trumpet 米田 紗江
うーん……。
なんてゆーか、混ざり合わない音。
なんでトランペットだけあんなに飛び出して聴こえるんだろう。
入学式の日、BGMを聴いて一言で言うと、ここの吹部は、強くなさそう。
ごめんだけど、周りの人は
「演奏生で聴けるの!? すごーい!」
なんて言ってるけど、紗江はもっとすごい演奏かと思ってた。
桜、吹部入るのかな。いや、あいつは入るな。プロ目指してるもん。さすがだよ、楓先輩の妹。
「でも、吹部入るんでしょ?」
桜の顔を覗きながら言った。
「……だって」
ほら。なんだかんだ言って入りたいんじゃん。
紗江は、桜が入るなら一緒に入る。
とか言いつつも、自分も入りたいと思ってる。
吹奏楽が好きだから。この気持ちは変わんないもん。
強いとか、へたっぴとか、そんなの関係なく入ろっかな……。
なんて、桜には言えなかった。
2年後。
コンクールが終わった。
私たちの、最後だった。関西まであと少しだったかもしれない。
歴史を塗り替えたかった。
確かに、あの頃は楽しけりゃそれでよかった。
でも、最近は思ってたんだ。
関西に行けるんじゃないかって。
解散した後も、私と桜はずっと学校前の門のところにいた。
「桜ー」
しゃがみこんで、腕に顔を埋めたままの桜の肩を揺さぶる。
「だって」
桜は諦めきれない時とか、もやもやしたときはいつもこの言葉を使う。ずっと変わらない。
「……桜。ありがとね」
口から零れ出したその言葉の後に、今度は涙が止まらなくなった。
「紗江。私も、ありがとう」
続けよう。高校に入っても。
泣きながら見上げた夜空は、煌びやかな星でいっぱいだった。