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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第四部
38/65

第三回公式イベント 6

現在の時刻は午後八時過ぎ。ハーフマラソン開始まで四時間を切っている。射撃競技後に取った長い仮眠から覚めた僕は、既に射撃競技の報酬の【氷牙希(短剣)】と僕が以前に製作した【霧氷()】を基本(ベース)にして新型銃剣の製作を終えていた。


イベントの順位報酬を貰った時は、入賞が嬉しかった事と貰った短剣が素敵だった事で突っ込む事すら出来なかったけど、射撃競技の五位(上位)入賞の報酬が《銃士》や《弓士》に関係の無い短剣って言うのは、何かを大きく間違ってないだろうか?たまたま、僕の場合は使えるから良かったけど、普通なら使えない(ゴミになる)よな。



氷牙(ひょうが)氷希(ひょうき)】攻撃力90/攻撃力90〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/音声認識〉

※剣銃モード



同じ属性の武器を《合成》したお陰か、【ソル・ルナ】よりも武器としての統一感が高いよな。刃の部分は透明では無いけど、最初からデザインの一部だったかのような雰囲気を醸し出している。何よりも、冷気のエフェクトが付いているのが格好良いからな。


『黒は、どう思う?』

白は、いつものように雪ちゃんの面倒を見ると言う建前で、一緒に遊んでている為、この場には黒と僕しかいない。


まぁ、こう言う事を確認するなら、白よりも黒の方が頼りになるので僕としては良いんだけどな。ちなみに、他のギルドメンバーは、今回の公式イベントで一番盛り上がるであろうPVPの観戦中だったりする。


『………魔化石使っても良い』


『黒もそう思うか。僕も、そう思っていたんだよな』

この性能なら、魔化石で魔銃にしても良いと思うよな。多分、これなら、レアアイテムを消費する事にも後悔しないだろう。


【ソル・ルナ】も決して悪い装備では無い。僕が製作した中では、かなり素敵な武器だとも思けど………実際のところ、射撃競技では戦闘中のマガジンの詰め替えに苦労したからな。【ソル・ルナ】は斬撃特化で利用して補助的に使うか、〈零距離射撃〉を利用しての止めの一撃用に使った方が良さそうだよな。


まぁ、そう言う事で………


『《合成》』



魔氷牙(まひょうが)魔氷希(まひょうき)】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉

※剣銃モード



『おぉ、ラッキー!!』

今ので攻撃力も上昇してるぞ。これは魔化石を使って魔力化させた事の副産物か?魔化石恐るべしって感じだよな。


現時点での一級品の武器が出来てしまったな。普通の銃は、他の武器に比べて攻撃力は驚く程低いけど、これは、普通の武器に比べても遜色が無いくらい高い方だと思う。〈氷牙〉で銃剣モードの【魔氷牙】、〈氷希〉で剣銃モードの【魔氷希】に可変するように音声認識装置の登録も済ませて有る。


それと、リツに頼まれた魔弓のベースを作る時にも、攻撃力の上昇とネーミングの変化の事は頭に入れて置かなければならないな。ただでさえ、僕のネーミングセンスは良くないのに、それに輪をかけてセンスの無い名前になったら嫌だからな。


仮に知らず知らずに【魔弓】と名付けていたら、魔化石を使った時に【魔魔弓(ままきゅう)】になっていたからな。早目に分かって良かったとも思う。


あと、気になるっているのは、僕の持つ他の魔銃とは違って、魔銃の能力が特殊効果に入っているところだよな。多分、純粋な魔銃とは違って、魔化石を使ったからなんだよな。まぁ、効果に違いは無いので問題は無いけどな。


〔『………お客さん』〕


『えっ!?』

多分、フレイ目当ての客だよな………今、ホームに居ないからな。困ったな。


『こんにちは。シュン、いますか?』

この声はリツか?それなら、問題は無さそうだけど………


『いるぞ。工房の中だ』


『お邪魔しま~す』


『おう、いらっしゃい。でも、まだ弓は作って無いけどな』


『いえいえ、大丈夫ですよ。今日は別件で来ました。昨日………違いますね。今朝の事の謝罪と以前お約束していた件です。今日は、本当に朝早くにすみませんでした』

朝の件か………


『まぁ、もう済んだ事だからな。いつまでも、気にしなくても良いし、朝は僕もイライラしてたからな。色々と悪かったな。それと、僕はリツと他にも何か約束してたかな?本当にすまないけど、思い当たらないんだよな』

