・遥か昔の冒険者が見たっていう情報が今も受け継がれているだけで、ドラゴンを見た人は実際にはいないの」
「そうか・・なら、洞窟を目指した方が現実的?」
「ええ、森の低ランクや中ランクを倒しても勝てる要素は低い・・けど、死ぬ確率は跳ね上がるわ」
「まぁ、死ぬ心配はないな・・」
「リュート、いくら大量にポーションがあっても中級は万能じゃないわ」
「ポーションなんて気休めのアイテムだよ・・俺達には世界最高治癒師ルカ様がいるからな」
「はい、リュート様・・たとえ、肉体を失うことがあっても、私が完全復元してあげますわ。でも、リュート様がいる限り私の出番は少ないでしょう」
リュートとルカは互いに見つめ合い手を握っている状況にミーシャが口を開く。
「なんなの?・・その信頼しあった関係は・・」
「ミーシャさん、続きを」
ミウに促されたミーシャは、我に返り説明を続ける。
「そ、そうね・・えっと、今日の目的地は街道の分岐点がある場所よ。ここで野営して夜明けと共に出発して森を突き抜けるわ」
「わかった、その計画で行こう」
御者はルカが務め、案内役としてミーシャが御者台に座り荷台にはリュートとミウがイチャついている。
「ちょっと、あなた達!!さっきから全然緊張感が感じられないんですけど!?」
「ミーシャ、出発から緊張していると疲れるよ・・脅威がない時は、のんびりしないとね・・」
「そうですよ、ミーシャさん。リュート様の言う通りです」
「ルカさん・・はぁ・・では、出発!!」
ランオン学園討伐祭の最後尾パーティーとして街を出発したリュート達は、やっと他のライバル達と同じ土台に立つことができたのだ・・。
そして、学園救護室のベッドで寝ている生徒会長ヨルンが討伐祭の初日から学園にいるのは、生徒会長特典として騎士団配属が決まっているためで、討伐祭は自由参加となっているからだった・・・・。




