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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第五部
42/65

良血馬(サラブレッド) 2

今日はログイン直後から、僕は一人気ままに金属の精錬や加工に勤しんでいる。リツに依頼された魔化石を使った魔弓の骨格(ベース)の製作の為だ。リツと約束した期限が有るわけでは無いけど、出来る事なら早めに納品したいからな。


今回、リツに依頼された弓は木の素材を含む従来の物では無く、銀と鉄等の金属を組み合わせた合金をベースにする物だ。何故、今までと同じように木を含む弓にしないかと言うと、現状で手に入る木材では性能面を技術(スキル)任せでいくら強化しても、素材の面で能力の限界に達して、性能の上限が打ち止めになっているからだ。


現在手に入る木材の中には、御神木や御神巨木と言った素材的には良質な代物も有るには有るのだが、その素材のまともな加工法が分かっていないので、良い弓を作る為にはリツに依頼された通りアーチェリーの弓みたいなオール金属で仕上げる弓しか方法が無いだろう。


本来なら、イベント後のこの時期は、海に出て他の大陸や国(サーバー)に遠征兼素材の採取や採掘を予定していたのだけど、ギルドメンバー各々に予定が詰まってしまった為に少し延期になっている。


今は特にケイト達三人が、新メンバー加入の件等で色々と頑張っているようなので、それに水を差してまで遠征に誘うのも悪いからな。まぁ、それを理由にして、今の内に僕一人だけで王の依頼を進める為に海に出ても良いかも知れないのだけど………


まぁ、一人で遠征に行くのなら、事前にギルドメンバーに相談はするんだけどな。これ自体には、若干の抜け駆け感と言い訳感が否めないけど、船にゲートを搭載しているので、誰か一人が他のゲートが有る街の近くまで船で移動すれば、ライトニングを通じてゲート登録も簡単に済ます事が出来ると言う利点が有る。


ただ、久しくソロでのプレイをしてないのに、それに輪をかけて海上での戦闘となると若干以上の不安も有るし、ちょっと《機械製作》等で船に細工を施せば便利になりそうな部分も有りそうと言う事で、たまには息を抜く事も必要だと僕自身に刷り込むように言い聞かせて、時間の有効利用を兼ねてリツの依頼に取り組む事になった。まぁ、そうと決めたのであれば、さっさと依頼をこなすとするかな。


リツの依頼の弓の形状は以前と同じ物だ。ただし、重量を少しでも軽くする事に重点を置いて欲しいらしい。まぁ、同じ作るのなら、軽さを活かしながら強度を上げて、出来るだけ持ち運びのしやすい物にしたいんだよな………


『………可変機能』


『可変かぁ………黒、ちなみにリツが装備なら、どんな感じの可変機能が良いと思う?』

軽くて持ち運びのしやすい弓と考えた時点で、僕も軽く思い付いた事だけど、具体的な形までは考え付いてない。


『………折り畳み式、ワンタッチ機能?音声変形機能?付き』


『なるほど………』

確かに、音声変形機能付きの折り畳み式は便利だと思う。依頼された弓はその案を採用しようかな。弓を作るだけで同時に《機械製作》のレベルも上がるから、至れり尽くせりと言った感じでもあるからな。


『その案は採用出来そうだな。黒、サンキュ』

それとは別に、もう一本………ただし、これはリツが了承(OK)すればの話になるけど………ファミリアの卵を《合成》する用の弓も今後のサンプル(実験)として作りたい。こちらは《合成》が成功した場合には、弓自体が魔獣器になるので折り畳み式にこだわらなくても良いだろう。


『主よ、その依頼をこなすのも良いのじゃが、手元に有るファミリアの卵はどうするのじゃ?』


『あれは、今のところはキープだな。ケイト達が落ち着いたら、ヒナタとカゲロウと相談すると言った流れになるかな』

新しく加入するであろうメンバー達に、ファミリアの卵を渡す予定は無いので、二人もアキラ達同様に拒否した場合は、言いくるめてでも渡すしかない。その為には、ヒナタとカゲロウの二人が断り難いシチュエーションを僕達が前もって用意する必要も有るかも知れないからな。


まぁ、装備に《合成》して魔獣器にする事が可能なら、話を早くて済ませられるのだけど。ただ、こればっかりはリツの弓でテストしてみるまで結果が分からないので、仕方が無い事だけど。まぁ、《合成》に失敗しても、素材は無くならないと言う情報が今の時点で分かっているのは絶妙に助かるよな。



