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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第一部
3/65

★西の湖

 『ゴールデンウィークも今日を含めて残り二日か』

 長かったような、短かったような。まぁ、一週間以上有るのだから、世間的には長いのだろう。そして、体感的に三倍の世界で遊んでいる僕達にとっては余計にな。


 依頼を受けた翌日、ログインしてすぐにアクア達四人との待ち合わせ場所の西門を目指している。


 僕は、相手を待たせるくらいなら自分が待つ派なので、なるべく待ち合わせ時間の前に、出来る事なら最低でも二十分前には着いておきたいからな。


 まぁ、流石に二十分も前なら誰もそこにはいないだろう…と思っていたのだが、待ち合わせ場所には既に虎猫族の女性アキラが待っていた。


 『すまない。早く来たつもりだったけど、待たせてしまったみたいだね』

 この台詞だけを聞いて僕達二人を見ている人がいたら、デートの待ち合わせみたいだよな。実際には全然違うのだけど…


 『あぁ、大丈夫、気にしないで。私もさっき来たところだから。シュンさんも早いんだね』

 ますますデートの待ち合わせの雰囲気が強くなった気がする。少し周囲の視線が突き刺さるようなのは気のせいか?主に異性から…


 ただ、どの部分がとは敢えて言わないけど男っぽい見た目の印象と違い、細かいところまで気遣いが出来るのはやっぱり女の子だと思う。


 それにしても、女の子が男性に言って貰いたいデートワードの何十年も上位に君臨する「さっき来たところ」を女の子自身に言われるとは思わなかったよな。まぁ、この辺り行動や色々な部分がスラッとした細身(・・)で背が高く格好(スタイル)も良いので、色々な意味で男っぽく見えるんだと思うけどな。


 『まぁ、そうかな。僕は人を待たせるくらいなら、自分が待つ派だからな。それと僕の事はシュンでいいぞ』

 君付けならともかく、さん付けで呼ばれるとか全く慣れないからな。


 『うん。私も似たようなものだよ。私もアキラでいいよ。改めてヨロシクね』


 しばらくアキラと二人で何気無い会話をして時間を潰した。まぁ、その多くはアイテムや素材の話なんだけど、中々有意義な時間が過ごせた気がする。


 そして、待ち合わせ時間通りにドームとレナの二人がやって来たところで…タイムアップ。やはりと言うか、予想通りと言うか、アクアが最後だった。しかも、約十分(若干?)の遅刻付きで。


 『すまん。悪い、遅刻した。やっぱり待ったか?』


 『ダメだ。今日はお客さん(ゲスト)がいるんだ。許さない』

 さっきと違い、見た目通り男らしい態度のアキラ。


 ドームとレナの二人から聞くところによると、アキラはアクア達のパーティーのサブリーダー的な存在らしい。


 ちなみにアクアがリーダーで、あの光景は日常茶飯事で、アクアを躾ているんだとさりげなくドームが教えてくれた。アクアを躾てくれる存在が増えるのは幼嬉しいが、馴染みとして長く付き合っている僕でも、アクアをリーダーにするのにはは軽く疑問が生じるんだよな。


 勿論、アクアにはリーダーシップは有るし、行動力も有って頼れる。その点は評価も信頼も出来るけど、単純一直線の直情型だから、幼馴染みの僕から言わせれば逆に不安も大きいのだ。


 『あのさアキラ、今日はそのゲスト…シュンもいるんだぞ。ちょっとはさ、女の子らしくしたらどうなんだ?』

 コイツは何場違いな事を言っているんだろう?


 『おい、ちょっと待て、アクア!いくらお前がモテるからって、それはアキラに失礼じゃないのか?アキラは、十分魅力的な女性だろ。それに、今日に限っては遅刻したお前が完全に悪い。まぁ、この前、たまたま遅刻した僕が言うのもなんだがな』

 驚いたように少し頬を赤らめて恥ずかしそうに何か言いたげだが何も言えないアキラを後目にアクアを怒る。


 一応、身内扱い(アクア)の悪いところは、身内が叱らなければならないだろう。まぁ、ドームとレナや周囲のプレイヤーから注目を集めて若干恥ずかしいのだけど、ここだけは譲れないからな。


