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第15柿 とばっちり野球部と臼田の闇




仙台育米が大阪桐陰に負けた次の日から野球部の

立場は高校内で、やたらと悪くなってしまっていた。


それはそうである。


何としても野球部が勝つために高校全体で猿とカニが

高校に通う不自然に目をつぶってきたのだ。



じつは仙台育米高校は、来年で廃校の危機にあった。



理由は極度な女子生徒の減少のせいである。


生徒が減った原因は間違いなく、

女子生徒がラムちゃんみたいな制服を

着せられるからだった。水着並みの守備範囲しかない

その制服はPTAからも大バッシングを受けている。


それでも仙台育米の理事長は断固として女子生徒の

制服を変更しなかった筋金(すじがね)入りの変態である。


仙台育米は私立高校なので入学者が減れば、お金

が回らなくなり学校をつぶすしかない。

何度も職員会議や代表者会議を行い、廃校回避の案

を出し合ったが結局はラムちゃん制服をやめること

に尽きるのだった。


役員が何度お願いしても変態理事長

は制服を変更せず、ついに

これ以上生徒が集まらなければ

来年で廃校という状況にまで仙台育米

は来た。


この危機を乗り越えれるとしたら、それは昔

高校野球で全国に名を馳せた野球部が再び甲子園

に出て、全国の中学生にもう一度仙台育米を知って

もらうしかない、と学校側は野球部に最後の望みを

託していた。



そんな中、栗原監督がスカウトしてきたのが

猿とカニである。



監督の言い分は

「野球のルールに猿やカニをチームにいれては

いけない、なんて書いてないですから。」

だった。


理事長や学校側も最初は困惑したが、

背に腹は代えられず栗原監督と野球部

を信じて、猿とカニの入学を認めたのだ。


しかし、(ふた)を開けてみれば最初に練習試合も

0-8で負けてしまっている。相手がいくら

強かったとはいえ、猿やカニをチームにいれた

んだからこんな惨敗は許されるはずもなかった。


仙台育米の廃校の可能性は高まり、

学校の野球部に対する風当たりは強かった。


授業中の猿やカニもその被害にあっていた。


数学の授業中。


「よし、この問題解けるやつはいるか?

というか散々教えたんだから解けなかった奴は廊下に立たせるからな。よし、鈴木。この問題の答えを言ってみろ。」


「はい、N(n-1)分の4です!」


「全く違う。答えは10だ。解けなかった罰として鈴木と野球部は廊下に立ってろ。」


「……ウキ?(え?)」


飛んだとばっちりである。

しかし高校では、こんな具合に野球部差別が行われていた。



「全く、こんなんやってらんないよなぁ。」


「仕方ないよ、野球部が廃校を救うって期待されてたらしいから」(モールス)


廊下に立たされながら猿とカニは愚痴っていた。

横で聞いていた鈴木がそれをたしなめた。


「君たち、私語は(つつし)んで立つことに集中したまえ!」


「うるせー馬鹿! お前が間違えたせいで俺たちまで立たされてんだろーが!!」


「まあまあ」(モールス)


「なにをウキウキ言っているんだ。」


猿語が分からない鈴木には猿が怒っていることしか

伝わらなかったようだった。



そんな学校での居心地の悪さに負けて、部員Bが

野球部を抜けると言い出した。


「ごめん、みんな。僕はもう野球したくないよ。しかも、僕は話に出てきても見せ場少ないし……。」


「ウキキ(こいつ誰だっけ)……。」


「覚えてあげなよ名前くらい……」(モールス)


「でも、お前が辞めたら人数が足らなくなって俺たち野球が続けられないぞ!」


臼田くんが引き止めたが、結局部員Bは

やめてしまうのであった。


これまで、ギリギリを保ってきたが、ついに

試合ができない人数にまで部員が減ってしまった。


部員Bが辞めた次の日、午後の練習の後で

野球部たちはLos Angel(ロサンゼルス)esに寄って今後について

話し合った。カニは家事があるので先に帰っていた。


「ウキ(あたった)。」


猿は買った10円ガムが当たっていた。


「最近、学校での野球部の立場どんどん悪くなってるなあ……。」


部員Aが愚痴をこぼす。


「やばいなー、俺も高校をクビになりかねないわ。お、臼田何買ったん?」


監督もしっかりLos Angelesについてきていた。


「本当ですね、試合ができないとなれば甲子園以前の問題ですよ。ブラックサンダー買いました。監督はいつもビックリマンチョコですね。」


「このウエハースがまじで好きなんだわ。」


「なんかウワサで聞いたけど、うちらの生徒会長が俺たちに部費を出さないようにして野球部をつぶそうとしてるらしいぜ。」


部員Aが学校で聞いたウワサをメンバーにも話した。


「ウキキウキ(生徒会長)?」


「いや、猿くん。俺も生徒会長が誰か覚えてないんだよ。」


部員Aは、猿語が理解できる数少ない人間だった。


「生徒会長ってどんな人だっけ……。」


部員のほとんどは生徒会長をちゃんと覚えていなかった。


「臼田、お前そういえば生徒会で書記やってたよな? 生徒会長知ってる?」


「監督も知らないんですか。俺も詳しくは知らないですけど、生徒会長は蜂子という高校2年の女子です。血液型はB型で、祖父は仙台育米高の理事長。身長155㎝、体重42㎏。顔は可愛い系で、性格はわがままなタイプ。胸のカップ数はEカップ、大きいですよね。高校の近くに住んでいて、今のところ彼氏はいません。好きな男性のタイプは分かりませんが、嵐の二宮君の写真集を買っていました。彼女の生理は毎月25日付近で来てるみたいです。」



野球部はみんな、言葉には出さなかったが

すごく臼田が怖かった。



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