12話 裏切りの冒険者
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「面倒な依頼だな・・」
リュートは、青年から受けた新たな依頼内容を見てそう呟いていた。
街から北へと続く街道の山道で山賊が出没。ギルドは情報を受けて依頼を出し、Cランク冒険者を討伐のため派遣するが帰還せず。調査のためBランク冒険者パーティーを追加派遣するも帰還する者は皆無だった。
リュートは、依頼票をポケットにしまい込んだ後に、リーナがソファに座る。
「あの・・リュートさん?」
「どした?」
「・・リュートさんは、魔法使えるんですか?」
「魔法?まぁ、元冒険者だったから初級レベルを使えるぞ」
初級レベルと聞いて、リーナは腑に落ちない表情をしている。
「しょ・・初級レベルですか?」
「あぁ、Fランク冒険者だからな」
「そうですか・・初級レベルの魔法なんですね」
昨夜に感じた魔力変化が初級レベルじゃないことは、リーナは理解している。だが、あの現象がリュート本人だという確証を持っていないため追求を諦めることにした。
「よし、今日もお疲れさん・・閉店時間だ」
「は、はい」
2人で店の戸締りを済ませ2階の居住スペースへと移動し、リュートが作る夕食を食べ終えた後はそれぞれの部屋に入り1人の時間を過ごす。
そろそろ寝る時間になったが、リーナは昨夜の魔力変化が気になりなかなか眠気がこない。寝具の上で暗い部屋の天井を静かに見上げていると、隣のリュートの部屋で歩く音が床に伝わる。
(・・リュートさん?)
リュートが部屋を出て階段を降りて行く足音を聞いたリーナは、起き上がり部屋を出てリュートの後を追いかける。
「こんな遅い時間にリュートさん、何処に行くんだろう・・」
裏口から出て行くリュートの後ろ姿を息を殺し、ほんの僅かに開けた裏口のドアの隙間から覗く紅い瞳で捉えていたリュートの姿が通りから突然消えた。
「消えた!ウソ?」
無意識に声を発したリーナは、裏口を思いっきり開けて通りに出てリュートの姿を必死に探すが見つけることができず、怖くなったリーナは裏口を閉め慌てて自分の部屋へと戻り寝具へと倒れ込む。
「・・消えた?・・リュートさんが消えた・・なんで?いったい何者なの?」
そう呟きながら、考えても答えを出せないリーナは重たくなった目蓋を支えきれなくなり目を閉じて眠りについた・・。
「さすがに街の外になると遠いよな・・」
リュートは、隠密スキルで姿を消し街を抜け出した後は、北へと伸びる街道を走る。
「そろそろか」
気配探知スキルを発動し、周囲の状況を確認すると進行方向に複数の人族がいることを捉える。
「あれが派遣されたAランク冒険者パーティーか?」
相手に探知されないよう接近し焚き火を目印に風下側へ移動し会話を聞く。
「まさかギルドが俺達Aランクとお前ら賊と繋がっているとは夢にも思ってないだろうよ」
「がっはっはっはっ!当たり前だ。まぁ、こないだ俺達を討伐に来た冒険者の女達を美味しく頂けたし・・もう使い物にならなくなったし、早く次が来るのが楽しみだ」
「なかなかの上玉だったろ?俺達が選抜したゴミパーティーに居たしな。次も楽しみにしとけ。報酬に見合う女供を揃えておくか・・・・」
「・・コイツら、クズだな」
リュートは、茂みから見える男達に死を贈呈することに決めたようで行動を開始する・・・・。