 『うぅ…アキラ、すまなかった。俺が悪かった』

 うん、うん。素直なのは、それだけで美徳だな。


 謝られた側のアキラも、恥ずかしそうしながらもアクアを許してるし、やっぱり女の子だよな。


 『もういいから、さっさと行こう』

 そう言って颯爽と門を出るアキラを皆で追いかけた。





 街の外に出てからの僕達の隊列はドーム、アクア、アキラ、僕、レナの順だった。


 《盗賊》のアキラも《探索》スキルを高レベルで取得しているらしく、魔物の発見から先制攻撃へと流れて、最後に殲滅と効率よく繰り返せた。そして、何よりも魔物を殲滅するのが早かった理由は、アクアパーティーの攻撃(パーティーの連携を含む)が全てにおいて僕個人よりも遥かに高威力だったからだ。


 途中、何度か休憩を兼ねて採取をして湖を目指した。まぁ、採取を挟んだのは全員のMP回復と言う面も有るのだが、《調合》持ちのレナが工房でゴリゴリする為の採取も兼ねていた。まぁ、僕も喜んで採取していたのだけど…レナの白いローブの見た目からは魔女達の眷属だったとは思いもよらなかったからな。


 『ここは、広いくて綺麗だな』

 湖に着いて、自然と言葉が溢れた。僕のボキャブラリーでは、綺麗を表現するのは、これで限界です。


 『そうだよね。私も初めてこの場所を見た時は、そう思ったよ。風が吹いて白波が立つところとか、底まで見えそうなくらい澄んだ水面とかね。本当に水草一つとっても細かいところまで作り込まれてて、現実に存在すると言われても簡単に信じそうだからね』

 アキラも同じようや感想と言う事は、誰もが一度は通る道と言ったところかな?まぁ、綺麗しか言えない僕とアキラのボキャブラリーでは雲泥の差がつくみたいだけど…


 湖の周辺には他にもパーティーが来ており、お互いに邪魔しないように方々へと散って行く。湖の北側に、僕達の目的の魔物がよく出現するらしく、僕らはそちらを目指す事になった。北側には森も有るので休憩中には採取もする予定らしい。やっぱり、パーティーに生産系のプレイヤーがいると、その辺りの効率は考えてられるよな。


 湖を挟んだ反対の南側には、草原が広がっている。その先には山も有るらしい。僕達がいる位置の対岸にあたる東側は、情報が少ないほぼ未開の地らしい。分かっているのは強敵が出現する確立と高い事くらいだからな。


 僕達は、森の近くで探索を始めた。本日のメインはリザード系素材、シェルホークはアクアのパーティーに遠距離攻撃の方法が少ない為、効率が悪いらしいので今回はパスらしい。以前、シェルホークを狩った時は、即席で追加募集した《魔術師》の魔法で狩ったらしい。僕もちょっとした魔法は使えるが、聞いた話の真似は出来そうにないな。


 『リザードが五匹、湖側から来るよ』

 アキラが、皆の注意を戦闘へと促しリザードの足を止めるべく戦闘準備に入る。


 僕は、ドームに〈防御力上昇〉、アクアに〈攻撃力上昇〉、アキラと僕に〈速度上昇〉、そして、レナに〈魔法攻撃力上昇〉の《付与魔法》を使っていく。


 安定した壁役のドームが魔物を引き付けて手持ちの大楯で魔物を捌く、アキラと僕が中距離から牽制を兼ねながら少し削って、アクアがトドメを刺す。ダメージを受けたらレナが回復をすると言う安定した戦闘方法をリザード相手に何度も繰り返した。


 僕が、レナに施した〈魔法攻撃力上昇〉の《付与魔法》は回復力の向上にも効果が有るようで、レナの回復魔法強化によりドームの壁は一層の安定感をもたらしていた。やっぱり、パーティーでの戦闘はソロでの戦闘とは安定感や安心感が全然違うな。


 既に、僕達が狩った魔物はリザードだけでも軽く三桁を越える。この時には、雑魚扱いのボアやウルフ等は成長したアクアとドームに一撃で倒されていた。その間は、前衛の二人以外はダメージを受けていない。改めて壁役の凄さと優位性を思い知らされる結果となったな。


 『シェルホークが来たよ。森側から七、う~ん…ちょっとキツイかも』


 いくら安定した前衛の二人でも、残念ながら遠距離を攻撃する方法が無い。こちらの手の内としては、アキラの《投擲(とうてき)》スキルとレナの《水魔法》、それに僕の低攻撃力による射撃と《風魔法》。


