第三回公式イベント 5
『ふぅわ~~あ………』
『主よ、今日はかなり眠そうなのじゃ』
『まぁ………そうかな、普段なら完全に寝てる時間だからな』
僕は、さっきから繰り返し出ている欠伸に耐え、半分閉じそうになっている瞼を擦りながら答えた。いくら仮眠を取ったと言っても、現在の時間は午前四時。普段なら、確実にベットの中で夢もしくは悪夢を見ている時間だ。
まぁ、トリプルオーのプレイ中は、ヘッドギア付けてベットで寝ているから、他の人からの見た目は寝ているのと全く変わらないんだろうけど。
『主よ、それで、今日の競技は大丈夫なのかの?』
『う~ん、どうだろうな?最低でも、新しく取得したスキルの確認だけはしたいんだけどな』
実際は、どうなる事やら………
当初の目的とは大きく異なるけど、明日に控えるハーフマラソンの為に、射撃競技の中で《操銃》スキルの確認と少しでも良いからスキルのレベル上げはしておきたいよな。本当なら、今日の射撃競技の前にテストしたかったんだけど、あいにく時間の折り合いがつかなかった為、完全にぶっつけ本番なんだよな。
『………主、寝てた』
『主よ、主が怠けてなければ、修練する時間は十分に有ったのじゃ』
『いやいやいや………確かに、ログアウトしてたけどな。競技に向かう為に僕自身の体調管理も必要だろう?』
いかに、竜の力に常時回復能力が有っても、その力の限りは現実の世界までは及ばないからな。
かと言って、事前に負けた時の言い訳をしているのでは無くて、当然狙えるなら僕としても上位入賞は狙いたい。今回のイベントの報酬も色々と魅力的な物が多いので、出来る事なら貰いたいからな。
『主よ、冗談は置いておくとしてじゃ、本当にワシと黒を使わなくて良いのかの?この競技は、そんなに甘いものかのう』
本当に、さっきのは冗談だったんだろうか?個人的には、かなり気持ちが込められていた気もするんだけどな。
『………その詮索は無意味』
かなり言いたい放題なんだけど………確かに白の言う通りで、今までが今までだけに、射撃競技だけが優しいルールと言う事は無いだろうな。しかも、大運動会の中でも数少ない武器種限定競技だからな。突拍子もないルールも有り得るよな。
『まぁ、それは………ルールを確認してからになるけど、一応ホルスターの中には入れておくから、使わなくても大丈夫だろ』
こう言う時に、ホルスターに入れておけば効果を発揮する竜の力の便利さと有り難さを感じるよな。【白竜】と【黒竜】がユニーク武器なのだから、竜の力はユニークセットボーナスって感じになるのかな。
射撃競技ルール
制限時間の中で、ターゲットに百発中何発を的に当てれるのかを争う技術競技です。
運営から百発射撃出来る武器(弓・銃)を支給させて頂きますので、ご自由にお選び下さい。
支給した武器にのみ、競技としての命中判定が有り、一つのターゲットに対して最初の一発のみがターゲットとしての判定が御座います。
ターゲットの判別は、運営から支給させて頂くゴーグルをご使用下さい。
命中系のアーツを使って標的に当ててもカウントされませんのでご注意下さい。
なお、支給した武器には全く攻撃力が有りませんのでご注意下さい。
『う~ん………』
もしかすると少し面倒な事になるかも知れないよな。
このルールによれば、攻撃力の無い武器でターゲットを狙わなければならない。しかも、問題は一つのターゲットに最初の一発のみと言う判定だよな。最初の一発で当てなければ失敗になると言う事なのか?それとも、早く当てた者勝ちって言う事なのか?
