EXライトニング
確かに、シヴァの《幸運》を使えば、ヘビーウッド(ライト)の採取は楽になるんだろうけど………二十四時間で一分間しか使えないと言う微妙に厳しい制限付きだからな。そんなに多くは倒せないだろうな。
一分間で倒せるとしたら、魔物自体を発見する時間を含めると、二匹~三匹が限界か?
〔『………上手く《結界》使う』〕
《結界》ねぇ………まぁ、上手く使うなら、それも有りなのかもな。
『あっ、そうだ、そうだった。白と黒は、いつ《結界》のスキルなんか覚えたんだ?』
あの時は、バタバタしていたからな。完全に存在を忘れていたな。
〔『レベルが30に上がった時じゃ。ワシらが覚えたのは、同じ《結界》スキルの分類なのじゃが、ワシと黒では扱えるアーツは別じゃ。ワシが扱えるのは〈部分結界〉のアーツじゃ』〕
〔『………黒は〈簡易結界〉』〕
同じ《結界》スキルでも何かしらの違いが有るのか?
白と黒が言うには、白の〈部分結界〉は指定した場所に対して張る見えない壁のようなもので、物理攻撃を一回だけ完全に防ぐ事が出来る盾みたいな物らしい。これは、多段ヒットするアーツも一回の攻撃とカウントされる優れものらしい。簡単に言うなら、マジックシールド系魔法の物理攻撃バージョンってところだな。黒の〈簡易結界〉は、十分と言う時間制限付きだが指定した範囲への人物に対する進入と進出を自在に設定出来るらしい。どちらも使い方次第で一長一短ってところだよな。
紙装甲で回避を主体とする僕にとって、一回だけ攻撃を防いでくれる〈部分結界〉は緊急時の保険代わりに使える非常に有効なアーツになるだろうし、〈簡易結界〉も仲間が上級魔法を詠唱する為の時間を稼いだり、一定のエリアに対して相手の進入を禁止にしたりと、その価値は計り知れないよな。
ちなみに、【noir】のホームに有る露天風呂に使った【アーツの書・結界】は、〈完全結界〉と言うアーツだったようで、一度発動すれば発動者が解除する、もしくは何かしらの方法で〈完全結界〉を破壊されない限りは範囲内に限り無敵状態になる。勿論、〈簡易結界〉同様に外から中は勿論の事、中から外への攻撃も出来ない仕様になっている。まぁ、露天風呂の〈完全結界〉は《合成》した事で多少マイナス方面に性能も変化をしているみたいなんだけどな。
今思うと、かなり勿体無い使い方をしたのかも知れないな。
まぁ、それは置いておくとして………白が《探索》《吸収》《結界》、黒が《探索》《相殺》《結界》を使えると言う事になるんだよな。お互いに《探索》と《結界》は被っているけど、かなり便利なんじゃないのか?【白竜】にはHPだけでは無く、軽い状態異常の治療効果も有るからな。
〔『主よ、まだまだ甘いのじゃ。ワシと黒は、今の狩りでレベルが80に上がっておるのじゃ』〕
〔『そうだな。目標の《聖獣》だったか?までは、もう少しだな』〕
今の白と黒からは、大人の姿を全く想像出来ないが、なんと言っても竜だからな。ファンタジーの世界で竜と言えば最強種の一角を担うはずだ。多分、相当格好良いのだろう。僕も密かに期待しているからな。
〔『主よ、ワシらが言いたい事は、全く違うのじゃ』〕
〔『………黒は《魔力吸収》』〕
〔『えっ!?黒、ついに《魔力吸収》を覚えたのか?』〕
黒が無言のままコクリと頷く。
《魔力吸収》は魔法を使ってくる魔物を上手く相手にする為に、是が非でも欲しかったスキルなんだよな。白が《吸収》を覚えた事で、密かに期待はしていたのたけど、白が《吸収》を覚えたレベルで黒が覚えたのは《相殺》だったからな。内心、《魔力吸収》は覚えない物だと思っていたよな。
無論、《相殺》スキルが使えないスキルでは無く、攻撃魔法を同等の魔力で消し去る事の出来るので、使い勝手はかなり良い部類だと思っている。
一方《魔力吸収》は、僕の想像していた通りのスキルで、相手のMPを吸収して僕自身に還元してくれるスキルらしい。ちなみに、吸収したMPを【黒竜】に蓄えておく事も可能で、その蓄えた魔力を仲間の回復に利用する事も出来るらしい。
僕自身には、強力過ぎる竜の力が有るので普段は必要としないけど、ピンチの時には必要になるスキルだろうな………それにしても、習得までに随分と時間が掛かったな。まぁ、その分は強力なスキルなんだろうけど。
〔『ワシは《蘇生》じゃ』〕
『はぁぁぁぁぁ!?』
絶対に僕の聞き間違いだよな。今、白は《蘇生》と言わなかったか?
