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吹部物語。〜北原中学校吹奏楽部〜  作者: 星野 美織
2013年度吹奏楽部入部員
11/12

trumpet 星野 桜

私は、期待されていたんだ。

自分も、期待してた。自分に。

だから、絶対にその期待を、"私"を失わないように、必死になってた。

この4年間。私は、自分の人生を、このトランペットにかけると決めたんだ。

だから、私は北原に入学したくなかった。

みんなと同じように東野が良かった。

吹奏楽のエリートの道に進みたかった。

「なんか、混ざらないよねー……音が。入学式の時に思ったけど」

ぼそっと声に出したのは、紗江だった。

「転校したい」

東野に。私の居場所はここじゃないことを証明したい。

「でも、吹部入るんでしょ? 」

「……だって」

私は、プロになりたいもん。

プロはみんな中学時代吹部に入ってるんだし、一応、続けられるまで……ね。

と言いながら音楽室の扉を開ける。

楓がいる。

その隣に───。

なんとなく知ってる人がいる。トランペットの人。

と、立ち上がって、いきなり曲を吹き始めた。

───吸い込まれそう。

なんだろう、この音。不思議な音色。滑らかで、水のように透き通っていた。

「あ、桜と紗江」

楓が言うと、その人はパッと吹くのをやめて、

「えっどの子どの子!?」

大人しそうに見えたけど、にこにここちらに向かってきた。

「桜ちゃんってどの子〜?」

「私です」

思わず手を挙げた。

ぱぁっと顔を輝かせ、

「で、隣が紗江ちゃん?」

「はい」

「私、西宮羽奏! 3年生だよ! 2人とも、もちろんトランペットだよね?」

「───はい!」

思わずいつもの練習の声で返事しちゃった。

だけど。

私はこの人の音色に少しでも近づきたい。

北原(ここ)で、頑張ってみよう。


2年後。

『パートリーダー会議』

黒板に書き上げた。

私はパートリーダーになった。

トランペットパートは私を含め全員で7人……6人。

今年はとても上手な子が入部した。

香坂凛奈。

そして、なんとなんと副部長にも選ばれた。

「それじゃあ、コンクールへの目標と、それを実現するためにするべきことの意見お願いします」

「はい」

私は、ずっとこの思いを忘れない。

いまはまだ実現できていないけど、ずっと忘れない。

「私は関西大会を目指したいです」

同時に、自由曲のソロの音が聴こえてくる。

凛奈だ。

負けたくない。最後だから。

ソロも、コンクールも。

絶対負けない。

あの大きなホールに、私の音を響かせたい──!


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