………もしくは、その両方って事かな。
ここで………
『気になるのは、攻撃力の無い武器と言う事をわざわざルールで明記してまで強調している事じゃと言いたいのであろう。主よ』
そう。僕が一番気になっている事は白の言う通りだな。まぁ、僕は語尾にじゃとか付けないけどな。
それにしても、単純にターゲットを狙うだけなら、攻撃力の有無は関係が無いと思うのだけど、この部分を強調してまで明記していると言う事は、このターゲットと言うのは自由自在に動くのだろうな………まぁ、はっきりと言えば、魔物って事になるんだろうな。
………と言う事は、いくら死角に隠れて狙い撃って、仮にターゲットに当たったとしても、その瞬間からは僕も魔物からターゲットとして狙われるって事になるよな。このルールは、考えただけで気が滅入ってくるよな。
僕の攻撃スタイルは、相手の死角をついた奇襲。もしくは、牽制を織り混ぜながらの射撃がメインだ。
当然、いつものように〈必射〉系のアーツや【白竜】と【黒竜】を使えば、確実に当てる事は出来るのだけど、この競技ではアーツは禁止されているし、【白竜】と【黒竜】には競技としての当たり判定が無い。
『主よ、一体どうするのじゃ?』
『どうする………と言われてもな。魔物に対しては普通に他の武器を使うしかないと思うけど』
『主よ、主はルールを細部まで読んだのかのう?それは、無理なのじゃ。ルールで武器は支給と書いて有るのじゃ』
『それは、命中判定が有る武器は………と言う事だよな。逆に言うと魔物相手に戦闘するのには、競技の命中判定関係が無い他の武器を使っても良いって事だよな』
この点においては、若干だけど同時に二丁の銃を使える僕は、有利ではないのかと思う。両手で使う弓の場合は、一回一回装備を変えなければ魔物と戦えないからな。
『主よ、それは有りなのかの?』
それは、僕にも分からないけど、競技開始時にでも試してみれば良いだけだからな。それに、内心はトリプルオーでは過去にも盲点を突く事でプレイヤーサイドが有利になる事が多々有ったから、今回も出来そうな気はしているんだけどな。
『ルールにもダメとは書いてないからな………ほら、イベントエリアに白と黒も転送可能だったろ』
ゲートからイベントの準備エリアに転送すると、装備している武器も使用可能な状態で転送されている。
試しに、白で射撃してみたが、何の問題も無く可能だった。ちなみに、イベント準備エリアで可能な事は、イベントエリアでも可能になっている。まぁ、その為の準備エリアだからな。それくらいは、出来て当然なんだけどな。
『う~~む。今回ばかりは、なるほどなのじゃと簡単に納得は出来ないのじゃが………今、主とワシが言い争っても仕方が無いのじゃ。本末転倒になるのじゃ』
まぁ、競技も始まりそうなので、支給されている武器の中から使い勝手が良い物を選ばないといけないからな。
『あっ!!そう言う事か、なるほどな』
射撃競技で支給される武器は【魔弓・劣】や【魔銃・劣】等の魔力を使って発射可能な武器だった。どれも百発射撃出来る分だけの魔力が注入されているし、魔力の回復も出来ないところをみると、通常の劣化版って感じだな。これなら、特定のプレイヤーだけが許された卑怯な事も出来ないので公平かもな。
まぁ、この場合の特定のプレイヤーだけが許された卑怯な事と言うのには、僕の竜の力も含まれているのだけど………
当然、僕が選んだのは使いなれた【魔銃】の下位互換【魔銃・劣】だ。使いなれたと言っても名前と形が同じと言うだけで、自分のMP消費をしないと言う全く別の武器なんだけど。まぁ、それが分かるのは【魔銃】や【魔弓】持ちのプレイヤーだけなんだろうけど。
『取り敢えず、白と黒は何が有っても竜の姿にだけはなるなよ。それと、今からの会話は全て《心話》で頼む』
〔『『了解』なのじゃ』〕
僕にはスキルの確認と競技を楽しむと言う事以外に、真の目標が有る。それは、このイベントを期に銃を使っている知り合いを増やしたいと言う事だ。多分、この競技も弓を使うプレイヤーが多いのだろうけど………銃を使うプレイヤーもいるはずだから、他人には見えない白と黒を相手に独り言を話す気持ちの悪いプレイヤーと思われる訳にはいかない。
そして、一人でも多くの………いや、高望みは致しません。たった一人で良いので、銃を使うプレイヤーさんも居て下さい。本当に、切実に、お願いします。
