flute 東堂 遥
「嘘でしょ……」
音がぜんっぜんならない。
もっとなるもんだと思ってた。
だって、先輩たちはあんなに簡単そうに吹いてるのに……。
つか、フルートって結構むずくね?
そんなんを一番最初に選んだあたしってすっごいな。まじ神かよ。
このあたしにできないことがあるなんて……。
いいじゃない。このあたしがやってやろうじゃないの。
ヒュー! フヒュー!
「あはは! そんな焦っても音でないよー! 」
負けるもんか!
あ、でもいくらなんでもこれじゃ音出ないか。
「先輩、どうやったら音出るんですか?」
「お、やる気出てきたね! えっとね、まずは……」
♪──────。
「なっ、なったぁぁ!」
「おめでとー!」
よっしゃぁぁ!このちょーしでがんばるぞー!
2年後。
楽器も買って、あたしは上達以上、進化した。
「ちょっとー! 日向ちゃんと夏帆、そこ音あってないよー! まったく、オーディションまであと2週間だとゆーのに! そんなんじゃコンクール出られないよー!」
「「はい!」」
ふふ。やっぱ楽しい。
吹奏楽っていいな。
「うちらは絶対関西行くんだから!」
「「はい!」」
この夏、全力で取り組む。
関西を絶対突破してやる!