【折り畳み式試作弓】攻撃力70〈特殊効果:可変/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中/重量軽減・中〉



形状を確認する為だけに、適当な素材で作ってみた弓にしては中々の出来になってないか?可変自体も問題は無さそうだからな。ちなみに、【折り畳み式試作弓】の折り畳んだ状態の見た目は、ほとんどの学生が毎年春先に行う身体測定で使う握力を測定する機械に似ている。普段のリツは矢筒を腰のベルト付近に付けているので、それと合わせて身に付けても邪魔にならないような形状にした為だ。まぁ、この弓の真の完成品は魔弓になる予定ので、矢筒は必要なくなるかも知れないけどな。


しかし、形状はともかくデザイン面での改良は必須事項だよな。なんと言っても見た目が美しくないからな。ハーフマラソン(イベント)水晶の上位素材(薄色水晶)やクリスタルも手に入ったから、それを《細工》して使えば、なかなか美しい弓には出来そうだな。


『主よ、大事なのは見た目(外見)よりも性能(中身)なのじゃ』


『………見た目も重要』

白と黒の意見が別れたけど、ここは黒と同意見だな。職人の端くれとしては、出来上がった物の性能は勿論の事、出来る限り外見にも手間暇を掛けて素敵な物を作りたいからな。





『アキラ、少し良いか?あとでリツ依頼の試作弓の試し射ちを、お願いしても良いかな?アキラの鞄の共有部分に入れて有るから。空いてる時間に裏庭で試し射ちしてくれないか?』

リビングでヒナタ達の相談に乗っていたアキラにお願いしてみる。大絶賛取り込み中なので、若干気は引けるけど【noir】の中で弓を使うのはアキラだけだからな。この場合は仕方が無かったと割り切らせてもらおうかな。


『了解したよ。あとで試し射ちしておくね』


『ありがとう。お願いします』

試し射ちで問題が無ければ、依頼者(リツ)本人に見せて本番用の製作だ。合金や《細工》用の素材は準備出来ているから、先にファミリアの卵テスト用の弓でも作るか。魔獣器になる予定の弓なので有る程度の形に仕上げておけば、《成長》スキルの恩恵と産まれてくるファミリアの意思によって相応しい変化をもたらしてくれるはずだ。


『白、黒、実際のところ、普通の武器にファミリアの卵を《合成》して魔獣器にする事は可能だと思うか?』


『………多分、可能』


『うむ、実際にはやってみないとワシには分からないのじゃが、元になる武器やスキルレベルに左右されるとは思うが、多分《合成》する事自体は可能なのじゃ』


『今、元になる武器と言ったか?』


『言ったのじゃ』


『………と言う事は、もしかして元にする武器とファミリアの卵の相性が関係したりするのか?』


『そうなのじゃ。ワシら魔獣器には基本的な制限が有るのじゃ。例えばじゃ。鳥系の魔獣器なら弓、犬等の四足歩行系は刀や剣、猿系ならナックルダスター等の打撃武器に該当したはずじゃ。主の持つ水妖石は精霊系なので杖、銀狼石は四足歩行系に含まれていたはずなので刀か剣等と相性が良かったはずじゃ。あと特例を上げるとするならじゃ。全ての魔獣器はアクセサリーとの相性が良いのじゃ。ワシらと同じ竜系の魔獣器でもアクセサリーの者もおるはずなのじゃ。その辺りは主の《目で見るんじゃない感じるんだ》では分からなかったのかの?』


『なるほどな………アクセサリーの魔獣器も存在するんだな。流石に、そこまでは分からなかったな。多分、単純にスキルレベル不足か、元々の仕様上の問題だと思うぞ。そんな事よりも、アクセサリーの魔獣器が存在するなら、防具の魔獣器も存在するのか?』


『防具の魔獣器………珍しい事じゃが、特例としてなら存在するのじゃ。』

特例か………それなら、今回の魔獣器化計画では関係は無さそうだな。


『なるほど、大体は分かったかな。ありがとな。それと、白と黒にお願いが有るんだけど会話中に《目で見るんじゃない感じるんだ》はフルネームで言うのは止めてくれ。取得する時は、それほど気にならなかったけど、こう言う会話の中で不意に出てくると思った以上にキツいからな。その名前は………』

