3話 破壊
ライアン K ブライアン Jr.
合衆国大統領。自国の利益しか考えない。
ブライアン大統領夫人
ライアン大統領の妻。二人の間に子供はいない。
オハラ マルチネス
合衆国副大統領。
アレン
合衆国宇宙局「GSS」局長。オベリスク計画のトップ
田仲 淕道
日本の総理大臣
合衆国 ワシントン州
プルループルルー
午前4時、寝室に電話が鳴り響く。
ガチャ
「私だ
何かあったのかね?
なに?わかった、すぐに向かう」
ライアン大統領が、目を擦りながらパジャマ姿のまま受話器を取った。彼は、前日に56歳の誕生日を迎えパーティーに参加したために深夜遅くに床についたのだ。
「んっ・・・」
隣で就寝していた妻が目を覚ます。
「あなた?どうしたの?」
ライアンは、その問いに答えることなく寝室をでた。
「ハニー、すまない。何か問題がおきたみたいなんだ。一時間もしないうちに会見を行うことになるかもしれない。」
「わかったわ。すぐ、朝ごはんの準備するわね」
「すまないね。」
ライアンは、夫人の頬に軽くキスをすると部屋を出た。
一時間後 大統領執務室には、副大統領のオハラと合衆国宇宙局「GSS」局長のアレンが揃っていた。
「おはようございます大統領。実は、昨夜遅くにGSSが月に異変を発見したそうなんです」
深刻な表情をしていたオハラが口を開いた。
アレンが、続ける。
「こちらをご覧になってください。こちらは、三年前に打ち上げた月観測衛星「オベリスク」からの定期的に送られてくる画像です。」
アレンが数枚の写真を机の上に広げる。
「これはなんだ?」
ライアン大統領は一枚の写真を手に取った。
そこに写る月には、黒いシミのような点が浮かんでいた。
「はい。私共でも調べているのですが、今のところ原因が不明でして・・・ただGSSの見解では地球に対して無害であると思われます」
「しかし、無害なら問題がないのでは?肉眼での確認はできないのだろう?」
オハラがアレンに詰め寄る。
「はい、副大統領。しかし、こちらもご覧になってください。」
アレンはノートパソコンを開くと、合衆国で流行しているSNSのページを開いた。
「これは?」
「はい、昨夜遅くにネット上にあげられた投稿です。ある天文ファンが月の観測をしたところ、黒い点を見つけたために投稿したと思われます。
問題は、これに対する世間の反応でして・・・」
ここでアレンは一息つくように、水を飲んだ。
「実はこの現象が自然災害などに繋がるなどのデマが飛び交うようになってしまいまして・・・」
「そうか・・・会見を開くとうのは、国民にこの現象は無害であるというのを伝えろということかね?」
ライアンは眉間にシワを寄せている。
「はい、そうするのがベストだと思います」
「わかった。国民を安心させることが最優先だ
副大統領、直ちにマスコミを呼べ。後各大臣に、ホワイトハウスに集まるように伝えてくれ
何が起きたとき、すぐ対処できるようにしたい」
「わかりました」
オハラが執務室を飛び出る。
「大統領、我々GSSは今後も月の監視を続けていきます」
「ああ、頼むよアレン君」
午前7時 ライアン大統領の会見が始まった。この会見は、合衆国全土に生配信されている。
「皆さん、おはようございます。今回、一部SNSなどで騒がれている月の現象についてですが合衆国宇宙局の局長から、全く問題がないといった結論が出されたことを合衆国大統領として、皆さんにお伝えします。また、今回の件で悪質なデマが飛び交っていますがどうか惑わされないようにお願いします。
では、今日という日がより良い一日となりますように。以上です」
会見が終わると、テレビ画面はいつものスタジオに戻った。
「大統領、お疲れ様でした。」
オハラが大統領の側によっていく。
「うむ。副大統領今日の予定はどうなっている?」
「はい。今日はこのまま先月ハリケーン被害にあった州に視察に行ってもらいます。その後は、海軍省に行き、模擬訓練をご覧になってもらいます。」
「わかった。今日は忙しいな・・・」
午後12時 ハリケーン被害にあった州の視察を終えた大統領は、大統領専用機の中で昼食を食べていた。
「はい、わかりました。大統領に繋ぎます。
大統領お電話です。」
横で電話を取っていた大統領補佐官が顔を向ける。
「誰からかね?」
「日本の田仲総理大臣からです。月の件で話し合いたいことがあると」
「わかった。変わろう」
受話器を受け取る。
ライアン「ミスター田仲、こんにちわ。いや、まだ日本ではおはようかな?」
田仲「おはようございます。ライアン大統領実は月の現象についての情報を入手したのですが、この件は問題がないということでよろしいのですね?」
ライアン「ああ、無論だ。我が国が誇るGSSの調査をしているんだ。」
田仲「わかりました。大統領ありがとうございました」
ガチャ ツーツーツー
電話を終えたライアンは、苦笑いを浮かべながら大統領補佐官に話しかけた。
「やはり、日本人というのはどこか固いな。喋っていて疲れるよ・・・」
「全くですね」
「ははははははは。君もそう思うかね」
大統領専用機にこの日一番の笑いがおきた。
午前0時
ライアン大統領は、一日の職務を終え自宅に戻っていた。
今日は、愛する妻が誕生日を祝って豪華な食事を作ってくれるという。
「あなたー、準備が終わったわよ。冷める前に食べちゃいましょ」
「ああ、そうだな。ハニーいつもありがとう」
「そんな・・・あなたこそいつ・・・」
ズーーーーン
「きゃああああ。」
まさに食事を食べようとしていた時だった。
「なんだ!?地震か!?」
グオエエエエエエエエエエーーーーー
謎の咆哮が、鳴り響いた直後ライアンは己の肉体が高熱により焼け焦げていく感覚を味わった。
薄れ行く意識の中、ライアンは顔をあげると
空には、巨大な翼を広げた謎の生物がいた。
「ああ、神よ・・・」
謎の生物は口と思われる部分から、メラメラと火のような物を発射した。
こうして、2度の攻撃によってライアン大統領を含む合衆国の全ての人間が消滅した。その間、わずか5秒であった。