〔『主よ、落ち着くのじゃ。外に声が漏れておるのじゃ。ワシが覚えたのは《蘇生》じゃ。死んで間もない者ならば、蘇らせる事が出来るようになったのじゃ』〕
『はっ、ははっは』
うん。どうやら、僕の聞き間違いでは無かったみたいだな。今度は間違いなく《蘇生》と聞こえた。あまり聞こえて欲しくは無かったけどな。
白の言う、死んで間もないと言うのは、死に戻りで発生するタイムラグの事だろう。魔物に殺されたり、ダンジョンのトラップで死んでも、すぐに神殿に飛ばされる訳では無く、神殿で復活するまでに若干の時差が発生している。その間、時間にして約一分、個人的には微々たる時間にも感じる一分間。この事は、検証好きのプレイヤー達が何回も死に戻りをして正確な時間を調べたらしい。これに関しては、本当にお疲れ様でしたと言いたいものだ。
僕自身が死に戻りは経験者だけど、目の前で死んだプレイヤーをじっくりと監察した事は無い。それなので、正確には分からないけど、多分プレイヤー自身に意識が無いだけで死んだ場所に魂みたいな物が、しばらく待機しているんだろうな。見える、見えないは別にしてだけど………個人的に言わせて貰えるなら、絶対に見えないで欲しいけところだな。
トリプルオーの中で現時点では、生き返らせる薬も魔法も発見されていない。生き返らせる為の蘇生薬等のアイテム開発は、MP回復薬と同様に《調合》系の職人達の悲願の一つだ。そして、生き返らせる為の魔法は《回復士》系のプレイヤー達の大きな目標の一つでも有るのだから。
僕は、【白竜】を通してだけど、その境地に立った(推定)初めてのプレイヤーになるんだよな。ちょっとだけ誇らしい気もするけど………使えば、絶対に悪目立ちする事だけは保証されている。しかも、昨今の保険や銀行の利子よりも手厚い事は間違いないだろう。
少し《蘇生》を試してみたい気もするけど、その為に誰かに死んで貰ったり、誰かを倒すのは問題外だからな。案外、使いどころは少ないのかも知れないな。
〔『主よ、完全に目的を忘れて脱線しておるのじゃ』〕
〔『そうだったな。このままサボリ気味だと、前衛で頑張っているカゲロウに怒られそうだからな』〕
白達と話している間も、魔物への回復や攻撃に対しての牽制は忘れていないので、厳密に言うとサボリとも違うのだけど、反応は確実に遅れている。多分、カゲロウにも僕達が《心話》で何かしらの話をしているのはバレている事だろう。
さて、問題はどうすれば効率良く【虹鯨】を使えるのかだよな。
〔『主よ、それじゃったらじゃ。黒の〈簡易結界〉の中に魔物を閉じ込めて、シヴァ様で纏めて倒すのが良いと思うのじゃ』〕
なるほど………それで『上手く《結界》を使う』だったんだな。《結界》と聞くと外に対して守る事ばかりに考えが先行していたので、反対に内側に対して使って閉じ込めると言う発想は全く無かったよな。
確かに、周囲の魔物を集めて範囲内に閉じ込めてから纏めて倒すのであれば、一分間も有れば十分にお釣りがくる。
〔『よしっ、そうと決まれば実践有るのみだな。白と黒も協力ヨロシク』〕
ちなみに、多くのヘビーツリーを集める理由は、いくら《付与術》で最低の状態まで〈攻撃力激減〉を使っても、【虹鯨】の攻撃力だとクリティカルに頼らなくても一撃で簡単に倒せてしまうので、ループ採掘が使えないからだったりする。
