神の名
剣魔との戦いに勝利し、俺達は紅の情報と彼女の名前を知る権利を得た。
「うむ、見事だった、では儂の名を教えよう」
剣魔の本名か、正直、そこまで興味があるわけではないが、聞いておいた方が良いな。
キビ、青、空、小雪は興味ありそうだが、ミアは興味はなさそうだ。
「儂の名はキュウ、漢字で書けば弓となる」
剣魔なのに弓なのか、まぁ、名前なんてそんな物か。
「その、じゃあ、弓とか扱えるんですか?」
「儂か?まぁ、そうだな、どっちかと言えば剣より弓の方が得意かの」
「え!?」
ミア以外は皆驚いていた。しかし、こいつは本当は弓が得意で、それなのに剣を扱い、さっきの戦いも
本気じゃなかった・・・こいつのそこが見えないな。
「因みに源頼政に弓を教えたのも儂じゃ、まさか鵺の奴を打ち抜くとは思わなかったが」
「・・・源頼政と言いますと、平安時代の方ですよね?」
「平安時代?あぁ、そうだな、鵺の奴も平安京におったそうだしな」
まさか、頼政に弓を教えたのがこいつだとはな、この様子だと他の実力がある弓使いも
こいつに教えてもらった可能性があるな。
「はぁ、見た目は若くてもかなりの長生きなんですね」
「あぁ、儂はこれでも神だ、長生きはしておる」
弓は軽く笑いながらそう答えた。さて、それよりもそろそろ紅の話を聞かないとな。俺が話し出そうと
すると、俺よりも先に青が口を開いた。
「あの、紅の事を聞きたいです」
「おぉ、そうだな、忘れておった、では話そうか」
剣魔の話では、今の紅の力は妖怪達の中でも上位クラスらしい、更に彼女の復讐心は周囲の妖怪にまで
ゆっくりと影響をきたしているそうだ、このままでは彼女に影響を受けた妖怪達が大きく動き出す
危険性もあるそうだ。
「そんな、紅ちゃん・・・」
「そして、本題だ、その彼女が今おる場所はここからずっと東の方におる」
「え?」
ここからずっと東の方だと?しかし、まえ橋姫が言っていた恐ろしい復讐心があると言ってた場所は西だ一体どうなってんだ?その疑問は当然俺以外も抱いていたようだ、皆怪訝な表情をしている。
(ミアは除く)その疑問を最初に言ったのはやはり青だった。
「あの、ここから西の方にすごい復讐心を感じるって橋姫さんから聞いたんですが」
「あぁ、きっと鵺の事だろうな、あいつは今酷く機嫌が悪いからな、折角だ、止めてきてくれ」
しれっと言てくれるな、相手は鵺だぞ?妖怪の中でかなり知名度があるな。
「えっと、それは厳しいんじゃないんでしょうか?」
「む?そうか?しかし鵺を倒すくらいの力が無いと紅とやらは倒せんぞ?」
「え?」
どうやら紅は鵺を凌ぐほどの実力を持っているようだ、やっぱりあの時は相当手加減してたんだな。
「鵺様を倒さないと紅ちゃんは倒せないんですか?」
「あぁ、それだけあの小娘は強い」
「・・・分かりました」
青は決心を固めたようだ。さて、倒せるんだろうか
「本気なんだな?」
「はい」
「お姉様が行くのなら、私も一緒に行きます!」
「まぁ、乗りかかった船やしなぁ、うちも頑張るわ」
「ん?なんか分からないけど私も一緒に行く」
「私も龍治さんの為に頑張りますね」
全員覚悟は出来てるみたいだ、いや、ミアのは覚悟とは違うか、まぁ、大丈夫だろう。
「ふむ、そうか、場所はここだ、頑張るが良い」
場所はこの近くの村らしい。その村には鵺の他には強い妖怪はいないらしい。
俺達は弓に礼を言い、その村に行った。その村はすごく寂れている村だった。
「ここですね」
「情報が正しかったらな」
「大丈夫やろ、天狗はんの情報収集能力は有名やからな」
その時だった、村の奥地からなんだか恐ろしい気配を感じた、その気配は明らかに殺気だ。
「こ、この気配は恐ろしいですね」
「お、お姉様、大丈夫そうですか?」
「も、もちろん、大丈夫、龍治様もいるし」
「そうだな、まぁ、指示は出そう」
「はい!」
そんな会話も終わった頃に村の奥から出ている殺気がこちらに近付いてきた。
「・・・ここに人間がいるなんてね」
その姿は顔は幼めの顔で、髪の毛は白と金髪が混ざっていて、目の色は赤で身長は高く、尻尾もあったり
角もあったりしてごちゃごちゃだ、その上男か女かよく分からない見た目だった。
しかし、おそらく女だ。本当色々と混ざってるな。
「あ、あなたが鵺様ですか?」
「そうだよ、あたしは鵺、折角の人間だ、復讐させてもらうよ?」
鵺は笑いながらそう言った。今まで妖怪の笑顔ってのはよく見ていたが、この笑顔はやばいというのが
よく分かった。なんたって目が笑ってないからな。
「やめてください!なんでそんなに殺気立ってるんですか!?」
「ちょっと昔を思い出してね、人間が憎いのよ、だから大人しく後ろの2人を差し出した方が良いよ?」
「そんな事しません、鵺様、あなたを止めます!」
青も臨戦態勢を取った、相手は鵺、有名な妖怪の中でも上位の存在、さて、青は勝てるか?
「俺を止めるだと?お前は馬鹿か?そんな事出来るはず無いよ」
さっきから気になってるがこいつは一人称もバラバラ、口調も、性格もしょっちゅう変わる。
見た目は変わらないがな。
「絶対に止めます!」
「それじゃ、うちも青ちゃんに取り憑くわ、そうやな、上げる能力は妖力でええやろ」
キビの力は取り憑いた相手の回復、攻撃、防御、速さ、妖力のどれか1つを底上げする力だ
「はい」すぅ
「お、お姉様、そんなすんなりと・・・」
空はその能力を恐れているようで、絶対に取り憑かないでくれと言っている。
まぁ、確かに怖い能力でもあるな、実用性はあるが。
「くく、あはは!妖怪のくせに人間の肩を持つとはね!馬鹿な種族だな!妖狐族ってのはよ!!」
「妖怪は元々人間が好きなはずです、それは鵺様、あなたも同じだったはずじゃ無いですか!?」
「はん!先に裏切ったのは人間だ!今更あんな連中を信じるのはごめんだ!」
「どうしたんですか!?前、昔のお話してくれた時はそんな風じゃなかったのに!」
「仕方ないね、あなたを倒して後ろの2人を仕留めるだけよ」
「負けませんよ!」
青は鵺に向かって走り出した。しかし、あいつの性格が変わる頻度が高すぎる、何かがありそうな
気配がずっとしている。・・・勝てるか?
「ミキ、本当に良かったのか?鵺を止めるなら儂が出た方が良かったんでは無いか?」
「経験は重要じゃろ?なに、大丈夫じゃ、妾達が興味を持ったほどの人物じゃ」
「じゃあ、もしこれで負けたらどうするんだ?」
「その時はその時じゃ、あやつらはそこまでの存在だったと言うだけの事じゃ」
「相変わらず、気に入った相手には厳しいな」
「それが神のやり方じゃろ?」
「ふ、確かにな」




