サラベール山脈(湖)
『よしっ!じゃあ、ちょっと行ってみるか。エクスライト発進!』
進行方向を指差しながら、満面の笑みを見せる。
こう言うのを一度やってみたかったんだよな。普段、仲間がいる時は恥ずかしくて出来ないから、一人の時くらいは若干羽目を外したいところだ。
『主よ、やる気を出しているところ悪いのじゃが、船と言う物はは海を進むものでは無かったかの?』
今エクスライトがいる場所は、海の遥か上空。それも、海よりも空の青さがはっきりと分かるくらいの。
『まぁ、色々と時間のロスが多かったからな。【サラベール】を目指すくらいは時間の短縮がしたいと思ってな』
実際のところ【サラベール】は、【ガリンペイロ】同様に海にも川にも面していない場所に有る。まぁ、ヨーロッパのサーバータウンとして機能している街なので、近くに行けば【ポルト】のような港町くらいは有ると思うんだけど………どのみち、近くまでしか船で行けないのなら空を飛んでショートカットしても問題は無いだろう。
それに、当然上空には誰もいないので、誰かにこの状況が見られると言う心配も無いからな。気楽に気軽に進めるのなら、利用しない選択肢は無いだろう。もし、仮に誰かに見られたとしても、それが出来る相手と言うのは九分九厘魔物。その場で倒してしまえば、そこからバレると言う事も無いからか。まぁ、空の魔物を僕が簡単に倒せるかは、別の話になるのだけど。
【サラベール】を白地図だけで確認するなら、近くに湖らしき物が有る。白地図で見るだけでは、地形を把握出来ないので、確かな事は言えないのだけど………ここまで飛んで行く事が出来れば、大幅なショートカットが出来るはずだからな。
『………黒は賛成。風が気持ち良い』
これで、二票か。シヴァのだらけきった様子を見る限りは、反対する事はなさそうだな。
『それに、白もたまには空の旅も気持ち良いだろ?』
『それは、そうなのじゃが………ワシや黒からすると今更なのじゃ』
船なのに、海を進むよりも空を飛ぶ方が遥かに早い事に納得がいかないみたいだな。まぁ、移動中は白達の好きな釣りは出来ないし、空を飛ぶ行為自体は普段から空を飛んでいる白からすると珍しくも無いのだろうけど、僕としては飛行機はともかく飛行船に乗る機会など現実では絶対に無いのだから、思う存分楽しませて頂きたいのも事実なんだけどな。
まぁ、改良前の時点では空を飛ぶ行為は、あくまでも緊急時のオプション扱いでしか使う予定の無かった代物だから、白の気持ちも分かる気がするんだけど、それとこれは話が別だからな。
それに、改良後は帆のサイズが大きくなった事とマストが強化された事で、高い高度でも風を掴む事が出来ている。そのお陰で今現在出ている速度が、今までの比では無い事も白が不満を覚える要因の一つかもな。
当然、その速度を維持出来るのは、白と黒がいるお陰なのだけどな。当の本人にしてみれば不満なのかも知れないな。竜の力が無かった場合は、魔力の高いジュネですら今のエクスライトを一時間は飛ばす事は出来ないだろうな。まぁ、ジュネが本気を出したなら、何かしらの裏技を編み出してでも長時間飛ばしかねないけどな。
『うむ。我も気に入ったのだ。この辺りの風は気持ち良いのだ』
普段通りに僕の肩に乗る白と黒は分かるのだけど、甲板の上でプカプカと宙に浮かんでいるシヴァが、何故浮いているエクスライトの速度と一緒に進むのか、かなり気になるところでは有るんだよな。まぁ、一匹だけが取り残されるよりは良いと思うけど………不思議では有るな。
ちなみに、エクスライトの修理が終わってから行われた進水式(二回目)は、海上で行われている。ここだけは、ヒナタのこだわりが強くて、僕も移動中は空を飛びますとは言い出せなかったからだ。
まぁ、今やっているのが空の進水式………この場合は進空式になるのか?と思えば良いだろう。
『うぉ~~~!!これは高いな』
今いる場所を見渡す限り、山、山、山。しかも、頂上を確認出来ないくらい高い山が聳え立っている。頂上を見る事が出来ないので正確な高さは分からないけど、今現在の船の高度が四千メートルぐらいなので、少なく見積もっても倍の八千メートルくらいは有るだろう。へたをすると大台の一万メートル越えも場所によっては有り得そうだからな。
