第23柿 常識人ぽいやつが1番crazyだったりするよね
時間が経つのは早いもので、
明日はクリスマスだった。
どこのおもちゃ屋さんも、今夜子供の
枕元にこっそり置くためのプレゼントを
買い込むお父さんサンタとお母さんサンタの
行列ができていた。
みんな、家族や恋人との幸せなひとときを
楽しみに学校や仕事へ向かったが
この男、臼田には一切予定が入っていなかった。
明日から仙台育米高校も冬休みなので
学生たちは休み時間になると休暇の予定を
立てて盛り上がっていた。
一方、仙台育米の野球部は今後すべての
試合に勝たないと部員は全員退学という
重すぎる罰を背負っていたので、
冬休みも甲子園に向けて練習なのであった。
しかし、今日学校最終日だけは教師陣が
来年に向けた長いミーティングがあり
栗原監督も身動きがとれず部活は休みになった。
誰からもクリスマスパーティに誘われていない
臼田キャプテンは隣のクラスの久美ちゃん
という綺麗め女子の情報収集のために
彼女の住所を知りたかったので、
今日は下校時に後ろからついていくつもりだった。
クリスマスイブの予定はストーキング。
これぞ純愛だ、臼田はただ久美ちゃんのことが
知りたいだけなのだ。
久美ちゃんだけじゃない、この高校の
可愛い女の子の全てが知りたい臼田。
身長、体重、バストのサイズに生理周期。
可愛い女の子の全てが知りたい。
そして一つ一つ証拠付きでファイリングしたい。
教えてくれたっていいじゃないか、
減るもんじゃないんだしが臼田の口グセに
なりつつあった。
そのこともあって学校中の女子から
とても文章にはできないような汚いあだ名を
つけられていることを彼が知るのは
高校の卒業式で自分に向けて書かれた
寄せ書きの名前が変だと気づいた時なのだった。
午前の授業が終わって昼休みに入ると
臼田はいつも通り、窓から隣の校舎にいる
1年の可愛い女の子たちがお弁当を食べるのを
双眼鏡で見ながらお弁当の中身をノートに
まとめ始めた。
「タコさんウィンナー3つに、
チキンカツとタルタルソースか…。
さやかちゃんは少し脂をとりすぎだな。」
教室の窓際でノートにまとめていると
別のクラスの野球部が臼田と話すために
クラスまでやってきていた。
「ウキウキキウキ？(おい、ストーカー。
今日カニの家でクリスマスパーティやるらしい
けど、お前行くのか？)」
来ていたのは猿だった。
臼田は猿語が理解できるため、
望遠鏡から目を離さず猿に返事した。
「いや、行かない。今日はまっすぐ
家に帰って素振りを1000回やる予定だ。
俺たちは試合に負けれないんだ、
パーティやる暇なんてないんじゃないか。」
まあ、まっすぐ家には行くだろうけど
行き先は自分の家ではなく久美ちゃんの家だ。
「あっそ。俺も行かねーつもりだったけど
今日はカレーを作るらしいからな。
動物だけじゃスーパー入れないから
俺にとっちゃカレーのルーは贅沢品だぜ。」
そう言い残すと猿はそそくさと自分の
クラスの友だちグループと合流して学校の
購買へジュースを買いに行ってしまった。
相変わらず、どうやったら猿があんなに
クラスに馴染むんだよと臼田は謎だったが、
今はそんなことより女の子たちのお弁当を
まとめなければならない。集中集中。