滅多に有る事ではないと思うけど、こう言う時の為に手加減する為のスキルも探しておいた方が良いのかもな。普通なら絶対にゴミスキル扱いなんだろうけど………この場合は神スキルになるかも知れないのだから。
『カゲロウ、計画変更だ。シヴァを試してみる』
『うん?良く分からないが了解だ。それで、俺は何をすれば良いんだ?』
そうだな。この場合、カゲロウの出番は無いよな。いや、待てよ………
『まずは、全員でヘビーツリーを探して黒の〈簡易結界〉で閉じ込める。カゲロウは白とペアを組んでくれ。集めたあとの事は、僕に任せてくれれば良い』
魔物を探して集めるのは、皆で手分けした方が効率が良さそうだからな。
『俺には、ギルマスが何を考えているか分からないが、了解だ』
この場合は、説明するよりも実践して見せた方が早いだろう。
白達の《探索》スキルの恩恵も有り二十分程で、三十匹以上のヘビーツリーを見付けて、黒が作った〈簡易結界〉に閉じ込めている。当然、〈簡易結界〉の効果が切れないように上手く〈簡易結界〉を継続発動させて貰っている。
ヘビーツリー捜索中には他の魔物も出現したけど、目的の邪魔にならないように、そちらの方も各自で美味しく処理させて貰ってた。まぁ、この場所がサーバータウンに近い場所なので、経験値的には微妙だったんだけどな。
『カゲロウ、僕が〈簡易結界〉の中に入って魔物を狩り始めたら鞄の中身を確認してくれ。それと、中に入って三十秒経ったら十秒毎に教えてくれ』
この荒業には制限時間が有るから、残り時間だけは常に把握しておいた方が良いだろうな。何せ始めて試す事だから、警戒はしすぎるに越した事はないだろう。
『おい、ギルマス。本当に何をするんだ?俺には、ますます分からなくなったんだが………』
『多分、鞄の中を見ていたら分かる。まぁ、僕も今思い付いただけで実行するのは初めてだからな。正直なところ、本当に上手くいくか分からないんだよな』
〔『我のラッキーを信じるのだ』〕
全く信じていない訳では無いけど、能力が凄過ぎるからな。信憑性が薄いのも事実なんだよな。
『じゃあ、行くぞ!』
黒に〈簡易結界〉への侵入許可を出して貰い、僕は両手に【虹鯨】を持ち中へと入る。
中へ入ると同時に、近くにいるヘビーウッドから順に射撃していくのだが、明らかに短銃………いや、これは通常攻撃の威力ではないと言った方が正しいのかも知れないな。〈簡易結界〉の外にいる、カゲロウの驚く声も聞こえてもくるからな。まぁ、カゲロウの場合は鞄の中で増え続けているであろうヘビーウッド(ライト)に対してかも知れないけどな。
【虹鯨】の射撃は、一撃で一匹を確実に仕留めていく。これなら〈攻撃力増大〉は、必要無かったかもな。それくらいの威力だ。【虹鯨】は使える機会が限られているからな。今の内に、ちょっとしたテストも兼ねておくか…………
『喰らえ〈リング・イン〉。そして、これはオマケだ〈奥義セブンスター〉』
戻ってきた【虹鯨】をキャッチして、すかさず次のアーツを放つ。
『………うわっ!?』
最初に放った大量の魔物を巻き込む〈リング・イン〉も十分に強力なアーツなのだけど、この場合は〈奥義セブンスター〉と【虹鯨】の相性が良過ぎたみたいだな。