船旅なら五日の行程を、空を飛んで二日に短縮して辿り着いたこの場所は、山の中腹の遥か上空。
今飛んでいる高度が高さ的に限界のようで、これ以上の高い場所………頂上の方には、どうやっても今のエクスライトの力では辿り着けない。まるで、見えない壁に遮られるかのように………
多分、《合成》した〈浮遊〉の限界地点なんだろうな。白達は、まだ上空へと飛べるみたいだけど、〈浮遊〉と同じような扱いの浮遊装置と【空気銃】を使い分けれる僕も、この高さが限界のようだからな。
【ペンタグラス】のイベントで登らされた山も普通よりも高かったけど………ここは、その比では無いよな。あの山は平地に単体でポツンと有った若干寂しい山なのだが、この山々は複数で存在している。まぁ、見える範囲全てが雪山の白銀世界なので、どちらかと言うと、白銀の山脈とでも呼ぶのが相応しいのかも知れないな。
現実世界の地図で言うと、この辺りならアルプス山脈が有る位置にあたるはずだからな。有りと言えば有りなんだろうけど………わざわざ、こんな大きな山脈を作る必要が有ったのだろうか?それとも、あの頂上には何かしらが隠されているのか?
僕としては、山脈を作るところまでは否定しないけど、ヨーロッパのプレイヤータウンを、わざわざ山脈の途中に作る必要は無かったと思う。まぁ、山脈の途中と言っても、ほぼほぼ麓と言っても差し支えの無い高さだけどな。周りの山々に比べても雪が少ないので、実際に住んでしまえば普通の街と大きく変わらないのかも知れないけどな。
まぁ、取り敢えずは悩んでいても仕方が無いので、下へと降りるのが先だろうな。なるべく目立たない場所で、船が有っても違和感の無い水場が理想なんだけど、そう都合良く………有った。御誂え向きに丁度良さそうな場所が有ったな。
僕達が降り立った場所は、山脈の中腹に位置する湖の畔。ただし、中腹と言っても山の真ん中よりもかなり下の方に位置している。当然、この場所からでも山の頂上は見えない。まぁ、エクスライトの最高度よりも低いので、当然と言えば当然なのだけど。それでも、僕達の目的地である【サラベール】の街よりは遥か上部に位置しているのだけど………本当に、頂上には何が有るんだろうな?そもそもの話、トリプルオーの山々に頂上の必要性は有るのだろうか?
当然、白地図を見ただけでは全く分からなかった事だけど、湖の水面は分厚い氷で覆われており着水する事は出来無かったので、深い雪の上に着陸もとい着氷している。現実世界の季節的には、そろそろ冬と言っても良い頃合いなので、こんな高い山の中に有る湖の湖面が凍り付いていても不思議では無いと思うけど、トリプルオーはファンタジーの世界なのだから、現実では有り得ないマイナスの世界でも年中凍り付かない湖とか、多くの雪山の中に一つだけ年中真夏に設定された山とかが有っても良かったのではなかろうか。僕としては、ほとんどの事に不満は無いトリプルオーだけど、フィールドの設定が現実世界に近過ぎるんだよな。まぁ、リアルを追及した結果なんだろうけど………
ちなみに、上空から見たこの湖の大きさは、推定河口湖くらいの大きさになっている。僕が降り立った位置からは全てを見渡す事は出来ないけど、大抵の部分を把握する程度の事は可能な湖にしては開けた場所になっている。
サーバータウンの近くに、こんな場所を作られたヨーロッパのプレイヤー達に若干の同情を覚えなくもないよな。まぁ、ゲームとして考えるなら色々な特色の有る変わった街が有った方が、楽しいし面白いのも分かるんだけど………雪山を割り当てられたヨーロッパのプレイヤー達の運の悪さを感じるな。
『主よ、そんな事よりも………さ、寒いのじゃ。か、身体全体が震えるじゃ。温かい紅茶が欲しいのじゃ』
『そうなのか?我は、まだまだ平気なのだ』
まぁ、シヴァが住んでいた深海と言う場所は雪山以上に寒いらしいからな。その過酷な深海で過ごしていたシヴァが寒さに強くても不思議では無いけど………僕は、ただ普通に現代を生きてきた人間だからな。白の意見に賛成だな。