一つのスキルが、あまりに他のスキルと違って万能過ぎるのも問題が有るとは思うからな………ただし、万能と言う面にスキル名は除かれる訳だけど。むしろ、スキル名自体がスキルの性能に対するちょっとした異種返し()なのかも知れないな。


『………と言うか、ちょっと待てよ。成長すると大きなゴリラ(・・・・・・)になる奏猿石は打撃武器になるんだな。それって、やっぱりリツの弓とは相性が良くないって事になるのか?』


『ゴリラ!?………じゃとすれば、そう言う事になるかのう。さっきも言ったのじゃが、稀に相性を無視出来る(覆す)レアな特例も有るのじゃが、そう簡単には出会えぬのじゃ』

それが本当だとするなら、奏猿石の魔獣器化計画(弓)は白紙に戻した方が良いかも知れないな。こうなると、誰でも装備可能な魔獣器化計画アクセサリーでテストする方が良いかもな。


『………竜なら基本は槍』


『一応、ワシと黒はその例外になるのじゃ』


『そうなのか?でも、確かに竜って槍っぽい気がするな。竜騎士と言う種類のジョブも聞いた事が有るし、確かに似合いそうだな』

僕自身、見た目では驚かないように平静を装っているけど、内心は穏やかではない。やっぱり白と黒の存在は、かなりレアな存在なんだよな。改めて思い知らされた気がする。まぁ、今の情報を普通に提供出来ている時点で特例過ぎる(・・・・・)んだけどな。


『サンキュ。色々と参考になったぞ』

テストは、水妖石を少し大きめの五センチ程のイヤリングを作って合成してみようかな。片耳用でも良いし、左右で形状と素材を変えて両耳用にしても良いからな。まぁ、両耳用と言っても水妖石を使った物は片耳にしか付けれないけど、似たような宝石を加工してバランスを取れば良いだけだからな。


数有るアクセサリーの中から、何故イヤリングを選択したかと言うと、装備する箇所として無難に空いてそうだからと言う安易な理由だ。それに、僕達は現実でもピアスやイヤリングは付けないけど、僕の母親は普段からその日の気分に合わせて色々な種類の物を身に付けているので、形状(デザイン)に困らない事もプラスに働いていたりする。自分自身に縁の無い物を(ゼロ)から創造するのは、かなり大変だからな。





『シュン、いるの?試作弓って、これの事だよね。これは、どう使うの?って言うか、これ本当に弓なの?どう見ても………』


『あぁ、悪い。まともな説明をしてなかったな。アキラ、試しにそれを持って正射必中と言ってみて』

確かに、今の形状を見るだけで弓と思う人間はいないよな。どう見ても握力測定機なのだから………


『正射必中。わっ!!これって可変式なの?』


『おう。一応、リツから依頼された魔弓を作る為の試作品だな。正射必中で弓形態に、起動待機で待機形態(さっきの状態)になるぞ。まだ試作品だから魔化石は使って無いけど、最終的に作る本番用には使う予定だな。まぁ、実際に魔化石を使うのは依頼者であるリツなんだけどな。それで、アキラに頼みたいのは試し射ちと可変のテストなんだ。使いにくいところや問題点等が有ったら教えて欲しい』


『………シュン、私も可変式の弓を依頼します』


『はいっ!?』


『これ、かなり便利だから私も欲しいな。勿論、お金は払うから』

マジか!?魔獣器化計画(弓)を(アクセサリー)に変更したから合金等の素材は有るけど、アキラとリツの弓って形状も用途も違うからな。少し手間になるんですけど………と言って、断れそうな雰囲気でも無いよな。


『分かった。あとで欲しい弓のスペックと音声認識用の言葉を決めてメールしてくれ』

この際、ついでにアキラの扇も新しくしても良いかもな。《機械製作》スキル取得した事で、新しい扇のプランも思い浮かんでるいるし、ファミリアの卵を貰いっぱなしと言うのも問題だからな。まぁ、ファミリアについては正確に言うと貰っている訳では無いのだけど、僕の気分的にはそうなっているからな。


『ありがとう。じゃあ、あとでテストの結果と一緒にメールするね』

また、やらなければならない事も増えたな。


これは、今有る予定を終わらせたら、本気で気分転換を兼ねて一人旅行(ソロプレイ)を考えないといけないかも知れないな。


えっ~と、今残っているのは………


・リツの魔弓の製作

・アキラの弓の製作と扇の改良

・船の魔改造(ただし、ヒナタの許可が必要だな)

・ヒナタとカゲロウ用の魔獣器用のアクセサリー製作

・畑で茶葉の栽培(もしかして、今の僕を癒すには一番急務な事じゃないのか?)