〔皆様、大変長らくお待たせ致しました。間もなく、射撃競技を開始致します。この競技は、どの標的を狙っても1ポイント固定となっております。各競技者に支給済みのゴーグルは、標的のみに反応する仕様になっておりますので、扱いには十分注意してご利用下さい。なお、この競技はボーナスポイント等は一切御座いませんので、一射一射を大切にお射ち下さい。出場者の皆様が、制限時間二時間の中でどれだけ多くの標的を狙えるのでしょうか?ここがこの競技の見所となっております。それでは皆様、準備の方は宜しいですか?3・2・1・レディーゴー!!〕
『さて………』
まずはターゲットを探さないとだな。それにしても、このイベントエリアは酷いな………砂漠エリアで身を隠せるような障害物が全く無い。明らかに、僕とは縁がないエリアだな。それに、暑さの方も半端じゃなくて止まっているだけでも汗が流れてくる。色んな意味で過酷な二時間になりそうだよな。
制限時間が二時間と言う事は、百発百中を獲得するには約一分で一発くらいのペースは必要になるんだよな。《探索》スキルが有ったら良かったんだけど………
〔『主よ、そんな主に朗報なのじゃ。ワシと黒の《探索》スキルも有効のようじゃ』〕
『えっ!?』
それこそ有りなのだろうか?それが本当なら、めっちゃくちゃ他力本願な攻略になるけど、良い作戦を思い付いたぞ。
〔『主よ、主の周囲に魔物の反応が有るのじゃ………が全く見えないのじゃ』〕
『なるほどな。それだけで十分だ』
カゲロウ達の棒倒しでも出現したサソリ型の魔物みたいなのが、この地面の中にいるんだろうな。もしくは、砂漠に擬態出来る魔物………トカゲ系?やカメレオン系?がいるのかも知れないな。
まだ、ゴーグルに反応が無い事からみても、地中説が高いかも知れないな。
右手の【魔銃・劣】は、一発たりとも無駄射ちが出来ないからな。左手でホルスターから【ソル・ルナ】を取り出して適当な地面に対して無駄射ちをしていく。
『そこだ!!』
無駄射ちが、無駄にならなくて良かったな。取り敢えず、実験開始だな。
僕が【ソル・ルナ】で撃った場所が次々とゴーグルに反応していきく、その場所を【魔銃・劣】で追撃してポイント重ねていく。
【ソル・ルナ】で攻撃した魔物に【魔銃・劣】で射撃してもポイントが入るし、【魔銃・劣】で一回当て損ねた魔物でもポイントが入るので、最初の一発のみ………は早い者勝ち説の可能性が高くなったな。
無駄弾を一切使わずにポイントが取れるのは良い事だけど、魔物からの反撃が一気に押し寄せてくるのが危険だよな。当然、その中にはターゲットと全く関係の無い魔物もいるので、かなりの数になっている。まぁ、合体したビークィーンの攻撃よりは、遥かに優しいので、避ける事自体は簡単なんだけどな。
標的はゴーグルで見えているのだけど、回避を繰り返しているうちに、既に射撃済みのターゲットか、未射撃のターゲットなのかが分からない。まぁ、相手側も動いているからなんだけどな。ここは、《探索》スキル持ちの二匹に頼んだ方が良いだろうな。
〔『白、黒、近くでまだ撃ってない標的がいたら教えてくれ』〕
『〈ルナ〉』
近くに寄って来た魔物は、剣銃モードに変更して切り刻んでいく。マガジンを入れ換える時間が惜しい事と、《短剣技》のレベル上げも兼ねてだ。不本意ながらのメインイベントに向けて効率良くスキルを成長したいからな。
既に始まっているこのイベントでは仕方が無い事だけど、【ソル・ルナ】系の武器がもう一丁欲しいよな。明日までに、もう一丁作った方が良いかも知れないな。アクアとの練習の時も思っていたけど、やっぱり剣の状態をメインで使うなら二本の方がバランスが良さそうだ。まぁ、あの時はレーザー事件に全てを持っていかれたから、完全に忘れ去られていたんだけどな。
〔『………この辺りには、もういない』〕
〔『そうなのか?』〕
その問いに無言で頷く黒。当然、頷いたのが見えているわけでは無いけど僕には伝わってくる。それなら、ここに留まる理由は無いよな。追撃対策の為に、手っ取り早く近くの魔物だけを狩りきり、一気に他の場所に移動していく。
まぁ、他の場所って言っても、辺り一面は砂漠なので見た目は何も変わらないんだけど。所々で爆発や魔法の発動を確認出来る。あの辺りには、もうターゲットはいないんだろうな。目指すは、誰も荒らして無い場所だな。
〔『主よ、あそこじゃ。固まって十匹以上いるのじゃ。ただし、他の魔物も多いのじゃ』〕
『うん!?』
白が見付けた場所に移動して射撃を繰り返しているのだが………いくら、ターゲットに当てても何故かポイントが加算されない。何かがおかしいな?