 一緒に戦っていて分かった事だが、まともな遠距離攻撃手段が僕以外は無い。まぁ、銃を使う僕がまとも(・・・)とはお世辞にも言いにくいんだけどな。


 レナの扱う《水魔法》は、対空を狙えない事もないらしいが、今のスキルレベルでは難しらしい。


 逆にアキラの《投擲》は、滞空の相手も狙いやすいが、威力そのものがスキルレベルと投擲物に依存する為、スキルレベルが低い今のアキラが威力を上げようとするとコスト面そぐわない。多分、その場で足元に落ちている石を拾って投げる方法がコスト的にも威力的にも無難なところなんだよな。まぁ、アキラ自身が《投擲》を牽制と陽動しか使ってないらしいので仕方が無い事がかも知れないけどな。


 『アキラ、この石を使って牽制をお願い出来るかな?』

 僕は【デルタシーク】のマガジンを【銃弾・麻痺】に切り替えながら、鞄に残して有った採掘の残骸、もとい大量のゴツゴツと角の尖った殺傷性の高そうな石片を取り出した。


 『アクア、ドーム、僕が今からシェルホークを落とす。落ちたシェルホークは麻痺してると思うから追撃と撃退は任せた』

 全てを話し終わるよりも早く、シェルホークに少しでも近付き〈必射〉を使ってシェルホークを二匹地面へと落とす。


 『えっ!?おい』

 アクアもドームも戸惑っているようだけど、今はいちいち全部を説明している暇は無いからな。


 『それと、言い忘れてたけどな。落ちた二匹の麻痺している時間は短いから、手早く攻撃してくれ』

 再び銃を持ち代えて、通常の銃弾で上空に残っているシェルホークを僕達に近付けないように牽制していく。アキラも《投擲》で牽制と僕の援護をしてくれているので、後衛のレナまでは魔物の攻撃が届いていない。


 『『分かった』』

 二人は同時に僕に指示された作業へと取り掛かった。


 『〈スラッシュ〉。シュン、次だ、次を落としてくれ』

 取り掛かると同時に、二匹のシェルホークは無残にも引き裂かれている。また銃を持ち代え、二匹のシェルホークを麻痺させて落とす。


 麻痺させたあとは〈ウインドカッター〉も交えながら、再び銃を持ち代えて牽制を続けていく。その間にも、レナの《水魔法》の〈スプラッシュ〉で空中を飛び回る一匹のシェルホークが仕止められていた。それと同時にアクアやドームの方でも地上に落ちた追加の二匹を仕止めていた。


 残り二匹になったシェルホークの処理は異常に早かった。僕が落として残った四人で仕止める。シェルホークに同情はしないけど、その光景は瞬殺と言っていい内容だった。


 『ありがとうアキラ。牽制のお陰で、かなり狙いやすかったよ。ドーム達も流石だよね。僕とは一発一発の威力そのものが違うよ』

 通常の銃弾に戻して【デルタシーク】をホルスターにしまう。【銃弾・麻痺】は貴重品だからな。間違っても無駄撃ちだけは出来ない。


 『いや、今回の一番の功労者はシュンだ。今の戦闘は、あの麻痺弾?が全てだ。あれのお陰で戦闘が安定したんだ。以前、俺達だけでシェルホークを狩った時はもっと苦労したんだぞ』

 ドームの言葉に頷くアクアパーティーの残り三人。


 僕としてもドーム達に誉められるのは嬉しいけど、僕一人だと結局のところ七匹のシェルホーク相手だと死に戻りは否めないからな。


 こんなやり取りを続けていて…僕達は完全に警戒を怠った。だから、背後の湖からスルスルと忍び寄る謎の巨大な蛸脚の存在に気付かなかった…


 『きゃぁぁぁ~~~!』


 アキラの悲鳴を聞いて僕達が振り返ると、巨大な(タコ)とその蛸脚に左足を絡まれて逆さの状態で吊られていたアキラがいた。さらに、身体にも数本の蛸の脚に絡まっており身動きの取れない状態になっている。女の子があの状態になるのは色んな意味でちょっとヤバイよな。まぁ、顔には絶対に出さないけどな。


 『アキラ!』

 僕は、巨蛸に近付きながら〈詠唱破棄〉を用いた〈ウインドカッター〉をMPが尽きるぐらい連発し、アキラの左足と身体に絡まっている脚をぶち切った。


 続けて【デルタシーク】での近距離からの連射でアキラの体にまとわりついている脚を吹っ飛す。近距離で【デルタシーク】から放たれたどの銃弾も〈零距離射撃〉の威力までは至ってないが、千切れた蛸足を吹き飛ばすには十分な破壊力を持っている。


