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19話 喪失

アクセスありがとうございます。

感想などお待ちしています。


 亡き母親の愛を感じていた時間を邪魔するかのようなタイミングで、リーナから念話が届き心を落ち着かせながらリュートは店に戻った。


「ただいま〜!リーナごめんな、遅くなって?・・」


 店に入ったリュートの視界には、リーナとバーナスが並んで待っていた。


「遅いぞリュート!店をリーナちゃんに1人に任せて、お前は何処へ遊びに行っていたんだ!?」


「バ、バーナスさん・・落ち着いてください」


「はぁ?なんでお前がいるんだ?もう閉店時間過ぎてんだよ・・部外者は帰れ!それにな、リーナは1人で店番できるんだよ!店主の俺が何をしようが、冒険者のお前には関係ないだろうが?」


 日頃から感情的に喋らないリュートが、珍しく最初から声を荒げていることにリーナは驚いていた。


「いいか?リュート!お前の傲慢さで毎日苦労している、リーナちゃんを心配しているんだ!」


「はぁ?・・もしかしてバーナスお前・・リーナのことがぁ」


 ゴキッ!・・ドゴンッ!


 何度も喧嘩したことのある幼馴染のバーナスが自分を殴りつけると思っていなかったリュートは、無防備にも顔面に強烈な打撃を受けて背後のドアに背中と後頭部を強打させ、一瞬だけ意識が飛ぶ。


「ぐぁ・・いってぇな・・」


 リュートは口に溜まる鉄臭い液体を床に吐き捨てると、口についた血を右手で拭いもう一度吐き捨てる。


「バーナス君。それ以上の制裁は罪になりますよ?さすがの私も庇いきれません」


「ちっ・・わかったよ」


 リュートの右側からこの店では絶対に聞くことがない女性の声が耳に届いたリュートが顔を向けると、そこには黒色のスーツを着た商人ギルド長のジェシカ=アイゼンが立っていた。


「なんで商人ギルド長が、この店に?」


「リュート君、久しぶりね・・立てるかしら?」


「・・はい。たいした傷じゃないんで」


 ゆっくりと立ち上がるリュートは、バーナスを睨みつけ1発だけ反撃を喰らわせようと企むも、リーナはバーナスの腕を引いてカウンターの方へと下がったため、諦めて奥のソファへと座りジェシカと向き合う。


「・・それで、こんな時間にこんな店に商人ギルド長様が居るのですか?」


「それね、リュート君・・貴方が持つ営業権利証の没収を伝えに来たの」


「ん?・・すいません、もう1回言ってくれますか?」


「だから、貴方が持つ営業権利証の没収を伝えに来たのよ」


 商人ギルド長ジェシカの口から発せられた営業権利証没収という言葉に、リュートの頭の中が真っ白になり言葉を出せないままジェシカを凝視する。


「・・・・なんで?ギルドには、ちゃんと税金を納めていたしポーションの納品ノルマだって1度も期日を遅れることなく守ってたんですよ?いったいなんの理由で、死んだ両親から受け継いだ権利証を没収されなきゃ行けないんですか?」


「それは、言えないわ。ギルド長としての守秘義務があるの」


「いやいやいや・・理不尽じゃないですか?・・なんの落ち度もない俺から権利証を没収するだなんて!」


 リュートの感情的な言葉に、商人ギルド長ジェシカ=アイゼンは微塵も表情を変化させることなく冷淡に告げた。


「商店リューノスの経営者リュートに告ぐ。本日の日付変更をもって、当店を廃業とみなし合わせて営業権利証を没収する。よって速やかに店舗兼住宅である家屋をギルドに明け渡すこと。この期限を遅延または従わない場合は、投獄し審判後に国外追放と処する。これは、王国法に基づいて発言している」


「ウソだろ?・・いきなりどうして・・なぁ!この店は、父さんと母さんが苦労して開いた店なんだぞ!そんな簡単に、はいそうですかって・・言えるわけないじゃないか!ふざけんな!!」


 リュートは目の前にいる商人ギルド長ジェシカの胸ぐらを掴み声を荒げていると、喉元に冷たい感触とピリッとした痛み感じて本能的に握り締めていた両手を解放する。


「リュート!・・もう決まったことだ。大人しく荷造りして消え失せろ!」


 バーナスが抜剣して自身の喉元に剣を突きつけている姿をリュートは睨みつける。


「バ・・バーナス、おまえは・・」


 バーナスの助けがあり、自らの力で抗っても解放されないリュートの力に内心では怯えていたジェシカは、平静を装いながら乱れたシャツを整えながら呼吸を整え、リュートを見て続ける。


「リュート君。先程の無礼は目を瞑りましょう。突然のことで混乱していたようですし。バーナス君、貴方は物騒な剣を収めて下さい。それと、明日からこの店を改装し新たな店に変わります」


「新たな店?」


 リュートは喉元から離れた切っ先を見送った後に、ソファに座るジェシカの瞳を見つめる。


「は、はい・・新たな店主となる、リーナちゃんとバーナス君の」


「なっ!」


 リュートはジェシカの言葉に耳を疑いながら視線をリーナに向けるも、リーナはリュートに睨めつけられるのがわかっていたかのように顔を背けている。


「リーナ!」


 リュートがリーナの名を呼ぶと、彼女は全身をビクッとさせる。その彼女を守るかのようにバーナスはリーナの横に立ちリュートから守るように立ち塞がった。


「お前ら・・そういうことだったのか・・」


「そういうことだ」


 リュートの独り言のような吐き捨てる言葉にバーナスは答えた。


 リュートの感情は暴れ狂っているが、理性がギリギリのところで押さえ付けている。今のリュートのステータスならば、目の前にいる3人程度ならば瞬殺することも余裕な程差がある。しかし、この大事な店を血で汚したくないリュートは理性で押さえ込んでいるのだ。


「すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜」


 深く長く深呼吸をして暴れ狂う感情を落ち着かせることが出来たリュートは、普段の口調でジェシカに問う。


「ジェシカさん、俺はこの街で二度と店を持つことが出来ないのでしょうか?」


「そうなるわね・・でも、露天商なら問題無いわ」


「そうですか・・わかりました。もう時間が迫っているので、荷物を纏めさせてもらいますね」


「遅れないようにお願いね。明朝から改装で忙しくなるから」


「わかりました。速やかに終わらせます・・・・」


 リュートはソファから立ち上がり、誰とも視線を合わせることなく2階の自室へと移動し荷物を全てアイテムボックスに収納しキッチンへと向かう。


「3人で暮らして使っていたものは、全部持って行こう」


 棚に入っている調理器具一式をアイテムボックスに全て収納し隣のリビングにある食器棚の食器も全て収納する。もちろんリーナの私物だけを残して。


 思い出の品となる物を全て持ったリュートは、廊下に立ちリビングのドアノブを握り締めゆっくりと締めようとした時だった。


 唯一持ち出すことを諦めたダイニングテーブルを囲んで座る、あの頃の親子3人の笑顔で食事をしている幻影が見えた。


「父さん・・母さん・・俺は自分が悔しいよ。いつかきっと、必ずココに戻って来るから。父さんと母さんが始めたこの場所に・・本当にゴメンね・・」


 とめどなく溢れ出す涙に視界が滲み、我慢できずに瞬きをした後のリビングは懐かしい幻影は消えて無人となっていた。


 大切な両親との唯一の繋がる場所を失い、別れを惜しむかのようにリュートはゆっくりとドアを引いて、パタンと閉めた音で冷え切った心に熱を与える。


「クソが・・このまま終わってたまるかよ・・」


 そう自分に言い聞かせるよう吐き捨てたながら、売り場で待つ3人に気付かれないよう地下工房へと移動して全ての物をアイテムボックスに収納して売り場へ戻った。


「ジェシカさん、終わりました。大きな家具は持てないので置かせて下さい。処分か利用かは、次の持ち主に委ねたいと思います」


「早かったですね、リュート君。まぁ、家具は仕方ないですね・・ギルドの方で処分します」


「あ、ありがとうございます・・では、失礼します」


 リュートはジェシカの顔を見て正体し深く一礼をした後は、店の出口であるドアを見つめ歩きバーナスとリーナは存在していないかのように振る舞う。


「なんだよリュート。最後の別れに幼馴染の顔すら見てくれないのか?」


「バーナスさん・・」


「いいんだよ、リーナちゃん」


 バーナスの明らかな煽りに乗ることもなく、リュートは傷ついたドアの前で足を止めて俯いたまま振り向き口を開く。


「なぁバーナス・・いや、すまない。バーナスさん、リーナさん・・コレで満足ですか?」


 バーナスはニヤつきながら、リーナの腰に手を回し見せつけ目にするかのようにして口を開く。


「そんな他人行儀じゃなくていいじゃないかリュート。顔を上げてくれよ」


 ゆっくりと顔を上げたリュートの視線が、リーナの腰に回した手を見て僅かに見開いた反応をするリュートの表情にバーナスは優越感を感じほくそ笑む。


「まぁ、今生の別れじゃないんだ・・元気でな」


「ありがとうバーナス。リーナも幸せに・・・・そして、俺は2人を忘れない・・」


 リュートは笑顔で告げて、店のドアを開けてゆっくりと頭を下げながら静かにドアを閉めた。


「「「 ・・・・・・ 」」」


 リュートが静かに立ち去り、店内に残ったバーナスとリーナそしてジェシカの3人は、ソファに座る。


「・・バーナスさん、こんなやり方で良かったのでしょうか?」


 リーナは俯きながら弱々しく呟く。彼女は、最後に見たリュートの笑顔と言葉が脳内に繰り返されていた。


(・・リーナも幸せに・・そして、俺は2人を忘れない・・)


「リーナちゃん、何を今更言っているんだい?もう終わったことだ。これからは、先を将来を見て生きていかないとね?」


「はい・・すいません、バーナスさん」


 リーナはこの日バーナスを選び、この街で拾い救ってくれたリュートを切り捨てたことが人生の最大の失敗だったことに気付くのは、まだ先の未来の土砂降りの空の下でだったことを当然ながら今のリーナは気が付くはずもない。


「さてと・・今日の仕事は終わりね。明日から忙しくなるから頑張るのよ?リーナちゃん」


「は、はい・・」


 商人ギルド長ジェシカが、自宅に帰るためソファから立ち上がった時にソレは前触れもなく突然起きた。



 バギャーン!!


 棚に陳列されていた数百本分のポーション瓶が破裂し砕け飛び散り数百リットル分の液体が3人を無慈悲に覆い被さる。当然ながらまともに反応ができなかった3人は、ずぶ濡れになり溺れるも飛散した瓶の破片だけは3人を避けるように壁や床そして天井に深く食い込んでいたのだった・・。



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