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退屈な世界とのお別れを~妖怪達の楽園~  作者: オリオン
第2章、より確実に、より安全に
12/14

化け猫の里

平安京を包んだ恐怖、鵺を倒した俺、しかし、その正体は決して恐怖では無く。

ただの人間好きの力のある妖怪だった。俺は人間の方に疑問を抱きながら

青の親友の紅を目指す旅を再開した。


「こっちで大丈夫か?」

「はい、合ってます」


俺達は鵺を倒し、3日ほど歩いた、食料は青と空が調達してきてくれた。

今はこの近くにあるという、化け猫の里を目指している。

理由は紅の居場所を更に絞るためだ、青の話だと化け猫は情報収集に長けているらしいからな。


「しかし、化け猫の里ってのは見つからないもんだな」

「まぁ、化け猫は妖獣の中でもかなり臆病な妖怪ですからね、見つからないのも仕方ないかと」

「その代わり、馴染んだ相手にはとことん甘えてくるんよ、かわええ子達や」


キビはこんなんでも結構博識な幽霊だ、妖怪についてもそこそこ詳しいしな。

空はずっとこいつに怯えているが、正直怯えてるから絡まれてるんだと思うが

まぁ、空は気付いてないだろうな。


「そんな事よりさ、化け猫の料理って美味しいの?」

「そこまでは分からんなぁ、流石に化け猫の里に入ったことはないんよ」

「ふーん、まぁ、良いか、食べてみれば良いだけだし!」


ミアの中でこの話は完結したようだ。

その後しばらく歩いたが化け猫の里は見つからなかった。


「本当にここなのか?全く見つからないぞ?」

「うーん、仕方ないですね、空、あれを出してよ」

「あ、はい、あれですね、分かりました!」

「あれ?」


空は懐を探し始めた、そしてその懐から密閉された袋を出した。


「それは?」

「マタタビです、私達妖狐には一切効果は無いんですけど、化け猫には効果てきめんなんですよ」


そう言うと空は密閉した袋を開け、周囲に振りまいた、すると周りの景色が一変した。

周囲に家が現れた、それも1つや2つじゃ無く沢山、まさに村って感じだ。


「これは、どうなってんだ?」

「きっと幻術の類いでしょう、それにほら、地面で寝転がってじたばたしてるのがいるでしょ?」


青が指を指した方向には髪の毛が黒く、白と茶色の色が混ざっている和服を着ている、帯は黒だ。

そして黒と茶色が混ざった耳に黒と白が混ざった2つの尻尾を持っている変わった少女がいた。

目を瞑ってるため目の色は確認できない。身長は空と同じくらいだろう。


「あ、ほんとだ、なんか耳と尻尾まで生えてるしよ」

「あれが化け猫です、でも、化け猫の里は普通の猫も沢山います」


そう言われて周囲を軽く見回したが確かに普通の猫も沢山いた、その猫たちもジタバタしたり

走り回ってたりとすごいことになってる。


「なんか、荒れてません?」

「小雪さん、そんなに慌てないでも大丈夫ですよ、猫は基本落ち着きが無いでしょ?」

「いや、流石にここまでは酷くないよ・・・」


俺は猫を飼ってたことがあるが、ここまで猫が大暴れしたのを見たことが無い。

まぁ、その猫は病気で死んじまったが、甘えん坊で可愛い奴だったんだがな。

三毛猫ってあまり懐かないイメージがあるが、あいつは良く懐いてた、まぁ、俺だけにだが。

あぁ、今思い出しても懐かしいもんだ。


「龍治様?どうしました?」

「いや、何でも無い」


青が俺の心配をしてくれた、しかし、昔の事を思い出して悲しむなんてな、俺らしくも無い

過去はどんだけ悔やんでも変えられないし、今さら後悔しても遅いだろう。

それに、きっと、あいつはやり残したことなんて無いだろう。


「なぁ、青ちゃん、これはやり過ぎやろ、効きすぎやで」

「そうですか?空、このマタタビ何処で手に入れたの?」

「ていうかいつ取ったんだよ」

「えっとですね、お姉様に指示をされたのが化け猫の里の近くだったので、その近くのマタタビの木を

見つけて私が粉にしたんですけど・・・」

「それやな、化け猫の里の近くのマタタビは異様に強いからな、それでこうなったんやろう」


皆は初めて知ったみたいな表情をした、当然俺もだ。


「ま、所詮酔っぱろうてるだけやし、問題は無いやろう」

「酔っ払うって何?」


ミアが酔っ払うという言葉に反応した、多分気になったんだろうな。


「酔っ払うって言うんは、お酒を沢山飲んだ状態のことや」

「お酒?お酒って何?」

「うーん、そこから説明せなあかんのか、面倒やなぁ」

「キビ、下手に教えるな、面倒なことになる、こいつの事だ、飲んでみたいとか言って騒ぐぞ」

「それもそうやな」


キビはミアの質問に対し、本当のことを言った、とっても苦くてなれないとあまり美味しくないと。

それを聞いたミアはお酒に対して興味を失ったようだ。


「とにかく、この子達を移動させましょう」

「そうだな」


俺達は猫たちを抱きかかえて近場にあった家を訪ねたが誰もおらず、悩んでいると

倒れている女の子の下駄の後ろに名前があるのに気付き、その名前がこの家の

表札と同じなので、この家に入り、休ませた。


