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光芒のライト=ブリンガ  作者: Yuki=Mitsuhashi
Chapter:02
30/31

Chapter:02-22

Chapter:02-22



【AD:2359-12-15】

【融合力空母『わだつみ』第一艦橋】



「オペレーション状況更新! 『RL-000(アール・エル・ゼロ)』、突入シークェンスに移行!!」

「救護班、各種施設及び器具類の最終点検、実行されたし――」

「百里基地より入電、エスコートとしての『F-115S』、三機が離陸済みとのこと――」

「東京コントロール、周波数帯を同調確認願います――」

「日本国沿岸警備隊より連絡、該当海域に一切の船舶無し、航行制限を継続する――」

「『インディアナポリス』より入電、第一次警戒範囲内に一切の船影無し、哨戒しょうかいを続行する――」

「高速艦『しまかぜ』より、救難飛行隊準備良し、とのこと」


 その眼前にて連綿れんめんと更新されていく情報の数々。艦長席上の『わだつみ』艦長、ソフィ・A・オキタ准将は本当に必要なものだけを読み拾うようにしていた。超の付く大型空母、その全てを認識把握することなんて、土台出来やしないのだ。


「専用船室の清掃並びに準備が完了した、と報告がありました」

 歩み寄ってきた真田副長の顔には緊張に伴う若干の疲労がにじみ出ていたが。

「予定通りよね?」

 ボールペンを兼ねたスタイラスでその眼鏡のブリッジを器用に上げながらオキタ艦長。

「はいはい、仰せの通りに、艦長殿の私室、その隣りの二部屋でゴザイマスヨ……」

 溜息を織り交ぜながら、それでもそんな口調を真田が選択しているのは今、この第一艦橋艦長席付近には彼女等以外の存在が無かったからだ。


「気象局からの連絡によると、今後若干の大気の乱れが予想されるとのことですが」

 全てが順調な中、唯一真田が引っ掛かっている部分がこれであった。何しろ、『着艦する側』も『着艦させる側』も初めてなのだから。

「少し神経質過ぎる予報の気もしたけどね、まあ気を付けておきましょう」

「……ええ」

 気象条件、こればかりは日頃の訓練、練度の高さでは補えない。まあ、いざとなれば該当機には直接『アトラス』の空軍基地に向かって貰えば良い話ではあるが……間違いなく艦長の機嫌は悪くなるだろうし、地味に子供じみた八つ当たりを受けるのは自分だし……あまり想像したくない未来図でそれはあることよのう。


「風上に艦首を向ければどうとでもなるでしょうし」

 垂直着陸にあって、艦載機がその前後位置の微修正、特に前方へのそれは比較的容易に行える一方で、側面への修正は非常に困難な現実があることを、当然彼女等は知っている。あまりにも風が強い場合は強引に空母側の針路を風上に合わせることも止むなし、そう艦長オキタは言っているのだ。まあ、特別機こと『ライトニングちゃん』の性能諸元、スペックを見ている限りでは何ら、問題になりそうでは無いのだけれど。どうも単機でフツーに宙に『浮ける』ようだし……。冗談抜きでこれ、我が海軍に欲しいよなー。


「さて置いて、大きさに比して無茶苦茶軽量なんですよね、こいつ――驚きましたが」

 艦長席で展開されていた『ライトニング』のデータを見ながら、副長。下手したら水にだって浮くんじゃ無いかしら、これ……。

「実構造は大して『ワイヴァーン』と変わらないみたいね。まあ、地上でもそうだけれど『重い』ってのはそれだけでデメリット、でもあるからね。特別機ってことだし、惜しみなく希少資源が注ぎ込まれた結果、ってところじゃないかしらね」

 一体、この『特別な一機』を建造するのにどれだけの費用が掛かっているのか、オキタ艦長は脳内で算盤そろばんを弾き掛けたのだが、行為の無意味さに気付いて中断する事とした。