・ケイト達三人の手伝い(まぁ、要請が有ればだけど)

・王の依頼で海を渡って書類の運搬(これは、一番最後で良いよな)

etc.


………と言ったところだよな。


『う~ん………もしかしてだけど、ギルド内で一番忙しいのは僕じゃないのか?』

こんな一言が自然に漏れるくらいは忙しい。


『………オークション』


『あ、あぁ』

それも有ったよな………まぁ、オークションに出展する用の鞄は出来ているからな。今回も出展するだけで、競り合いに参加する事は無理そうだな。出展の方もチャリさんに頼んでおけば、当日は参加しなくても大丈夫のはずだ。その点だけでも本当に助かったよな。


『えっ~と』

それで、この中で今からでも出来そうなのは、アクセサリーか畑か船になるよな。種を売っている店にも行きたいけど………これは、畑総監督のカゲロウと相談かな。船の改造はヒナタに許可を貰うとして………二人共、今はリビングにいるので声を掛けても良い気もするけど、ケイトと一緒に新人加入の為のミーティングをしているところを、これ以上邪魔するのも野暮だよな。


取り敢えず、カゲロウとヒナタにはメールしておいて、まずは今からすぐに取り掛かれそうなアクセサリー製作からだな。


『主よ、イヤリングにするのは良いのじゃが………水妖石の玉は、イヤリングにするには大きいのじゃ。それは、どう対処するのじゃ?』


『それはだな。ケイトの【七星杖】に煌馬石を填めた時もそうだったんだけど………あの時は、微妙にサイズの調整が掛かっていたから、今回もそこに期待している。それに、最悪は《合成》を使えば、大丈夫じゃないかな』

まぁ、あくまでも勘だけど、ダメならダメでその時に考えれば良いだろう。


『………アバウト』


『主よ、考えが甘いのじゃ』

でも、ファミリアの卵(水妖石)自体には加工する事自体が不可能だし、たとえ《合成》に失敗しても素材やアイテムの紛失等のペナルティーが無いからな。むしろ、こう言う事に関しては何事にも積極的に挑戦しろ(そして、大いに失敗しろ)と運営側が言ってる気がするんだよな。


それに、水妖石を始めとしたファミリアの卵のサイズは、どれもこれも最低限でも拳大の大きさが有るからな。この大きさが基本なら、どの種類のアクセサリーにも合わないと思うので、《合成》出来る可能性は高いと思うんだよな。まぁ、個人的にはだけど………


『主よ、それで、ベースの形はどうするのじゃ?』


『そうだな………今イメージしているのは菱形を縦長にした感じに、少しだけ妖精を意識した両耳に付ける事を前提としたデザインかな。菱形の部分にはクリスタルを青色に変えて使おうかなって思ってるぞ』

僕としては、片方が《魔獣化》して、もう片方だけを身に付けている状況になった時でも、見た目がお洒落な感じにはしたい。


まぁ、僕自身が身に付ける訳では無いので、出来る限りはお洒落な物を作っておきたいからな。自分用なら、ある程度の見栄えが保てれば良いのだけど、人の分となると色々悩ませられる事も有るからな。


素材的は、全体を支える金属に銀を使おうかな。在庫量も多いし、金属的に柔らかく《細工》するのにも向いているからな。



【水妖の雫】防御力15〈特殊効果:光属性〉〈製作ボーナス:詠唱短縮・小〉



『おぉ~!!』

クリスタルには上位属性の光属性が付くんだな。新しく付ける事の出来た製作ボーナスの詠唱短縮は、魔法使い系のプレイヤーには有り難い性能だよな。


アクセサリーの名前には水妖石との《合成》が出来る事を信じきったネーミングになっている。もし、ダメだった場合は………いくら性能が良くても倉庫に封印される事になる噛ませ犬感の強い(残念な)アクセサリーになる事だろう。