 そして、落下していくアキラの下に僕は全身でダイブする。漫画みたいに美しくスマートに腕でキャッチこそ出来なかったが、なんとかギリギリで地面への落下には間に合ったな。まぁ、端から見たら僕がアキラの下敷きになっている映像なので、まったく締まらないんだろうけど。


 『アキラ、大丈夫か?』

 僕は、アキラが何も言わずに頷いたので、ケガの状態を確認して、〈ウインドヒール〉を掛ける。そして、既に巨蛸相手に反撃を始めて、牽制しているドーム達の援護にまわった。ダアキラはメージそのものは少ないみたいだけど、精神的には闘えないだろう。


 『アクア、どうすればいいんだ?』

 射撃で援護を続けながら少しずつ巨蛸に近付いて訪ねる。


 『あの蛸はレクトパス。湖周辺に現れる出現率の低い蛸型の強モブだ。まず脚を切り落として攻撃の回数を減らすぞ。悪いが俺達も名前を知っているだけで戦った事が無いから、掲示板の情報程度しか分からない。だから、あまり期待するな』

 そう言いながらも大楯を構えて蛸足の攻撃を器用に捌き続けるドームの陰から、タイミングを計ってアーツを繰り出して脚の数を減らし続けている。普段は残念な奴だが、こう言う時は頼もしいよな。


 僕は、マガジンを【銃弾・凍結】に代えてアクアの攻撃する脚を凍らせていく。レクトパス相手に推定効果の有りそうな雷属性は、今のパーティーメンバーは誰も使えない。さらに、もう一つの【デルタシーク】は【銃弾・毒】に代え、その二丁を持ち代えながら凍結による行動低下と毒のスリップダメージを狙っていく。効果的かどうかは分からないが試さないで倒されるよりはマシだろう。


 『よしっ!決まった』

 少しはまともな効果が有るらしい。それでも遠距離からだと援護と牽制程度にしか役立ってない通常射撃よりは、よっぽどマシだと思う。やはり、まともなダメージを狙うのなら近距離…出来る事なら零距離(・・・)まで近付かないとダメそうだよな。


 凍結と毒の効果でレクトパスの行動を少しは阻害出来たのか、ドームとアクアを襲う蛸足の数が確実に少なくなっている。


 『凍結と毒で援護するが、残りの弾数はそんなに無い。多分、効果時間も短かいし…ダメージの方は、全く期待しないでくれ』

 そう言いながらも僕は射撃の手は緩めない。


 精神的にも回復したアキラを含めた五人でアーツや魔法を連発してなんとか半分の四本、僕が最初に隙をついて切った分を含めても七本か…半分以上の脚を切っているけど、こちらのMPもアイテムもほとんど無くなっている。だが、レクトパスは脚が無くなっただけで、本体の方はほぼ無傷…どう考えても絶対絶命のピンチだな。


 『おい、逃げるか?』

 僕に効果的な作戦は無いが提案は出来る。


 『俺の持っている情報では、多分全員(・・)では逃げきれない。逃げようとして背中を見せると脚が伸びて何人かを湖に引きずり込むらしいな。誰かが引きずり込まれている間はレクトパス自身も移動出来ないらしいけどな』

 それは、さも有りそうな話だな。これは、完全に手詰まりだな。まぁ、だから…こう言う時は仕方が無いよな。


 『うん…分かった。じゃあ、僕が一人で残る。銃弾がもう残り少ないから役に立ちそうもないからな』


 『なっ…』

 アクアは何か言葉を言いたそうにしているが、次の言葉を僕は言わせない。


 『それに、だ。鞄を製作するためのドロップ素材は十分有ると思うし、生産活動をするにはデスペナは全く影響が無いからな。それに、この中で遠距離まで攻撃する事が出来て、なおかつ牽制や回避をして、万が一生き残れる可能性が最も高いのは僕だから、ここは僕にやらせてくれないか?』

 そう言いながらも、心の中では一人残った僕が助かる可能性はゼロに近いと感じている。その間も蛸足の攻撃を回避して頭部に射撃していく。少しでも、ダメージを与えて注意を引き、仲間達が逃げる時間を稼がなければならないのだから。