「甲板長曰く、この重量だったら甲板で少しぐらい暴れても問題なさげ、だそうで」

「それ『接地圧せっちあつ』諸々、計算に入っているのかしらねえ……」

 苦笑を禁じ得ない艦長であった。言うまでも無く、仮に重量100トンの存在があるとして、これが例えば一点で甲板に『突き立つ』のと、広い接地面積をもって『のし掛かる』のでは甲板、接地面に対する負担は大きく異なる事となる。この『接地圧』と言う言葉は主に戦闘車両、特に履帯りたい機動の『戦車』類に使われる、ある意味で陸上限定用語に近いものではあったが。


「どう計算しても歩き回るぐらいだったらまず問題がねえ、ってなんなんだよォォォォオオオ、コイツゥウウウウ――ってうめいていましたよ、甲板長は」

 副長による櫻井甲板長の声真似が地味に似ていたこともあり、艦長オキタは小さく噴き出してしまったが。


「まっ、こんなこともあろうかと――って、本当に大きく、タフな船で良かったわね、我ながら」

 さすがに大型の爆撃機となると困難ではあるものの、ほとんどの航空機の着艦を可能とする『わだつみ』の甲板はそれはそれはそのサイズは元より、耐熱、耐重量共に『凄く凄い』ものなのではあった。マクロスは受け止められませんけれど。


「そう思います。我等が『わだつみ』の偉業がまた一つ増える事に疑いはありません!」

 何故か、自分の台詞が取られたような感覚と共に副長真田は大きく頷くのだった。




   ◆ ◆ ◆




【同日、同時刻】

【統合軍所属航宙特別試験機『RL-000』コックピット】



『大気圏突入に伴う最終確認開始。『ルミナ』、頼む』

 一通り、マニュアルで確認は済んでいたのだが、それでも要請を行った沖田クリストファ少佐であった。こっちしばらく『マナーモード』宜しく黙らせていた事もあって、彼なりに『彼女』のストレス(?)を気にしてはいたのである。にしても、当初の『彼女』と比べると、今の『彼女』は本当に良い意味で饒舌じょうぜつになったなあ、とは思う。最初の頃は本当にそれこそ『YES / NO』や『Affirmative / Negative』を始めとして各種の警告音声ぐらいしか耳に出来なかったものだったのだが。


『はいはーい、全て問題、あっりまっせーん!!』

 ……素晴らしく簡潔な報告である、と。どこか拍子抜けの感は否めないが。

『問題がある時だけ指摘すれば良い――隊長の教育が行き届いているのね』

 苦笑する日村瑠璃子ひむらるりこである。

『開発者サマサマ、って事なんでしょうなぁ』

 何気なく口にした沖田だったが、どうしてか瑠璃子は無言のまま、無反応のままであった。ま、しょうもない会話はさて置いて。


『……さて、行くとしますか』

 補助席の瑠璃子、その気密服の状況をモニタ上で確認し、沖田はゆっくりと両の操縦桿そうじゅうかん、フットペダルにそれぞれの手足を宛がった。今回のオペレーションにあっては、いわゆる『人型』特有の機動を全く必要としない事もあって、ほとんど航空機、言ってしまえば『ワイヴァーン』の操縦系に準じたものを沖田は選択、採用している。


 自らの専用気密服と操縦席を繋ぐ全てのロックボルトが接続されていることを改めて最後に確認し、沖田はやや神経質気味にスロットルを押し込んだ。

『大気圏突入を開始します』

『ん!』

 補助席上の瑠璃子が大きくそのヘルメットを動かすのを確認し、沖田は大きく深呼吸。


『『ライトニング』、突入軌道に乗ります。瑠璃子さん、若干のG発生に注意願います』

 複座、それも即席の補助席の存在が無ければまずは行わない注意喚起である。


 どん、とさながら背面の壁を力強く蹴り飛ばした様なそんな加速。


 ぴしぴし、みしみしと機体の節々からきしみ立つ音と振動がやはり伝わってくるが、これは実は物騒なものではない。むしろ、この音が存在しない方が余程にまずいことになる。多くの機械、機材、複合合金の集積構造体である『ライトニング』には必要不可欠な『あそび』であり、非常に高度な意図に基づいて設定された『ゆとり』なのだった。……多分、だけどね……。