「これでよし」

「じゃあ、移動しましょうか」


俺達が移動をしようとしたとき、倒れていた女の子が小さく待ってと呟いた。


「ん?あぁ、起きたのか」

「・・・その、あ、ありがとう、ご主人」

「は?」


この女の子は確かにご主人と呟いた、誰に対してかは分からないし。

もしかしたらまだ夢心地なのかもしれない、でも気になるし、少し聞いてみることにした。


「ご主人って誰のことだ?」

「あなた」ス

「え!?」


女の子は静かに俺の方を指さした、俺がご主人だと?この子の?記憶にないんだが・・・


「りゅ、龍治様!もしかして別の式神とかいたんですか!?」

「い、いやいや、いないって、おい、冗談は止せっての」

「冗談じゃ無い、本当に覚えてない?」

「あぁ、お前みたいな女の子は記憶に無い」

「・・・あぁ、そうか、今は妖怪だからか、ちょっと待ってて」ボン!


女の子は煙の様な物を出した。そして、その煙が消えたときにはそこにはおらず代わりに

尻尾が2本もある三毛猫の姿になった、その猫はどこかで見覚えがあるような・・・


「これ、これが私の昔の姿、どう?覚えてる?」


その猫の模様には、うちの猫のミミの特徴的な模様があった。他にも色々な特徴が一致している。


「!!ま、まさか、ミミか?昔の飼い猫の」

「良かった、覚えてた、嬉しい」ボン!


ミミは再び煙を発し、再び人間の姿に変化した。よくよく見ると、この子の耳と尻尾には

ミミの特徴的な模様が出ているのに気付いた。


「え?龍治様の飼い猫?」

「あぁ、でも、結構前に病死したはずなのに・・・」

「うん、でも、目が覚めたらここにいたの」

「はは、まさかこんな場所でもう会えないと思ったペットに会えるなんてな」

「私も、もうご主人に会えないと思ってた」ギュウ


ミミは俺に抱きついてきた。普通なら俺も抱きかかえたやりたいが、こいつは今、人間の姿だ

猫の姿なら躊躇い無いのにな。


「妖怪になっても甘えん坊だな」なでなで

「えへ、えへ、えへへ」ぴくぴく


耳がぴくぴく動いてる、そういえば猫の時もこんな癖があったな、撫でてやったり飯の時とかは

よく耳がぴくぴく動いてたもんだ、ま、その癖があったからミミなんて名前なんだがな。


「人間に大きな愛を貰った動物が妖怪になるのはよくあるからなぁ、ええなぁ、こういうのも

まぁ、憎しみを持って死んだ場合でも妖怪になるんやけどな」

「うぐぐ、龍治様は私のご主人様なのに・・・妬ましいです」

「あはは、そう妬かんでもええやろ?あの二人は久々の再会なんやで?」

「そうですけど・・・でも、羨ましい」

「なんだかお腹が空いたんだけど、言いにくいなぁ、そうだ!小雪、食べさせて?」

「へ!?こ、来ないで~!」

「待てー!!」


そんな何となく楽しそうな皆の姿を横目で見ながら、俺はミミとの久し振りの対面を楽しんだ。

しばらくして、ミミも落ち着き、早速話をすることにした。


「なぁ、なんで俺達はこの化け猫の里が見えなかったんだ?」

「それは、その、は、恥ずかしかったから、久し振りで、だから私が幻術を・・・」

「可愛らしい理由やね」

「そうだな」

「それじゃあ、私も質問、ご主人達はどうしてここに?それとご主人の周りの人達は誰?」


ミミは怪訝そうな表情で青達を見ていた、まぁ、こいつは人見知りが激しかったからな。

家族の中でも俺以外に懐こうとしなかったし。多分俺が拾ってきたからだろうな。


「おぉ、そうやな、自己紹介が遅れたわ、うちはキビ言うんや、鬼火の仲間やで」

「私はミア!人食い妖怪!」

「私は小雪と言います、龍治さんと同じで人間です」

「私は空です、お姉様の妹で妖狐族です」


最後に青だが何故か知らんが、ミミと青はお互いにらみ合っている。

理由は分からないが、なんだかただ事じゃ無い雰囲気だ。


「私は青と言います、龍治様も「式神」で妖狐族です」

「し、式神・・・ていうことはご主人とずっと一緒って事?」


青は式神を妙に強調して言った。そしてその言葉を聞いたミミは驚いた表情をした。


「そうなります」にこにこ


そして青はかなり得意げにそうなりますと言った。


「う、うぅ、ご、ご主人は私のご主人!」

「違います!龍治様は私のご主人様です!」


二人ともかなり喧嘩腰だ。大丈夫か?


「なぁ、お前ら二人とも俺がご主人なのは変わらんぞ?」

「確かにそうですけど!なんだか気に入りません!」

「私も!ご主人は私のご主人!」

「私のご主人様ですよ!」

「お互い火が付いたみたいやなぁ」

「あはは、どっちでも良いのにねぇ、それより龍治、お腹空いた!小雪が食べさせてくれないの」

「あー、はいはい、分かったよ」

「ありがとー!」はむ


ミアに毎度こうやってはむはむされないといけないのは面倒だが。まぁ、人食い妖怪なんてのを

仲間に入れちまったらこうなるか、肉を食われてないだけ良しとしよう。

しかし、ミミと青、仲良くして欲しいんだが、しばらくは無理そうかな。

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