『主よ、もう少し丸みを帯びさせた方が可愛いと思うのじゃ』


『なるほど』

確かに、女の子(ヒナタ)に使って貰うなら、もう少し丸みを帯びた方が良いかもな。


僕は、出来上がった【水妖の雫】の金属部分に若干の修正を施した。性能は変わらないが、見た目は格段に可愛くなったよな。


『さてと、何事も物は試しだからな………』

やってみなければ、結果は出ない。こればかりは《見ない感じ》にも期待は出来ないらしい。


『ふぅ~~~~《合成》』

大きく息を吐いて、左手に持つ【水妖の雫】と右手に持つ水妖石を《合成》する。今までみたいに一瞬だけ光り輝くのでは無く、僕の手元が光り続いている………その間、約十秒誰一人として言葉を発しない。


『………出来た?これは成功なのか?』



【水妖の雫】防御力15/魔法防御力15〈特殊効果:水属性/光属性〉〈製作ボーナス:詠唱短縮・小〉《成長進化》※女限定装備



『うむ。成功したようじゃ』

まぁ、水属性が加わっているし、何よりもファミリアの卵が持っていた《成長進化》と言うスキルを得ているからな。改めて疑う必要は無さそうだな。


まぁ、ステータスとして、スキルの確認が出来る出来ないは別にしてだけど、ファミリアの卵の時は特殊なスキル取得者しか《成長進化》の存在自体が分からなかったところから考えると、かなり良くなったとは思うけどな。


それに、嬉しい事に防御力だけでなく魔法防御力にも恩恵の有るアクセサリーになったようだ。見た目も《合成》前の物より、銀色だった金属部分も含めて、アクセサリー全体に青色が濃く現れていて、統一感の有るアクセサリーへと変わっている。さらに、嬉しい事は続き《合成》スキルレベルの面でも、かなり美味しい経験値が入っている。レア素材様々だな。


『スキルが増えていけど、これはケイトの【七星杖】の時には無かった事だよな?』


『………能力と《合成》の違い』


『うん!?黒、能力と《合成》の違いと言うのは何だ?』


『主よ、黒の言いたい事は多分じゃが、主の場合は《合成》を使用した事によって、武器自身を魔獣器へと変貌させておるのじゃ。反対にヒナタ嬢の場合は《合成》の力では無く、ユニーク武器の能力として、武器そのものが変化したのじゃと言うところかのう………』


『………合ってる』

なるほどな。あれは、【七星杖(ユニーク武器)】の能力に依存してると言う事だよな。【七星杖】は宝石や魔石類を填め込む事を前提とした武器のはずだからな。


『でも、これはユニークでは無いんだな………確か、白と黒の時はユニークって表示されてたよな』


『ワシらの場合は、主のオリジナルだから仕方が無いのじゃ。【水妖の雫】は、あくまでアクセサリーに合成したファミリアの卵じゃ。ただしじゃ。《成長進化》したあとの事までは、ワシらにも分からんのじゃ』

確かに、現時点ではただのレア(ただし、レア度は高い)アクセサリーの域だよな。製作の面でも《細工》による加工に少しだけ手間が掛かっているだけだからな。今回の場合は、素材の方に大きな問題が有って簡単には手に入る代物では無いけど、同じ物を製作する事は可能だよな。


『主よ、主の称号にも変化が有るようじゃ』


『えっ!?』

白に言われて、すぐに確認してみる。


『白。何も変わってない………って、こっちか!!』

今までは、確か〈自然の摂理に逆らう者〉だったはずの称号が………



称号変化

〈摂理への反逆者(チャレンジャー)

様々な摂理を普通に無視し始めた不届き者への称号

取得条件/〈自然の摂理に逆らう者〉の取得後に自然には有りえない事を五回する



ただでさえ、〈自然の摂理に逆らう者〉の段階でも不本意だった称号なのだけど………


『いや、ちょっと待てよ』

これは、トラウマ系や飼い主系の称号と違って成長称号では無かったはずだよな等と悩んでいると、これは《見ない感じ》の効果なんだろうな。その理由が頭の中に思い浮かんできた。


『主よ、今回のは称号の成長では無く、称号の変化(・・)なのじゃ』

まぁ、白が喋りだすのとほぼ同時なので、あまり意味が無かったのはここだけの話だけど。ただ、称号が変化する事も成長する事もスキル所持者である僕個人の感覚的には大きな違いが無いような気がする………むしろ、完全に不意打ちを喰らう分だけ、変化する事の方が質が悪い気がするな。


『主よ、その【水妖の雫】は誰にプレゼントするのじゃ?』

白のプレゼントと言う発言に、若干困惑を覚えるけど………


『これか?水妖石自体が【noir】内なら、ケイトかアキラかヒナタと相性が良いからな。すでにアキラは断っているし、ケイトは【七星杖(煌馬石)】を持っているから………取り敢えず、ヒナタに聞いてみる予定だな』


