1話 はじまりは店の中で
暇つぶしに、読むかな程度でお願いします。そのため、投稿は不定期ですが(笑)
「暇だ!…ヒマ過ぎる」
早朝から郊外のダンジョン探索に向かう冒険者パーティーのために、早起きして店を開けて昼を過ぎたが来店者はゼロだった。
これも全て通りの向かいに新たに開店した、ノルーマンダー商店の影響だと店主リュートはいつも愚痴っている。
開店当初から多くの美人店員が通りで盛大に客引き行為をして、駆け出しの新人からベテラン冒険者達を完膚なきまでに一瞬で虜にして店内へと身体を密着させ連れて行く・・。
その手段に対抗し得るものが無い店主リュートは、自分の店の売り場にソファを置いて、客引き行為をする美人店員をニヤつきながら眺めながら奇声を発する。
「んひぃっ!青髪お姉さん、いいオシリしてんじゃん!」
窓越しから美人店員を眺めイヤラシイ顔つきになるリュートは、これを毎日の大事な日課として楽しみ明日への活力だと自負しているらしい。
今日も大事な日課を楽しんでいたリュートは、陽が沈み始めた頃にいつのまにかソファで爆睡していたのだった。
ガチャッ
まともに接客をする気が無い店主がいる商店のドアが開くと、一般的な冒険者の格好をした銀髪少女が恐る恐る入って来て店内を見渡す。
「こ…こんにちは…」
「………」
銀髪少女の問いかけに対して、店からの反応は当然無かった。
そのまま挙動不審に店に入る銀髪少女は、棚に陳列された商品を見渡し欲しいモノを探す。
「うわぁ〜初めて見るモノばかりだぁ〜」
過去に何度も商店に入ってきた銀髪少女は、この店で初めて見る品揃いに目を輝かせ心の声を漏らしている。
「スゥ〜スゥ〜」
店の奥まで進んでいた銀髪少女の背後から、微かに寝息のような音が、途切れ途切れ聞こえてくる。
「…だれ?」
陳列された商品に夢中になっていた銀髪少女は、改めて店内をゆっくり見渡すと、大きめのソファが視界に入り近寄る。
トコトコトコ…
「あの…誰かいるんですか?」
ソファの背もたれ越しに覗く銀髪少女は、ソファで気持ち良く眠る黒髪少年を見つけ思わず息が詰まる。
「あぅ………」
初めて見る黒髪少年から目が離せなくなり、ゆっくりと黒髪少年を起こさないよう向かい側のソファに自然と座り呟いた。
「…昔どこかで会ったかな…」
そのまま時はゆっくりと流れ、外は暗くなり窓から差し込む月明かりに照らされているリュートを見つめながら銀髪少女は、なぜか店から出ることはなかったのだった。