22話 初めての・・まるちどぉーる
アクセスありがとうございます。
長くなってしまいました。
通常は1500文字前後になります。
別れたガノンの店は、大通りに面しているため馬車の通行が許されている道であった。この街で馬車が通れる通りは限定されていて、領主館へと続く通りと街の東西南北にある4つの門と結ぶ大通りだけであった。
ガノンの店から街の外へと出るためには、バーナスとリーナに乗っ取られた店の前を通る必要がある。この昼過ぎの時間帯であれば、確実にあの2人と遭遇する可能性があったため、旅立ちの初っ端から気分は憂鬱になっている。
「はぁ・・ガノンとの感動的な別れの後に嫌な奴らと出会してしまう可能性があるなんて・・」
抗うことができないリュートは、大通りをゆっくり移動していると、店の反対側で開店し繁盛していた商店ノルーマンダーの客引きをするお姉様達の姿が見えて、あの場所が目前だという現実を認識する。
近付いた馬車の気配に気付いた客引きのお姉様達は、客引き行為を中断し身を守るため店の壁際へと移動する。そして、御者台に座る御者を見て皆が目を見開いていた。
(お姉様達も、俺の店が潰れたこと知ってるんだろうな・・めっちゃ恥ずかしい)
苦笑いしながら、交流のあったお姉様達にリュートが手を振ると顔見知りのお姉様達は、複雑な表情で手を振り返していた・・。
「あはは・・お世話になりました〜!さよ〜なら〜」
客引きのお姉様達に見送られたリュートは、運よくあの2人に遭遇しなかったことに安堵してなんとなく東門を目指す。
順調に通りを移動し、東門に辿り着いたリュートの視界には、早朝組の冒険者パーティー達が依頼を終えて街に戻って来ている光景だった。
「まさか、あいつらのパーティーいないよな・・」
リュートは列に並び順番を待っている間に口元まで布で隠し門兵の点検の番を待つ。
「・・次の馬車!こっちだ!」
門兵に呼ばれたリュートは、ゆっくりと移動させ門兵の指示に従い馬車を止めて商人ギルドカードを提示する。
「ん?・・その布を下ろして、顔を見せろ」
リュートの顔をジッと見つめる門兵は、威圧しながら告げる。
「あっ・・はい。すいません」
素顔を門兵に露わにした後に、門兵の視線がリュートの後ろへと移動し再びリュートの顔を見た後に、なぜか表情が緩む。
「そうか・・君は、ルルカさんの1人息子だな?」
「はい・・ルルカは、俺の母さんの名前です」
「そうか、ルルカさんの意志を引き継いでくれたんだな・・挫けずに頑張れよ少年!」
「はい・・ありがとうございます」
「よし!行っていいぞ!」
門兵の男に笑顔でリュートは送り出され、他の門兵達にも声を掛けられ手を振られてしまい順番待ちをしていた冒険者パーティー達の視線を一気に集めてしまう。
「くぅ〜あの門兵は、母さんの知り合いだったのかよ・・」
恥ずかしさのあまり逃げるように街から離れたリュートは、走るペースを落としのんびりと街道を東へと進み地方都市アーガリンを目指す。
途中ですれ違う馬車は、リュートの馬車とは違い同乗者がいて楽しそうな笑い声が聞こえたり何かを食べている光景を横目に無言のままは走り続ける。
その途中に街道脇に広場を見つけたリュートは、休憩のため止まり御者台から飛び降りて遠くに見える街並みを眺めていると、近くに掲げられた木製の看板の存在に気付いて視線を向ける。
・・ようこそ、スコーデントへ!
住み慣れた街並みから看板へと視線を向けて黙り込んでしまっているリュートの心には、ポッカリと大きな穴がいたままになっている。
その穴に気付いたリュートは、他人から隠すかのように左手で胸を覆い溜息をついてから再び御者台へと飛び乗り再び馬車を走らせボッチ旅が始まった・・。
馬の尻と山と街道を順番に見ながらボッチ旅を続けるリュートは、風の冷たさを感じて夕暮れになっていることに気付き、これ以上移動するのは危険だと判断し適当な場所で馬車を止めて野営することに決めた。
「お疲れさん・・」
ここまで運んでくれた馬に労をねぎらうリュートは、桶に水を入れて食事を与えてから自分の食事を済ませ暗くなったところで荷台に移動し、ランタンに明かり灯し寝転んだところで後悔する。
「しまったな・・野営のためのグッズを1つも持っていないじゃん」
まだ昼間が暖かい気候であっても、山に近い人里離れた場所の夜は予想以上冷え込んでいる。今から荷台から出て暖を取るための焚き火さえ面倒だと思い我慢して身体を丸め寝ようとするも寒さで体が震える。
「うぅ〜寒い・・このまま何もしないで過ごすより、なんかして時間でも潰すか・・」
アイテムボックスに右手を突っ込み手に取った物で何かをしようと決めてから掴んで勢いよく引き抜くと、その手には地下工房で手にした例の紙切れだった。
「新しいスキルのやつか・・材料は、お任せなんだよな」
リュートは呟きながらアイテムボックスに収納している、H P回復ポーションとM P回復ポーションを10本ずつ取り出し並べる。
「それで・・容姿を完璧に想像して命名か・・」
並べた2種類のポーションをゆっくりと眺めた後に、目を閉じて容姿を想像しながら口にする。
「髪はH P回復ポーションの液体のように透き通る薄緑色で、瞳はM P回復ポーションの液体のような見惚れるほどの美しい青紫色の瞳・・背丈は俺より頭2つ分低く・・スタイルは、母さんとアンナの3割増でと・・」
まるでボッチを極め、側から見たら気持ち悪い独り言を呟くリュートは誰にも教わっていないはずのスキル発動させる言葉を口にした。
「・・まるちどぉーる」
並べられたポーション瓶20本が一斉に純白な光を放ちリュートと荷台を飲み込んでいく・・目を閉じているリュートは眩し過ぎる光に耐えきれず両手で顔を覆い耐えていると、ふと心地よい温もりに包まれている感覚になり自然と瞑っていた目を開けたリュートの視線の先には、想像したままの容姿をした全裸の少女が優しい瞳でリュートを見つめていた。
笑顔で青紫色の瞳の少女と視線を重ねていたリュートは、密かに考えていた命名リストの中にある1つの名前を自然と一度だけ口にする。
「・・・・ルカ」
「ルカ・・それが、私の名前なのですね。与えられた名前は、この胸に刻み大切にします」
ランタンの灯りに照らされているルカは、生まれたままの姿であるため脳内メモリーに保存したリュートは、アイテムボックスに収納している自分のシャツとズボンを着させて向かい合って座る。
「ルカ・・」
「はい」
「えっと・・俺は、リュート。よろしく」
「はい、リュート様。未熟なルカをよろしくお願いします」
「急だけど、ルカのステータスを見てもいいかな?」
「はい。どうぞごゆっくりご覧ください」
ルカは自身のステータスを表示させて、リュートに見えやすいよう反転させる。
ステータス
名 ルカ(15才)女
職業 (まるちどぉーる)
H P 900000↑
MP 800000↑
スキル 治癒魔法Lv MAX 家事Lv MAX
加護 ???
(・・俺より遥かに強い・・Sランク冒険者に余裕で勝てるステータスだよな)
ルカのステータスを見終わったリュートは、ルカに自身以外にステータスを見せないことを約束させ改めてルカを見つめる。
色白のきめ細かい肌を持ち、聞くたびに癒される声・・腰まで伸びたサラサラの薄緑色の髪・・青紫色のクリッと大きな瞳のルカ。そして、リュートの大きなサイズのシャツを着ているのに存在感をちゃんとアピールし揺れる双丘・・。
まさにルカは、リュートが思い描いた通りの容姿となって現れてくれたのだった。
「うん・・もう完璧だよ、ルカ」
「あ、ありがとうございます。私の姿は、リュート様の愛の賜物です」
リュートのボッチ旅は、まるちどぉーるのルカが加わり終わりを告げる。あまりの嬉しさに過剰なほどルカをもてなす。
「あの・・リュート様?」
「な・・なんだい、ルカ?」
「まるちどぉーるの私に対して、そこまでされなくて良いのですよ。これからは、私が全身全霊を持ってリュート様に尽くします」
「でもさ・・」
「リュート様から命を受けた私は、決して裏切ることはありません」
ルカはゆっくりとした動作でリュートの前で両膝をつき、優しく包み込むように抱き寄せた・・。
「ルカ・・」
「今夜は、何もかも忘れてゆっくりとお休みになってください」
ルカの胸に顔を埋めている状態になっているリュートは、その柔らかさに包まれながら彼女から発せられる癒し効果に全身を包まれ脱力していく。
「あぁ、ありがとう、ルカ・・・・」
ルカに身体を委ねたリュートは、そのまま目を閉じて優しさに包まれながら深い眠りへと落ちていき意識を手放した。
「リュートさま・・・・」
リュートの重さが伝わったことで親愛を勝ち取ることができたルカは、瞳を潤ませて主人の名前を笑顔で呟く。そして寝顔を見ながら優しく頭を撫でるルカは、愛おしいリュートの体温を奪い去ろうと静かに迫る冷たい外気を治癒魔法の魔力の膜で荷台を包み遮断し、快適な温度を保ちながら一睡もすることなく朝を迎えたのだった・・・・。