リツと何か約束してたか?基本的に人との約束を忘れる事は少ないはずなんだけど、全く思い出せない。


『ファミリアの情報ですよ』


『何!?ファミリア!?今いるのか?』


『今回の射撃競技一位の報酬が、奏猿石(そうえんせき)って言うアイテムで………それが、これなんですけど』

鞄から黄色の半透明な玉を取り出して見せてくれる。今更になるけど、射撃競技のパーフェクト達成者ってリツだったんだな。あの弓の射程距離で達成するのは、至難な技だよな。本当に凄いよな。


『これが、ファミリアなのか?』

どう見ても、ただの黄色い石にしか見えない。


『黒は分かるか?』


『………まだ違う』

黒は竜の姿になり、僕の頭に泊まって喋りだした。


『まだ?どう言う事だ』


『はい。黒ちゃんの言う通りで、この奏猿石は正確に言うとまだファミリアでは有りません………ファミリアの卵って言うと分かり易いですか?』


『ファミリアの卵………なるほどな』

だから、まだ(・・)なんだな。条件は分からないけど進化(これが卵と言うのなら、孵化(ふか)かになるのかな?)すればファミリアになるって事だな。


『それで、誕生の為の条件は分かっているのか?』


『いえ、進化条件は未定ですが、常に持っていないとダメみたいですね』

リツが教えてくれたアイテムの説明によれば、倉庫に保管とかは問題外らしい。常に温めるように鞄の中や手の中に持っていなければ、進化しないらしい。もしかしたら、ケイトの手に入れた煌馬石も、名前が似ているのでファミリアの卵かも知れないな。これは、あとで確認してみる必要が有るな。


『でも、どうして、そんなレアな情報が分かったんだ?』


『《分析》と《解析》のスキル持ちがギルドにいますので、ある程度の情報は………それでも、全ては分かりませんでしたけどね』

そんな特殊なスキルも有るんだな。まぁ、僕が言えた義理では無いけどな。《見破》の類似スキルか上位スキルかな?そう言えば、僕の《見破》も上限まで成長してたよな………


『リツ、少し待っててくれ。《見破》スキルを進化させてみる』


えっ~と、これは、どう言う事だ。《見破》の進化先が他のスキルに競べて異様に多い気がするな。五種類って言うのは、僕が知る限りでは最多だよな。それに、その中に一つだけ異彩を放っているスキルも有るからな。



《心眼》??? 必要SP 20

《神眼》??? 必要SP 20

《真眼》??? 必要SP 20

《診眼》??? 必要SP 20

《目で見るんじゃない感じるんだ》??? 必要SP 50



五つが五つ共にスキル内容、条件共に不明か………その内四つは効果は違っても同じ『しんがん』と読むんだよな。名前だけ見ても、どれも素敵なスキルだよな。


う~ん、どれにしようかな………やっぱり、ダメだな。なんとかして無視してみようと試みたけど、最後の一つが異彩を放ち過ぎていて気になり過ぎる。なんて言うか………僕の心を鷲掴みにされている気分だからな。


『リツ、黒、すまない。今から僕のステータスを表示するから、少しスキルについてアドバイスをくれないか?ちょっと、僕だけでは判断がつけられない感じなんだよな』


『………了解』


『私も、大丈夫で………な、何でふか、何ですか?このスキルは………』

今、噛んだよな。まぁ、動揺するのは分からなくも無いけどな。


〔『………噛んだ』〕


〔『主に黒よ、その事に触れずに流してあげる事が、紳士(大人)の優しさなのじゃ』〕


『だろ?僕的には五番目の《目で見るんじゃない感じるんだ》が気になり過ぎてな』


『そのスキルは、名前先行型(優先)のネタスキルじゃないですか?きっとそうですよ。それだけは止めた方が良いですよ』

リツの焦り方が半端ないな。まだ、噛んだ事を気にしているのか?