〔『主よ、ダメなのじゃ』〕
〔『………既に取られてる』〕
『マジか!?』
えっ、まだ開始から、そんなに時間経ってないよな。かなり機動力と行動力の高いプレイヤーがいるみたいだな。
魔物自体がノーダメージだった為、気付かなかったと言うか、全く疑わなかったよな。それに、ポイントにならない標的は出来るだけ倒しておいて欲しかったよな。でも、これで確定だな。この競技は早い者勝ち説が証明されたな。
結果、十匹以上標的を狙い撃ったのだが、たったの1ポイントにしかならなかった。この場合は、たったの1ポイントでも残っていた事を喜んで良いのか?悪いのか?微妙なところだよな。
まぁ、この場合は色々な意味で経験値が美味しかったと思う方が前向きかな。特に、《操銃》と《短剣技》のスキルレベルの上昇と競技の詳細が掴めた事がな。
newアーツ
〈リング・アウト〉攻撃力×2/消費MP 35×弾数
習得条件/《操銃》スキルLv5
〈リング・イン〉攻撃力×2/消費MP 50×弾数
習得条件/《操銃》スキルLv5
〈スラッシュ・短剣〉攻撃力×1.5/消費MP 40
習得条件/《短剣技》スキルLv15
《短剣技》の〈スラッシュ〉は《長剣》等の多くの近接武器スキルにも有り、アクアやカゲロウが使っているのも見た事が有るので、内容は想像が出来るな。残撃による10メートル程度の遠距離攻撃だよな。銃がメイン武器の僕には、あまり必要が無さそうなアーツだな。
《操銃》の方は全く想像出来ないけど、アウトとインの二種類が有って、リングと言う名前が付くくらいだから、格闘技の舞台くらいの範囲を出入りするのアーツか?それとも、輪の中、輪の外等の範囲系のアーツか?
まぁ、銃と全く関係の無さそうな前者の可能性は皆無だろうけど………どっちにしても、名前からは何かしらの範囲系アーツが想像出来るよな。それに、消費MPに関しても分からない事だらけだからな。これは、試してみた方が早いかも知れないな。
若干、目的がテスト寄りに変わって来ているけど、今の時点で十発以上の無駄撃ちが有るからな。はっきり、言って上位に入るのは無理だろうな。
〔『主よ、あの魔物達で試してみてはどうかの?』〕
確かに、おあつらえ向きと言った感じだな。競技のターゲットにならない魔物が一塊の集団として見付かった。まずは………
『〈リング・アウト〉………えっ、あ、当たらない』
リングと言うのは、やっぱり輪の方だったんだな………まぁ、範囲系ってのは合ってたみたいだけど。全く当たらない。
〈リング・アウト〉は、アーツを放ったと同時に銃自体が僕の手から放たれ、僕もしくは指定したポイントを中心に空中をランダム軌道で回りだし、それと同時に僕の手の中には光の粒子で出来た銃が現れ、トリガーを引く毎にMPを35消費して空中に浮かんでいる銃から外に向けて銃弾が射撃されていく。これは、アーツを解除するか、MPが尽きるまではアーツの効果が継続するようだ。
一応、全方向攻撃と言う事になるのかな?一つのアーツで全方向に攻撃出来るのは喜ばしいけど、MPの消費が激しいのに加え、標的が狙い難く全く当たらない事が問題だな。
どちらかと言うと、タイミング系のリズムゲームに近いのかな?このアーツを使用する時は〈必射〉と同時に使った方が良さそうだな。一対多とか、大量の魔物に囲まれた場合に威力を発揮しそうだ。どちらにしろ、パーティー戦では仲間を巻き込みそうで使いどころが難しいと思うけどな。
それと、このアーツは明らかに弾数制限の有る銃ではなくて、魔力で放つ魔銃、もしくは………向きのアーツだよな。
続いて〈リング・イン〉も試してみたのだが、これは〈リング・アウト〉とは全く逆で標的を中心に内向きに回転しながらの射撃になる。〈リング・アウト〉以上にMPの消費が激しいけど、使い易さは比べるまでもないよな。標的を中心に回転しながら狙っていくので、ほとんど標的を外す事が無い。さらに、死角を突いた射撃や近付いてきた魔物へ〈零距離射撃〉のオート発動も可能になっている。