『まぁ、ここは僕も白に賛成だな。だから、こんな場所で話を続けずに一度ホームに戻ろうか』
僕も、先程から寒さを耐えるのに限界を感じているからな。
『………黒も賛成。お楽しみの釣りは後日』
ここでも、釣りをする気になっている黒には脱帽だよな。氷の下にはワカサギのような扱いの魚もいると思うけど、それが魔物では無いと言う保証も無い。第一に、この寒さの中で釣りをしようとは僕は思わないからな。
それに、白程では無いけど、この寒さの中を【サラベール】の街まで直線にして五キロ程度の山を下る気にはならない。山を下るだけなので走り続ければ僕が思っているような時間は掛からないのかも知れないけど、寒さ対策だけは必要だろうな。
魔物が出てきても、この手がかじかんだ状態だと、まともに銃を扱える気もしないからな。まぁ、メインタウンの近くなので、強過ぎる魔物が出るとは思えないけど、こう言う土地なら毛皮系の素材や新種の薬草や木材は期待出来るからな。《裁縫》系のアキラは確定として他にも空いているメンバーを誘って、パーティで【サラベール】を目指すついでに採取をしても良いかも知れないよな。まぁ、まずは防寒具作りが最優先なんだけど………
『た、ただいま』
『おかえり………あれ?私の気のせいかも知れないけど、シュン凄く寒そうだね。顔色悪いよ。暖かい紅茶でも飲む?』
『助かります。えっと………五つ頼めるかな?』
『五つね。ちょっと待ってて』
僕が淹れるならともかく、アキラに頼むのだから好みの事まで、どうこう言う気は全く無い。勿論、他の四匹にも言わせる気も無いけどな。まぁ、放って置いても、それなりに付き合いの長いアキラは僕好みの紅茶は淹れてくれるだろけどな。こう言う時は、アキラと好みが似ているのが助かるよな。
『主よ、防寒具も大事じゃが、スキルの進化も必要なのじゃ』
『うん。それも必要かもな』
そろそろ、スキルを進化させるには十分なSPは貯まっている。この機会に進化させても問題は無いだろう………と言うか、雪山では何が有るか分からないから、特に身体強化系のスキルは率先して進化させておくべきだとも思う。アキラが紅茶を淹れ終わるまでに、まだ少し時間も掛かりそうだから、ちょうど良いかもな。
え~っと、上限まで成長しているのは、《拳》、《速度強化》、《回避強化》、《魔力回復補助》の四つで、それに対する僕のSPは48か。
まぁ、まずは一応は攻撃手段でも有る《拳》からだな。《拳》には、MPを大きく消費して通常攻撃に属性を載せる事が可能になる《魔拳》や連続攻撃を重視する《拳兼破》等が有るけど、今まで同様に銃剣を装備した《短剣技》のサポート的に使うなら、単純に上位進化の《拳技》が良いかな。使い方が今までと変わらないのも大きなポイントだが、単純にSPの消費の面でも他の二種類の半分の10SPで済むからな。
それに、《拳技》と言うくらいだからな。僕としては何かしらのアーツを覚える可能性を捨てきれないんだよな。まぁ、《拳》系でアーツを覚えた話は全然聞いた事が無いので、期待値は低いのだけど………
《魔力回復補助》は進化先が一つしか無いので、サクッと《魔力支援》に進化する。回復に掛かる時間が《魔力回復補助》よりも短縮される効果も有るが、竜の力を持つ僕には意味が無い事かも知れないよな。まぁ、いざと言う時には必要だったりする可能性も有るので、他のスキルにチェンジしたりはしないんだけどな。
この二種類には全く問題も不満も無いのだけど、問題なのは《速度強化》と《回避強化》なんだよな。この二種は、各々単独でも《迅速》と《脱兎》と言うスキルに進化させる事も出来る………が、二つで一つのスキルへ進化させる事も可能になっている。多分、これが身体強化系の複合スキルの一つになるんだろうな。まぁ、効果が分からなくてもレアなスキルを選ぶ方が僕らしいかな………と言う事で、《緩急》に進化っと。
『………なるほど』
このスキルは、全ての行動に対する速度にボーナスが有ったり回避率が上昇するだけでなく、新に急停止が可能になった。急転回では無く急停止。