通常の〈奥義セブンスター〉は一体の魔物を七つの弾丸が一斉に狙うアーツなのだが、【虹鯨】で放つ〈奥義セブンスター〉は、放たれた七発の弾丸が七色の属性を身にまとい別々の七体の魔物を葬っていく。まるで、放たれた弾丸に意思でも有るかのように………こうなると、名前は同じでも全く別のアーツって感じがするな。
『なぁ、ギルマス。これ、本当にカウントダウンを俺に頼む必要は有ったのか?』
カゲロウの言う通りで、カウントダウンは必要無かった。〈簡易結界〉に入って約二十秒後に放った二つのアーツで、残っていたヘビーツリーは瞬殺された。つまり、合計しても三十秒も必要無かったと言う事だ。
『確かに必要は無かったかも………な。カゲロウ、鞄の中身は?』
『あっ!!そうだった………』
どうやら、確認するのを忘れていたな………と言う事は、さっきの驚く声は【虹鯨】の攻撃力に対してだったみたいだな。まぁ、それについては分からなくもないけどな。
『シヴァ、お疲れ様』
『うむ。威力が微妙だが、役に立てて何よりなのだ。威力が微妙だったが』
軽くかすっただけでもオーバーキルだったと言うのに、まだあれ以上の威力を求めるんだな。これだから、王と名の付く者は我が儘で困る。
『えっと、ヘビーウッド(ライト)が八本………』
『えっ!?』
たったの八本?まぁ、全然集まらなかったレア素材に対して、たったの八本と言うのは失礼な話なかも知れないけど、シヴァの話では幸運は確実に貴重な素材を落とさせるスキルだったはずだ。それが三十匹以上倒して一桁の八本は少ないんじゃないのかと思うは事実だ。まぁ、現実はそんなに甘いものでは無いのかも知れないけどな。
『………それと木核が二十四個だ』
『うん?その木核って言うのは何だ?始めて聞く名前なんだけど………』
『言い難い話だが、これが本当のヘビーツリーのレア素材みたいだな。どうやら、俺とヒナタがレア素材だと思っていたヘビーウッド(ライト)の方は、通常のドロップ素材の変異種か亜種だったみたいだぞ』
通常のドロップの変異種か亜種?
………と言う事は、分類的には通常のドロップの範囲なのに、レア素材並に落とさなかったと言う事か?その時点で十分にレアな部類も入ると思うけど………うん!?待てよ、他にもレア素材だと思っていた物の中にも変異種が混ざっているのかも知れないよな。まぁ、どっちにしても、改めて検証する気は無いけどな。
『説明を続けるぞ。この木核は木材の芯材、または核材と言ったら良いのか、木材自体の強度を増す為の補助的な役割を持つ素材らしい。これなら、ヘビーウッド(ライト)と合わせることで、よりマストに向いてるかも知れないぞ』
『そうなのか?』
『あぁ、一応ヒナタに確認してみないと分からないけど、これなら大丈夫だと思う』
僕達が目的にしていた素材よりも良い物が回収出来たのだから、結果的には良かったんだよな。僕にしては本当に運が良かったかも知れないな。
〔『主よ、それは主の運が良かったのでは無いのじゃ。シヴァ様の《幸運》が素晴らしいのじゃ』〕
〔『………右に同じ』〕
まぁ、そうだろうな。でも、少しくらいは夢を見せてくれても良いのでは無いかな?