知らない人から見たら、質の悪いイジメだよな。僕が殲滅するか。銃弾が無くなるまで簡単には範囲外に逃げ出せない、例えるなら銃弾の檻と言う感じの範囲殲滅系のアーツだ。
そのまま〈リング・イン〉からの射撃を続けて、一塊になっていた魔物を片付けた。たまに外れた銃弾も流れ弾として他の魔物に当たっているので無駄弾が一切無かった。
〔『このアーツは、ボス戦を優位にしてくれそうだな』〕
〔『主よ、そのアーツや武器は使っても良かったのかの?』〕
僕が〈リング・イン〉を含めた戦略を考えたり、勝利の余韻に浸っていると白が水を差してきた。
〔『明日、ぶっつけ本番になるよりは、今日少しでもテストしてた方が絶対に良いだろ?』〕
それに、武器は前にも使ってるしな。僕としては、何を今更と言う感じなんだけど………
〔『いや、そうではないのじゃ』〕
〔『………モニター』〕
〔『くっ!!』〕
そう言う事か………競技と新しいアーツに夢中になっていて、完全にモニタリングされている事を忘れていたな。僕が他の競技を見ていたように、この競技も誰かに見られている可能性は高いよな。
そうなると………あのアーツと可変する武器は絶対目立ったよな。いくら今が早朝と言っても、広場にはそれなりの数のプレイヤーがいたはずだからな。
〔『………競技に集中』〕
まぁ、そうだよな。今は射撃競技に集中した方が良いかも知れないよな。不幸中の幸いと言うか、【ノワールローブ2】とイベント用のゴーグルのお陰で、僕の顔はハッキリとは見えてないはずだからな。これなら、いくらでも言い訳は可能だろう。
〔『主よ、それは明らかな現実逃避なのじゃ』〕
〔『白よ、はっきり言ってその通りだ。でもな、よく考えてくれ。僕の今の立場からすると現在逃避するしかないだろ』〕
これは正直に言うと、かなり失敗したと思う。
【ルナ・ソル】にマガジンを詰め直しホルスターに戻す。武器も【雷光風】に持ち変えて、また新たなターゲットを探し始める。【雷光風】はイベント用の武器とは違うので命中判定は無いが、魔銃なので銃弾を気にせずに済むからな。この広い砂漠を荒らしながらターゲットを探すのには向いているだろう。
砂漠を荒らす事で出現したターゲットを【魔銃・劣】に持ち変えて狙い撃ち、【ルナ・ソル】で止めを刺していく。最近では、こんなに銃を持ち変え続ける事が無かったので何か新鮮だな。
それよりも、この射撃競技のエリアなんだけど、僕がいる砂漠以外にも有るんだろうか?このエリアしか知らない僕にとっては、だんだんと射撃競技がモグラ叩きっぽくなってきてるんだけど。それに、見ている側も飽きてそうなんだけど………それとも、サソリ型のスコルピ以外にも標的がいるのだろうか?
〔『主よ、空じゃ』〕
空か………どうやら、僕の遥か上空にいたみたいだな。
アレもターゲットみたいだな。ツバメっぽい形状で名前はスワロッフスキー。名前と可愛らしくキラキラした可愛らしい姿からは全く想像出来ないけど、物理攻撃力がかなり高い。まぁ、遠距離攻撃技が無いのが救いかな。僕としては、それを確認出来た《見破》に感謝したいところでもあるけど、【魔銃・劣】では狙えない(正確に言うと狙っても絶対に当たらない)くらい高い場所にいるんだよな。だから、僕の競技ターゲットにはならないんだよな。残念ながら………
《狙撃士》とか遠距離用の魔物になるんだろうな。そうなると………多分、いるであろう近距離用の魔物を探した方が早いかも知れないな。近距離用がスコルピって事は無いよな。あれは《探索》が無いと見つからないから特殊枠になるはずだ。ある程度探して全く出会わないって事は別の地形にいるのか?
