29話 利益より若い命
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リュートが重症のミウを馬車へと運んで行く事に泣きじゃくるアンジュとマリンに、ルカは治癒魔法ハイヒールを重ねがけして2人の傷を完治させる。
「「 はぇ・・」」
重く感じていた全身が軽くなり痛みと疲労から突然解放された2人は、変な声を漏らし顔を上げる。
「アンジュ・・傷が治ってる」
「マリン、あなたも・・」
「「 なんで?? 」」
「はい、リュート様の指示によりお二人の傷を治癒させていただきました」
まるで聖女のような優しい微笑みに、ルカを見た2人は神秘的な感情に包まれ言葉を失い固まる。
背後でルカが治癒魔法を使った魔力を感じたリュートは、ミウの傷口から擦れて聞こえる独特の音を聞きながら荷台へとソッと寝かせると、ゆっくりと目を開いたミユの虚な瞳と視線が重なる。
「・・そと・・だれ?・・もう、わた・・し・・しぬん・・ぁ・・」
弱々しく諦めた声を漏らすミウに、リュートは元気付けるかのように声をかけた。
「キミを死なせないよ・・ミウさん」
アイテムボックスから販売しないエリクサー級のポーション3本取り出すと、ミウがゆっくりと左手を上げてリュートの腕に触れる。
「ん・・さいご・・にぃ・・なまえ・・」
「リュート。行商人のリュートですよ」
「リュー・・リュート、ありがと・・」
ミウはリュートの名前を口にすると、僅かに微笑み虚な瞳から一粒の小さな涙が溢れ落ち頬を伝わる。
「ゆっくり、オヤスミ」
ミウの左手は力を失いリュートの太ももへと落ちた。その左手を優しく手を添えた後に、リュートはH Pポーションをミウの服の上から満遍なくかけると、彼女の全身が薄緑色の光に包まれ汚れが消えさり切り傷や擦り傷が治っていく。
「ここからは慎重にしないとな・・」
2本目のH Pポーションを、ほぼ切断していた右腕の切断面を丁寧に合わせポーションを半分かけると時間を戻すかのように腕が修復していく。そして、致命傷となっていた太腿から下腹部へと伸びる傷にも残りのポーションをかけて同じように修復されて傷跡がない綺麗な色白の肌へとなる。
「傷は完治したな・・つぎは・・」
3本目のポーションはM Pポーションだ。気を失っているミウに飲ませることも口移しで飲ませることもできないため、効率は落ちるものの仕方なく1本目のポーションのように全身にふりかけ様子を見る。
ビクンッ!!
ミウの腰が数センチ浮くほどの反応があり、青紫色の光に包まれていた彼女が失った魔力保有量以上の魔力が強制的に吸収され光が消えていく・・。
そのままミウの状態を観察し続けていたリュートは、彼女の今までの魔力保有量が大幅に増幅され無事に体が受け入れたことを確認し安堵の溜息をつく。
「はぁ・・ここからは、彼女次第だな」
静かに寝息をたてて、穏やかな表情に戻ったミウを確認し外にいるルカを呼ぶ。
「ルカ!終わったから、2人を連れて来てもいいよ」
リュートに呼ばれたルカは、アンジュとマリンを連れてリュートの元へと案内する。
「「 ミウ!! 」」
荷台で横たわっているミウを見たアンジュとマリンは、幼馴染の名前を呼びながら荷台へと飛び乗った。
アンジュは、ミウの傍で座っているリュートを見ると、頷かれたためゆっくりと毛布をめくる・・・・。
「治ってる・・」
アンジュは、完璧に完治した右腕と腹部を見て涙を流す。
「良かった・・」
リュートは、3人の共有する時間を邪魔しないようにと荷台から降りて、少し離れた位置から見守っていると不意にルカに背中から抱き締められる。
「ルカ?急にどうしたんだ?」
「・・わたしは、私は絶対にリュート様をお守りしますね」
「ありがとう、ルカ・・頼りにしてるよ」
「はい・・」
リュートとルカが、ひっそりと甘い時間を過ごしていると、荷台で喜び合っていた2人は極度の緊張から解放されたのか、ミウを挟むように眠りについていた。
「・・いつの間にか寝ちゃってたね。あのままにして、続きをしようか?」
「そうですね、まだ1本も売れてませんから」
「・・・・・・」
リュートとルカは、夕方までポーションを販売を続けた。
「終わりに5本売れたね」
「そうですね。今日は、ダンジョンから帰るパーティーでしたね」
「だったね・・ルカの色仕掛けのおかげもあったけど・・」
「あんな恥ずかしいこと、もう無しですよ?」
ルカは思い出し顔を紅潮させ俯く。
「わかったよ・・もう頼まないから」
「べ、別にリュート様だけなら・・」
「ん?・・なんか言った?」
「なんでも、ありません!それよりも、次は街で売りますか?」
「みんな、街の商店で買ってから来てるようだしね。でも、街で売るのは行商人の俺には不利かもな〜〜とりあえず、暗くなる前に街へ帰ろう」
「はい、リュート様」
急いで片付けを終えて場所に戻ると、3人はまだ寝ている。そのまま持っていた毛布を3人にかけてから、リュートはゆっくりと場所を走らせ、地方都市アーガリンへと向かったのだった・・。