今までは、上昇した速度を維持して高速での移動しか出来なかったので、停止するまでにそれなりの距離が無いと止まる事も出来なかったが、急停止が可能になった事で、どんな速度を出していてもピタッと止まる事が出来る。
これのお陰で、より多彩なフェイントや微々たる動きで相手の動作のタイミングを外す事が出来ると言う事だよな。牽制や遊撃を重視していて、速度を上昇しての回避がメインスタイルの僕には、かなり嬉しいスキルだと思える。
さらには、実際の速度よりも遅く見せる事も出来るよな。他人から見たら簡易的な残像みたいな感じかな?これを上手く使えば、今まで以上に滅多な事ではダメージを喰らわないだろう。まぁ、結果的に《緩急》は魔物戦用と言うよりもPVP用の能力かも知れないけどな。
戦闘用に装備していた二つのスキルを一つのスキルにしたので、装備スキル枠が一つ空くのだけど、僕の場合は戦闘系のスキルが余ってないんだよな。まぁ、取り敢えずは《家守護神》でもセットしておくかな。新しくスキルが見付かるまでの代用品として………
『シュン、お待たせ。これで温まって。それで………何が有ったの?』
まぁ、あれだけ寒そうにしていたら気になるよな。
『紅茶、ありがとう。【サラベール】の近くが、ちょっとした雪山でな………寒さに耐えれなくて戻ってきた』
あ~温まる。体の芯から温まると言うのは、まさにこの事だな。あとは、ここに炬燵とか有ったら文句無しで最高なんだけどな。
『じゃあ、もう【サラベール】には着いたんだ。【サラベール】は、どんな街だったの?』
『いや、まだ着いてないんだよ………』
『???じゃあ、寄り道中?何か気になる物でも有ったの?』
『気になる物と言うか………今は最短距離で【サラベール】を目指している途中なんだけど、そこを目指す為には雪山を下らないと辿り着かないんだよ』
『???』
全く伝わって無いよな。まぁ、この説明で伝わる訳も無いのだけど………普通の山なら、登らないと下る事は出来ないからな。
『主よ、それでは全く伝わらないのじゃ。内容を知っているワシらでも虎猫の姉さん同様に首を傾げるのじゃ』
それは、僕も分かっているんだけど………さっきまで寒いところに居たせいか、まだ頭と舌が上手く回らないんだよな。
『虎猫の姉さんよ、使えない主の代わりにワシが答えるのじゃ。ワシらが目指しておる【サラベール】は、山の中腹に有るのじゃ。そこで、ワシらはエクスライトで空を飛んで一番近くの水辺まで近付いたのじゃ。そして、着水する為に選んだ一番近い水場が山の中腹に有る湖じゃったのじゃ。ワシらは、そこに降りたのじゃが、当然そこは雪山なので外は………』
『………極寒、超~寒過ぎる』
『………と言う事じゃ。黒よ、ワシが一番言いたかった超~寒過ぎるを取らないで欲しいのじゃ』
まぁ、ところどころ伝わり難い部分も有ったけど、必死に落ちに持っていこうとしたのに、その落ちを取られるのは少し可愛そうだよな
『あ~、そう言う事か。それで、そんなに寒そうなんだね。エクスライトって言うのは、ライトニングの改良型だよね。ヒナタから話は聞いてるよ。それで、雪山は今の装備では全く耐えられそうもない感じ?』
『そうだな。直線距離で約五キロ、山道に沿って歩くとするなら十キロ程度の山道は覚悟した方が良さそうだからな。まぁ、無理をすれば強行で行けない事もないと思うけど………魔物に遭遇したら、手がかじかんで銃が扱えそうも無いんだよな。せめて、手を温める為の手袋か体温調節可能の特殊効果が付いた装備がいるかな。あの場所がサーバータウンのヨーロッパのプレイヤーは尊敬できるな』
良し、握力が戻ってきたな。やっぱり紅茶の力は偉大だな。
『え~そんなに寒いんだ。じゃあ、しばらくは《裁縫》かな?私も何か手伝おうか?』
僕から頼もうと思っていたからな。手間が省けたな。相変わらずタイミングが良いよな。
『じゃあ、頼める?それと………雪山の攻略だから………』
『少し協力者が必要なんだね。雪山だと毛皮系の素材も手に入りそうだから、私は一緒に行っても良いよ。【サラベール】にも興味有るし。でも、そうなると………あと二~三人は必要?』
流石は相棒だな。全てを言わなくても全てが伝わる。はっきり言って、かなり楽だ。まぁ、それなりに長い間一緒にいるから出来る芸当なんだろうけどな。
