嫉妬心の捉え方
橋姫は嫉妬を操る妖怪、その妖怪の本当の姿、あなたは嫉妬心をどう捉えてますか?
是非ご覧ください!
小雪が新たに仲間になったとはいえ、俺達が道に迷っているという事実に変化はなかった。
「さて、空をどうするか」
「ところでこの狐っぽい方は龍治さんのお友達ですか?」
「えーっと、そうだな、妹?」
「え!?妹がいたんですか!?」
予想以上に驚いたな、しかし、こいつが起きたら俺の事をお兄様とか言うし、妹って事で良いとは思う
しかし、小雪が来て出てくる問題は。
「新しい人間だ!」
「脅かし放題や」
こいつらだ、人食い妖怪に幽霊、小雪はこいつらを見ても大丈夫なのか?
「・・・あれ?幽霊ですか?」
「そうやで、うちは幽霊、さぁ、とりつくでぇ」
「・・・龍治さん!幽霊です!逃げましょうよ!」
結構ビビってるようだな、でも、空ほどじゃなさそうだ、空だったら速攻で震えてるだろうしな。
「なんや、思ったよりおどろかへんな」
あまり驚いてない雰囲気はこの幽霊にも分かったようだ。まぁ、小雪もそれなりにビビってるはずだが
空の反応を見た後だと薄い反応だなと思っちまうな。
「ねぇ、小雪だったっけ?美味しそうだから食べて良い?」
「え?だ、駄目!絶対駄目です!」
「そう言わずにさ、一口、一口だけだって」
ミアは少し笑いながら小雪に近づいている、こいつの食事を知っている俺からしてみればそこまで
怖い状況じゃ無いんだが、小雪からしてみれば相当怖いだろうな。
「あ、あの、ち、近付かないでくださいよ・・・」
「あはは、そんなに怖がらないでよ、すぐに終わるから・・・」
「あ、あぁ、た、助けてくださいぃーー!!」
「いただきまぁす」
「きゃーー!!」はむ!
小雪は気を失ったようだ、よっぽど怖かったんだろうな。しかしミアはそんなのお構いなしにはむはむ
している、汗を食べてるだけだしなんの問題も無いんだがな。
「美味しい!龍治と比べると薄めの味だけど、美味しい!」
汗に味とかってあるんだな。きっと人食い妖怪じゃ無いと分からないんだろうな。
「なんや、うちの時はそこまでおどろかへんかったのに」
「お前ら、いい加減にしてやれよ・・・」
「龍治様がとめれば良かったんじゃ無いんですか?」
「ミアがその程度で引き下がる分けないだろ?」
俺達は気絶した2人を担いで歩き出した、理由は暗くなってきたから休める場所を探すためだ。
あのままあそこにいるわけにはいかないしな。
「山ですし、どこかに洞窟があると思うんですけど」
「そうだな、そんで、そこの幽霊さん?」
「なんや?」
「なんで付いてくるんだ?」
「なんでってそりゃぁ、面白そうやからなぁ」
面白そうって理由で付いてくる幽霊ってなんだよ。空が目を覚ましても即気絶なんて事になったら
空がかわいそうなんだが。
「さっさと帰ってくれる?空がまた気絶したら大変だろ?」
「大丈夫やって、人間に擬態しとくから」
「出来るんなら最初からしてくれよ」
しばらくの間さまよったが洞窟は見つからず、途方に暮れていたときだ。1人の女の人が現れた。
「おや?こんな山奥で珍しいね、どうしたんだ?」
その女の人は緑色の髪で髪の毛を三つ編みにしていた、服は古めかしい和服だった。
「あぁ、確か橋姫でしたっけ?」
「そうだよ、あたしは橋姫だ」
橋姫は昔、晴明に倒されたとされる嫉妬と復讐の妖怪だっけ?正確に覚えてないしなんとも言えんが。
「それで、あんたらはどうしてここに?」
「その、この山で迷ってしまって」
「そうか、じゃあ、家に来ると良い、客人なんて久々だからね」
俺達は橋姫の申し出を受けることにした、橋姫の家は山の奥にあり、普通ならたどりつけれそうに無い。
「ここだ、ようこそ我が家へ」
橋姫と言えばとんでもない嫉妬心を持つ妖怪として有名だが、今のところこの橋姫はそこまで
恐ろしい存在には見えない、むしろ優しいくらいだ。
「そこの人間、随分と不思議そうな目であたしを見るね、どうして?」
「いや、イメージと違ってたからさ」
「どういうことだ?あたしを知ってるのか?」
「ああ、言い伝えだけどな」
「ほぅ、気になるね、話してくれないか?」
俺は橋姫の言い伝えを話した、嫉妬の話や復讐の話し、それを全てだ。橋姫はその話を真剣に聞いていた
「そうだね、確かにあたしは嫉妬心を刺激することが出来るね」
「そうなのか?」
「あぁ、ただ、嫉妬心というのは成長に必須だ、あたしが刺激するのは、羨ましいと言う程度だ
それに、あたし自身、そこまで嫉妬深い訳じゃ無い」
ここでも伝承とかなり違ってくるな。こんな良さそうな妖怪があそこまで嫉妬深く書かれてるのは
一体なんでだ?ますます謎が深まるな。
「橋姫さんはどうしてこんな山奥に住んでるんですか?」
「ん?そうだね、丑の刻参りがしやすいからかな?」
丑の刻参りって呪いの儀式だろ、本当は嫉妬深いのか?
