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28話 商い活動の始まり

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 暗闇の部屋の中で、ベッドに座ったままのルカの姿がある。リュートのように寝ることも可能だが、彼女に睡眠は基本的に必要なくリュートから魔力供給を受けている限り無限に活動ができる特性が、まるちどぉーるのルカなのだ。


 リュートのスキルから生まれた彼女は、何よりもリュートのことを最優先事項として行動する。一晩中彼のことを考えていたルカは、窓から差し込む朝陽で朝を迎えたことに気が付いた。


「もう朝なのですね・・」


 ギシッ


 ルカがそう呟いた後に、リュートは寝返りこの部屋で初めてルカに顔を向けた。僅かに遅れて咄嗟にルカは上半身をベッドに預けるも黒い瞳がそれを見逃してはいなかったのだった・・。


「・・・・おはよ、ルカ」


「お、おはようございます」


「ずっと、起きてた?」


「・・はい」


 言葉よりも感情が繋がっている魔力を通して感情が伝わるため、ルカは嘘をつかない。


「そっか・・ごめんな」


「いえ、大丈夫です。リュート様の寝顔を見て癒されてましたから・・」


「なんだよそれ・・」


 苦笑いするリュートを見て、思った以上に落ち込んでいないことに安堵するそんなルカの心を知らずに、リュートは今日の予定を口にする。


「ルカ、今日は地下ダンジョン入口でポーションを売るのってどうかな?」


「いいと思いますよ。ダンジョンに入る冒険者パーティーに治癒士がいても、ポーションは必要ですからね」


「だよな・・よし、支度を済ませてから出発だ」


「はい、リュート様」


 街から歩いて半日ほど離れた場所にある低級ランク冒険者が行く地下ダンジョンの情報を冒険者ギルドで聞いたリュート達は、馬車で移動し2時間程で辿り着いた。


「あそこがギルドEランク指定の、デスルーキ地下ダンジョンか」


「そう見たいですね。あそこに警備している人達がいますよ」


「ちょっと、声でもかけてみよう」


 リュートは警備している男達から数十メートル離れた場所に馬車を止めてから、歩き近寄ると先に声をかけられてしまう。


「たった、2人でダンジョン攻略をしに来たのか?」


「いえ、俺はしょう・・じゃなくて行商人です。この辺りで冒険者達にポーション販売でもしようかと思い来ました」


「行商人が低級ダンジョンに?・・まぁ、販売行為は自由だが君達の護衛は?」


「この子が、俺の護衛です」


 リュートの半歩後ろにいたルカが、リュートの一歩前に出て笑顔で会釈する。


「は?・・ふつう逆じゃ・・まぁ関係ないか。忠告しておくが、俺達はダンジョンの管理統制が主たる任務だ。君たちが山賊に襲われても、街に通報はするも直接助けるような行為はできないことを忘れないように・・」


「わかりました。それでは・・」


 警備をする男2人から離れたリュートは、離れた場所で毛布を敷いてポーションを並べて、やって来る冒険者達を待つ。


 冒険者パーティーがリュート達の前を行き交うも、ルカへのイヤらしい視線だけを向けてダンジョンへ向かったり街へと帰って行く。


「おかしいな・・低ランク冒険者なら必須アイテムなのにな〜」


 そう呟きながら来客を待つリュートとルカは時間だけが過ぎて行き、とうとう睡魔と闘い始めたリュートに声をかける冒険者が突然現れた。


「あの・・」


「ひゃいっ!」


 ほぼ寝ていたリュートは、ルカが隣にいる安心感の中で無警戒に過ごしていたため、目を覚ました瞬間に変な声を漏らしてしまった。


 目を開けると、目の前には泥だらけになった顔と全身傷だらけで満身創痍の女冒険者が視界に入る。その後ろには、仲間を大事そうに背負っている女仲間もいた。


「いらっしゃいませ?」


「それって、H Pポーションですか?」


「そうですけど・・」


「はぁ・・はぁ・・1本・・ください」


 そう言い終えた女冒険者は、地面へと力なく座り込んだ。


「えっと・・1本で銀貨1枚です・・」


 どう見ても3本買わないと、パーティー3人の傷を回復させる事はできない。それなのに1本しか買わないのは何か理由があるのだろうかと、リュートは考える。


「銀貨1枚ですね・・わかり・・ました」


 リュートの前に座り込む女冒険者は、小刻みに震える手で腰に付けている巾着袋の口を開けて左手を入れる。


「うそっ・・そんな・・」


 目を見開く彼女の視線をリュートは追って下に向けると、巾着袋の底から彼女の指先が出ていた。


 目の前に今すぐ必要なH Pポーションがあるのに、ダンジョンの魔物との戦闘で破れた事に気付いていなかった彼女は、購入するお金が無い現実に失望の涙が頬を伝わり地面へと落ちる。


「アンジュ、どうしたの?早くしないと、ミウが・・」


 仲間を背負っている女冒険者が、アンジュという巾着に手を入れて固まったままの女冒険者に声をかけてきた。


「・・・・マリン。ごめんなさい・・私の巾着が破れてて。お金が無いの」


「そんな!・・早くしないとミウが死んじゃうよ!」


「わかってる!・・わかってるよ・・ミウの命の方が大事だもんね・・このリーダーの私が責任を取らないと・・」


 急に重苦しい空気になってしまった状況に、リュートはただ彼女達の会話を聞くだけだった。


 そして、アンジュは両手をギュッと強く握り覚悟を決めて顔を上げリュートを見る。


「行商人さん、お願いがあります」


「は、はい・・なんでしょう?」


「今の私には、ポーションを買うお金がありません。でも、大切な幼馴染が深傷を負って死にそうなんです。ですから・・こんな汚れた身の私ですが、ポーション代金として貴方の奴隷として買い取ってくれませんか?」


「・・・・・・」


 突然、幼馴染の傷を治すためのポーション代を持っていないから、自身の身体を売ってポーションが欲しいと訴える女冒険者アンジュの行動に驚きと戸惑いを見せるリュートに、さらなる追い打ちがあった。


「アンジュ、何を言ってるんだ!この私が、お兄さんの奴隷になる!ミウがこんな傷を負わせたのは私の責任だ」


「ダメよマリン!リーダーの私が・・」


「お、お客さん落ち着いてください・・とりあえず、その重症の方をこちらに寝かせてくださいね?」


 重症の女冒険者ミウを背負っていたマリンが、毛布の上にゆっくりと寝かせるとリュートは傷を確認する。


 そこには、止血しているものの右腕を肘から下を切断され、右足も太腿の途中が半分ほど抉られ下腹部まで斬れている。


「こんな状態で生きているなんて奇跡ですね・・でも、今ここにあるポーションで彼女の命を救う事は不可能です」


「「 そんな!! 」」


 リュートの言葉にアンジュとマリンは、大切な幼馴染ミウの命が救えない事に泣き崩れてしまった。


 そんな2人の姿を見て心を痛めたリュートは、ルカに視線を向ける。


「ルカ、2人をお願い。俺は、彼女の方を・・」


「はい、お任せください」


 リュートは、瀕死のミウを優しく抱き抱えて、自分の馬車の荷台へと揺らさないよう慎重に運んで行ったのだった。


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