『うん。いた方が良いかな』
『それなら、ブレッド君とサラちゃんを連れて行く?』
なるほどな。本当なら、能力的にケイトとカゲロウを連れて行きたいところだが、ケイトはイベント中だから無理だろうし、カゲロウもそれを手伝いたいだろうからな。
『二人の予定が空いてれば、そうするかな』
まぁ、この機会にブレッドとサラとの距離を少し縮めても良いかも知れないな。それに、ブレッドとサラはアキラとパーティを組んだ事は無いと思うから、アキラとの距離を縮める意味でも丁度良いかもな。
『私は、空いてますよ』
『私も、ご一緒して良いですか?』
その二つの声に反応して振り返ると、そこには造船所から戻って来たサラとヒナタがいた。話の内容を理解しているところを見ると、一体いつから居たのかは気になるところでは有るのだけど………
『おう。勿論、良いぞ。ヒナタも手伝ってくれると助かるからな』
ちょっと回復系のプレイヤーが多い気もするけど、僕が前に出れば、戦闘面は大丈夫だろう。
うん………ちょっと待てよ。サラの《泥魔法》は雪山で使うとどうなるんだろうな?流石に雪崩とかにはならないよな………ちょっと洒落にならないくらい怖いから、使用は避けて貰おうかな。
『ありがとうございます。それで、エクスライトの調子はどうですか?』
『おう。確実に前よりも良い感じだな。海を進むのも良かったが、空を飛ぶのはさらに良かったぞ。新しいマストが今まで以上に風をグッと掴む感じだな。速度が段違いだ』
『そうですか。それは、良かったです』
ヒナタも満足そうだな。【サラベール】に着いたら、一回他の皆を乗せて空を飛んでも良いかもな。特にサラは船の改良を手伝ってくれたのに船に乗って進んだ事が無いのだから。
ちなみに、サラは二回目の進水式の時は、個人的な用事が有ってログインが出来ていないので、残念ながらエクスライトが造船所以外の水面に浮かんでいるのも見た事が無い。これは、はっきり言って役得ならぬ約損だろう………
『シュン、ブレッド君にも連絡取れたよ。明後日ってなら、大丈夫みたい』
早いな。今のやり取りの間にコールで予定を押さえたみたいだな。まぁ、明後日なら土曜日なので、ゆっくりと攻略も出来るだろう。ここにいるヒナタとサラも明後日で問題が無いらしいからな。
『あっ、そうだ!大事な事を思い出した。サラちゃんとブレッド君は船のゲート使えないんじゃ………』
『その点は大丈夫だ。エクスライトもホーム扱いなっているからな。ホーム間のゲート移動はギルドメンバーなら可能だからな。アキラも塔のゲートは使えただろ?』
『そうなんだ………エクスライトってホーム扱いになっていたんだ。私の中に有る常識の船からは、どんどんかけ離れていってるみたいだけど。思い返せば、確かに塔のゲートは登録していないのに使えたかも』
『まぁ、造船所と同様にギルドホームの別館扱いにしてあるだけなんだけどな』
アキラとサラは若干引き気味か?これは色々と便利な設定なんだけどな。
〔『主よ、この場合は、この話を聞いても全く引いてないヒナタ嬢の方が異常なのじゃ』〕
〔『それは、ヒナタには早い段階でエクスライトがギルドホームに設定してある事がバレていただけだ』〕
まぁ、色々と整備している時に気付いたからだろうけど、異常と言われれば異常なのかも知れないよな。言われる本人は僕同様に不本意を主張するだろうけど。
『簡易の防具は、僕達が準備するから、それ以外の準備は各々で頼むな』
さて、温かい雪山下山を目指して準備しますかね。
動き易さを重視して考えると、今の防具の上にもう一枚身に付けるよりは、このままの防具で体温の調節を出来る方が今後(有るかどうかは分からないけど、暑さ対策)の為にも良いんだろうな。
………と言う事はだ。簡単に取り外しの出来るアクセサリー………例えば、その場しのぎ的な腕輪でも作って、有るかどうかは分からない体温調節関係の特殊効果を付けられるかどうかを試した方が良いかも知れないよな。まぁ、この作業が明後日までに間に合うかどうか微妙だから、アキラには別のアプローチでの攻略法を頼んだ方が良いかも知れなな。