『………それでだが、改めて俺は問うぞ。ギルマスは一体全体何をやらかしたんだ?何をどうすれば、こんな滅茶苦茶な結果になるんだ?』
『う~ん、滅茶苦茶かどうかは今は別にしてだな。この【虹鯨】はホームでも話したと思うけど、シヴァの《魔武器化》した状態なんだよ。だから、白達と同じように特殊なスキルを持っていて、その一つに《幸運》と言うのが有ってだな…………』
『《幸運》か………なるほど。それで、レア素材ばかりを選んだかのように次々とドロップしたのか………何となく能力は分かったぞ』
カゲロウは、自身が身に付けている【銀狼の誓い】を見ながら答えた。多分、自分のファミリアのスキルにも期待しているんだろう。銀狼石が、どんな成長をして、どんなスキルを覚えるかまでは分からないけど、期待する気持ちは分かるからな。まぁ!今の僕が一つ言えるのは、姿が格好良いのだけは保証するぞ。
まぁ、《幸運》の能力の方は、今のドロップ結果とスキルの名前と事前に有った僕の自信から想像したら、難しい事では無いかもな。
〔『シヴァ、本当にありがとな。かなり助かった』〕
〔『うむ。これからも、我に全てを任せておけば間違い無いのだ』〕
まだまだ、白達の足下には及ばないが、少しは信頼が上がったかな。まぁ、どんなに上がったとしても、全てを任せる気にはなれないけどな
僕は、ホームを経由して【蒼の洞窟】へと転送して行く。ホームに着いた時に、《鍜冶》の音が聞こえていたのでフレイも自分の担当を頑張っているんだろうな。ヒナタに何を頼まれたのかは分からないけど、あの軽快な金槌の音なら、何を頼まれていても彼女は楽しめている事だろう。
『ヒナタ、採ってきたぞ』
『えっ!?思ったよりも、早かったです………ね。そんなに、簡単に集まる物でしたか?』
その顔を見ると、ヒナタもヘビーウッド(ライト)を狙って集めに行った時は、なかなかドロップしなかったんだろうな。
『まぁ、色々な協力が有ったからな。あと、カゲロウから伝言だけど、今日の残りはケイトの手伝いをすると伝えてくれって。それと、素材は鞄の共有部分に入れて有るから、あとで確認してくれ。頼まれてたヘビーウッド(ライト)も数は足りるし、それ以外にも木核と言う素材も有るから試してみてと言う事だ。そう言う事で、僕はライトニングの周りに足場を組み立てに行ってくる』
ケイトとブレッドが、二人きりなっているのが気になるんだろうな。思い返せば、【ペンタグラス】に着いた頃から、カゲロウはそわそわしていたからな。相手は小学生なのだから、特に気にしなくても良いと思うけど………あれ!?カゲロウはブレッドが小学生って知ってるんだったか?今度確認してみようかな。いや、ここはあえて黙っておくのも面白いかも知れないよな。
〔『主よ、非常に悪い顔をしているのじゃ。ワシは反対なのじゃ』〕
〔『………黒は、黙っておくのに一票』〕
〔『我も黒に同意する。そちらの方が色々と楽しめるのだ』〕
後者の二匹が、酷い事を考えているけど、民主主義的には後者の勝ちになるのかな。
『………はい。素材は確認出来ました。ありがとうございます。それでは、足場の方もお願いしますね』
『おう。了解だ。それと、ヒナタの【水妖の雫】の成長は、どんな感じだ?ケイトとヒナタの分は、そろそろ産まれても良い頃だと思うんだけど』
さっき、カゲロウが【銀狼の誓い】を見ていたから思い出したけど、白達の成長から推測すると、そろそろファミリアが産まれてもおかしくないはずだ。
『ずっと身に付けていますけど、私では成長度合いが分かりませんから………』
まぁ、それもそうだよな。僕は《見ない感じ》でヒナタの耳に集中した。
『………レベル13か。今の感じで成長したなら、あと十日ぐらいかな』
『ありがとうございます。あと十日ぐらいですか………産まれたら真っ先に見せに行きますからね』
ヒナタの方は順調みたいだな。ケイトの方は武器なので、成長はヒナタに比べると若干遅いかも知れないな。こちらも、あとで確認しておくか。まぁ、今は足場作りが最優先案件なので、そっちに集中だな。
『主よ、一つ言わせて貰うのじゃが、これはもう《木工》の範囲では無いのじゃ』
『まぁ、やってる事は、日曜大工を通り越して、普通の大工と変わらないからな』