「本当の理由は?」
「景色が良い山頂に行きやすいからだね」
冗談だったのか、全く橋姫がそんな風に言ったら恐怖しか無いな、本当に分かり辛い冗談はやめて欲しい
「しかしね、全く人間というのは本当に怖いよ」
「怖い?なんでまた」
「だってさ、嘘という最大の武器があるじゃ無いか、あるはずの無い事を捏ち上げて私達妖怪を恐怖の
対象として見たりしてね。本当に怖い物から目を背けさせるために」
本当に怖い物、それがなんなのかは俺には分からない。なんたって俺も目を逸らされた人の1人だ
「それはなんなんだ?」
「簡単さ、人間自身だ、殆どの妖怪は人間を殺さない。妖怪が人間を殺すのはよほどの事が無いと
あり得ない。しかし、人間は同じ人間を平気で殺す、昔は鬼の襲撃って事になってても本当はそこの
最も偉い人間が起こした事件だって多々あるのさ。あたしは人間ほど恐ろしく、嫉妬深い生き物を
知らない」
・・・驚愕の事実だった、妖怪は人間の事をそう思っているのか。ただ、だとしたらなんで妖怪は
人間と共存していた時期があったんだ?俺はその事を聞いてみた。
「そうだね、確かに人間は醜い生き物だった、でも全ての人間じゃ無い。それに昔のあたし達は自分以外の生き物を思いやる事なんて出来なかった。だからだろうね、あたし達が人間に憧れたのは。
だから今のあたし達はこんな風に楽しく生きていける、だからこそ人間に恩も感じてるのさ」
妖怪は人間に憧れていた。この意外な真実を知る人間は今のところ俺だけだろうな、小雪は寝てるし
「だから俺達を招待したのか?」
「あぁ、そうだね、人間に会う前のあたしなら無視してたかな」
「それであなたは人間が好きなんですか?」
「あぁ、あたしは人間が好き、大概の妖怪はそう言うだろうね。ただ、人間からしてみればあたし達妖怪は責任を擦り付けるための良い道具、その程度の認識だったのかもしれないね」
橋姫はさっきまでの元気は無く、小さくそう呟いた。確かによかれとやったことが人間の手によって
改変され、嫉妬深い妖怪とされていたらショックは大きいだろうな。
「・・・大丈夫だ、きっとお前らの事を分かってくれる人間もいるさ」
「だと良いんだけどね」
日本の昔話は一概に妖怪や鬼が悪い存在じゃ無いとされる物もある、河童や泣いた赤鬼とかな
きっと、一部の人間は妖怪の事を悪い存在じゃ無いと知っていたんだろう。その人たちが今まで
語り継いできた、そんなところかな。
「大丈夫さ、そのうち誤解が解ける日も来るだろう」
「ふふ、そうかい、それは良かった、でも最近ね、かなり大きな復讐心を感じるんだ」
「!!」
復讐心、その言葉に青は反応を見せた。俺も心当たりがある、紅の可能性もある
「この復讐心を持つ妖怪をなんとかしないと人間と共存なんて出来やしないだろうね」
「何処ですか!?正確な位置は分かりますか!?教えてください!!」
「おっと、いきなり食いついてきたね、正確な位置は分からない、大きすぎるせいで特定が難しいのさ」
そう言われても青は引き下がらずグイグイと聞いていった。
「教えてください!せめて方角だけでも!」
「方角?そうだな、ここから西の方向から感じるね」
ここから西には剣魔が居るという山もある。
「わ、分かりました!西ですね!」
「あぁ、そうだ、明日あたしが案内してあげるよ、迷ったんだろ?」
「お、ありがたいな」
俺達は次の日の朝、橋姫の案内で森を抜け、西方向へ進むことにした。
「気を付けなよ。あの復讐心は恐ろしいからね」
「あぁ、分かった、ありがとな!」
俺達は西方向へ進んだ、空、小雪はびくびくしてたな、まぁ、近くにトラウマがあるし仕方ないが。
「・・・いずれ人間と妖怪が共存できる世界が来るか・・・ふふ、楽しみだね、やっぱり人間は面白い
いつか本当にその日が来たら、あたしは人間の役に立てるかねぇ」
次回は剣魔の元へ向かいます、天狗達のトップ、剣魔、この存在はどれほど大きな存在なのか?
次回もお楽しみに!