『………どちらかと言うと主向き』


『黒、そうなのか?』

黒がコクンと頷いたので、50SPを消費して《見破》を《目で見るんじゃない感じるんだ》に進化させる。まぁ、僕の心を鷲掴みされている時点で取得しないと後悔しそうだったからな。隣でリツが『ちょっと待って』と焦りながら言っているが、もう進化済みなので手遅れだな。


なるほどな。取得してみて分かったけど、黒の言う通りで僕向きのスキルかも知れないな。


《目で見るんじゃない感じるんだ》の効果を簡単に言うと状況の把握だ。直接見たりしなくても、触ったり存在を確認(・・・・・)する事が出来れば、その時に必要な情報が頭に伝わってくる。ある程度の範囲内なら誰がどこにいるかも分かるようで………今、ケイトとヒナタの二人がホームに帰って来た事も分かった。色々な意味でタイミングが良いな。


取り敢えず、《目で()るんじゃない感じ(・・・・)るんだ》はスキルとしは名前が長いから、省略して《見ない感じ》とでも呼ぼうかな。


『うわっ!?』

それと、ファミリアの卵の仕様の件は一端置いておくとして、このうっすらと頭の中に浮かんだシルエットが、奏猿石の正体なのか?


〔『主よ、多分そうなのじゃ』〕


『どうかしましたか?』


『あぁ、すまない。リツ、その奏猿石の事だけど、鞄に入れていても進化しないみたいだぞ。その情報は間違い(ガセ)とまで言わないけど、正確では無いな。正しく言うなら、出来るだけ直接手に持っていた方が良いみたいだな。そうだな………普段はなるべく手に持っていて、手に持てない狩り等の時は奏猿石用に首から下げる袋でも作って、肌身離さず(・・・・・)持っていた方が進化までが早そうだな。今の奏猿石のレベルは2で、レベル15でファミリアに進化するみたいだな。まぁ、この場合は孵化って言う方が正しいのかも知れないけどな』

奏猿石の進化方法や進化後の姿まで手に取る様に感じる事が出来る。まぁ、《見破》みたいにプレイヤーの心の中までは分からない様だが、補助的なプレイがメインの僕には《見ない感じ》の方が向いてるかも知れないな。


『えっ!?えっ~~~!!そんな事まで分かるんですか?』


『みたいだな。スキルの名前が冗談みたいに変わってるだけで、その能力は一級品(レア)みたいだな』

実際に、取得したばかりなので効果範囲等の細かい事までは分からないけど。それは、使っていけば自ずと分かる事だからな。


『シュン、色々とありがとね。ファミリアは進化したら見せに来るね』


『おう、楽しみにしてる。弓の方は出来たら連絡するからな』

まぁ、奏猿石の進化後の姿も、うっすらとだがほぼ把握出来ているので、リツが直接【noir】のホームまで見せに来れない事も僕には分かっているのだけど………それは、今のところは内緒だ。是非とも、リツには驚いて貰いたい。


後々、困る事が分かっているので先に進化後の姿を教えても良かったのだけど、本人的にも楽しみが減るだろうし、僕的にもまだまだ把握しきれてない《見ない感じ》スキルの詳細までは話したくないからな。


まぁ、僕には必要が無いのだけど、実際にファミリアに会いたがっているのは白と黒だからな。進化したら、僕から会いに行かなければならないだろうな。





『ケイト、ヒナタ、お帰り』

スキルのお陰で、振り向かなくてもヒナタ達が工房に入って来た事と僕に声をかけられて少し驚いている事まで分かる。やっぱり、このスキルは色々と便利そうだな。本当に僕に向いてる気がするな。


『『………ただいま戻りました』です』


『それと………入賞おめでとうございます。応援には行けませんでしたけど、結果と動画はさっき確認してきましたよ』


『私も見ましたです。おめでとうございますです』

あれが動画で流れてた?情報系のサイト………いや、今回は公式イベントだから公式サイトの方だな。これだと、アーツや可変武器の情報も流れてると思った方が良さそうだな。唯一の救いは【白竜】と【黒竜】を使わなかった事か………ハーフマラソンでは気を付けなければならない事が増えたな。


『ありがとな。ケイト、少しだけ時間良いか?』


『はいです。大丈夫です』

ケイトがヒナタと顔を見合わせて答えた。


『良かったら、この前のイベント報酬の煌馬石を少し見せてくれないか?』


『分かりましたです。これになりますです』

僕は、ケイトが取り出した煌馬石を《見ない感じ》を使って確認する。実際のところ《見ない感じ》は常時(オート)発動系のスキルなので使って言うのは、少し違うかも知れないけどな。