『予定軌道に乗った、慣性飛行に移行。これよりはGと言うよりも寧ろ、掛かる震動にご注意下さい』

『瑠璃子、了解しました――任せるわよ、沖田クン』

 何だかんだと緊張もあれば恐怖感もあるのだろう、日村女史の声は微かに震えを伴って響いてくる。まあ、それは操縦桿を握っている自分、沖田も同じなのだが。足元の地球が遠慮無くグイグイと迫ってきており、正直、これは怖い。


『シールド展開、最終固定開始』

 追加装甲であり、『大気圏内飛行ユニット』を兼ねてもいる『シールド』が『ライトニング』末端の各部ジョイントと連結、固定されて行く工程がサブディスプレイに映像として出力される。これより先は『ライトニング』独自の機動は困難となり、もはや大気圏に飛び込むしか無い、そんな状況が確定した瞬間でもあった。


『全ての工程、問題無し!』

 心無しか力の篭もった『ルミナ』の報告であった。


『種子島管制聞こえるか、こちら『RL-000(アール・エル・ゼロ)』――これより最終フェーズに移行する。事前申告の通り、統合軍所属、沖田クリストファ少佐及び技官一名はこれより大気圏に突入、日本自治国領海へと降下する。繰り返しを要求するか?』


『こちら種子島管制、通信状態良好に付き、繰り返しは不要である。無事なる大気圏突入を祈る。現状を関係各所に通達次第、管制権の委譲を開始する。大気圏突入後は、『東京管制』、或いは空母『わだつみ』の誘導に従え』

 なんとも、綺麗な声の女性であった。聞き拾い易い声を持ったオペレーターはまず、失職の機会が無いと言う話は充分に説得力を有していると沖田は思う。


『了解した、『東京』及び『わだつみ』の管制指示に従うこととする――種子島、感謝する。Good day』

『RL-000、Good Day』

 もう少し聞いていたい声だったが、通信を切断。



 さて、後は、いよいよ。



 落ちるのみ、であると。



『瑠璃子さん、少しだけ時間ありますけど問題とか無いですかね?』

『あ、うん、大丈夫よ――と言うか、地球がどんどんおっきくなってきているので、めっちゃドン引きしてるんだけど』

 確かに、今や青い地球本星はこれでもか、と足元、その視界領域のほとんどを占める存在になっていた。目を凝らさなくても、模様としての大陸が確認できる程に。

『正確には既に我々、『落ちて』るんですよ、あそこにね』

 突入速度、軌道、いずれも問題無し。さて、最終調整を除けば、いよいよだ。


『RL-000、大気圏への突入を開始する――』

 コクコクと頷いた補助席、そのヘルメットを一つぽん、と叩いておいて。沖田は操縦桿を押した。がくん、『ライトニング』は構え固めたシールドを地球側へと大きく向ける。各所に備えられた姿勢制御用のスラスターが細かく点火、機体をじりじりと地球側に押し付けていく、そんな感覚か。


『きれい――』

 瑠璃子は思わず呟いた。どこの大陸かまでは分からないものの、はっきりと目視できる陸地、そして大きく棚引き広がっている雲、あれは台風かしら……。あの雲の下では、どんな人達が、どんな暮らしを営んでいるんだろうか。


『……綺麗ですよね』

 これでも、慎重に姿勢制御を行いながら沖田クリストファ。考えないようにはしていたが、何だかんだと自分達の今回の突入はまた、そんな綺麗な地球の一部を傷付ける事にはなるのだろう。


『地球が汚れている、とか嘘みたいね』

『ええ……』

 果たしてこれは中の人でも変わったのか、瑠璃子のそんな綺麗な言葉にこれはこれで胸を熱くしておきながら沖田。大切にして欲しいですね、そう言う気持ち、心をね。


『さて、そろそろ揺れ、くると思いまっすよー』

 高度計の示す数字と、そして何よりも操縦桿を伝わってくるかすかな引っ掛かり、重みが沖田にその現実を直接伝えてきた。


『ゆれ――?』


 ガン!!