『アキラ、僕は腕輪とかに特殊効果を付ける系で攻めてみるから、アキラは、上に羽織る防寒具系で対策を進めてくれる?』
『了解。ちなみに、防寒具はどんなのが良い?』
『ローブやコート系かマフラーや手袋等の小物系?とかはどう?』
『確かに、毛皮のマフラーとローブは見ただけでも温かそうだから良いかもね。分かった。ちょっと試してみるね』
ちょっとモゴモゴして動き憎そうな気もするが、今回は動き易さよりも寒さ対策の重要性が遥かに上回るからな。
『じゃあ、その方向でお願いします』
あとは、アキラに任せておけば、良いものが出来上がるだろう。僕の腕輪も負けてられないよな。
問題は腕輪の素材だけど、何にしようかな?基本は、金属製か木製かの二択だよな。まぁ、両方作ってみてから考えても良いかな。
『シュンさん、ちょっと良いですか?』
『どうかしたのか?』
『アキラさんとフレイさんには既に相談済なんですけど、ホームに《執筆》の工房を作っても良いですか?』
『あぁ、別に構わないぞ。空いてるスペースを使って適当に設置してくれて良いからな。場所が足りなかったら工房のサイズ大きくする事も出来るから言ってくれ。それから、アキラかフレイの許可が有れば、僕の許可が無くても自由に設備を設置や拡張してくれて構わない。中級までの工房なら街の工房に頼めば簡誰でも単に設置出来るし、お金はギルドの口座から使えば良いからな。まぁ、工房の中以外の施設は神殿になるから僕達しか設置出来ないけどな』
『ありがとうございます』
『それにしても、サラは《執筆》を取得したんだな。それは、どう言うスキルなんだ?』
取得していない生産系の事は、詳しく知らないからな。かろうじて、魔導書を書いたり、その日有った出来事を書き記す日記のような事が出来るスキルと言う事だけは知っている。
『えっとですね。《執筆》スキルのメインは、自ら紙を作って魔導書等の製作をするスキルです。作れる魔導書は製作した紙と自分の魔法スキルに依存しちゃうみたいなんですけどね。あとは、日記とか記録類ですかね。まだ、レベルが低いので詳しい事が正確には分からないんですけどね』
『へ~紙から製作可能なんだな。それは格好良いよな。サラ、頑張れよ』
自分で製作した紙に依存するなら、レベルが上がったり進化させたりすると【スキルの書】や【アーツの書】も作れるかも知れないよな。まぁ、紙を自作するとこから始めるなら、簡単に出来る物では無いのだろうけど、十分に魅力的なスキルだな。
『はい。ありがとうございます』
その言葉と同時に、勢いよく頭を下げて颯爽と工房を出ていくサラ。多分、その足で工房の設置に行ったんだろう。
そう言えば、フレイの話だと、急に工房が………
『きゃ、何!?何これ!?シュン、何かしたの?』
あぁ、これの事か、ちょっとした地震だな。
工房全体がグラグラと揺れて《執筆》用の設備が床からニョキニョキと音を立てて下から生まれてくる。まるで雑草が生えるかのように………確かに、これを知らなかって体験したなら絶対にビビるよな。そこにいるアキラと同様に。
『アキラ、慌てなくても大丈夫だ。サラが《執筆》の工房を追加しただけだから』
『えっ!?設備の追加って、こんな感じなの?シュンは、知ってたの?』
『あぁ、フレイから聞いた事が有ったからな。まぁ、僕自身が体験するのは初めてだけど。これは、二度は経験したくない感じだよな』
『だね。私も二度目は遠慮したい感じかな』
これは、ギルドのルールとして増やすべきだな。次の会議の項目に上げておこう。誰かが工房内にいる場合の工房増設の禁止を………
【対温の腕輪】防御力10〈特殊効果:耐土〉〈製作ボーナス:体温上昇〉
【耐温の腕輪】防御力15〈特殊効果:耐氷〉〈製作ボーナス:適温維持〉
う~ん、残っていた素材で製作した木製の【対温の腕輪】は軽いけど、付ける事の出来た製作ボーナスが微妙だな。反対に銀を使った合金製の【耐温の腕輪】は重たいけど、製作ボーナスの方は素敵なんだよな。
試行錯誤の上、二種類の腕輪を作ってみたけど、どちらも一長一短と言った感じだよな。僕としては、この丁度中間が欲しいところだからな。