なるほどな。ちょっと意外な部分も有ったけど、ほぼ僕の思った通りだったな。まぁ、ちょっと意外の部分がイレギュラー過ぎるんだけどな。


『ケイト、ヒナタ、それがどんなアイテムか分かるか?』


『分かりませんです。レア素材だとは思ってるんですが、私やヒナタ、それにフレイにも用途が全く分かりませんです』

ケイトとヒナタは、また顔を見合わせてケイトが代表して答えた。


『僕も、リツに聞いて存在を知ったんだけど、これは素材では無くて、ファミリアの卵らしい。進化したらファミリアになるぞ』


『『えっ!?』』


『それって、雪ちゃんや白ちゃん達と同じ存在ですか?』

驚きながらも、ヒナタは羨ましそうにケイトの手の中を見ている。


『一応、そうなるのかな。直接、手に持っていると成長が早いみたいだぞ』


『やりましたです。これでマスターと同じなのです。分かりましたです。出来るだけ手に持っていますです』

ケイトは、『常に煌馬石を握り締めて頑張りますです』と呟きながらやる気を見せている。


『ケイト、やる気を見せているところ非常に申し訳ないんだけどな。ケイトの場合は、もう一つ選択肢が有ってだな…………』

この言葉に二人は、もう一段階上の驚きの表情を見せてくれた。


『ケイトは、あまり使って無いようだけど、以前にイベントの特別報酬でユニーク武器の【七星杖】手に入れただろ?ほら、僕と二人で参加した夏のイベントで』


『はいです。これですねです』

そう言いながら、ケイトは鞄から【七星杖】を取り出してみせる。


『うん。それそれ………と言うか、まだ二ヶ所しか埋まってないんだな。まぁ、その方が今回は都合が良かったんだけど、ここに煌馬石も填める事が出来るみたいなんだよな』

まぁ、これが、さっき僕が思った意外な部分(イレギュラー)に繋がるのだけど………


『Why?』


『こればかりは、やってみないと正確には分からないけど、多分………魔獣器に出来るんだと思う』

まぁ、これが出来るのは、【七星杖】がユニーク武器だからなんだろうけどな。リツには出来ない事だよな。


うん!?ちょっと待てよ。〈創造主〉の称号を手にした僕が製作する弓なら出来るのでは?〈創造主〉と言うスキルは、魔獣器を製作した事で取得出来たスキルだからな。出来る気がする………いや、流石に無理かな。


『『えっ~~~~!?』』

まぁ、僕も《見ない感じ》の力で、ここまで把握する事が出来るとは思ってなかったんだけどな。


『それよりも、シュンさんは何で知ってるんですか?リツさんから教えて貰ったんですか?リツさんは何で知ってたんですか?』


『いや、これはリツも知らなかった事だ。僕が《見破》スキルを進化させて《目で見るんじゃない感じるんだ》って言う冗談みたいな名前のスキルを取得したからなんだよ。それの効果が名前以上に冗談みたいでな。見なくても触れたり感じたりする事で、おおよその事が把握出来るみたいなんだよな………さっき、二人が帰って来た時に、僕は見ていないのに分かったのも、このスキルのお陰だ』

僕の説明を聞いて二人共に目が点になっている。動揺の仕方が、リツとは違うよな。まぁ、僕としては驚かす気は全く無いんだけどな。


『それで、ケイトはどうする?』


『折角ですので、やってみますです』

ケイトは煌馬石を【七星杖】の空いていた上から七番目の穴に填め込む………一瞬だけ光ったのだが【七星杖】のステータスには全く変化が無い。あれ?失敗だったかな?成功したと感じたんだけどな。


『マスター………』


『シュンさん、何も変わらないようですが………』

ケイトも、ヒナタも不安そうに【七星杖】を見ている。


『そうだよな………』

煌馬石のレベルも1のまま変わってないようだし、本当に失敗したか?