 座席にボルトで気密服ごと固定されていて尚、沖田と瑠璃子の身体は前後左右に、乱暴にシェイクされた。


『うわあっ! すごいっ!!』

 必ずしも怖がってはいない瑠璃子の叫び声には安心しつつ、沖田は激しい震動の中、ゆっくりと操縦桿から手を離した。これより先は機体とプログラムを信用するのが、パイロットの仕事。


 現在、高度計が示している数字は高度約90キロメートル、落下速度は25マッハ。


 シールド表面での『重力波フィールド』の展開に問題無し、本体基部の温度上昇も許容範囲内。すげえな、これ。『火星沖会戦』の時にこいつがあったら、自分はかなり楽が出来た筈だ……そんならちもない事を考えてしまう沖田クリストファであった。


『あははっ!! 落ちてる、落ちてるっ!!!』

 小刻みに揺れ続けるコックピットの中、瑠璃子は大いにはしゃいでいる。

『舌を噛まないように!』

 そんな警告が口を突いて出たが、こんな沖田さんでもちょっと所ではないビビりが入ってるってのに全く大したものではある。


『現在、RL-000に一切の異常なし――』

 半ばの独り言のような報告に合わせ、各種機器類を手早く確認、これを繰り返す。何しろ小刻みに機体も、また自分の身体も揺れているものだから焦点が合い難いこと、この上無い。それにしても、やはり日村瑠璃子及びその部下達は凄い、と嫌でも再確認せざるを得ない一時ではあった。机上のシミュレーションしか行えなかった筈なのに、この追加装甲こと『シールド』の仕上がりは全く、素晴らしい。


 そもそも機体全体をカヴァーする程度には巨大なそんな『シールド』が『分割結合式』であることに最初は尋常では無い不安を覚えもした沖田だったのだが、現状、その発揮性能に問題は全く感じられない。寧ろ、不使用時の取り回し、格納を含め、何かと柔軟な対応が可能なこの『方式』以上に優れたパターンを沖田は全く発想できないでいる。


 細かく分割された『シールド』パーツはそれこそ『ライトニング』両肩、背面、また脚部のジョイントでの固定が可能であったし、例えば地上にあってもただただ邪魔なもの、デッドウェイトとなることは無さそうだ。また、この『ライトニング』は人体にたとえれば両腕両手を複数、またそれぞれが『六本指』を有している事もあったので、再度の組み立て、展開と言った作業にも何ら問題は無い。実火力とか高機動力のみならず、その『器用さ』にあっても従来の航宙機とは一線を画したもの、がそこにはあったのである。


 余談となるが、そんな『六本目の指』は正に小指の脇に据えられたもう一つの親指、とでも呼べるものであり、当の人類がその進化過程でどうしても獲得出来なかった、或いはその途上で失った存在でもあった。

 片手での物体、固体の確保、把握保持に際して圧倒的パフォーマンスを発揮するこの機構は必要に応じて展開される仕様となっており、今の大気圏突入ミッションに際してはそんなシステムに基づく両腕、両手はそれはそれは力強く『シールド』のメインジョイントと結合されていた。


『――これは、素晴らしく良い!!』

 声には出さず、沖田は一人感嘆した。いやはや、本当に色々な可能性が見えてきた気がする。基本、無形障壁である『重力波フィールド』を有している『ライトニング』にあってはどうしても『攻撃面』での自由度と汎用性の高さばかりが追求されがちであったのだが、こうして『防御面』他に特化した武装、パーツが登場してくる、ともなればその運用の幅は更に広がる事となっていくのかもしれない。まあ、現状で一機しか形になっていないので何とも言えないところではある――自分が知っている限りでは、だけど。いずれ、部下である『101』の面々相手にガチンコの実演習を行う事にもなるのだろうが。


 楽しみだなあ、それ。ふっふっふ、彼等を泣いたり笑ったり出来ないようにしてくれるわ!