『主よ、ワシはその()に問題が有ると思うのじゃ』


『そうか?僕個人的には、かなり可愛く出来てると思うぞ』

女限定の制限が無ければ、青色が濃く現れたイヤリングは男が身に付けても違和感が無い出来になっているはずだ。


『………そうじゃない』


『主よ、取り敢えずじゃ。ヒナタ嬢だけでなく虎猫の姉さんにもく、もう一度確認した方が良いと思うのじゃ』

白だけで無く、黒にも言われると言う事は………僕には全く身に覚えが無い事だけど、また何か大きな思い違いでもしているのかも知れないよな。この感覚には素直に従った方が良さそうだな。主に僕の身を案じる面で………


『分かった。えっ~と、今は二人共ホームに居るみたいだから、聞いてみるな』


二人にメールをしている僕には、『………修羅場』と呟いた、小さな黒の声が聞こえる事は無かった。





『メールありがとう。弓のテスト終わったところだったから、丁度良かったよ。本当にシュンってタイミングが良いね』

ヒナタにメールを打ち終わると同時に工房に入って来たアキラから弓を手渡される。


『その弓だけど、前にリツの弓を使わして貰った経験から言うと、もう少し金属が柔らかい方が良いと思うよ。私が使うなら問題は無いくらい微妙な感触だけどね。それと、欲を言っても良いなら、もう少し照準が合わせやすい方が良いかな』


『照準か………』

照準は盲点だったよな。僕自身が銃を使用する為、必然的に弓よりも攻撃対象との距離が近くなる。なので、意識してなかったポイントだよな。


普段の僕が銃や魔銃を使う場合には、牽制以外の目的では〈必射〉のアーツを併用している事が多いので、照準を特に意識した事は無かった。牽制の場合でも、当たればラッキーくらいの感覚で当てる事よりも相手の動きを制限する事をメインにしている。さらに言うならば、命中力には装備や《付与術》で補整を重ね掛けしているし、魔物の動きは《見ない感じ》で捕らえている。まぁ、僕が戦闘する時は、こんな状況なのでアーツを使わなくても、ほとんど外さないんだけどな………


『ありがとう。助かったよ。色々と参考にさせて貰うな』

弓の機能としては問題が無かったみたいなので、あとはリツ本人に持って貰って、持ち手等微妙なバランスの調整とアキラに指摘された弓の堅さの問題だな。まあ、これは本人にしか分からない感覚の部分だろうからな。


『それで、用って?』


『水妖石を《合成》した【水妖の雫】って魔獣器アクセサリーを作ったんだ』


『えっ!?魔獣器ってアクセサリーなの!?それをヒナタに………』


『お、おう。一応、片耳用のイヤリングなんだけど、両耳にしたい場合は反対側用も作る予定だ。昨日、アキラは要らないと言っていたけど、白達がだな。ヒナタに渡す前に念の為にアキラにも聞いた方が良いって言うからな。それでだな………』

アキラの『それを』のあとが上手く聞き取れなかったけど、そこを聞き直さない方が僕自身の為だろうな。よく鈍感とは言われているが、流石にこの雰囲気は伝わってくる。その雰囲気のあまり、言葉を上手く紡ぎ出せないくらいに………


さりげなく、【水妖の雫】を手渡したが、久しぶりに迫力の有るアキラを見ている気がするな………


『白ちゃん、黒ちゃん、ありがとね。正直に言うと、シュンの手作りアクセサリー(・・・・・・・・・)って言うのは魅力的だけど、やっぱり私には雪ちゃんがいるから遠慮するよ』

僕の気のせいか?手作りアクセサリーの部分が妙に強調されていたような………


『虎猫の姉さん、良いのかの?』


『うん。ヒナタに渡してあげて』

アキラは残念そうに頷く。


『それと、メールしておいたから私の弓もヨロシクね』

アキラにもアクセサリー作った方が良さそうな雰囲気だな。素材も有るので、そんなに手間も掛からないからな。アキラには何が似合うかな?このイヤリングも似合いそうだけど、ブレスレットや指輪とかも良いかもな。弓や扇と同時製作になるけど、まぁ、これくらいなら大丈夫だろう。





