第16柿 小柄でおっぱいが大きいからって調子に乗るなよ!
仙台育米生徒会長の蜂子と野球部がぶつかるまで
にそう時間はかからなかった。
その日は、部室の大掃除の日だった。
「いいかーみんな。日頃から部室を清潔にしておくことが野球プレイヤーとしての基本だ。
大掃除なんてしなくてもいいようにこれからは整理していけよ。
それと一番右上のロッカーは俺のアダルトビデオが、いくつか保管されているから触らないように。
それじゃあ大掃除、始め!!!」
栗原監督の号令でみんな一斉に掃除に取り掛かった。
日頃から、あまり掃除をしておらず散らかった部室は
部員と監督の9人で掃除してもなかなか片付かない
レベルだ。
猿も自分の使っているロッカーを整理し始めた。
改めて見ると、なぜロッカーに入っているのか
分からないものばかりあった。
誰かの壊れたグローブ、飲み終わったスポーツ
ドリンクのペットボトル、学校で配られた書類、
使いかけの食べるラー油、ガッキーの切り抜き写真。
全部いらないものである。
ガッキーの写真以外をすべてごみ袋に詰めると
猿はガッキーの写真を、再びロッカーの奥底へと
大事そうにしまった。
カニは日頃から身の回りは整理していたので
今回は床を雑巾で水拭きしていた。
カニが床を拭いていると、なかなか取れないシミを
見つけた。赤黒い色をした何かの跡だ。
栗原監督に何の跡か尋ねると
「あー、野球部がこの部室を使う前は不良のたまり場になっていて、しょっちゅう誰かがここで殴られてましたからねぇ……。」
(聞かなきゃよかった……)
臼田くんのロッカーには、なぜかアルバムが 数冊入っており中を確認すると、どうやって取ったのか 学校やプライベートでの女子生徒の写真がびっしりと入っていた。
「大丈夫だ、ちゃんと彼女たちに写真を撮ってもいいと許可をもらっている。」
写真を確認しながらカニは思った。
(着替えてる姿を窓の外から撮影する許可を……?)
部員Aはロッカーをもらえていなくて、
いつも地べたに荷物を置いていた。
「あ、いいんだ。俺は別にロッカーなくても。なんでかずっとロッカーもらえてないけど。」
そうこうして大掃除を進めていると突然、
部室のドアが激しくノックされた。
「お、入部希望者か?」
楽観的な栗原監督がドアを開けると、身長155㎝ほどの小柄な女子生徒が立っていた。
小柄な割にはおっぱいが大きい黒髪ボブヘアの女子高生。おしとやかそうな見た目だったが、我の強さが眼力で分かった。
「入部希望者じゃないな、どなたですか?」
監督が尋ねると女子生徒が口を開いた。
「私は仙台育米高校の生徒会長、蜂子です。今日は野球部の皆さんの部室が移動になることを伝えに来ました。」
「え、監督! そんなこと聞いてないですよ!」
部員たちが騒ぎ始めた。
「俺も知らなかった。どこに移動になるんですか?」
「高校の裏にある野外男子トイレです。」
「ウッキキー!(ふざけんなタコ!)」
「生徒会長、それはあまりにひどいんじゃないですか?」
「あら、臼田くん。そういえばあなた野球部だったわね。でも、もう生徒会で決まったことよ。弱い部活に用はないわ。」
どうやら野球部が高校再建に使えないと分かった
ので、別のものに新しく希望をかけるべく今の
野球部が持つ権利を奪おうという魂胆のようだ。
「待ってください。まだ練習試合に一回負けただけじゃないですか。」
「「「そうだそうだー!」」」
「一回だって負けないように、仙台育米は人間以外の生き物の入学を許したんですよ? それなのに人間相手に負けているようでは、もう話になりません。」
主人公の人間に負けた怪獣チームのような説教
のされ方をする野球部なのであった。
栗原監督が蜂子に反論した。
「あれはまだ試合の調整をしただけです。次回からは一度だって負けはしません。もう一度だけ我々にチャンスをください。」
「でも先生、野球部は確か人数が足りませんでしたよね?」
「……その問題も先ほど実は解決したんです。俺の甥が仙台育米にいましてね、彼が明日入部しますから。」
「そうだったんですか、栗原先生がそこまでおっしゃるなら明日まで待ちましょう。でも、明日部室にまた来た時に部員がそろっていないようでしたら野外男子トイレに移ってもらいますから。」
そう言い残すと蜂子は帰っていった。
臼田くんをはじめ、野球部メンバーは歓喜した。
「監督! 本当はもう新しいメンバー見つけてたんですね!」
「ウキキウ(さすが監督)。」
「イヨッ!この熟女好き!!」
しかし、監督の表情は暗かった。
「いや、見つけとらん……。あれ全部でまかせ……。」
「え……。明日、生徒会長が確認に来ちゃいますよ……。」
「うん……。どうしよう……。」
「「「…………。」」」




