第3柿 カニが多才すぎんのよ
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たくましく育った柿の木になった果実を採る方法で、カニは頭を悩ませた。
カニも、まさか本当に木が生えるとは
思っていなかったので遊び半分に
近所の公園に種を植えていた。
猿にうまく言いくるめられて、
お昼ご飯のおにぎりと柿の種を
交換してしまったカニだったが
カニ自身も知らなかった植物を
育てる才能が開花してまともに育てたとしても
8年かかる(桃栗三年、柿八年調べ)
と言われる柿を、ものの数時間で
種から木にまで育て上げてしまった。
これには柿農家さんも真っ青である。
しかし、ここで計算外だったのは育った木の高さ。
カニの身長では柿の実がなった木の上まで
全く手が届かない。
カニなので木に登れるはずもなかった。
世界最大の蟹は全長5mを超えるものも
あるそうだが、このカニは高めに見積もっても
身長120㎝ほどしかない。
これでも甲殻類の中では化け物級の大きさである。
カニが困っていると、さっきおにぎり
を交換した猿が再び現れた。
「くっくっく、柿が取れなくて困ってるみたいだな。
じゃあ俺が採ってきてやるよ。」
いけ好かない奴だと思っていたが良いところあるな、
とカニは思った。
しかし、木に登った猿は自分ばかり
柿を食べてカニには柿をよこさない。
柿が食べたいカニは「自分にも採ってくれ」と
爪のハサミでカチカチ音を鳴らせて
モールス信号で伝えた。
「……えっ? ……なにをカチカチやってるんだ……?」
猿はまだウキウキと猿語を話せるが、
カニは声帯がないので声が出せず
爪の音で意思表示するしかなかった。
じゃあなぜカニが猿語を理解できているのか
といえば、それはカニが暇な時間にユーキャンで
勉強して資格を取った猿語検定 準1級のおかげ
に他ならなかった。
それでも、なんとなくカニの
言いたいことを察した猿は
「じゃあこれでもくれてやるよ!!」
と、まだ青く硬い柿をカニめがけて
力いっぱい投げた。
彼は猿だから人間とは比べ物に
ならないほど力が強い。
おまけに、さるカニ合戦の史実
ではカニを殺すほどの勢いで柿を
投げられるのだから物凄い強肩の
持ち主でもある。
柿の時速は170㎞近く出ている豪速球だった。
いくら猿とカニの距離が離れてるとはいえ、
当たり所が悪ければ大ケガでは済まない柿だ。
そして柿は恐ろしい勢いで
カニの頭部めがけて飛んできてしまった……。
バシッッッ!!!!