34話 貴族令嬢ミーシャ
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騎士に教えられた場所へと移動するリュートは、大通りにいるはずの行商人の数が異様に少ないことに気が付く。
(本当に今日は行商人が少ないな・・みんな無許可営業なのか?)
中央広場を抜けて1つ北側にある大通りに辿り着き足を止めて周囲を見渡すと、とても小さな噴水があった。
「あそこか・・」
商店から離れている場所のため、あそこで営業をしても問題は無いとリュートは判断し開店準備を終わらせる。
ちょうど3人が並んで座れるスペースなため、ルカとミウに客引きをさせることなくリュートは2人を両隣に座らせて客を待つことにした。
あの騎士の言うとおり、通りを行き交うのはいろんな業種の人達だなとリュートは見た目の服装で判断していると、1人の少女が足を止める。
「このHPポーションの品質は?」
「ここにあるのは、全部中級ですよ」
「ふ〜ん・・中級なのね」
白色のワンピース姿の少女はリュートの前でしゃがみ込んで、ポーション瓶を1本手に取り眺めている。
「・・・・へぇ、中級なのに混ざり物が無いのね」
「はい、それが当店の特製ポーションですから」
リュートは少女が目線の高さまで上げて見ているポーション瓶を眺めているその視線を、なんとなくわずかに下へ移動させると、ポーションを眺めてる少女の下着がチラッと見えてしまい思わず視線を戻すと、少女の視線はリュートの黒目の瞳を見ていて視線が重なる。
「「 ・・・・ 」」
リュートはドキリとしたものの、少女からの反応がなかったためそのままにしていると少女は瓶を持ったまま立ち上がる。
「ねぇ、コレ1本いくらなの?」
「銀貨1枚です・・」
「中級ポーションで銀貨1枚なんて、安いわね」
少女は、上半身を前に倒しリュートに銀貨1枚を手渡す。
「1本買うわ」
「ありがとうございます」
胸元が少し大きく開いたワンピースを着ているため、そのまま前へ上半身を倒すとリュートの視線からは少女の胸元がハッキリと見えてしまう。
その少女の行為に気付いたルカとミウは、思わずリュートの目を手で覆う。
「リュート様ダメですよ」
「お客様に失礼です!」
「いいのよ・・」
不敵な笑みを浮かべる少女は、ゆっくりと身体を起こすと購入したポーションをその場で飲み始めると数秒間だけ彼女の全身が薄い緑色の光に包まれて消えた・・。
その光景を初めて見たミウは、驚きの声を漏らす・・。
「うわぁ・・綺麗な光・・」
「うふふっ・・本当にコレは中級ポーションなの?」
「そうですよ。まぁ、特製ポーションなんで他の店で売ってる物とは違うかもしれませんけどね」
「そう言うことね・・納得だわ・・もう1本買うわ」
銀貨1枚と空き瓶をリュートに手渡し、陳列されたポーション瓶を1本手にする。
「お買い上げ、ありがとうございます・・」
「ねぇ・・もう1本飲んだらどうなるの?」
「そうですね・・今夜は寝れなくなると思いますね」
「貴方、この私を誘っているの?こんな綺麗な子が2人いるのに・・」
「まさか?・・効能をお伝えしただけですよ?」
「そう言うことにしておくわ・・貴方の名前は?」
「・・リュートです」
「ルカです」
「ミウです」
「私は、この街の領主の娘・・ミーシャよ。ミーシャ=アヴィエーティ」
「領主様の・・ミーシャ様・・失礼しました」
平民であるリュートは、貴族娘のミーシャに頭を下げて謝罪する。
「いいのよ、私はそう言うの気にしない性格だから」
「ありがとうございます、ミーシャ様」
リュートが頭をあげた頃に遠くからミーシャを呼ぶ声が聞こえる。
「・・・・ミーシャ様!」
「はぁ・・もう追いつかれたのね・・リュート。ここでお別れだけど、明日もここで店を開いているの?」
「えっと・・私は行商人なので、ここが他の者が先にいれば別のどこかで商売をしていると思います」
「そう・・わかったわ」
そんな短い会話をしたとにミーシャを追いかけて来た男達が辿り着く。
「ミーシャ様、行き先を教えてもらわないと、領主様に我々が怒られてしまいます」
「ごめんなさいね・・学園に行く以外に街を出歩くことなんて無いから」
「お気持ちは理解できますが・・もう少し自重をお願いします」
「はいはい・・さぁ帰りますわよ」
ミーシャは、リュートから購入していたポーション瓶をワンピースの中へと隠し持ち男達と歩き去って行く・・。
「貴族令嬢様ですね・・」
ミウが立ち去るミーシャ達を見ながら呟く。
「あれが貴族令嬢か・・なんか生きてる世界が違う気がするよな」
「はい・・」
それから、ミーシャとの一部始終を見ていた周囲にいた冒険者達が、リュートのポーションを購入していき陳列されていたポーション40本が完売してしまった。
「リュート様・・完売してしまいましたね」
「ルカ・・1日でこんなに売れたの初めてだよ」
「ですね・・今日は、とても素晴らしい日です」
「リュートさん?ルカさん?」
「・・今日は終わりだ」
「終わりですね」
「あの・・ポーションの仕入れをしないと」
「そんなことなど、必要ないのだよミウ君!・・さぁ、このまま酒場へ直行だ」
「はい、リュート様!ついて行きます」
「え?・・本気ですか?・・・・ちょっと、待ってくださいよ〜」
地面に敷いていた毛布を片付けたリュートはまだ昼過ぎなのに酒場へと足を向け、その手を握り嬉しそうについて行くルカの2人の背中をミウは追いかけて行くのだった