『………大丈夫。成功』


『主よ、成功して魔獣器になっておるのじゃ。ただのう、所詮は卵だからのう、ちゃんとした成長が必要なのじゃ。今の状態は魔獣器の卵、もしくは魔獣器・仮と言うところじゃ』

なるほどな。魔獣器になっても成長そのものは必要なんだな。それは、分からなかったな。どうやら《見ない感じ》も万能では有っても、全能では無いみたいだな。


それにしても、白はいつのまに現れたんだ?《見ない感じ》でも気付かなかったぞ。


『………だそうだ。今のレベルは僕が分かるから、いつでも聞いてくれ。ちなみに今はレベル1でレベル15になるとファミリアになるぞ』


『分かりましたです。頑張りますです』

煌馬石単体の状態では成長後の姿も分かっていたのだが、【七星杖】を加えた事で成長後の姿が分からなくなった。これはこれで、楽しみが増えたと言う事かな。ケイト色々な意味で頑張れよ。





『シュン、待たせたな。準備は出来てるか?』

競技開始まで、あと一時間と言ったところでアクアが準備万端と言った感じでホームに現れた。


『大丈夫だ。そもそも、持ち込み可能な物自体が少ないからな』

持ち込める物は武器、武器の器、鞄くらいだったはずだ。これくらいなら普段の狩りと変わらないからな。


『それもそうだな………って、おい、その銃も持って行くのか?』


『まぁ………な。念の為、保険みたいなものだ。今回は六種の銃(・・・・)で参加するぞ』

この銃の一番の被害者であるアクアが、この銃を見て良い思いをしないのは分かるけど、保険は無いよりは有った方が絶対に良いからな。


『それと、アクア………イベント中は、それを使え』

テーブルの上に置かれている鞄を指差す。


『この鞄が、どうかしたのか?って、おい、これって』

すぐに共有化の特殊効果に気付いたみたいだな。そう言うところは相変わらず目敏いらしい。


『僕の新作鞄の試作品だ。あとで必ず返せよ』

やっぱり、驚いて固まったな………リアクションだけは、お前が一番(ナンバー1)だよ。親友。


『シュン、これはいくらだ?売って………』


『借金』

借金の事情等は、アキラから既に聞いている。ご利用は計画的にして貰いたいものだな。


『………すまん』


『まぁ、取り敢えず、広場に行くぞ。防具の選択が有るからな』

防御力が0でも、なるべく露出が少なくて目立たない物を選びたい。その選択を間違えると今後の生活が死活問題になる事は請け負いだろう。





『シュン、防具は決まったのか?』


『あぁ、僕はこれにした』

着替え終わった状態でアクアの前に姿を現す。


『おい、そんなので良いのか?』

僕が選んだ防具は、頭から足まで体全体をすっぽりと覆う黒いローブだ。普段よりも少し動き難いが、機能美よりも正体がバレない事を最優先にした結果だ。まぁ、防御力はどれを選んでも0だから、大した問題では無いからな。


『僕は、これが良いんだよ』

射撃競技の動画が流れている事も有るからな。念には念を押しておいた方が良いだろう。


『俺は、これを選んだぞ』

ファッションショーのようにその場でクルッと一回転して、青色に輝くいかにも高価(ゴージャス)な鎧と言う防具の全体を見せてくるが、僕の感想としてはハデな鎧を選んだなとしか言いようがない………幼馴染みと言うフィルターを通して、かなり贔屓目に見ても動き難そうなんだけどな。


『まぁ、頑張れ』

今は、アクアの格好よりも事前の準備が大事だ。


黒のローブと一緒に選んだイベント専用のゴーグルも視界に問題は無さそうだな。ホルスターには上限いっぱいの六丁の銃が収納されていて、右手に作ったばかりの【魔氷牙・魔氷希】も持っている。【魔氷牙・魔氷希】はデビュー戦になるけど、僕は期待してるぞ。


『よし、準備はOKだな』

あとは、開始を待つだけだな。





十二時間魔裸存(ハーフマラソン)ルール


これは、制限時間内にイベント限定の特設エリアで無制限に出現する魔物を狩り続け、獲得した得点(ポイント)を競うサバイバル競技になります。


参加者の皆様には、イベント専用のゴーグルを装備してもらいます。そのゴーグル越しに赤く見える標的はプラス得点で、青く見える標的はマイナス得点になります。十二時間を通して最多得点者が優勝です。

