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第二十四話 浮島を飛べ

「とりあえずここから降りる手段を?考えないと」

 そう言ったのは剛紀であった。確かに、ここから地表まではわからないが恐らく数百メートルどころではない高さではあるように見えた。いくらなんでも異世界とはいえここから飛び降りたら流石に命はないはずだ。また、移動せずに暮らせということは考えられない。何故ならこの小さな浮島のほかにも無数の大小さまざまな規模の浮島が浮いており、店や集合住宅、果ては学校のようなものまで見える。なんらかの移動手段をここの住人は持っているはずだ。俊が家の裏手に回ろうと回り込んだその時であった。大きな何かが目の前ギリギリを通り過ぎて行ったのだ。驚いた彼は大声を上げて後ろに倒れこんだ。

「どうした!」

「大丈夫か!」

剛紀と落ち着きを取り戻した弘之が声を聞きつけ駆け寄ってきた。

「い、いや、あれ!」

 手を借りて助け起こされながらも彼は空のある方向を指さした。

「うっそお……」

「たまげたねこりゃ」

 それはまるで大型化したロープウェイのゴンドラのような代物であった。天井がアーチ状になった四角い箱が宙に浮いて上下左右自在に、物理法則もくそもない動きをしていた。ワイヤーがあるようには見えない。

「つまり、どういうこった」

 弘之が首を傾げた。

「うーん、やっぱり魔法とかなのかもしれないな。異世界らしいし」

 あり得ないが、信じざるを得ないこのシンプルな結論は非常に説得力があった。

「そうと決まればここにもあるはずだよな!探そうぜ!」

「おう!」

 俊と弘之が張り切って浮島内を捜索し始めた。剛紀も、あれくらいの大きさのは無いにしても何かしらの船のようなものはあるはずだと考えていた。彼も二人の後を追い移動手段を探し始める。そこで彼は探索していて、改めてここが異世界であることに気づかされた。

 まず庭に生えている植物が皆微妙に変だった。植物はさっぱりだが、どうも日本らしくないというか、外国産のような雰囲気もない。それに今目の前にある小さな草の葉は単子葉と双子葉植物の両方の特徴を持った葉を生やしていた。それに葉は緑だが、茎が赤い。非常に真っ赤である。また、落ちている石がグレーと黄色と青の波を描いており、絶対に地球にはない鉱石だということは誰の目にも明らかだ。ふと、空を見上げると、ヴェネツィアのゴンドラのようなものやエレベーターのような、様々な姿かたちをしたものが空を飛び交っていた。

「なるほど」

 もしかすると移動手段は同じ形をしているわけではないようだ。だとするとそれっぽいものをいくつかピックアップした方がよさそうである。彼は、それっぽいと思ったものを庭から探し始めた。

「何してるの?」

 不意に背後から声がかかり、驚いた剛紀はずっこける。

「なんでこけてんの」

 振り返るとそこには玲奈が腕組みをして立っていた。美優の姿はない。

「美優はまだ中にいる。で、何してるの?」

 彼は訳を話した。すると彼女は小首をかしげながら、衝撃の一言を放った。

「私、飛べるんじゃない?」

「ああ!」

 言われて確かにそうだということに彼は気づく。そういえば玲奈の背中には大きな白い羽根が生えていたのだ。それを使えば少なくとも彼女一人は飛べるはずだ。飾りでなければ、だが。

「う、動かせる?」

「んー、やってみる」

 そういうと彼女は目を瞑り、背中に意識を集中させ始めた。

「んっ……ん?ああ、そうか」

 何やら一人で納得したようだが、はたして。

「あ!」

 彼女の背中の羽が、ビクンと反応したのが見えた。

「いけるかも」

 ゆっくりと、しかし確実に一対の羽が開き始め、やがて幅三メートルはあろうかという大きさにまで広がった。

「すっげえ……」

 口をあんぐりとあけて剛紀はへたりこんだ。これが異世界転生の力なのか、と。と同時に自分がほぼそのまま転生したことが悔しく思った。どうせなら少しくらいファンタジックにしてくれたってよかったのに。

「飛べる?」

「やってみる。でもまだ自信ないなあ」 

確かに、彼女は今ようやく翼を開くことに成功したばかりである。それどころかそもそもつい先ほどまで羽など背中になかったのだ。今までなかった感覚を急に自由にコントロールしろというほうが無茶なのである。案の定、彼女は顔をしかめたりしながらぎこちなく羽をばたつかせ、座り込んでしまった。

「あー無理。疲れた。ごめんまだちょっと無理っぽい」

「ハハハ、仕方ないよ」

 二人は立ち上がると移動手段を探し始めた。

「多分箱とか船みたいな形だと思うんだけど。もしかしたらもっと別の形をしているかも」

「例えば?」

「えっ?……えーっと、うーーん……車とか、あ、馬?」

「免許無いけど」

「あ、どうだろ。ここ日本じゃないし」

「ならそもそも車すらないんじゃない?魔法使いが車使うと思う?」

「まあ、そうだね……」

 などとごちゃごちゃくっちゃべりながら庭の探索をしていると弘之と俊が何やら庭の裏を覗き込んでいるのが見えた。

「なにしてるの」

 

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