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30話 帰還後のトラブル

アクセスありがとうございます。


 荷台で眠る3人で最初に目を覚ましたのは、瀕死の重症だったミウだった。


「ん・・・・揺れてる?」


 背中から伝わる振動で意識を覚醒したミウは、目を開けるも既に暗くなり始めていた空をぼんやり見つめ、自身に起きたことを思い出す。


「たしか・・」


 ゆっくりと意識を失う前の記憶が蘇る・・もう死を受け入れていた自分に初めて目にする黒い瞳を持つ彼に安堵する自分がいたこと・・でも、聞いたはずの彼のぼんやりとした顔と名前を思い出せない。


「んっ・・と・・そうだ、2人は?」


 力なく呟くミウは幼馴染のアンジュとマリンを探すため上半身を無理矢理起こすと、両隣に2人が寝ている事に嬉しさがこみ上げる。


「ずっと、居てくれてたんだ」


 普通に起き上がれた自分に遅れて違和感を思い出し、激痛を感じていたはずの右腕に触れると何事もなかったかのように自分の右腕が動く事に気が付く。


「なんで?・・腕治ってる・・お腹も?・・」


 あの低級ダンジョンで遭遇するはずもない、ジャイアントオークに急襲され対応が遅れたミウは初撃で瀕死となった自分を思い出し全身がガタガタと震え息が詰まる。


 御者台にいたリュートとルカはミウが起きた事に気付くも、しばらく様子見としていたところにミウの異常にルカが先に気付いた。


「リュート様、重症を負っていた彼女に状態異常が・・」


「ポーションの副作用?」


「いえ、精神的な反応のようです。きっと深傷を負った時の恐怖が蘇ったのかもしれません・・」


「あ〜フラッシュバックか・・あんまし、よろしくないね」


「どうしますか?」


「ん〜そうだね、ここは女同士のルカがいいかも」


「・・一般的には妥当ですが、今回についてはリュート様の方が適任かと?」


「マジで?」


「はい・・」


 ルカの自信に満ち溢れた表情にリュートは頷き了承する。


「わかったよ・・しばらく御者をお願いね」


「はい、リュート様」


 持っていた手綱をルカに託したリュートは、荷台へと移動する。


「・・目が覚めたみたいだね?調子はどう?」

 