※十二時間以内に倒されたパーティーの得点も記録として有効になります。


なお、この競技はイベント報酬とは別に特別報酬として、十二時間生き残ったプレイヤーの皆様は競技中に獲得した全てのアイテムも獲得する事が出来ます。



〔皆様、大変長らくお待たせ致しました。これより、第三回公式イベントのメインイベントの一つ十二時間魔裸存を開始致します。出場者の皆様は、制限時間十二時間の中でいかに多くの得点を狙えるか?そして、生き残る事が出来るのか?楽しみに拝見させて頂きます。最後に、事前に公表していたルールに一つ追加させて頂きます。今回は二人パーティー指定の競技ですので、どちらか一人でも退場に成りますと残っておられるプレイヤー様も自動的に退場とさせて頂きます。今回のエリアには、かなり大きな無人島をご用意しております。狂暴な魔物も多数配置しておりますので存分にお楽しみ下さい。それでは皆様、準備は宜しいですか?(スリー)(ツー)(ワン)・レディーゴー!!〕





アナウンスの終了と共にイベント用のエリアに転送された。転送された場所の周りには、他のプレイヤーや魔物の気配は無い。


『アクア、最低でも最後までは生き残るぞ』

二人共が生き残りさえすれば、獲得したアイテムが特別報酬として手に入るからな。同じ参加するのなら、最低でもそこまでは目指したい。


『それは、当たり前だ。俺は最初から一位しか目指してない。と言う事でシュンの出番だ。今回は防御面が不安だから、念の為に〈ウィンドシールド〉を掛けてくれないか?』


『悪いが、僕は《旋風魔法》を《短剣》スキルにチェンジしたからな。魔法は全く使えなくなった』


『何!?それ、聞いてないぞ。それだと俺の予定が崩れるんだが………』


『言ってないからな………と言うか、最初から人のスキルに期待をするな。誘って来たのは、お前なんだぞ。それと、回復も自分の力で頑張れよ』

僕自身に対しても、ここぞと言う時以外は【白竜】での回復も使う予定が無いからな。


『うっ………分かった。それで、まずはどうする?』

どうすると言われてもな………


『取り敢えずは、アクアを先頭に得点になる魔物を探しながら、手っ取り早く回収出来そうな素材の採取と採掘からだな』


『おい、ちょっと待て。いきなり、採取するのか?』


『当たり前だ。HPを回復出来るアイテム(薬草)小腹を満たす(食糧になる)物、それに最低でも水が無いと、僕はともかくアクアがもたないだろ』

十二時間を狩りをしながら警戒して過ごすとなると、空腹やイライラからの感情度の低下が一番問題になるはずだ………と言う事は、耐える以外にも対処する方法が有るはずだ。それを優先的に探さないと、このイベントをクリアするのは難しいだろうな。まぁ、新しい素材が取れれば最高だと言うのも理由の一つに有るけどな。


『俺がもたない………なるほど。シュンは、その事にいつから気付いてたんだ?』


『ルールを見た時からだな。今回は、アイテムの持ち込み禁止ルールにも関わらず、鞄の持ち込みは可能だったから、ある程度確信は有ったかな。採取や採掘が出来るように短剣も用意して有るぞ』

新しく作った【魔氷牙・魔氷希】も見せる。


ちなみに、テスト済みの【ソル・ルナ】を装備しなかったのは、予備のマガジンを持ち込めなかったので銃弾の節約の為だったりする。


『それでか。いつもと違って、シュンが銃を常時装備状態だから気にはなってたんだ。俺は、今回シュンを誘った事は正解だったぞ』

僕はパートナーがアクアと言う事が一番の失敗だと思う。こう言う時は、ギルドの仲間………特に万能系のアキラかケイト、生産系に詳しいフレイがパートナーには望ましいよな。


『それは、どうも。そろそろ移動するぞ』

僕達、採取するために森の方に移動を始める。


イベントエリアに用意された無人島は、無人()と言うだけ有って、周囲を海に囲まれている。僕達が転送された場所がたまたま少し小高い丘だった為に、ある程度は地形的な物を把握する事が出来ている。僕にとっては珍しい事だけど、ラッキーだったのかも知れないな。