〔『白、黒、ここが砂漠とするなら、近くに水場と言うかオアシスは無いか?』〕
この場所が砂漠と言うなら、有っても不思議ではないよな。
〔『………探してみる』〕
〔『頼む』〕
時間も弾数も多くは残って無いからな。白と黒の《探索》の結果が出るまでは、【雷光風】で地道にサーチ&トライを繰り返すしかないかな。
『うぉぉ~ビビった~』
僕は、あれだけ予想していたにも関わらず、擬態系の魔物サンドカメレオンの存在に気付かずに尻尾を踏みつけてしまった。
このタイプは、衝撃や攻撃を受けるとゴーグルに反応するようだ。近くにいたみたいだけど自分で踏むまで全く気付かなかったからな。当然、白と黒の《探索》スキルにも反応していない。そうなると、擬態と言う能力は優秀過ぎるよな。多分、感覚的には〈朧〉のような知覚妨害系の能力になるんだろうな。
〔『主よ、南じゃ』〕
〔『………違う、北』〕
〔『えっ!?』〕
珍しく二匹の意見が合わないな。
〔『一体どっちなんだ?』〕
〔『南じゃ』〕
〔『………北』〕
どちらも全く譲らないようだな。二匹が言い争うのは本当に珍しい事だけど、少し困った事になったよな。
〔『分かったから、今度はお互い逆方向を確認してくれ。黒は南で、白が北だ』〕
お互いに、今確認していた方向の逆を確認させてみる。もしかしたらだけど、両方が正解の可能性も有るからな。
〔『主よ、すまんのじゃ。北にもいるようじゃ』〕
〔『………南にもいる。多分、南の方が近い』〕
〔『OKだ。白も黒もサンキュ。じゃあ、取り敢えず近い方の南を目指すぞ』〕
〈速度上昇〉の《付与術》を掛けて、一気に南のオアシスを目指す。まぁ、オアシスが見付かった事よりも、白と黒が争わなくて済んだ事が嬉しい。やっぱり、二匹は仲が良いのが一番だからな。
『うぉ~!!これは素敵だな』
うんうん。砂漠でオアシスが重宝される理由が分かるな。近付くにつれてめちゃくちゃ涼しく感じるし、何よりも遠くから見ても植物の緑で砂ばかりの世界で疲労した僕の心が癒される。まぁ、癒しと言う面では僕の露天風呂には絶対勝てないけどな。
オアシスの水辺に近付くと、遠くから見ているだけで癒されて、僕の心的にはかなりお世話になっていた植物が、いきなり襲い掛かって来た。やっぱり、露天風呂の方が格段に良いよな。
植物達によるツタでの攻撃のリーチは、一番長くても五メートルと言ったところだよな。つまり、五メートル以内に入らなければ全く問題無いと言う事だ。と言う事は、ある程度離れた場所から距離を取っての射撃で仕止めるのが一番だな。
しかも、この植物達は射撃競技の標的にもなっていたので、美味しくポイントまで頂けた。これが、近距離用の魔物になるのか?動くまではゴーグルに反応が無かったので、これも擬態系の特別枠的な魔物だと思うけど………もしかしたら、僕が気付いてないだけで擬態系の魔物は数多くいたのかも知れないよな。この状況で、砂漠の一部に擬態されたら、気付くのはまず無理だからな。
〔『主よ、すまんのじゃ。残念なお知らせが有るのじゃ』〕
〔『どうしたんだ?急に改まっ………』〕
〔『………水場全体がスライム』〕
『ち、ちょっと待て~~!!このデカイ水場がスライムだって言うの………うぉっと』
水場の側に近付いた瞬間に、巨大スライムは擬態を解き襲いかかって来た………と言うか、このオアシスは本当にスライムだったんだな。
『でかっ………おい、頼む、ちょっと待て』
サイズ的にはレイドボス級の大きさで、何よりも驚いたのが物理耐性を持っている事だ。反射的に放った魔銃の射撃すら一切通じていない。当然、実弾なんか効くはずも無い。《旋風魔法》を無くしたのは早まったかも知れないよな。
〔『主よ、多分じゃが………これは、トラップモンスターじゃ』〕
『くっ!!トラップうぉっ!?モンスター?』
くそっ、会話に………集中出来ない。白はトラップモンスターと言ったか?トラップモンスターと言うのは何なんだ?