 『いや…』

 だから、次の言葉は言わせないよ。


 『それと、だ。この場に女の子を残す選択肢は無いからな。だから、気にせずに早く行け。当然だが、僕も死ぬつもりはないからな』

さらに、回避と射撃を繰り返して僕にレクトパスの注意を集めていく。気休めでも『死ぬつもりはない』と言葉に出さないとアクア達も逃げ出しにくいだろう。


 『ふ、ふざけるなよ!シュ…』

 だから、喋らせないって…


 『黙れ、アクア。お前だけは分かっているだろうが、女の子達が変なトラウマ(・・・・・・)系の称号貰うよりはな。僕一人を残す方が遥かにマシなんだよ。それに、僕は既にトラウマ系の称号を持っている。最初に言っておくが、トラウマ(これ)を貰うのは精神的にも結構キツイぞ』

 最後の一言には妙な説得力が有ったらしく、アクアとドームが他のメンバーの撤退を促していく。アキラとレナの二人は全く逃げようとはしないが、アクアとドームが無理矢理に後退させて行く。


 『ふっ~~~!』

 そろそろ良いよな。アクア達の今いる場所からなら、今から使うアーツは見えないと思うし、逃げた四人がかなり離れた事も物理的に確認して、僕は覚悟を決めた。


 僕はレクトパスの攻撃の直撃だけは避けながら、伸ばしてきたレクトパスの巨大な蛸足を駆け上り本体へと特攻を仕掛ける。


 そして、渾身の〈零距離射撃〉と〈急所撃ち〉の同時発動で撃ち抜いた。その渾身の一撃はレクトパスの脳天に文字通り風穴を開ける(一矢を報いる)事は出来たが、それと同時に僕は蛸足に絡まれて湖に引き込まれていった。


 僕に残された記憶はここまでだった。





 本当に最後に見た映像製作通りレクトパスに一矢を報いる事は出来たのか?は謎だった。僕が気が付いたのは二度目の…僕にしてみれば、見知った光景を目の当たりにした時だった。


 『あ~やっぱり、死に戻りか…』

 身体が濡れているのを感じて、先程の苦しい出来事を思いだし少し身震した。当分、湖には行きたくないし近付くのも遠慮したいな。


 しばらく呆然として、アクア達は無事に逃げ切れたのかな?等と思っていると、その当人達からコールが来た。


 『シュン、無事か?何をしたんだ?俺達は湖に戻って来たんだが今は何処にいるんだ?』

 はっ?何でまた危険な湖に戻ってるんだ?


 『アクア、焦るな。少しは落ち着け、そんな同時に質問されても答えられる訳が無いだろ。今は死に戻りで神殿の中だ。それで、何で湖に戻ってるんだ?』

 一緒のパーティーを組んでいたのだから、僕が死に戻った事は少し落ち着けば分かりそうな事なんだけどな。


 『はぁ~、どういう事だ?レクトパスのドロップ類が手に入ったから、レクトパスは倒したんだろ?』


 『はい?』

 一体僕が死んでいる間に何が起きたんだ?アクアの言葉を聞いて少し考え直す。もしかして、引き分け(ドロー)になったのか?アクア達がドロップが手に入っているなら、それしか考えられないけど、有り得るのか?


 『いや、だから、俺達はレクトパスのドロップが手に入っているから…』

 …と言う事は、本当にそう言う事になるのか?


 『ちょっと待って、なんとなくだが分かったかも知れない。でも、ちょっと説明しにくいな』

 僕自身もはっきりと分からない事を説明は出来ない。


 『分かった。俺達もあと一時間以内に街に戻るから、そのあと皆で説教タイムだ。広場で大人しく待ってろ』

 正直に言うと、説教宣言(それ)を聞いて待っていたくはないのだけど。でも、逆の立場ならアクア達が怒るのも分かるから難しい問題だよな。


 まぁ、今回は潔く謝って、甘んじて愛のある説教を受ける事にするか。それでも長くなるようなら製作する予定の鞄を取引材料にすれば良いだけだからな。


 待っている間にドロップ類の確認をすると、確かにレクトパスのドロップが三種類有った。当然、あの不本意な称号も成長して僕を待っていたのだけど…



称号成長

〈改めてトラウマを得た者〉

一度トラウマを乗り越えた者が、新たに違うトラウマを進んで得た者への称号/成長称号





 あれから五十分程経過して、アクア達も街に戻ってきた。


 『今回は勝手な事をして、本当にすまなかった』

 顔を見るなり謝罪を口にする。アクアとドームはともかく、女性陣のアキラとレナの二人はすぐ許して…くれるほど世の中は甘くなかった。


 四人からの説教は人を五回程代えながらローテーションで三十分にも及ぶ。流石に二回目の人達(アキラとアクア)は少し手加減して欲しいんですけどね。


 結果的には、もう二度と勝手な行動をしない事を約束する事で場を収める事になった。まぁ、次に僕とアクア達がパーティーを組む事が有るのかは別の問題だけどな。最後(六回目)だけはアキラが優しく庇ってくれたのも大きかった。