『アクア、ストップだ。右前方、見えるか?二匹、いや三匹』

兎に似ているウササギと言う魔物。兎に似ていると言っても、兎の特徴である長い耳が有るだけで見た目は的にはオラウータンに近い。名前通り詐欺(サギ)だな。


『OKだ。俺も確認出来た。赤だからプラス得点だな』


『〈攻撃力上昇〉〈防御力上昇〉』


『サンキュ。〈スラッシュ〉。シュン追撃は任せたぞ』

まぁ、ここは任されておくか。アクアのアーツが命中した魔物に【魔氷牙・魔氷希】の射撃で追撃をしていく。


『えっ!?………凍った?のか』

【魔氷牙・魔氷希】の射撃を受けた魔物は一瞬で凍り付き、アーツを放って接近していたアクアの一撃で砕かれる。


いや、確かに特殊効果で凍結って有ったけど、その効果が一回目で出るとは思わなかったな。


『シュン、まだ二匹いるんだぞ。ボーっとするな』


『すまん。それと、アクアそれ以上近付くな。そいつらは爪に毒を持っている。出来るだけ遠距離から攻撃するぞ。それと大き方のメスを先に倒すな、メスを先に倒すとオスが狂暴化する。そこだけは気を付けろ』

一匹倒した事で、ウササギのステータス(名前以外)の詳細も把握出来た。状態異常の回復方法が【白竜】以外に無い現状で、開始早々に毒を喰らうのは悪手だろう。それと、運良く最初に倒したのがオスで良かったよな。やっぱり、今日の僕は珍しくツイているのか?


アクアに対して手早く指示を飛ばし、僕も援護と牽制にまわる。二匹目、三匹目は、すぐにとはいかなかったが、二匹共数発で凍らせる事が出来た。凍らせてしまえば俺の番だとでも言いたげな感じで意気揚々とアクアが止めを刺していく。なんだか美味しいところだけ取られた気がするな。


まぁ、紙装甲の僕は魔物に近付く気はしないから別に良いんだけど。万が一、大きなダメージを受け、竜の力が発動して常時回復等を見られたら、それが一番厄介だからな。


『これで、終了っと………この辺に素材は有りそうか?』


『多少はな。レア度の低い薬草や状態異常回復系の薬草が数種ってところだな。適当に採取するから、警戒は宜しく』

普通の価値としてなら全く無い素材だけど、イベント中限定でアクアに持たせる気休めには十分だろう。流石に、倉庫直通の効果までは使えなかったけど、僕とアクアの鞄同士の共有化が使えたのは大きいよな。


〔『白と黒も《探索》をお願い。アクアでは頼りにならない』〕

白と黒にも警戒を頼んで、僕は採取に専念する。


〔『了解じゃ』〕


〔『………近くに小さい池、多分飲める水』〕


〔『黒、ナイスだ。サンキュ!!』〕

開始いきなりで水源の確保は大きいよな。木材も少し余分に採取しておいて木製の簡易水筒でも作ろうかな。これは、かなりのアドバンテージだな。





『………本当に有ったぞ。シュン、何で分かったんだ?』

想像よりも澄んでいて綺麗だな。黒からは小さい池と聞いていたけど意外に大きいよな。普通に魚も生息しているみたいなので、飲み水としても使えそうだな。釣具が有れば、ここで簡易食糧も確保出来て一石二鳥だったんだけどな。


『【noir(企業)】秘密だ。取り敢えず、ほら。さっき水筒を作ったから、これに水を汲んでくれ』


『了解だ』

アクアに竹製の水筒を渡して、僕は岩場で採掘をしていく。森同様に採れる物に珍しい物が無かったのが残念だよな。


〔『………主、ごめん』〕


〔『どうした?黒』〕


〔『………魔物がいる』〕


〔『何!?魔物?』〕


『くそっ!!シュン、レクトパス………』

黒、そう言う事は、もう少し早く教えて欲しかったな。それも、よりにもよってレクトパスか………まぁ、全く知らない魔物よりはマシってところかな。


『………が三匹だ』


『マジか!?』

前言撤回、全然マシじゃない。むしろDIE()ピンチだ。


『アクア、取り敢えず、そっちの二匹は任せた。回避と牽制を優先して耐えろ。〈速度上昇〉と〈回避上昇〉、その間に僕が一匹ずつ確実に仕止める〈ルナ〉』

アクアに《付与術》をかけて、一番近くにいるレクトパスに射撃をしていく。さらに、左手に【ルナ・ソル】を持ち、斬撃を繰り出して脚の数を減らしていく。以前の僕ならレクトパスが三匹も現れた時点で手こずった………いや、ここでリタイアになったんだろうな。だが、今は………