砂漠エリアでオアシスをトラップにするのは、いくらなんでも酷すぎるだろ。絶対他にも引っ掛かったプレイヤーいるぞ。むしろ引っ掛かからないプレイヤーの方が少ないだろう。
〔『………意外と定番』〕
そう言う物なのか?僕としては、ゲーム製作者の性格と頭の構造を疑ってしまうんだけどな。
既に、僕は巨大スライム、危険な水場の攻撃を回避するのでいっぱいいっぱいになっている。
何故なら、デンジャーポットから吐き飛ばされる水滴は地面を一瞬で溶かしている。足等に喰らえば、いくら竜の力が有っても致命的になりえるだろう。それに、竜の力での急激な回復を見せて、これ以上悪目立ちするのは避けたいからな。
〔『………主、逃げる』〕
まともに攻撃する手段も無いし、逃げる方が良さそうだな。折角、おいしい水が飲めると思ってたんだけどな………水が飲めないなら仕方が無いよな。まぁ、これを飲めたとしても、確実に腹は下すだろう。
デンジャーポット本体の速度は、《付与術》を使っていない僕よりも遥かに遅い。回避しながら射撃して少しずつ距離を取る事が出来る。射撃でダメージを出す事は出来ないが牽制だけでも十分に効果的だった。
〔『主よ、どうやら逃げ切れたようじゃ』〕
まぁ、これだけ離れる事が出来たら、取り敢えずは大丈夫だろうな。既に、オアシスの場所から二百メートルくらいは離れている。
それに、デンジャーポットはオアシス専用のトラップモンスターだったみたいで、一定の範囲を出れないらしい。まぁ、あんなに大きいスライムがオアシスエリアを出たら目立ち過ぎて、本来の目的であるトラップにはならないんだけどな。それに、エリアから出てきてずっと追っかけられるのも個人的には遠慮したいけどな。
〔『………時間が無い』〕
『うそっ、マジか』
黒の言葉で残り時間が十五分を切っている事に気付いた。もう北に有るはずのオアシスに行く時間は無いよな。それに、またそこでデンジャーポットに出くわしたら立ち直れそうにないからな。称号的な意味でもな………
まだ、弾数も二十一発も残っている。思っていたよりも、このオアシス作戦………もとい、エリア移動でポイント稼げなかったのが響いてるよな。
〔『白、黒、近場で手頃な魔物はいないのか?』〕
〔『………西北西』〕
西北西か………う~ん、肉眼では見えないよな。でも、そこに賭けて残りの弾数使い切った方が良さそうだな。まだ無傷の標的が少しでも残ってたら良いんだけど………それだけは、行ってみないと分からない。
〔皆様、お疲れ様でした。只今をもちまして射撃競技を終了致します。ご生存の皆様は、最終結果の下位のプレイヤーから順に【シュバラツランド】に転送して行きますので、しばらくお待ち下さい。今回はご参加くださり有り難うございました。今後ともトリプルオーをよろしくお願い致します〕
最後の場所でも、あまりポイントを稼げなかったからな………結果は百発中六十七発。すぐに、転送されないところをみても下位と言う事は無いと思うけど、この命中率なら上位は無いだろうな。
〔『主よ、お疲れさんなのじゃ』〕
〔『………お疲れ』〕
〔『おう、白と黒もお疲れ様。明日も頼むな』〕
黒達と射撃競技の反省やアーツの対策を話していると僕の順番が来たようで僕達も転送されていく。
『おめでとうございます。シュン様は67ポイント獲得で第五位入賞になります』
転送された場所は、建物の雰囲気的に神殿の中の一室か?目の前にいるのはNPC?それとも、運営の人か?それにしても、あの結果で五位に入れるものなのか?