『皆は、どう思う?』
『主よ、主の場合じゃと木製が良いのじゃ』
『………銀製』
『どっちもどっちなのだ。我みたいに何も身に付けずに耐性を得るのが正解なのだ』
………見事に三つの意見に別れたな。シヴァの意見は却下するとしても、このままだと相談した意味が無いんだよな。まぁ、僕自身も迷っている事だから、白と黒の気持ちも分かるのけどな。
こうなると………両方ともそれなりの数を作って、状況に合わせて好きな方を使って貰うしかないかな。最悪はアキラが作っている防寒具も有るし、雪山下山の間くらいはどうにかなるだろう。
『一応、白と黒の分も作る予定だけど………いる?よな』
二匹共、寒がっていたからな。銃の姿の時は無理だと思うけど、竜の姿の時用に身に付けれそうな物が有っても良いよな。まぁ、サイズ的には腕輪が首輪になりそうだけど。
『主よ、ありがとうなのじゃ』
『………助かる』
まぁ、これは各々が薦めてきた方を用意しておけば良いだろう。
『じゃあ、そろそろ出発するね。皆、寒さ対策は大丈夫?うん。大丈夫そうだね。一応、シュンが作った腕輪も鞄の中に入れておいてね。アレは、温度調節が出来る貴重品だからね』
【サラベール】を目指して山を下山する為に、ヒナタとサラが選んだ寒さ対策は、アキラのローブだ。まぁ、僕の腕輪の性能がダメだった訳ではなく、今回は他の装備の兼ね合いから上から羽織れるローブが向いていただけだ。何度も言うけど、決して僕の製作した腕輪がダメだった訳では無い。ここだけは覚えておいて欲しい。
ちなみに、今回のパーティで前衛を任せるブレッドは、僕が製作した銀製の腕輪を選んでいる。今まで装備していた物よりも防御力が高いらしく、かなり気に入ってくれたみたいだ。
『それと、今回のパーティーリーダーは………そうだ!!ヒナタやってみる?』
『私がですか?』
『そうだな。ヒナタが、やってみても良いんじゃないか?今回、僕も前衛に回るし、今回のパーティーメンバーの戦力なら、アキラには前衛も後衛もフォロー出来る位置で遊撃を任せたいからな。それと、このメンバーだと後衛から全体を把握するプレイヤーも必要になりそうだから、それも兼ねてな』
『分かりました。やってみますね。ブレッド君とサラちゃんもヨロシクお願いしますね。それでは、早速隊列ですが、前衛をブレッド君とシュンさん、サラちゃんとアキラが中衛。後衛を私が受け持ちます』
大体僕の思った通りの配置だな。まぁ、僕ならアキラをヒナタと同じ後衛に配置するけど………そこは、アキラも分かってるみたいだな。ヒナタから隊列の指示を聞いた瞬間に目で合図してくるくらいだから、任せておいても大丈夫だろう。
〔『シヴァ、念の為に後衛がピンチになりそうなら教えてくれ。白と黒は、例の如く《探索》でフォローをヨロシク』〕
『まずは、この辺りで練習と雪に対しての慣らしも兼ねて少し狩りでもしましょうか。この隊列と皆さんのスキルの把握の為にも』
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/二弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:七属性〉
【白竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv71
《錬想銃士》Lv14
《真魔銃》Lv18《操銃》Lv38《短剣技》Lv41《拳技》Lv2《緩急》Lv2《魔力支援》Lv2《付与術改》Lv21《付与練銃》Lv22《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv46《家守護神》Lv62
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv26《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv10
SP 12
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