『くっ!!俺が二匹なのか?〈ライジングブレイド〉』


『当たり前だろ』

僕は低攻撃力の【銃士】で紙装甲の後衛だぞ。普通に考えるとそうなる………と言うか、雷系のアーツが有るなら楽勝だろう。それに………


〔『白、アクアのHPが三割を切ったら、念のために教えてくれ』〕

保険だけを掛けておけば、なんとかなるだろう。


〔『了解じゃ』〕


『〈リング・イン〉』

僕は、【魔氷牙・魔氷希】でアーツを放ち連射していく。魔銃から放たれる連射の檻は、レクトパスの動きを制限し、その場に固定してしまう。


やっぱり、このアーツは魔銃+竜の力(・・・)との相性が良過ぎるな。レクトパスの方も射撃の隙を突いて、僕に墨や脚で反撃を試みてくるのだが………単発の墨は余裕を持って回避し、脚を使った攻撃は【ルナ・ソル】の斬撃で対処する。成す統べなくドロップだけを残して一匹目のレクトパスは消滅していく。


『一匹目終了だ』


『そっちも終わったのか?こっちも、〈スラッシュ〉。今、一匹仕止めたぞ』


『おい、バカアクア、油断する………』


『ぐわぁぁぁぁぁ~~~~』


ザァバァ~~~~ン


『………あっ!!待て、くそっ!!』

一匹仕止めた事で油断したアクアが、三匹目のレクトパスに池の中に引きずり込まれた。アクアが引きずり込まれた跡には、無情にも渦だけが残されている。


ルール上では、パーティーメンバーがリタイアしたので、僕も転送されて終了………になるはずなのだけど、僕一人が池の周りに取り残されている。


『あれ?』

一体どう言う事だ?』リタイアにならないと言う事は、アクアはまだ生きてると言う事か?


『えっ~と』

確かに生きてはいるみたいだな。《見ない感じ》のお陰で存在だけは感じられるけど、どこにも姿は見えないし、コールやパーティーチヤットも繋がらない、と言う事は………


『あの中か?』


〔『主よ、鞄の中じゃ』〕


〔『鞄!?鞄の中がどうかしたか?』〕

鞄に共有化が付いていてもゲートのように出入り出来るのは白と黒だけで、アクアは入れないはずだけど………


〔『違うのじゃ。ドロップが増えておるのじゃ』〕

そう言う事か。確認してみると、確かにさっきまでは二匹分だったレクトパスのドロップが三匹分有る。と言う事は、最後の一匹はアクアに倒されたって事だよな。


『………やっぱり、あの渦の中か………』

僕は、少しだけ躊躇した結果、無情に残されていた渦の中へと飛び込んだ。

装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/二弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉

【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉

【白竜Lv41】攻撃力0/回復力181〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv40】攻撃力0/回復力180〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

【???】???

防具

【ボロボローブ】防御力0

アクセサリー

【レンタルゴーグル】



天狐族Lv46

《双銃士》Lv69

《魔銃》Lv68《操銃》Lv11《短剣技》Lv18《拳》Lv40《速度強化》Lv93《回避強化》Lv94《魔力回復補助》Lv94《付与術》Lv64《付与銃》Lv69《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv8


サブ

《調合職人》Lv25《鍛冶職人》Lv41《上級革職人》Lv4《木工職人》Lv32《上級鞄職人》Lv5《細工職人》Lv33《錬金職人》Lv31《銃職人》Lv28《裁縫職人》Lv12《機械製作》Lv27《調理師》Lv3《造船》Lv15《家守護神》Lv29《合成》Lv31《楽器製作》Lv5


SP 24


new種族専用アーツ

夢幻(ゆめまぼろし)〉消費MP 40

〈乱〉で造った幻術を数秒間実体化させる

習得条件/天狐族Lv45

※無機物に限る


称号

〈もたざる者〉〈トラウマプレゼンター〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉

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