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第21柿 監督の切り替えの早さは一周まわって尊敬できるレベル




季節は12月になり、吐き出す息は白く

風は肌がヒリヒリするほど

冷たかった。



今日はいよいよ2度目の練習試合。



負ければ野球部に関わる全員が

断頭台に上ることになる。





しかし、この前の違って臼田キャプテンだけで

なく、栗原監督や猿の目にも闘志が宿っていた。





カニも殺処分されるわけにはいかないと

気合のハチマキをしていた。


ハチマキには下手くそな油性ペンで

「支離滅裂」

と書かれている。


カニは最近習った四字熟語の中で

一番強そうなやつを書いてみたのだった。





栗原監督はマンション経営の夢を追いかけ、

猿は子作りしたさで野球に熱が入っていた。





「よし、集合!」





栗原監督が部員を集めた。

今回の練習相手は明電高校という、

またしても甲子園常連校だった。




臼田はこんな弱小校が

なぜこんなに強豪校たちに

かまってもらえるのか不思議で仕方なかった。





「 今日の相手も甲子園常連校だ。

生徒会長が直々に明電高校との練習試合を

セッティングしてくれた。


言わんでも分かると思うが、

生徒会長はこの練習試合で負けさせて

俺たちを地獄送りにするつもりらしい。」



なるほど、と臼田も納得。






自分がセッティングした試合を

生徒会長の蜂子も見に来ていた。



蜂子自身も野球をちゃんと見るのは

初めてで片手には野球のルールブックを持っている。

観戦するからにはしっかり理解したいタイプで

根が真面目なのだ。




何を着ていけばいいか分からず

蜂子は近所のユニクロになぜか売っていた

阪神タイガースのハッピを着てきていた。




「あなたたち!負けたら約束通り

ですから、忘れないように!!」




仙台育米が初めて女子から受けた声援?だった。

辛辣な初手である。




猿はその場でとんでもない顔で蜂子をにらんで

中指を立てて応戦した。





その後、お互い相手チームの監督に

挨拶へ行った。明電高校の監督は

初老の少し太った男性だった。




「「「よろしくお願いしまーす!」」」


「おい、猿がいるぞ!

うわあ!あとカニみたいなやつも!」




それはもうわかったから。



栗原監督の方は、なんの話を明電野球部に

したのか遠くて聞こえないが


あんなにギラギラとしていた部員たちが

栗原の話を聞いて感動の涙を

流してるのが見えた。




いよいよ栗原監督が何を話してるのか

知りたいカニだった。






ピーーーーッ!!

「プレイボーイ!」





仙台育米は守備からのスタートだ。



ピッチャーの猿は昨日、みんなに

抜けたことを謝って再入部するつもり

だったが、そもそも猿語がわからない

みんなは猿がウキウキ行って部屋から

出ていったことしか分かっていなかったので


単に疲れて帰ったのだと思っており、

猿が部室に来たら普段通り練習していた。



マウントに立った猿はゆっくりと目を閉じた。



(………猿美ちゃんと子どもを作る、

………というか子ども作りがしたい、

そのためにプロになるんだ………)





明電の先頭バッターがバットを構えた。




猿は握ったボールを、

めちゃくちゃなフォームで力いっぱい

キャッチャーのカニめがけて投げた。




ズドンッッッ!!!!




「ッッッストラーーーイック!!」




球速171kwの豪速球。

明電高校のスタメンとはいえ、

もはや目でも追えない速さだ。




プロですら打ち返すのは難しいのだから

無理もない。



キャッチャーが人間離れした瞬発力を持つ

カニで無ければキャッチすら難しいんだから。





「え、はっや…。高校野球って

あんなに速い球でやるんだ…。」



初めて生で見る野球がイレギュラーすぎた

蜂子は、メジャーリーグ級のピッチングを

高校野球の普通と勘違いしてしまった。




結局、明電高校は三振を3回取られて

仙台育米と攻守交代。




「いや、そんなんズルだろ…。」



明電高校の監督はもう常識的に考えて

どこをツッコめばいいのか分からなかった。



しかし、仙台育米は打線に問題がある。

前回の大阪桐陰との練習試合でも

とにかく打ち返せず、猿のメンタルが

揺らいだことでバカスカ打たれまくり

負けたのだ。



いくらピッチャーが強くても、

点が取れなければ野球は勝つことはできない。



攻撃は1番打者のカニからスタート。



瞬発力には定評があるが、

バッティングはそんなにだ。


そして、1番の弱点は…。




「ストライーク!

バッターアウト!!」



カーブを投げれる人が部活にいないせいで

カーブを打ち返さないことだった。



明電高のピッチャーはカーブが強みのようだ。



つづく2番の臼田キャプテンも

別に甲子園レベルの人ではないので

甲子園レベルのピッチャーに完封三振された。




「あーあ、ダメだわ。転職先探さないとな。

時給良さそうだしキャバクラで

ボーイでもやるか。」


栗原監督は負けて教師をクビになったときの

ためにスマホから転職サイトに登録をし始めた。




3番 ウシノ・ウンチッチ




留学生か、と明電ピッチャーは思った。

少しパワーがあるかもなと思いつつ

まずはカーブを投げて様子を見てみた。






パキーーーーンッッッ!!!





ウンチッチのスイングでボールは

明電センターの上空を突き抜けて冬空に刺さり

そのままグラウンドの外、奥にあった

テニスコートまで吹っ飛んでいった。




「….え?」





こいつ、助っ人外国人枠だったのかよ。


グラウンドにいたみんなが同じ感想を思った。





栗原監督だけは転職サイトに登録する

メールアドレスを入力していたので

気づいていなかった。




「なんでメアド再入力の欄はコピペ

使えないんだよ、めんどくさいわ。」













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