『お待たせしました』

アキラが工房から出ていくと入れ替わりでヒナタが入って来た。流石に今度はタイミングが良すぎるからな。さっきの話を聞かれていたかも知れない………と言うか、ヒナタの表情を見る限り、絶対に聞こえてたよな。


『ヒナタ、もしかしなくてもだけど、アキラとの話が聞こえてた?』


『ごめんなさい。立ち聞きするつもりは全く無かったのですが………本当にごめんなさい』

別に僕とアキラが話をしていても気にせずに入って来てくれたら良かったんだけどな。雰囲気的には、そうもいかなかったのかもな。


『別に聞かれて困る内容でもないからな。気にしなくても大丈夫だぞ。それに、説明が省けて僕としては助かったからな。まぁ、と言う事で【水妖の雫(これ)】を受け取って欲しい』

【noir】のメンバーに聞かれて困る内容等は、今の僕には無い。仮に有ったとしたも、メンバー同士が集まるリビングや工房で話す事は無いだろうな………


『………本当に、私で良いのでしょうか?』


『アキラには念の為に確認しただけだからな。事前に、アキラとフレイと僕のギルドマスター三人で話し合い済みだ。一応と言うか、これもファミリアの卵を含んだ魔獣器だぞ。ケイトと一緒だ。まぁ、成長後の種族は違うんだけどな。それに、僕には白と黒いるし、フレイは自分の手で魔獣器を造りたいそうだ。だから、もし良かったら貰ってくれないかな』

ヒナタの返事を待たずに、ヒナタの耳に【水妖の雫】を付ける。


『えっ!?えっ!?えっ~~~~~』

ヒナタは耳の先まで真っ赤になって、顔から熱気を醸し出している。


『おい、ヒナタ、大丈夫か?』


『だ、大丈夫でしゅ、き、気にしないでくだしゃい』

滅茶苦茶カミカミなんだけど、本当に大丈夫なんだろうか………


『お、おう、ヒナタが大丈夫なら良いんだけどな。そのまま装備を続けていると進化するはずだから、進化したら皆に紹介してくれよな』


『分かりますた。頑張りましゅ』

しばらく、正常になるのは無理そうだな………そんなに、緊張しなくても魔獣器は身に付けているだけでも成長してくれるんだけどな。まぁ、ゆっくりとだけど………





えっ~と、まだリツからの返事は無いから、先にアキラの装備製作だな。弓はリツの分と同時の方が効率が良いので、扇を先に作るか。


僕の考えているアキラの新しい扇は、中骨が八枚有る金属製の扇だ。各中骨には、下級六属性と光と闇の上級二属性、計八属性の宝石を散りばめる予定にしている。まぁ、光と闇属性は一種類の宝石では付けれないけどな。カゲロウに作った盾の応用だけど、あの時よりもスキルレベルも経験も上がっているので、良い物が出来るだろう。


理由としては、アキラが扇で使えるアーツが今挙げた八属性に対応している為、攻撃時に相乗効果を狙えるんじゃないかなと思っているからだ。まぁ、思っていると言っても《見ない感じ》のお陰で、既にある程度の結果は分かってはいるんだけどな。このスキルは本当に便利だよな。


『主よ、しかしじゃ。アーツの属性と扇の属性が反発したらどうするのじゃ?』


『そこで、《機械製作》を使って可変機能と音声認識装置を《合成》して形を変えるんだ』

中骨自体を少し引き出せる機能を加えて、引き出せれた中骨の属性が強化されるように工夫する。そこに、音声認識を加えれば、かなり使いやすさも向上するだろう。


中骨一枚の形状はドラキュラの棺を思わせる六角形。フレイが作った扇みたいに、短剣には可変させる事が出来ないのが少し残念かもな。まぁ、短剣はフレイに可変しない性能の良い物を頼めば良いだけだけどな。それに、放置していてもフレイの事だ。そのうちオリハルコンが加工が可能になったら、アキラの為にオリハルコン製の短剣でも作るだろうからな。



【八重桜】攻撃力60〈特殊効果:可変/八属性選択/音声認識〉〈製作ボーナス:攻撃力上昇・中〉



白とピンクのグラデーションの中骨に、さりげなく散りばめられた六色十二個の宝石が綺麗だよな。属性の数と色合いから最も相応しいと思われる桜の名前を取り入れてみたけど、なかなか良い感じだよな。それに、見た目だけじゃなく性能面でも十分使えそうだな。


