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第13柿 ゴリラ味の敗北




仙台育米と大阪桐陰の練習試合は

結局、0対8で大阪桐陰の圧勝に終わった。



ゴリラ松井の打撃から、猿のメンタルが崩れ

投げ損じた球を他の部員にも打たれるようになり

ゴリラ松井の番が来るたびに塁に出ていた選手達は

ホームベースに戻っていた。


大阪桐陰がヒットを出せば、守備も大してうまくない

仙台育米がまともに守ることはできなかった。


カニも試合中にカーブを克服することは、ついにできなかった。



猿は練習で自分の球が打たれたことがなく

精神面でのトレーニングも全くしていなかったため

一度打たれてからは焦りで普段の力すら出せずにいた。



試合が終わって挨拶を済ますと12時に今日の練習

を切り上げる大阪桐陰は片づけを始めた。


コテンパンに負けて意気消沈してしまった

仙台育米野球部は誰もしゃべりだすことなく

相手チームの監督に挨拶を済ませて

黙々と片づけを始めた。



片づけを終えて両チームがグラウンド

を整備している中、一匹ベンチにへたり込む猿だった。



(猿美ちゃんにカッコ悪いとこみせちゃったな)


(これも全部、馬鹿カニのせいだ。あいつがミットを変なところに構えるから……)



スポーツマンの精神をまだ持っていない猿は

敗因が自分の投球だとは考えられなかったのだ。



そこへグラウンド整備を終えたゴリラ松井

が近づいてきてさらに話しかけた。


「お前はグラウンド整備しないのか。」


「なんだお前、猿語話せんのかよ。」


「いろいろあってな。猿、野球の準備や片付けも練習の内だ。」


「俺には必要ないね。てめーだって俺の本気の球なら打てなかったぜ。」


「そうかもな。でも、お前が野球を甘く見ている限り

俺は何度でもお前の球を打つぞ。」


「あっそ。もうどっか行けよ。」


「1つ1つを大切にするんだ、猿。筋は悪くないぜ。」


野球素人の猿とは違い、プロ野球界からも声

をかけられているゴリラ松井は精神面でも

猿を凌駕していたが、猿は気づいていなかった。


ただただ、イライラが(つの)る猿。



そのまま大阪桐陰高校野球部は帰っていった。



「今回はひどい試合だったな。

でもいい経験にもなったはずだ。


あれが全国のレベルなんだ。

お前らはこれから甲子園を目指すうえで

今日の敗北を糧にしていくことができる。


強いチームと当たってラッキーだったな。」



栗原監督は野球に対してはまじめな男なのかも

しれないとときどき思う部員たちだった。



「はい! 今日の試合で自分たちに足らないものが

見えてきた気がします! 自分もキャプテンとして

しっかりメンバーを引っ張っていきたいと思えました。」



「いいねえ臼田。さすがキャプテンだ。

みんなも明日から気を取り直して頑張るぞ。

よーし、帰りにLos Angeles寄ろうぜ。臼田のおごりでw」


「……嫌ですよ監督。」



監督は臼田を何だと思っているんだ

と、カニは不安に思った。


今日の敗北でカニもいろいろなことを学んでいた。


ピッチャーの中には球を曲げるやつがいること。

塁からリードしすぎるとアウトにされること。

ゴリラみたいなやつがいること。


初歩的なことだが、カニはそういった

初歩的なところも着実に埋めていく

タイプの選手だった。

明日からまた練習を頑張ろう。



「「「ありがとうございました!!!」」」


最後は全員でグラウンドに挨拶をすると

各自家に帰っていった。


外でやる運動部を経験したことがない人は

あまり知らないかもしれないが、グラウンドを

使い終わったらグラウンドに向かって挨拶をするのが

運動部の常識だったりする。



敗北に納得のいかない猿は他の部員が

片づけをしているうちにもう帰ってしまっていた。



(あのゴリラが規格外なだけだろ……、次は勝てるに決まってる。)



猿は帰り道に、住んでる山のふもと

で他の猿と話す猿美ちゃんを見つけた。




「あ! 猿美ちゃんだ! 猿美ちゃ~ん!!」








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