【ペンタグラス】から戻って三日、カゲロウと二人での足場作りが続いている。ライトニングの大きさが大きさなので、僕達のやっている作業は大工に近い。《造船職人》の事を船大工とも言うので、あながち間違っては無いのかも知れないけどな。
この足場作りの作業のお陰で、僕も《造船》スキルが《造船職人》スキルへと進化している。まぁ、僕の場合は〈工匠〉のお陰で《造船工匠》になるのだけど………そんな事よりも、ライトニングの製作を手伝った時よりも、この足場作りの方が経験値が大きい事が悲しいよな。
『………確かに、俺も《木工》よりも大工と言われた方がしっくりくるけど』
『カゲロウもか?でも、この作業のお陰で普段使っている造船所の有り難みが身に染みるよな。それで、この木材は?』
『それは、もう少し左だ。あぁ、逆、逆、俺から見て左。ギルマスから見ると右だ』
ようやく形になってきだした足場だが、その指示のほとんどはカゲロウによる物だ。ヒナタの作業を一番間近で見ていただけ有って、判断が的確で早い。スキルレベルが、僕より高い事も有るのだろうけど、こう言うところは姉弟揃って優秀なんだよな。
『了解だ。少し休憩しないか?』
『そうだな。じゃあ、俺は少しホームに戻ってくる。ギルマス、再開は十五分後くらいで良いか?』
紅茶も飲みたいからな………それくらいの時間が有った方が良いかな。
『了解だ』
その返事を聞くや否や、作業を中断してホームに転移していく、カゲロウ。
さて、僕も昨日の続きをしようかな。五種類の紅茶(僕、白、黒、シヴァ、アーちゃんで各々好みが違う)の準備をしながら、三匹のファミリアに周辺の《探索》をお願いする。シヴァは、白や黒みたいに《探索》スキルこそ持っていないけど、肩書き上は海の支配者と言うだけ有って、この辺りで集めてくる情報の量は一番多い。
『主よ、昨日までと大きな違いも無いのじゃ。ワシと黒の《探索》では、この場所の位置が分からないのじゃ』
『そうか………ありがとな』
戻ってきた二匹に紅茶を渡す。ちなみに、紅茶を楽しむ為の休憩スペースは、初日の早い段階で真っ先に準備されている。紅茶自体は船のキッチンで淹れることも出来るので全く問題は無いからな。
あとは、シヴァだけか………改めて思うと、ファミリアの王に、こんな雑用を頼んで良かったのかな?
『………もう手遅れ』
紅茶を飲みながらも、黒は突っ込みの手だけは抜かないんだよな。有る意味で、感心出来るよな。
『主よ、このクッキーは今まで食べたクッキーの中では一番美味しいのじゃ』
『そうか?気に入ってくれたのなら良かったよ』
『この所々に散りばめられている茶色のは何なのじゃ?』
『それは、紅茶の茶葉の出涸らしをフライパンで水分が飛ぶまで軽く煎った物だ。微かに紅茶の薫りがするだろ?』
『良い薫りがするのじゃ。主の紅茶に合うのじゃ』
ちょっとしたアクセントになればと思い、出涸らしを煎った物を混ぜてみたけど、白が気付くとは思わなかったな。案外、味覚は鋭いのかも知れないな。現実でジュネとアクアにも作った事が有るけど、気付いた事は一度も無いからな。
『シュン、我らにも紅茶を頼むのだ』
『おかえり、どうだった?』
シヴァとアーちゃんにも、準備して有った紅茶を出した。
余談だが、白はハチミツ入りの甘い紅茶、黒はレモンティー、シヴァは甘いミルクティー、アーちゃんはストレートのアイスティーを好む。他の紅茶も美味しく飲むには飲むが、好みの物を出した時とは明らかに笑顔が違うからな。
『うむ。やっと場所が分かったのだ。地図が有ると分かり易く説明出来て便利なのだが………』
『ほぼ白地図でも良いなら有るぞ』
鞄から白地図を取り出してテーブルに広げていく。
『十分なのだ………今我らが居るのは、この辺りなのだ』
シヴァが指し示した場所は、【サラベール】よりも遥かに北………むしろ、【ガリンペイロ】の遥か南と言った方が若干近いかも知れない小さな島だ。地図上で見るのなら、有るのか無いのか分からないぐらいの小さな点でしかない。
当然、近くには何も無い。ここからだと、【サラベール】近くの岸辺まで、どんなに飛ばしても五日は掛かりそうだよな。それにしても、あの場所から三時間足らずで、よくこの場所までと来れたよな。巨大化していたアーちゃんのスピード恐るべし………
『主よ、どうするのじゃ?』
