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第19柿 エロは世界を変える



小屋に帰った猿は夜ご飯の木の実も食べ終わり、

小屋でゴロゴロしながらMr.Childrenの

HANABIをウォークマンで聴いていた。


(何度聞いても飽きん、曲作ったやつの

顔が見てみたいぐらいだ)


HANABIの切ない曲調でちょっと感傷的な

気持ちになった猿はこれまでのことを

考えてみた。


野球。嫌いではなかったけど、

命賭けるレベルじゃなかった。


野球部員たちは暑苦しいやつらだけど、

駄菓子屋Los Angelesでダラダラ

喋る時間は嫌いじゃなかった。


栗原監督は一度、ちゃんとした精神科か

脳外科の医者に診てもらったほうがいいな。


生徒会長の蜂子は、死ね!!

動物愛護団体と正面衝突しろ。



カニは………。



部活終わりの下校時に学校から山まで

一緒に帰ることが多かった猿とカニ。


基本的に無言で帰るか、猿が猿美ちゃんの

体の好きな部分を、なぜ好きなのかカニに

説明しながら帰ることがほとんどだったが


少しだけお互いのことも話したりしていた。


そのとき、カニはカチカチと爪で

モールス信号を出してサルに話していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねえ、野球でプロっていうのになると

ものすごいたくさんのお金が

もらえるらしいよ。」(モールス信号)


「お金よりバナナがたくさん

の方が絶対いいだろ!」


「猿はそうかもね〜。私はお金がたくさん

あれば子ガニを大学まで行かせてあげれる

のになって考えちゃうかな。」


「その、ダイガクってのは

そんなにお金がかかるのかよ。」


もちろん、猿はサルなので人間の

学校制度やそこにかかる費用の多さなんて

知るよしもなかった。


「調べたら、私じゃあの子食べさせながら

だと稼げないくらいだったよ。」


「ふーん、バナナ何本分くらいなんだ?」


「え〜、どうだろ。4万本くらい!」


「バカだなあ、お前!地球にそんなたくさん

バナナがあるわけねーじゃん!

あっても400本くらいだぜ。」


猿は高校でも数学が大の苦手で

いつも赤点再テストを受けていた。

しかし、なぜかやたら高い感受性で

ノー勉でも国語は平均ちょい上だった。


「そっかぁ。そうだよねえ。」


カニも世界中のバナナの数は

よく分からなかった。


「プロか…。どーやったら、そのプロって

やつになれるんだよ。」


猿はなんとなく聞いてみた。


「私たちの部活が甲子園っていうのに出たら

チャンスはあるかもって監督言ってたよ。」


「言ってるのがあいつって聞くと

不思議と全部ウソに聞こえるな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カニも、最初は騙してオニギリ取って

柿まで奪ってやったけど、話してみると

なんか色々大変なやつだったなと


猿はほんの少しだけカニと初めて会った

自分を悪く思った。


そこでウォークマンの充電が切れた。

クソ、365日も聴きたいのに。


猿はMr.Children無しではやっていけない

体になっていた。彼らの歌は

猿の言葉にならない気持ちを代弁

しているように感じるのだ。


猿はウォークマンの充電器を持って

山のふもとになぜか2つだけあるコンセント

に向かって小屋を出た。


もう11月の暮れで、服を着ない(猿だから)猿は

気温の寒さに首をすくめながら

山のふもとへ急いだ。


ふもとのコンセントにつくと先客がいた。

あの真っ赤で目が回るようなセクシー尻は

猿美しかありえない。


猿は前髪を整えてから話しかけた。


「あ、猿美ちゃんじゃ〜ん。チーッス!w

何してるの?w」


「うわ、猿かよ。別に、なにもしてないけど。」


猿美ちゃんはどこか元気がなかった。


「あれ?なんか元気なくない??ww

もしかして猿造にフラれたとかw

なんちってーww」


「!!

うるさい!!!!」


「え…、ごめんなさい…。」


どうやら図星をついてしまったようだ。

猿は猿美ちゃんの前だと舞い上がってしまう

自分が恥ずかしくなった。


猿美ちゃんは少し泣いている。


「………。」


「………。」


沈黙が重すぎるが、猿には

雰囲気を変えるアイデアも勇気もなかった。


「猿、あんた野球とかいうのやってるんでしょ?」


気まずい沈黙を猿美ちゃんが破って

助かった猿だった。


「あ、うん、やってるw」


でも、もうやってないか、と猿は思った。


「お金とかもらえんの?」


お金…。あ、プロの話があったな。


「なんかプロってのになったらめっちゃ

もらえるらしいww

バナナ4万本くらい!w」


「え!バナナ4万本!?

そんなに地球にあるの!?」


「うんw

てか、最終的には

俺がバナナになるしw」


初めて猿美ちゃんが自分の話に

食いついてくれた嬉しさのあまりに

意味の分からない嘘で話を広げようとする

中学生みたいな猿。


「そーなんだ…。ねえ、猿。

あんたがその野球のプロになるなら

あたし、あんたと子ども作ってもいいよ。」


「え!?ほんとに!?


え!?それ、ほんとに!?」


「うん。」


「俺、がんばるよ!!!

絶対プロになるから!!!」


こうしてはいられない。猿はウォークマンを

充電しに来たのも忘れて急いで小屋の方へ

飛んでいった。


「これでバナナだけゲット。」


猿美はヒエラルキーのトップ女みたいな奴だった。


猿は小屋に戻りながら、明日みんなに

なんて言って部活に戻るか考えるの1割

猿美との子どもを作ることを考えるの99割で

夜の森を駆け抜けていった。







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