第二十話 クラス転生
クラスメイト編を交えつつストーリーは進みます。
ヘクゼダスこと山口功が悪魔転生をしたばかりのころ、同時に転生転移させられた大桜高校一年二組の生徒たちは、光の渦を抜けた後シラバルサンサの世界に放り出されていた。これはその直後のことである。
三十七名の少年少女と数学教師はとある森の中に倒れていた。
やがて一人、また一人の目覚め始め、状況に戸惑いながらも残りのものたちを揺り起こす。
「あれ……どこだ。夢?」
寝ぼけ眼でそう呟いたのは岸本弘之という生徒である。周囲は見渡す限り森で、制服姿のクラスメイト達が各々目覚めたり、起こされようとしているところであった。
「ヒロ!」
友人の自分を呼ぶ声が聞こえ彼は振り返る。
「たっつん!」
彼を呼んだのは小学校時代からの友人、和田辰巳であった。シャツの土を払いながら彼は岸本に走り寄る。彼もまた同様に現在の状況が飲み込めていないようであった。
「皆!無事か!」
聞き覚えのある声が中心から発せられた。
「先生!」
生徒たちが数学教師である木村のもとに集まった。彼もまた動揺していたが、教師としての責務として落ち着いてふるまわなければならないと考えていた。
「今俺たちはまったくもって理解できない状況に陥っている」
ざわつく。
しかし!と彼はつづけた。
「まず落ち着くことが大事だ。恐らく学校の外だろうがそんなとおくには行っていないはずだ。ほらこの木は杉みたいだぞ。学校の近くの笠山には杉がたくさん生えてるんだ」
あくまで憶測ではあるが、ここは嘘をついてでも生徒たちを落ち着かせる必要があった。
「でも先生!」
と声を上げたのは相田祐太郎という生徒だ。一斉に彼のもとに皆の視線が注がれる。覚えているだろうか、彼は異世界への転移直後に光の渦の中で功の腹に一発入れた男である。彼は普段見せないような不安げな面持ちであった。
「どうした、相田。怪我したのか!」
「い、いや。違います。あの、その……あれ見てください」
彼が恐る恐る向こうを指さした。その先にいたのはどこからどうみても笠山にいる生物には見えなかった。それを見たひとりの生徒が呟く。
「……妖精だ」
光り輝く裸体をふわふわと宙に浮かばせながら彼らの前方10メートルほどを横切ったのはまさしく妖精といって差し支えないものであった。
「いやお前、あり得ねえよ……ハハハ」
月島が引きつり笑いで突っ込む。しかし現に今、クラス全員の目にそれは映っていた。
「キャーッ!」
女子生徒が悲鳴を上げた。視線が一斉に注がれる。
「もっちゃん!」
狭山基晴が気絶して卒倒していた。
「狭山!」
木村が慌てて駆け寄り、呼吸の確認をする。
「ふう……落ち着け大丈夫。気絶しているだけのようだ」
しかし一度感染した恐怖はそう簡単には収まらない。ざわつきだす生徒に焦りを感じていた木村だったが、彼自身も動揺しており、うまく言葉を綴りだすことができなかった。そして彼らはその騒ぎのために妖精の接近に気づくことができなかった。
「…………」
聞いたこともない言語が森中に木霊する。三十七人の人間は、それが何かを理解する間もなく再び意識を失った。深い眠りに。
彼らに待ち受ける運命とはいったい……