どうすると言われても、ライトニングの修理が終われば進むしか選択肢は無いと思うんだけどな。一度【シュバルツランド】に戻るとしても、どうせ近くを通るのなら、多少寄り道をしても【サラベール】と【チメリア】には寄るべきだろう。
『まぁ、なるようになるかな』
二学期の期末テストまでには【シュバルツランド】に帰りたいから、多少の無理は必要になるかも知れないけど、それは今は関係の無い事だからな。
『シュンさん、カゲロウ、次はメインマストをお願いします』
『了解だ。この辺りで良いのか?』
いよいよ、これで最後だな。ライトニング、もう少しで修理が終わるからな。あと少しだけ待っててくれよ。
あれから五日、すでに足場は組み上がり、船の改良の方も残すはメインマストと帆の装着だけになっている。新しいメインマストとサブマストのメイン素材にはヘビーウッド(ライト)と木核の合材を用いており、そこに前回の経験を踏まえて《木工》と《機械製作》と《合成》を組み合わせて、音声認識で簡単に折り畳めるマストへと更なる改良をしている。
最近は、どんな事にでも音声認識装置を《合成》しているように思えるけど、これが有るのと無いのでは便利さに格段の違いが出るので仕方の無い事だろう。これは余談になるのだけど、ホームのキッチンには既に音声認識のみでポットの中にお湯が沸く程度には改良されてたりもするのだから。
今回、改良を加えたメインマストは、折り畳んだあとのマストが甲板上で邪魔にならないように収納される仕組みが組み込まれている。ヒナタが書き上げた設計図を見た時は、本当に出来るのかと内心で軽く疑っていたけど、その疑惑はサブマストで実験してくれた時に晴れている。ヒナタの収縮の一言で一本の柱に見えていたマストに、複数の切れ目が入り、上から順に華麗に折れ曲がり、まるで、元から有る船のデザインの一部のように綺麗に収納されてしまったから、疑いの余地は無い。これなら、メインマストで使用しても問題を見付ける方が逆に難しいだろう。
ちなみに、このギミックに使われているほぼ全てのパーツが木製で製作されている為、金属に比べて非常に軽い。まぁ、流石に接続部分には《機械製作》で作ったビスやネジ等が使われているけど、それも微々たる物だからな。
素材も強度が必要な軸の部分には丈夫で軽いヘビーウッド(ライト)を使い、それ以外にの部分には残っていた合材をこれでもかと言うぐらい使い倒している。
もともと、この為に集めてきた素材なので、どんなに使ってくれても問題は無いけど、まさか一本たりとも残らないとは思ってなかったのは、ここだけの話だ。まぁ、壊れたマスト以外の部分にもこの際だからと言うことで、改良するのに使っているらしいので仕方の無いことかも知れないけどな。
『はい。位置は、そのままで大丈夫です。角度は………少し時計周りに回転して下さい。はい。そこで大丈夫です。シュンさん、カゲロウ、少し離れて下さい』
『了解だ』
僕達が離れた事を確認して………
『それでは、行きますね。展開』
ヒナタの展開と言う言葉を認識して折り畳まれていたマスト達がカチャカチャ、カチャカチャと音を立てながら一気に開いた。そのマストの全長は、以前の二倍近く有り、風も受け易くなっているようだ。何よりも、ライトニングの見た目と言うか風格が今までと比べ物にならないからな。
『凄いな。何て言って良いのか分からないけど、ドシッと言うか、ドーンと言うか、豪華な風格が出てる気がするぞ』
『あっ、分かりました?マストの布には、アキラに縫って貰ったティアウルフの皮とシルバタイガの皮を合皮にして薄く鞣して使わせて貰ってます。色合いも綺麗ですが、かなり薄く鞣していますので向こう側が透けて見えます。勿論、強度の方も十分に強化を重ねていますので、今度は簡単に破れたりしませんよ。それと、マストと帆の接続部分にはフレイに作って貰った金属製のワイヤーを使っています。こちらもフレイ特性の合金の為、簡単に切れたりしませんからね』
ティアウルフとシルバタイガって僕は見た事が無いけど、最近追加された魔物のはずだよな。聞いた話によると【ヴェール】近くの森で二匹がペア限定で出現する変わった魔物らしい。比較的に近場でも狩れる初心者でも安心な魔物とは言え、出現率が低いらしいからな。この量を集めて加工するのは大変だったんじゃないのだろうか?