 リュートはできるだけ優しい口調でミウに声をかけるも、彼女はビクッと反応し荷台の最後方へと移動してしまう反応にリュートは苦笑いをする。


「・・・・ぅ、あぅ・・」


「無理して喋ろうとしなくて良いよ。今はアーガリンに向かっていて、もうしばらくしたら着くよ。それまで、ゆっくりしていて」


 そう告げたリュートは、ミウの返事を聞く事なく御者台へと戻ろうとした時に背後から呼び止められる。


「まっ・・ってください」


 リュートは力を込めていた右足の力を抜いて振り返る。


「どうしたの?」


「あの、助けてくれてありがとうです」


「どうも・・まぁ、俺よりもダンジョンから外へと連れ出してくれた2人に、その言葉を伝えてあげてね」


 軽く手を振り告げたリュートは、そのまま御者台へと戻って行く。その後ろ姿をミウにジッと見つめられていることを知らずに・・。



「さぁ、着いたよ!」


 そう伝え振り向いたリュートは、返事がなくとも3人が寄り添い起きている姿を確認するとそのまま視線を前に戻す。


 日没間近にアーガリンの門に辿り着いたリュートの馬車は、閉門準備をしていた門兵に小言を言われながら街へと入って行く。


 街に入り右へと曲がった所で馬車を止めると、荷台が僅かに揺れて3人が降りたことを確認したリュートも御者台から降りてルカに馬車を預けるのを頼み3人の元へと移動する。


「お疲れ様、調子はどうかな?」


「はい、回復して元通りです」


 パーティーリーダーのアンジュが代表として答えた。


「なら、もう大丈夫そうだね」


 すると、アンジュとマリンの表情が暗くなる。、


「あの、ポーション代のことなんですが・・」


 アンジュの暗い声で呟く。


「ポーション代?・・あぁ、必要ないよ。彼女に使ったのは、販売用じゃないからね」


「でも・・あの約束を・・」


「またポーションが必要になった時に買ってくれたら良いから。それじゃ・・」


 リュートはは3人から逃げるかのように去って行く。


 離れて行くリュートの背を見送る3人は、自然と頭を下げて感謝の気持ちを伝えた・・。



「さぁ、私達はギルドに行こう・・」


「「 うん 」」


 アンジュ達は、薄暗くなった街の大通りを冒険者ギルドへと向かい歩き出す。


「・・あっ!!」


「どうしたの?」


 突然立ち止まり、声をあげたアンジュに驚いたマリンは反応した。


 アンジュは振り返り、マリンとミウを見る。


「今日の宿代が無いよ・・」


「 えっ!? 」


 絶望し項垂れているアンジュとマリンを見ていたミウは、アンジュの腰に見慣れない麻袋を見つける。


「アンジュ?そんな麻袋持ってたっけ?」


「え?・・麻袋?」


 ミウの指摘にアンジュは腰に視線を落とすと、確かに見覚えのない麻袋がそこにあった・・。


「なんだろね・・・・き、金貨だ!」


「「 金貨?? 」」


「うん、6枚入って・・なんかある」


 アンジュは金貨を数えた後に底に1枚の折り畳められた紙を見つけ取り出す。


「なんだろ・・」


 小さく折り畳められた紙を広げ、書かれている文字に目を通す。


「・・リュートさんだ」


「リュートさんが、どうしたの?」


 アンジュの独り言にミウが聞く。


「ミウ、マリン・・このお金は、リュートさんからだったよ。夕飯代と宿代にだって・・」


 アンジュは、金貨2枚ずつ2人に手渡し冒険者ギルドへと向かい、依頼失敗を伝えてから宿屋へと向かったのだった・・。


 アンジュ達と別れたリュートは、馬車を預け終わったルカと合流すると、ルカはリュートの手を握り上目遣いで聞く。


「リュート様?」


「なに?」


「吊り橋効果を狙ってませんか?」


「つり・・って狙ってないよ。俺には、ルカがいるから」


「はぁ・・たとえ、リュート様にその気が無くとも・・ミウさんの瞳は、違ってましたよ?」


「ま・・まさか?」


 完全に陽が沈み空が暗くなり、家のこぼれる明かりで照らされている通りを歩き今夜の宿へと目指し歩くリュートの足取りが重くなり止まってしまう。


「リュート様、何か隠していませんか?」


「えっと、その・・・・実は、手持ちが銀貨5枚しかなくてさ・・」


「もう、仕方ないですね・・見栄を張るからです。でも、そんなリュート様は素敵ですけど」


 ルカに手を繋がれ、強制的に連れて行かれるリュートは大人しくルカについて歩く。


「何処へ行くの?」


「着いたら、わかると思いますよ」


 ルカは、目的の場所を把握しているようで迷いなく通りを歩き大きな建物の前で足を止めて、リュートに振り返った。


「ここは?」


「この街の商人ギルドです。溢れるほど持っている低級ポーションを売って、今夜の宿代としましょう」


「ルカ、低級ポーションって売れるの?」


「期待しないでください。所詮は、薄利多売です・・低級ポーションの在庫は、いくつありますか?」


「えっと・・600本から数えてないから、わかんない」


「はぁ・・私の遥か上をいく量でしたね・・参考にですが、その600本を数えたのはいつですか?」


「・・・・確か、数年前の暑い日の昼下がり?」


 惚けた表情をするリュートに、ルカは腰に両手を当てて叱責する。


「生まれたばかりの私に聞かないでください!作った物の管理ができないのは、ダメですからね?」


「はい、気を付けます」


「さぁ、行きますよ」


「はいっ」


 商人ギルド前で、立場が逆転した2人は中へと入り、暇してそうな受付窓口に座る受付嬢へと足を進めたのだった・・・・。

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