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第11柿 習ってないことはできないさ



バシッ!




「ッッストラーーーーイクゥッ!!!

バッッッターーーアウトォッ!!!」



主審・モンゴメリ伯爵の声がグラウンド中

に響く。昔からモンゴメリは大きい声を出す

のが大好きだった。



「ウッキキウキーーー!(何してんだ打てよ!)」


ヤジを飛ばす猿。




打ってこないのか、と大阪桐陰

は拍子抜けした。


プロ以上の球を投げる投手がいるから

てっきりバッターも鬼ぞろいだと

思った。ましてや、猿に加えて

カニである。人間のチームに

入ってプレイしてるくらいだ。


どう考えてもこの2匹は強い選手だろう。


しかし、なぜかカニは打ってこなかった

ので仙台育米高の打者たちの実力は

依然として大阪桐陰には謎だった。


「あ~、カーブかぁ…。」


栗原監督がつぶやいた。


相手のピッチャーは3球とも、切れのいいカーブを投げていた。


さて、3球とも見送って打たなかった

カニだが、じつは打たなかったのでは

なく打てなかったのだ。


なぜならば、弱小仙台育米にはカーブ

や変化球を投げられるピッチャーなんて

いるはずもなく、猿がピッチングをする

ときカニ以外では捕手が務まらないので


カニのバッティング練習の時は、

昔ピッチャーをしていた栗原監督が

速いとも遅いとも言えない微妙な

ストレートを投げていたからだ。


つまり、カニは今さっき生まれて初めて

変化球なるものを見たのである。


そもそもカニは仙台育米に来るまで

野球という言葉すら知らなかったので

仕方ない。許してやってほしい。






(なんか……球が曲がった気がする……)


カニはなにが起こったのか、まだよく

わかっておらずベンチの戻ってから

栗原監督に変化球の説明を受けた。


そんなことできるのかとカニは

その時すごく驚いたのだという。



続くバッター臼田くんも三振。


部員Aもそのまま三振して攻守交替。


相手ピッチャーは強豪校のエースである。

そんなにうまくもない野球部員じゃ打てる

はずもない。


むしろ地方弱小からしたら、これこそ

普通の結果である。



しかし、次の守備で猿がまた全て

三振を取り返した。これでは

ピッチャー同士の試合である。



仙台育米の4番打者の部員Bも

三振を取られ、次は猿の番だった。




「お猿さん!ガツンと一発お願いしますよ!」


「ウキウキ(ほいほい)。」



栗原監督が猿を鼓舞(こぶ)した。


猿がバッターボックスに立って構えると

ピッチャーがまたカーブを投げてきた。

猿の打率はあまりよくなかったが

それでも思いっきりバットを振ってみた。


バットを振る瞬間、遠くの木から退屈そうに

試合を見る猿美ちゃんを猿は見つけた。


(あ!猿美ちゃ~ん!)


猿の手元が緩んだおかげで奇跡的

にバットがボールに当たった。


当たりは悪くボールはピッチャーの

足元へゴロゴロ転がっていった。


普通なら即アウトにされるようなボール

だったが、猿美ちゃんにカッコつけたい

猿は物凄い速さで走り、ついに一塁へとついた。



「「おお!!やったぞあいつ!!!」」



仙台育米のベンチが沸いた。

試合ではじめて塁に出たのだ。


大阪桐陰は打者はたいしたことない

と見抜き、冷静さを保っていた。


次の打者がバットを構える中、

猿は監督や臼田くんに習った

ことを思い出した。


野球では、(るい)に出たら次のバッターが

打つまでにその塁を出て、次の塁に

近づくリードが許されていると聞いた

気がする。これは使わない手はないな。


猿は一塁から二塁の隣までリード

を取ってみた。



「ウキーウキー(リーリーリー)!!」



そしてリードしているのがピッチャー

にばれて、猿はそのままアウトに

されるのであった。



「なにしとんだあいつは…。」


みんながそう思った。



結局、次の打者も三振して

戦いはもう泥仕合になっていった。




猿美ちゃんは5秒ほど試合を見たのちに

山へと帰っていったが猿は気づいていなかった。











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