それに、このワイヤーは武器としても使えるくらいの強度があるよな?キラキラと光に反射していて綺麗なロープだと思っていたが、金属製のワイヤーになってたんだな。この長さを継ぎ目無しで加工するとか………信じられない技術力だよな。
『あっ、ちなみにですが、ライトニングに使っていたロープは全て、これと同じワイヤーに変わってますよ。これで強く引っ張っても千切れる心配も有りませんので、安心して下さいね』
『ちょっと待って、素材集めもそうなんだけど、どの部品も加工は物凄く大変だったんじゃないのか?』
『加工は………そうですね。それなりに大変でしたね。素材の方は、シュンさんが船旅している時に、空き時間で皆で狩り行ったりもしてましたので問題は有りません。特にアキラが変わった魔物や素材の場所を見付けるのが得意でしたからね。それに、最近は【by buy】の買い取りの方でも、その手の素材が集まってましたからね』
なるほど、アキラの運に関しては思い当たるところが多々有るからな。運の悪い僕とペアを組んでいても運が良いくらいだから、僕がいない時なら、その効果も存分に発揮した事だろう。
『あぁ、何となくだけど、その件については僕も理解出来たよ』
その言葉に、ヒナタが微妙な笑顔で返してくれる。やっぱり、僕の思った通りなんだな。あの理不尽な運の良さをヒナタも経験したらしいな。多分、シヴァの《幸運》と良い勝負になるだろうな。
『なぁ、ギルマス、俺には全く分からないんだが………』
『アキラと二人で狩りや採取に行ったら分かる』
天然物の《幸運》。それ以上は、自らが体験して貰いたいものだからな。
『それで、ライトニングも生まれ変わった事ですし、名前もパワーアップさせようと思うんですけど、どうでしょうか?』
名前のパワーアップか………今までのライトニングと区別する意味では良いかも知れないな。だが………
『でも、良いのか?ライトニングはヒナタの憧れの船なんだろ?』
ヒナタのトリプルオーでの目標だったはずだからな。簡単に変えても良いものなのか?
『はい。確かに、ライトニングは私の憧れでしたが、このライトニングは【noir】の仲間です。既に、全く違う船ですからね。ライトニングの名前を私の想いだけで押し付けるのは違うと思うんですよ。だから、新しい名前が、この船だけの名前が、【noir】が考えた名前が、この子には必要になると思うんです』
そう言う考え方は、全く無かったよな。確かに、固有名詞は必要だよな。
『それなら、僕はOKだぞ』
『俺もだ。ヒナタ、名前は決めているのか?』
『うん。改良を加えたライトニングで、EXライトニング。それを略してエクスライトと言うのは、どう?』
『うん。ヒナタ、エクスライトは良い名前だな』
僕のセンスなら、ライトニング2とか、ニューライトニングやネオライトニング等しか思い付かないからな。こんなに格好良い名前は思い付かないだろう。
『はい。いっぱい考えましたからね』
『じゃあ、改めてよろしくな。エクスライト』
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/二弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:七属性〉
【白竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv71
《錬想銃士》Lv14
《真魔銃》Lv18《操銃》Lv38《短剣技》Lv41《拳》Lv60※上限《速度強化》Lv100※上限《回避強化》Lv100※上限《魔力回復補助》Lv100※上限《付与術改》Lv21《付与練銃》Lv22《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv46
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv6《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv40《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv24《調理師》Lv25《造船工匠》Lv2《家守護神》Lv62《合成》Lv52《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv10
SP 48
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉




