表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/233

38話 個室で密談

アクセスありがとうございます


 街へと帰って来たリュート達の前に機嫌の悪いミーシャが問い詰めていた・・。


「どうしてあの場所で店をやっていなかったのよ!?」


 リュートが仰け反らないと唇が重なりそうな程ミーシャが迫っている。彼女は早朝から屋敷を出てリュートが店を開いていた場所へと足を運ぶも居ないことに不満をこぼしながら待っていたのだ。


「えっ・・ちょっと、落ち着いてください・・ね?」


「私は落ち着いているわよ!いいから来なさい!」


 リュートの右手を掴み強引に引っ張りながら歩き出す。


「ど、どこへ行くんですか?」


 相手が貴族令嬢と知っているリュートは、掴まれた手を強引に払い退けることなく仕方なく彼女の動きに合わせ歩き、その後ろをルカとミウが小走りに追いかける。


「リュートは、何も考えずに私について来ればいいのよ」


「強引な人だな・・」


「なんか言った?」


「・・いえ、なんでもないです。お嬢様・・」


「・・・・・」


 ミーシャに捕まり連れて行かれた場所は、大通りから少し外れた道に面した飯屋だった。


「いらっしゃいませ、奥の個室へどうぞ」


 店のドアを開けて入ったミーシャを見た男店員は、彼女が来ることがわかっていたような対応で部屋を案内することにリュートは驚く。


 店内を歩き奥の狭い廊下の先にある扉を開けたミーシャは、ここでやっとリュートの手を解放した。


「中に入って」


「はい・・」


 4人が入れるほどの小さな個室の奥側の席に座ると、リュートの横にミーシャはなぜか座った。


「あの・・こういう時って対面に座るんじゃ?」


「だから?」


「いえ・・ごめんなさい」


 ミーシャの肩が自身の肩に触れ、彼女から香るほのかに甘い香水がどこか知っているような感覚がリュートにあったがミーシャに圧倒され聞けずにいた・・。


 チリンチリン・・


 テーブルに置かれた小さな鈴をミーシャが鳴らすと、さっき出迎えた男店員が個室へと姿を見せる。


「おまたせしました」


「ハーブティーを2つお願い」


「かしこまりました・・」


 男店員が個室から出て行きミーシャと2人きりとなったリュートは、置いて来た2人のことを聞いた。


「お、お嬢様・・」


「ミーシャ」


「ミーシャ様・・」


「ミーシャ!」


「ミーシャさん・・」


「ミーシャ!!」


「ミ、ミーシャ」


「なぁに?」


 リュートからミーシャと呼ばれ、笑顔を見せるミーシャにリュートはルカとミウの事を聞くはずだったのに、全く違う事を口にしてしまう。


「綺麗な髪だね、ミーシャ」


「っ!ありがとう・・この髪は、お母様と同じ髪色なの」


 腰まで伸ばしたサラサラな銀髪を恥ずかしそうに触っているミーシャを見て、リュートはいつものように彼女の瞳の色も褒める。


「その銀髪と同じ瞳も綺麗だよ・・」


「・・ばっかじゃないの?・・この私を口説こうとしているのね?」


 頬を紅潮させ、リュートから顔を逸らしたミーシャの視線は天井を見つめていた。


 コンコン・・


 ドアが開きハーブティーを持って来た男店員がテーブルにコップを2つ並べて置くと、リュートを見て口を開いた。


「お連れ様は、一般テーブルにて休憩しております」


「ありがとう。これで彼女達に飲み物か何かよろしく」


 リュートは男店員に銀貨2枚を手渡す。


「ありがとうございます」


 銀貨2枚を受け取った男店員は、そのままドアを閉めて去って行った。


「「 ・・・・・・ 」」


 少しの時間だけ個室に静かな時間が流れ、2人はハーブティーを飲んでいる。


「それで、俺をここに連れて来た目的は?」


 何も語らないミーシャにリュートはいつもの口調で問いかける。


「リュートが売ってるポーションは、どこから仕入れているの?」


「・・それは、企業秘密だな」


「なっ・・いくら払えば教えてくれるのよ?」


「お金だけの問題じゃないな」


「あなたは平民で、私は領主の娘・・貴族令嬢よ?」


「俺は、権力には屈しない・・と思う」


「何よ、その中途半端な意志・・」


「ん〜過去に一度権力に屈して、全てを失ったからかな」


 苦笑いしながらハーブティーを飲むリュートの黒い瞳をみたミーシャは、今まで感じたことのない感情が胸に湧き上がってくるのを感じて言葉を失っている。


「まぁ、仕入れ先は教えられないけど同じ品質のHPポーションを売ることならできるよ?」


「ありがとう・・でも、もう間に合わないから良いわ」


「間に合わないって?」


「・・・・」


「言いたくない事情があるなら、別に良いけど」


 ミーシャは溜息をついてから、リュートに理由を告げはじめる。


「明日から学園行事の討伐祭が10日間始まるの。それで、参加パーティーの携行必需品としてHP回復ポーションとMP回復ポーションを100本ずつ持ってないと参加基準を満たされなくて棄権扱いになるのよ」


「10日間も魔物討伐か・・学園がそんなハードな祭りをするなんて変わってるね」


「そうよね・・でも、これは伝統行事でもあるの。優勝すれば、保証された待遇が与えられるから」


「保証された待遇?」


「王都の・・国直属の騎士団か宮廷魔術士団に配属されるのよ」


「あ〜国家戦力の一員になれるってことか・・」


「リュートは、興味ないの?爵位がもらえて、そのうち領地だって・・」


「俺は、自由に旅して自由に生きて、好きな場所で死にたいからな・・見知らぬ土地で敵の前で無様に死にたくはないよ」


「そう・・平民商人が考えそうな理想ね」


「だよね・・今は、守らなきゃいけない存在もあるしな」


「一緒にいた、あの女2人?」


「そうだよ。でも、あの2人は俺より強いから守られてばかりだけどな〜」


 リュートは、コップに残ったハーブティーを一気に飲み干す。


「ふふっ・・女より弱い男だなんて・・情けないのね」


「俺は、平民商人だからな・・戦闘には向いてないのさ」


「そう、もう用は無いから帰って良いわよ」


「ありがとな・・ちなみに、そのポーションはどれだけ不足してんだ?」


「50本ずつの両方合わせて100本よ」


「なんだ、そんな程度か・・いつまでに欲しい?」


「えっ・・準備できるの?」


「質問を質問で返すなよ・・いつまでに欲しい?」


「明朝の8時よ」


「朝8時か・・起きれるかな・・場所は?」


「街の西地区にある、ランオン学園正門前」


「わかった・・俺と契約するか?」


「できるの?」


「だから、質問で返すなって」


「・・・・お願い、契約するわ」


「わかった。HPとMPポーションを50本ずつの合計100本だな?」


「うん・・」


「それじゃ、手付金として・・」


「待って、今はそんなにお金持ってないの・・え?」


 リュートは立ち上がり、ミーシャを立たせ銀色の瞳を見つめる


「最終確認だ・・明朝8時にHPとMP回復ポーションを50本ずつの計100本をランオン学園正門前に届ける。これで間違いないか?」


「うん・・間違いないわ」


「契約完了だ・・それじゃ、手付金をもらうよ」


 リュートは、ミーシャの腰に腕を回し抱き寄せて彼女の右頬にキスをする。


「確かに手付金はもらったよ・・このまま討伐祭の準備を進めておけよ」


 パッと腰に回していた両腕を離して個室から出る。あまりにも予想外の行動にミーシャは何も対応できず、されるがままに彼の頬へのキスを受け入れてしまったことにミーシャの胸の鼓動は早くなっている。


「ウソ・・わたし、キスされちゃった・・」


 左手で右頬に残るリュートからされたキスの感触に触れながら、1人個室に残されたミーシャはしばらく間ジッと天井を見つめたまま動けずにいたのだった・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