0話 行き倒れ勇者
―その男は行き倒れていた。
「さすがに三週間はキツかった・・・・・・」
ここ三週間ほど何も飲み食いしていなかった俺はぶっ倒れながらつぶやいた。
俺の名はキリヤ、元勇者である。
300年くらい前に魔王を倒した後、いろんな場所を巡っていた俺は手持ちの食料が尽きていたことを忘れて森に入ってしまったのだ。
―300年もどうやって生きているのか?それは賢者の開発した延命魔法と不老魔法のおかげだ。この魔法が開発されたおかげで長きに渡って全盛期の力のまま魔王と戦えたのだ。
しかし、賢者のバカは加減を忘れてパーティーに延命魔法をかけたので、寿命を1000年ほど伸ばしやがった。そのため、魔王を倒した後皆が暇になり、目的無くそれぞれ旅に出たわけである。
「しかし、現地で食料調達なんて考えが甘かったな・・・・・・」
実のところ狩りは得意じゃなかった。パーティーの皆には『お前は狩りに参加しないでくれ』って言われたぐらいだ。
基本的に加減が効かないのは俺も同じだった。軽く魔法を使っても獲物は基本跡形も残らない。土魔法で獲物を覆えば圧死、軽く打ったはずの雷魔法でも黒焦げに。そして、失敗しなさそうな氷魔法だと凍らせた後の処理に時間が掛かり過ぎて皆に使うことを禁じられたのだ。炎魔法は・・・・・・言わずもがなだな。
さらには、適当に歩いていたのもまずかった。歩いていれば森を抜けるだろうと確信していたが、どんなに歩いても出られないのだ。外から見た感じ広すぎることはなかったんだがなぁ・・・・・・
そんなことを考えているうちに、誰かが近づいてくる気配を感じた。
―こんな森の中に人?
そんな疑問のなかに現れたのは、一人の少女だった。