『………この扇と弓を合体させる』


『弓と合体?………黒、ナイス。それ採用!!』

リツの弓みたいに魔弓は作れないが、今作った扇を合体させて、属性を活かせる弓を作れれば、持ち運びも便利で攻撃面でも魔弓の代わりにはなりそうだな。それに、アキラが魔化石を手に入れたら改良も出来るからな。


『主よ、それならじゃ。倉庫直通能力付きの矢筒を作ってはどうかの?』


『白、それだ!!』

何故、僕は今まで気付かなかったんだ。それを利用するなら、魔弓と同等以上の効果が狙えるよな。あえて、アーツ名を名付けるとするなら、〈乱れ射ち〉が出来るからな。


そうと決まれば、次はアキラの弓のデザインだな。弓の持ち手の部分より少し上に扇が合体出来るような細工、もしくはギミックを取り入れたデザインだな。





『シュン、大変。雪ちゃんが、雪ちゃんが………』


『マスター、大変なのです。牧場に、牧場に…………』

弓のデザインを考えながら、久しぶりのアイスティーで一服していたところに二人が同時に飛び込んで来た。まぁ、二つ共ただ事では無さそうな事だけは雰囲気で伝わるけど………残念ながら、僕の体は一つしかない。


ちなみに、大変なのはヒシヒシと伝わってたのだけど、ケイトのおっとりとした口調のせいで緊張感は若干欠けて、僕の体は一つしかない(こんな事)を考え付くくらいには逆に落ち着けていたりもする。


『二人共、大変なのは伝わったかったから、アキラもケイトもこれでも飲んで少し落ち着け』

ティーカップに僕特製のアイスティー(ちょっと濃い目のストレート)を注ぐと、二人同時にカップに口をつけて一息をつく。どうやら少しは落ち着けたみたいだな。


『それで、一体何が有ったんだ?まずはアキラから………雪ちゃんがどうしたって?』


『ふぅ~~、雪ちゃんが進化した!!』


『はっ?』

空耳か?雪ちゃんが進化?一体何に?


『だから、雪ちゃんが進化した』


『いや、ちょっと待て………だからと言われてもな。言葉は分かるが内容が分からない。雪ちゃんは連れて来れるのか?』

僕の質問と同時にアキラは頷き工房を飛び出していく。《見ない感じ》のスキルが有るので、聞くよりも直接見た方が早いだろう。僕が直接行く方が早いのだけど、この場にはもう一つの問題が残されているからな。今の内に………


『ケイト、それで牧場がどうかしたのか?』


『はいです。牧場の中に魔物がいるのです』


『はっ!?………それ、ヤバイだろ。すぐに向かうぞ』

失敗したな。少し落ち着かせる為とは言え悠長にアイスティーを飲んでる場合では無かったな。それにしても、魔物だと………街の中に魔物が入ってくる事は今までに無かったはすだぞ。一体どう言う事なんだ?しかも、ケイトが逃げるくらいの強敵なのか?


『はいです。こっちです。私に付いて来て下さいです』

よくよく考えたら、普段は【noir】の中で一番落ち着いているケイトが焦るくらいだからな………


『アキラ、緊急事態だ。悪いが雪ちゃんとリビングで少し待っていてくれ』

急いでアキラにコールを入れる。


『えっ!?そっちも、ヤバイ系なの?分かった。待ってるから何か有ったら呼んで』


『分かった。助かる』

コールを切り、僕は先行するケイトを追いかけた。

装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/二弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉

【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉

【白竜Lv52】攻撃力0/回復力202〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv52】攻撃力0/回復力202〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスターズ】防御力20〈特殊効果:速度上昇・大〉〈製作ボーナス:武器修復・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv55

《双銃士》Lv75

《魔銃》Lv74《操銃》Lv19《短剣技》Lv24《拳》Lv45《速度強化》Lv98《回避強化》Lv98《魔力回復補助》Lv99《付与術》Lv69《付与銃》Lv74《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv18


サブ

《調合職人》Lv28《鍛冶職人》Lv46《上級革職人》Lv6《木工職人》Lv34《上級鞄職人》Lv8《細工職人》Lv36《錬金職人》Lv35《銃職人》Lv28《裁縫職人》Lv15《機械製作》Lv30※上限《調理師》Lv3《造船》Lv15《家守護神》Lv37《合成》Lv39《楽器製作》Lv5


SP 51


称号

〈もたざる者〉〈トラウマプレゼンター〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉

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