 嗜虐しぎゃくに満ちた面持ちを整えた沖田はここで視線を左右に素早く泳がせる。辛うじて認識できた地平線の丸みは、現時点で『ライトニング』の高度がこれでも相当に低くなっている実感を与えてくれたが。


『さぁ、そろそろ落ち着いてくれよッ――』

 高度計を一瞥いちべつ、示す高度は地表より60キロメートル。一つの分水嶺ぶんすいれい、目安となる筈の数字に迫りつつある。


 ごんっ、最後に大きくその機体を揺らした『ライトニング』だったが、続く小刻みの震動はやがて、収まり始めた。


『あれ?? もう???』

 拍子抜けしたような様子の瑠璃子だったが、それも致し方有るまい。


『厳密には、今も大気圏は突入中ですが、熱にさらされる段階は取り敢えず終わり。取り敢えず、安心できるってもんですね。まあ、こっからいよいよ風に踊らされる番となりますが』

 出力していた重力波フィールドのそれが自動的に耐風圧に準じたものへと変遷へんせんされるのを確認して、沖田は改めてそれぞれの操縦桿を握り付けた。さてと、これからの課題は自由落下が過ぎた後の揚力ようりょく確保に基づく飛行が、果たしてどこまでまともに行えるか、となってくる。


「燃え尽きる可能性は完全に無くなりましたのでバイザー、開いて良いですよ。ヘルメットは念のため、もう少しだけ付けていて下さい」

 実際に自分のバイザーを開きながら、沖田。

「いやはや、どうにかなったねえ」

 バイザーを開いた瑠璃子がその顔面を大きく拭った。そりゃ、冷や汗だってくというものである。

「『ルミナ』、異常は無いね?」

『全くありませんです、ハイ』

 それは何より、と瑠璃子にならってその顔を拭おうと試みた沖田だったが。


『こちら東京管制、『RL-000』、応答せよ!』

 正にそのタイミングで通信が飛んできた。多くの人間がこの突入を固唾かたずを飲んで見守ってくれていた、その一つの証左しょうさでもあっただろう。ほっと胸を撫で下ろしたくなるのは、当然こちらも同じである。


「こちら『RL-000』、大気圏突入を完了。機体状況に異常無し!」

 事実、異常を示す数字は一つだって存在していない。敢えて言えば、想定よりも一部の温度上昇が鈍かった点が上げられるのかもしれないが、良好だった分に関しては問題無かろう。


『無事な大気圏突入おめでとう、そしてようこそ地球へ!!』

「管制、感謝する――本機は現在自由落下中、これより大気圏内飛行に移行する」

 揚力の確保に問題は無さそうだが、如何いかんせん現時点では空気密度がまだまだ薄いのでなんとも、ではあった。


『現在、高度約40キロメートル、落下速度マッハ1.2。本機の推進器を運用されますか?』

 『ライトニング』の内蔵する推進機関である『重力波反発推進機関』の存在を『ルミナ』がアピールしてきたが、これを運用するのはもう少し先、で良いのだろう。理論上は大気圏内、有重力下にあっても機体重量を上回る『浮揚力場ふようりきば』を得る事は可能との事だったが。

 管制官と通信中の事もあったので、沖田は無言で首を左右に振った。その意図は『ルミナ』には充分に伝わったようである。


『こちら東京管制、了解した。エスコートの『F-115S』が三機、貴機の護衛に付く。合流予測地点とその周波数を転送する』

「データ受信、確認。了解した」

 リアルタイムで届けられたスケジュールを一読、問題は無さそう。エスコート側からこちらに追随ついずいしてくれるだろうし、現状維持で良いだろう。


『『RL-000』に告げる、これ以降は空母『わだつみ』の管制指示に従え』

「感謝する。Good-Day、東京」

『Good-Day!』


 通信を終え、沖田はぐいとそのあごを上げた。


 主観頭上、その高みには黒さの残る、しかし青空は、青空。


 ただただ、一面の青空がそこには存在していた。


 次いで、その足元にやはり一面と広がるのは太平洋の大海原、コバルトブルー。



 ああ――『ただいま』、って気分は自分みたいな人間であっても間違いなく存在しているのだな、そんな事を沖田は考えてしまった。ちっ、がらでもない。



 空力加熱によって発生した純白のヴェイパーを蒼穹そうきゅうのキャンバスに一直線と引くようにして、『ライトニング』はただただ、静かに落ち続けた。





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