『ありがとうございます。ちなみに、何人参加していて、最高は何ポイントだったんですか?』
これを聞いておかないと、僕の五位が本当に喜んで良いものか分からないからな。
『今回、射撃競技には弓を使うプレイヤーが七十六名様、銃を使うプレイヤーが十二名様参加して頂きました。最高は百ポイントになっております。シュン様は銃を使うプレイヤーの中では二位になっております』
最高百ポイントついでに言う事は、言い換えるとパーフェクトだよな。それは、めちゃくちゃ凄いな。赤の他人の事だけどパーフェクトを出すと言うのは嬉しくなってしまうよな。僕も精進しなければ。
それにしても、思っていた以上に参加者が多かったんだな。これで五位なら、まずまずってところかな。
『そして、こちらの順位報酬と、所持している弓もしくは銃の中で好きな物を一つつだけ魔力化させる事が出来るアイテムが生存報酬になりますので、お受け取り下さい』
『ありがとうございます』
受け取った順位報酬は………
【氷牙希】攻撃力60〈特殊効果:氷属性/凍結〉
氷属性の短剣だな。少しレアな武器のようで、冷気のエフェクトと切った場所を凍結させる特殊効果を持っている。まぁ、限定武器やレア素材程では無いけど、物としては良い物だよな。
どことなく、形状が【クリアナイフ】に似ているので銃剣の素材にしても良いかも知れないな。そうなると、【氷牙希】に合う銃が問題になるのだけど………まぁ、これに合う銃は、属性的にもデザイン的にも【霧氷】しかないだろうな。
それよりも、生存報酬の魔力化させる権利が出来るアイテム・魔化石の方が気になるよな。強力な銃が手に入るまで待つか………今から作る銃剣に使うかだよな。魔銃の銃剣と言うのは生産者としても使用者としても魅力的だよな。まぁ、そこは出来上がった銃剣を見て決めても良いかな。
僕は、先に寝て起きてから作るか、作ってから寝るかの選択にかなり迷ったが、少し眠いのを耐えて後者を選び、工房で作業していた。理由としては早く作ってみたかった事と、十二時間を耐え抜く為に日中は多目に寝る事にしたからだ。まぁ、今回はベースになる武器と銃が出来ているので、それに合わせたギミックを《機械製作》で作るだけで良いってのも有るのだけどな。
タイミングが悪い事に、コールか………一体誰だ?今が何時だと思ってるんだよ。ログインしてたら、いつでもコールして良いって訳では無いんだぞ。
『シュン、リツです。今、時間良いですか?』
『いや、今イベント終えたところで疲れてるからな。出来たら次の機会で頼みたいんだけど………』
『あっ、すいません。射撃競技ですよね。私も出てました。それで魔化石って手に入りました?』
『あぁ、生存報酬だよな。手に入ったぞ』
魔化石を知っているって事はリツも生存してたんだな。一体何位だったんだろう?
『私も手に入ったんですが、これに合う弓の製作を依頼したいんですけど………』
………と言う事は、僕に魔弓のベースを作れって事だよな。それはそれで面白そうだよな。でも………
『………それ、明日でも良くないか?僕は今日の夜もイベントに参加するから今すぐには無理だけど、依頼自体は請けるぞ。弓の要望はいつも通りメールしておいてくれ』
『す、すいません。ありがとうございます。では、おやすみなさい』
リツの相手をしてたら、眠くなってしまったな………ギミック部の部品も出来ているからので、あとは《合成》するだけだし、僕も寝ようかな。
『おやすみなさい………』
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/二弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【白竜Lv39】攻撃力0/回復力169〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv38】攻撃力0/回復力168〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスターズ】防御力20〈特殊効果:速度上昇・大〉〈製作ボーナス:武器修復・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv44
《双銃士》Lv67
《魔銃》Lv66《操銃》Lv8《短剣技》Lv17《拳》Lv38《速度強化》Lv92《回避強化》Lv93《魔力回復補助》Lv92《付与術》Lv62《付与銃》Lv68《見破》Lv100※上限
サブ
《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv40《上級革職人》Lv4《木工職人》Lv30《上級鞄職人》Lv5《細工職人》Lv32《錬金職人》Lv30《銃職人》Lv28《裁縫職人》Lv12《機械製作》Lv25《調理師》Lv3《造船》Lv15《家守護神》Lv27《合成》Lv28《楽器製作》Lv5
SP 70
称号
〈もたざる者〉〈トラウマプレゼンター〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉




