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第10柿 野球のルールに猿やカニをチームにいれてはいけないとは書いてないもん



秋から冬になっていくことが手に取るように分かる

ような凛と冷えた朝に練習試合は始まった。



朝9時30分 試合開始 


先攻は大阪桐陰。


守備は仙台育米。



背番号5番 ピッチャー、猿


1番 キャッチャー、カニ


2番 ショート、臼田くん


3番 センター、部員A


4番 レフト、部員B


その他のポジション、その他の部員たち




相手校の一番打者はファーストを守る玉舐(たまなめ)


仙台育米にとっては初試合の記念すべき1球目。


玉舐がバッターボックスで構えた。

仙台育米が地方の弱小高校だと

知っている玉舐や大阪桐陰チーム

は練習相手にもならないと

思っており草野球感覚でいた。


猿にピッチャーを任せるなんてどうかしてる。

よし、しょっぱなからランニングホームラン

狙いで大きくカッ飛ばしてやろう。


それが玉舐の作戦だった。


カニがキャッチャーミットを構えると

猿も球を構えて、ハチャメチャな

投球フォームで思いっきり球を投げた。





ズドンッッッ!!!




「ッッストラーーーーイクゥッ!!!」




それは一瞬の出来事だった。



まるで銃弾のような速さで投げられた

球は、すでにカニのグローブの中に

しっかりと納まっていた。


驚いた大阪桐陰の選手が一斉に立ち上がる。


栗原監督がほくそ笑む。


玉舐の背中に冷や汗が流れる。



(なんだ今の球は……。高校球児のソレじゃないぞ……。)



いま猿が投げた球の時速は179㎞。


実は、これは人間が投げていたら

プロの世界記録177㎞を更新する球速である。


高校野球の歴代最高球速は155㎞。

140㎞の球を投げる選手でも高校生に

しては早い方。


猿の投球は、もう格が違うのである。


プロでも打てるか怪しい。

もちろん、油断している高校生では

絶対に打ち返すことのできないものだ。


というか本来、地球上の人間は

誰一人投げれないような球だが

投げているのは猿なので、

なんの問題もないのである。




結局、玉舐はスリーストライク

を取られてバッターチェンジ。



続く打者も全員猿の球を打ち返す

ことができず、攻守交代となり

仙台育米の攻撃となった。



「やったぞ!!あの大阪桐陰が手も足も出ない!!」


「俺の目に狂いはなかった。」


仙台育米は弱小チームの自分たちが

高校野球界でも最強の部類に入る大阪桐陰

をやりこめたことに興奮していた。


「カニさん、ぶちかましてください!」


栗原監督がカニに話しかけた。



(大丈夫かなあ……)



一番打者 キャッチャー カニ


カニは特製のメットをかぶり、

ブンブンとバットを振った。


猿の投球にビビった大阪桐陰の目は本気だった。

もしかしたらとんでもない敵

と戦っているのかもしれない。


なんて言ったって甲子園常連校どころか

プロでも見切れないレベルの球を投げる

チームなのだから。


まあ、猿やカニがチームにいる時点で

とんでもないことに間違いはないが。


相手ピッチャーが不安そうにマウンドへ上がった。

彼も中学生時代は有名なピッチャーで

スカウトされて鳴り物入りで大阪桐陰

に入ってきたのである。ここで

怖気づくわけにはいかない。



相手のピッチャーもダメもとで

しかし全力で振りかぶって投げた。



バシッ!


「ッッストラーーーーイクゥッ!!!」


カニは振らなかった。


どうやら球の様子を見られたな

とピッチャーは焦る。




2投目。


バシッ!


「ッッストラーーーーイクゥッ!!!」


カニは降らなかった。


このカニは慎重に球を見定める

タイプかとピッチャーは焦った。


まるで自分の球を見極められているようだ。




3投目。


来るぞ…。

大阪桐陰に守備が緊張して

飛んでくるであろう球を待った。


ピッチャーも打たせる覚悟で

様子を見ようと考えていた。



そして、ピッチャーは振りかぶって

得意の変化球であるカーブを思い切り投げた。




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