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第18柿 コールミーウンチッチ




静まり返る部室。


これからの試合に一度も負けないと

生徒会長に啖呵をきって、なんとか廃部は

免れた野球部だったが代償として

一度でも試合に負ければ、


栗原監督は教師を解雇され、

部員たちは退学となり、

猿とカニにいたっては殺処分に

なることが決まっていた。


みんな、部室の掃除中だったが

もうそれどころではなくなっていた。

栗原監督は半分心神喪失状態で

手元にあるペットボトルのゴミや

ワンピースの12巻をわけもなく持ち上げたり

ゆっくり地面に置いたりしていた。


カニも今回ばかりは困った。

子ガニもまだ小さいし親戚も他にいないので

今死ぬわけにはいかない…。


猿はショックを隠せないでいた。

まだ猿美ちゃんと子供作ってないのに…。


部員たちも落胆する中、臼田キャプテンだけは

まだ希望を捨てていなかった。さすがは

チームの長である。


「決まったことは仕方がない。これからは

一つ一つの試合に文字通り、命を賭けよう。

俺たちなら必ず仙台育米を野球の名門に

戻せるはずだ!」


それを聞いた猿は力なく反論した。


「ウキウキキウキ…

(いや、お前はまだ退学で済むから

いいけど、こちとらまじで

命賭けなんですけど…)」


カニはうつむくだけだった。


「センパイたち!ヤキューブ、ヤリマショ!」


日本語でのやりとりをまだ2割程度しか

理解できなかったウシノ・ウンチッチは

とりあえず自分が臼田から勧誘された

ヤキューブでみんなと仲良くなり

1日でも早く日本に馴染もうとしていた。


「もうやってらんね、俺抜けるわ。」


元々野球をする動機もなかった猿は

荷物をまとめるとそのまま部室を

出て行ってしまった。


「おい!待てよ!」


それを見ていた臼田は

栗原監督の方へ向き直った。


「監督!時間がありません!

俺たちだけでも練習を始めましょう!!」


「えっと…、あ!ごめん、俺今日

歯医者さんの予約入れてたんだわ。

時間がギリギリだからそろそろ帰らないと…。」


「監督!!健康だけが取り柄だって

言ってたじゃないですか!!」


「ばか、俺の取り柄は定期検診による

予防で支えられた健康なんだよ。

それじゃ歯医者さん行くわ。2〜3日かかる

かもだから練習試合行けないかも!w」


そう言い残すと栗原監督はロッカーに

保管していたお気に入りのエロDVDを

その辺に落ちてたビニール袋に入れて

そそくさと帰ってしまった。


「2〜3日かかる歯の定期検診って

なんなんですか…。」


呆然と立ち尽くす臼田と野球部員たち。

カニもそろそろ夕飯の支度があるとのことで

キリのいいところで帰っていった。


結局、部員は臼田以外みんな帰り

これでおそらく最後になる部室の掃除を

臼田と特に用事もないので残っていた

ウンチッチの2人で無言のまま続けていた。


「ところでさ、ウンチッチ。君は何か

趣味とかあるの?」


ついに無言に耐えかねなくなった臼田は

訳もわからず誘ってしまったウンチッチに

申し訳なく思いながら雑談をふってみた。


「シュミ?」


「好きなこととか、やってて楽しいことだよ。」


「アー!ニホンに来る前、クリケットやってたデス!」


クリケットは日本だとマイナースポーツだが

世界的に見れば人口の多いスポーツだ。


「クリケットかー。日本だとあんまり聞かない

スポーツだよなあ。」


「ソデスネ、デモ、ケガでクリケットやめました。」


「そうなんだ、日本に来る前は結構

クリケットやってたの?」


「ハイ!ワールドカップに何度もデマシタ!」


ははは、と臼田は笑った。

どうやらウンチッチはクリケットのW杯を

見に行ったと言いたいようだ。


「ワールドカップ見に行ったんだね〜。」


「ハイ!ポイントいっぱいトリマシタ!」


ポイントをとった…?

何の話だ…。


「ポイント取ったって…。試合出てる

選手に感情移入しすぎだろ…。」


「イエ!ボク、クリケットワールドカップの

代表でした!」




「………え?」















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