15話 店先の攻防①
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カーン・・カーン・・
街の鐘が鳴り響き、時刻を教えてくれる。
「鐘が6回・・ということは6時なんだ・・」
1人カウンターで店番をしているリーナが呟き上半身を起こす。
「今日もお客さん・・2人だけ・・もっとポーション安くした方が良いのかな?」
カウンターに置いてあるポーション瓶を持ち上げ、窓の先に見えるずっと繁盛している商店を羨ましそうに眺めていると、店のドアが開いた。
カランカラン
「いらっしゃいませ〜!」
店に入って来た人物は、立ち止まりカウンターにいる少女を凝視して口がアウアウしている。
「どうなされましたか?」
コテンと頭を傾け、立ち止まったままの客を不思議そうに見つめるリーナはその後の対応に困ってしまう。
数秒止まっていた客は、自我を取り戻しゴクンと唾を飲み口を開く。
「あの・・ここは、リュートの店ですよね?」
「はい、そうですよ!私は、リュートさんに雇ってもらいました従業員のリーナです」
「従業員?・・・・あ、わたしはリュートと昔からの知り合いのシェルファ。今は冒険者ギルド職員なの」
リュートの店に入って来たのは、金髪碧眼のシェルファで急いで来たのかギルド職員が着る制服のままだった。
「そうですか・・」
シェルファは店に入り店内を見渡しリュートの姿を探すが見当たらない。
「リュートさんなら、外出から戻って来ていませんよ?」
「まだ帰って来てないの?」
「はい・・」
「そう、いつ戻るか言ってなかった?」
「ごめんなさい。行き先も言われずに出て行かれましたので・・」
「そう・・ありがとう、リーナちゃん」
シェルファはそう言い残しながら店から出て行く。その時の表情がどこか悲しそうだったことに気づいたリーナは、シェルファが出た後に念話でリュートに聞いてみる。
『あ、あの・・リュートさん?』
『・・・・ん?』
『お・・女の人が、リュートさんを探しに来ました』
『アンナか?』
『いえ、アンナさんじゃなかったです。ギルドから来た、シェルファって人です』
『あぁ、シェルファか・・まだいる?』
『先ほど帰られました』
『わかったよ。そのまま店番よろしく。閉店時間になったら呼んで』
『わ、わかりました』
念話を終えて、外が暗くなる前に魔法ランプに灯りを灯し閉店時間になるまでリーナは店内をウロウロしたり店から出て繁盛している商店を覗きに行ったりして時間を潰して過ごしていた。
街も夜を迎え暗くなり店の明かりが街の通りを照らす頃に、リュートの店は閉店時間を迎えリーナは1人で閉店準備に入る。
『リュートさん、閉店の時間ですよ』
『リーナによろしく・・』
『そんなぁ・・』
『頼む・・なんか嫌な予感がする』
そのままリュートとの念話が途切れ、何度呼び掛けても反応がないためリーナは諦めて1人で閉店作業をしている。
「もう・・なんなのよ・・」
ブツブツ文句を言いながらも、素直に閉店作業を続け最後にドアに掲げている木の看板を閉店ようの看板に取り替えようとして手を伸ばした時に背後から声をかけられる。
「あの、リュートは帰って来た?」
看板へと伸ばした手を止めて振り向くリーナの視界には、夕方店に来たシェルファが立っていた。
「もう営業時間は終わりました」
「・・うん。それは知ってるわ。その、リュートは帰って来たかなと思って・・」
「うちのリュートは、帰っていません!」
人知れず目の前に立つ美人が同じ日に2度もリュートに会いに来たことに対し、リーナは感情的になりリュートを呼び捨てにしたことに気づいていない。
リーナの突然の大声にスイッチが入ったシェルファの感情も高まり、普段見せない口調で対抗する。
「あなたは、リュートとどういう関係なの?ただの従業員でしょ?なんで彼を呼び捨てなの?どうしてなの?ねぇ?」
続け様に喋るシェルファに圧倒され、涙目になるリーナも負けじと口を開こうとした瞬間に右肩を掴まれ見上げるとリュートが横顔が見え思わず言葉を飲み込んだ。
「シェルファ・・とりあえず入って」
「・・リュート帰ってたんだ」
キッとリーナを睨みつけようと視線をリーナに向けた時には、背中を向け店に入るところだったため空振りに終わり心の中で愚痴をこぼす。
(もう、なんなのよ・・あの女は)
「ほら、突っ立てないで中に入って」
「・・うん」
リュートに促されたシェルファは、頷きながらドアを開けたまま待っているリュートの脇を抜けて店内へと素直に入って行くのだった・・・・。