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第二十六話 飛空挺キューロン

「俺もやってみてえ!」

「俺も俺も!」

 目を輝かせた俊と弘之が変わってくれとせがむも、剛紀は珍しく強気に出ていた。

「これは誰にでも動かせるのかまだわからない。僕でも動かせるか……」

「あっ、そうか……」

 確かに、まだ自動車の動かし方すらわからないのだ、ましてやこんな元の世界には存在しない未知の乗り物なんて。ただ壁にぶつかるとかならどうにかなるが、ここは地表よりはるか上空。一度事故を起こせば、最悪地面に叩きつけられてしまうだろう。もしそうなればいくら異世界転生したとはいえ、生きてはいまい。だからこそ、剛紀も起動してから何も触っていなかった。恐ろしくて触れたものではない。何故起動方法だけはわかったのかは不明だった。しかし彼には考えがあった。

「僕が文字が読めた、弘之が呪文を唱えられた。じゃあ誰かがわかるかもしれない」

 彼の言葉に玲奈がうなずく。

「なるほど。確かに。五人もいて皆姿が変わってるんだからそれはそれぞれに役割を持たせるため、なのかも……」

 じゃあさ、と俊。

「分かる奴いる?その調子だと剛紀はわからないんだろ?俺もわからない。二人は?どう?」

「頭の中にイメージが自然に沸いてくる、とか」

 しかし二人とも首を横に振った。落胆する剛紀と俊。だが一人ここにいないことを思い出した。それは他の二人も同じだったらしい。四人は顔を見合わせると同時に声を上げた。

「「「「あ!」」」」



「ねえ、美優……こっち来てもらえない?」

 玲奈が中で美優を説得している間、男たちは船を調べていた。

「しっかし、なんか雰囲気に合わないよな。もっとこうおとぎ話っていうかメルヘーン、な感じでもなくてこんななんというか、無機質?SF?そんな感じの混じったさあ……」

 と漏らす俊に、おおむね二人も同意だった。どうにも世界観の統一性にかけるというか、そもそもこの場所がどういった雰囲気の場所なのかわからない。空中に浮いている建物はヨーロッパにありそうな古い石造りの建物だが、地表にあるものは遠すぎてわからない。

「もしかすると地表は案外近未来的なのかも」

「まっさかあ……」

「でも、ここは異世界、こっちの常識が通じない場所だよ」

「確かに……」

 言われてみればそうだ、何らかが、自分が勝手に思い描いている景色を当てはめようとしているのかもしれない。それはあくまで元の世界の常識。こちらは外国どころか次元すら違う。ならばむしろ異世界人である自分たちの方が非常識なのではないだろうか。考えれば考えるほど混乱してくる。まるでメビウスの輪のように。

「特に何か変わったものは無し……このメーターもよくわからないしボタンとかも無し……と」

 操縦室の後ろの空間の壁面にポツンと存在するこの小さなメーターたちはさっぱり用途がわからない。動かしてみればわかるのかもしれないが、肝心の動かし方がわからなかった。

 そこへようやく、女子二人がやってきた。美優は相変わらず姿を見られたくないようで、玲奈の大きな羽で身を隠している。

「もー、美優ってばさあ……入って入って!」

 入り口でつまずきながらも、美優は玲奈に半ば強引に船内に引き込まれた。

「あの、田中さん」

 剛紀が恐る恐る声をかけると、ビクンと体を振るわせて彼女は反応した。元の彼女はこんなに弱弱しくはなかった、もっと明るく明朗な女子生徒であった。それだけ自分の変貌に傷ついているのだろう。女の子なら当然か、剛紀はバツの悪そうに眼を動かした。

「これ、見てほしいんだ。何か思いつかないかな?」

 そう言って優しく誘導に努める。そうして彼女に操縦席を見せた。彼女は始めは玲奈の背中から出ようとはしなかったが、やがて少しずつ顔を出してくれた。羽毛の隙間から、ネコ科の特徴を持った顔がのぞいた。

 コックピットを見てすぐに彼女の目が動いたのがわかった。これはきっと道理を知っているに違いない。そして彼女が口にした言葉は、まさに予想通りであった。

「……これ、念じればいいだけ。手のひらで操縦桿を動かして舵を取るの……あれ?なんで知ってんだろ……」

 予想通りだが、ある意味予想から外れた。彼女が操縦者として選ばれたのではなく、操縦法を知っているだけだった。彼女は何故自分がこんなことを口走ったのか理解できていないようだったが、あとで説明しよう。

「じゃ、降りてみようよ」 



「皆、準備はいいね?」

 操縦席に腰かけた剛紀が後ろを振り返る。

「後で代われよ!」

「俺も!」

「安全運転でね」

「うん……」

 後ろの席には俊と弘之が、玲奈たちは壁面から出した予備席らしい場所に座っている。剛紀は手のひらを何度か開閉させると、目を閉じて深呼吸した。乗り物を動かすなんて、自転車くらいしかできないというもの。はたして。

「出発!」

 手のひらを光の操縦桿に乗せ、念じた。船はすべるように空中を進んだ。

「まずはあそこに行ってみよう」

 彼が指さしたのは、他の飛行船が多く向かっている場所であった。

 五人の旅は今始まった。そして世界各地で他の三十二人の旅もスタートを切っていた……

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