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第十二話 速攻

キャラクターの部分は誤投稿などややこしいので削除しました。

 こうしてみるとどうして人間の体には尾がついていないのか不思議にさえ思うようになっていた。ただ一つ動かせるところが増えただけだというのに、この高揚は一体。

「えっとじゃあ次は今度はこっちが攻撃するから自分の思うようによけてみて」

「え?」

「じゃあ行くよ!」

「ちょま」

 ヘクゼダスが制止する間もなく彼女は素早く跳躍し、彼の反射神経の捉えられる範囲から姿を消した。そして次の瞬間には長い尾が首にきつく巻かれると同時に背中に一発何か叩き込まれ宙返りをして無様に床に転がっていた。

「お……おぶええぇ……」

まともに呼吸すら出来ずに伏す。あの一瞬で体が今まで感じたことのない鈍い痛みを経験し、驚きと恐怖で彼は座ることさえままならなかった。逆さに見えるキエリエスの見下ろす姿を見て、彼は絶望的に自分と彼女の間には拭いきれない差があることを実感した。

「これでいいんですか?」

ふと、彼女がそのまま外にいるヴェッチェにそう尋ねているのが見えた。数秒ほどそれが理解できなかったが、すぐに彼女がこうするように指図していたのだと気づいた。先ほど突き飛ばしてしまったのをやはり恨んでいたようだ。

「痛かった?ごめんね?」

 キエリエスは笑顔で彼が立つのを手伝う、尾で首を吊り上げて。

「い、いたいいだい、痛いです……あとぐるじい」

 どうにか障壁を支えに立ち上がるとようやく首に巻かれた尾が剝がされた。なんという力だろうか、そうとう重くなっているはずの自分の体を尾だけで軽々と持ち上げてしまうなんて。やはり悪魔は人間など一ひねりに出来るくらいの力を備えているようだ。彼は辛さを噛み締めると同時に望みを見出していた。

「あ、ごめん。つい……」

(つい?)

ついということは彼女はあんなことを他にもしているのだろうか、笑顔で。彼の脳裏に笑顔で首を吊られている勇者や悪魔たちの姿が過った。その姿は少し滑稽ではあったが思わず彼は身震いした。

「い、いや、大丈夫ッス……」

 ヘクゼダスはつとめて大丈夫であるように見せると、こっそり一撃を入れられたところをさすり何を打ち込んだのだろうかと想像した。尾は使っていたのだから尾ではない、少なくとも飛びかけた記憶では尾の先が右頬あたりにあったと思う。なら大体想像できるのは肘か膝だろう。しかしいったいどうやって回り込んだというのだろうか。まず最初に恐らく彼女から見て斜め上、つまりヘクゼダスの頭上に跳んだ気がする。だとしたら空中の時点で尾を首に巻き付けたのだろうか。そして着地するが早いか一瞬で背中合わせに肘、恐らくこれだろう。少し自信ありげにどもりつつも彼は自身の考えを述べてみた。すると彼女の口からまさかの答えが返ってきた。

「上じゃなくて下から、そう、股をくぐってくぐると同時に尻尾巻き付けて足の裏で蹴ったの。背中。惜しいよー」

 何ということだ、彼は茫然とした。まさか股下を潜り抜けて蹴りを叩き込まれていたとは。

「す、すごい……」

 自分も彼女のようになれるだろうか。素早い動きで敵を翻弄し、圧倒的な力で一撃で葬り、去る。その背中に敵の骸を残して……

 などと悦に浸っていると、キエリエスの元気な声が彼を現実に引き戻した。

「はい、じゃあもっとゆっくりやるから今度は何かしら一つは行動してねー!」

「え、あっはい」

 我に返ると彼は拳を握り構えた。お次はどこから来るのだろうか。再び彼女が跳躍した。今度は動きが見えた。右から来ることが分かったため右手足を咄嗟に上げ庇う。が、防御空しく彼の体は障壁に叩きつけられていた。

「ダメだよ!片足じゃバランスが悪いし踏ん張り効かないし。それにヘクゼダス防御したとき私見えてた?庇っても相手が見えなきゃ死角に次の攻撃が来るんだから!」

「す……すいません」

床にへたりこんだ彼は、長く険しい道のりを感じ脱力した。一人前どころか半人前の悪魔になれる日はいつだろうか……

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