flute&piccolo 派野 椎奈
「はぁ……」
不安だ。不安と言う2文字しか脳裏にない。
今年琥珀市から葉月市に引っ越してきた私。
知り合いも、顔ぶれもいない。
そんなゼロからスタートの私は、何をしたらいいのだろう───。
1週間後。
私は、全部単独行動だ。
【吹奏楽部! Let's enjoy! 部員募集中♪】
ピッと1枚のチラシを渡された。
「吹奏楽部、ぜひ体験きてくださーい! いま、音楽室で楽器体験会やってまーす」
小学校の頃、フルートをやっていた。
独奏より、合奏の方が楽しいかもしれない。
そう思って、とりあえず音楽室へ来てみた。
「あ! きたきた! 吹奏楽部へようこそ〜!」
と、クラリネット? ってゆー楽器を持った先輩がこっちに来た。
「お名前は?」
「あ、派野 椎奈です」
「んー、聞いたことないなー……、小学校どこだった?」
「あ、真綾小学校です。琥珀市の……」
「あー! 琥珀の方から来たの!へぇー」
と、私を見つめてる。緊張するな……。
「あなた、見た目的にフルートっぽいよね!」
「あ、私、フルートやってました! 」
「え!? マジか!」
もう1人の先輩?が来た。
あ、フルート持ってる。
「じゃあ、椎奈ちゃん?はフルートで決定だね!フルート今人数足らないし、こばTにゆっとく!」
と、手を引っ張られてフルートのところへ連れて行かれた。
「自分の楽器持ってる?」
「あ、はい。いま家にあります」
「じゃあ今日はこの中から好きなのを選んで!」
「はい」
あれ? なんかもう入部決定みたいになってるよーな……。ま、楽しそうだしいいや。
2年後。
私は今、フルートではなくピッコロを手にしている。
「椎奈ー!」
隣には、必ず仲間がいる。
「んー?」
「午後から外で練習だってー! タオル忘れんなよー!」
「もー、わかってるって!」
去年の3年生が引退してから、私がピッコロをすることになった。
生まれて初めてのピッコロ。
最初はすごくむずいなって思ったし、私なんかでいいのかなと思った。だけど、遥がすごく応援してくれた。
もちろん、今年のコンクールは初めてピッコロとして出場する。
だけど、それだけじゃない。今年で最後なんだ。
中学校生活最後のコンクール。
金賞、いや、関西に絶対に行く。
私の脳裏には今、全力疾走と言う4文字しかなかった。