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園江  作者: 谷田憂
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陽子

(陽子)


 私が園江ちゃんと最初に言葉を交わしたのは小学三年生の冬でした。用を足して手を洗った後、ハンカチを取り出そうとしたら学校で禁止されているカイロがぽとりと足元に落ちてしまったのです。

 その時丁度目の前にいたのが園江ちゃんでした。教室ではいつも本ばかり読んでいる園江ちゃん、不愛想であまり笑わない園江ちゃん。先生に言いつけられるかも!と不安になりました。しかし園江ちゃんはポケットの中をごそごそ探ると小さな長方形を取り出しました。クラスのみんなが持っているような可愛いキャラクターが書いてあるものではないけれど、それは立派なカイロでした。


「おそろい、だね」


 顔を見合わせてふふっ、と笑いました。



 それから私たちはいつも一緒でした。園江ちゃんは私の家から少し離れた一軒家にお父さんと二人で住んでいました。園江ちゃんの服装や持ち物があまり華やかでないのもそのせいかな、と思いました。中学校に上がってからは二人でいろんなところに買い物に行ってお洋服を買いました。

 私は園江ちゃんといると心の底から落ち着くことができました。これからずっと彼女といたいと思いましたし、ずっといっしょにいられるものだと思いました。





「松田、松田園江はまた欠席か。来年から受験なんだからしっかりしろよなぁ」


 園江ちゃんは中学二年生の夏休みから突然学校にこなくなってしまいました。それまでは一緒にプールに行ったりお祭りに行ったりしていたのに。メールの返事も帰ってこなければ電話にも出てくれません。家に行っても園江ちゃんどころか園江ちゃんのお父さんも出てきません。郵便ポストからは大量のチラシがあふれ出していました。

 最後に園江ちゃんに会ったのは夏祭りでした。リンゴ飴を食べ残してしまった園江ちゃん。園江ちゃんは忘れっぽいから、うっかりカバンの中に入ったまま食べてなかったりして。

 もう夏も終わり、秋になりました。誰かが「松田んち夜逃げしたんじゃね」と言っていて嫌な気分になりました。園江ちゃんは、どうして学校に来なくなってしまったのでしょう。


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