 『それで、だ。あの後はどうなったんだ?』


 『う~ん、これは想像の話になるんだけどな。僕が最後に放った攻撃で僕とレクトパスが相討ちになって、引き分けになったんだと思う。その結果、僕個人としては負けたけど、パーティーとしては勝利した感じになるのかな?』

 僕は待ち時間に考えに考えた考察を単刀直入に話して逃げようとした。


 『それで、具体的には?』

 しかし、アクア達は僕の回答の先に回り込んで逃げさせてくれない。どうやら、この説明では納得していないようだ。まぁ、仕方が無いと思うけどな。


 『えっ~と、僕の中で最後の記憶が有るのは、僕が放った最後の一撃でレクトパスの頭部に丸く大きな風穴が開いて、その後レクトパスと一緒に湖に引き込まれるところまでだから…僕が考えられるのは、特殊なアーツを使った事と多分最後の一撃がラッキーな事に(嬉良く)クリティカルが出たんだと思う。それと、毒による継続的なスリップダメージも多少は影響が有ったんだと思う。そんなところかな。特殊なアーツの内容については秘密だ。これ以上は本当に全く分からない』

 まぁ、結果として死に戻りには違いないので、クリティカルがラッキーかどうかは微妙なところだけどな。


 『簡単にはいそうですかと納得する事は出来ないが、レクトパスのドロップを俺達も入手しているし、シュンが死に戻っているのだから、結果はそう言う事なんだろうな。でも、それなら何故、その特殊なアーツを最初から使わなかったんだ?』


 『そのアーツを出すリスクが大きいからだな。その性質上相手からの攻撃や反撃を貰いやすいと言う欠点も有る。現状では最後の一撃等の切り札としてしか使えないと思う』

 それに、一番の理由はあまり他の人に知られたくはないからな。


 『取り敢えず、当初の目的である鞄の依頼の話しをしようか』

 ここは、変な方向に話が向かわないように、さっさと話題を変えた方が良さそうだな。


 順番にオーダーを取っていくが、皆の欲しい鞄の内容がバラバラだったので改めてメールで送って貰う事にした。レクトパス以外のドロップ素材は鞄の材料として全て貰ったので、素材はかなりの量になっているし、獲得した経験知的も美味しい事になっている。これなら、鞄の製作費は貰わなくても収支的には黒字(プラス)になりそうだな。


 『それと、皆は宝石関係は持っているか?有るなら効果を余分に付けれるぞ。あぁ、ちなみに僕のは防水が付いているぞ』

 そのお陰で、湖に落ちても濡れてないからな。


 ドームとレナは宝石のストックが有ったらしく僕に渡してきた。残念ながら、アクアとアキラは武器に使う予定が有って、余分な持ち合わせは無いらしい。まぁ、こればかりは個人の自由なので仕方が無いかな。鞄よりも武器や防具が優先は普通の事だから。


 『僕も学校が始まる前には作り終えたいし、明日の夕方には完成させて渡せるようにするけど、皆は時間が有るのかな?無かったら全部アクアに渡しておくけどな。今回は素材をたくさん貰ったし、迷惑もかけたからお代は頂かない。出来上がったあとでも調整は可能だから、少し使ってみて問題が有った場合は、気軽にコールをしてくれ。すぐに直しに行くからな』

 皆、依頼の費用がタダと言う事に何か言いたそうだったので、ネイルさん風に『次は貰うよ』の一言付け加えておく。


 ドームとレナは、明日は別の予定が有るらしくアクアに預ける事が決まった。アキラは直接受け取りに来るらしく、夕方五時に約束をした。アクアの時間は、当然聞く必要も聞く気もない。こう言う時はアクアの方が僕の時間に合わせるべきだ。


 皆と別れて、使わない素材は露店に一括で売り、使い切った分の銃弾と必要な素材を購入した。とにかく獲得した素材の量が多いので夕食までの時間は皮の鞣し作業に費やす事になった。まぁ、《鞄製作》と《革製作》のスキルがフル活用だったので、スキルレベルが大きく上昇したから良かったんだけどな。


 最初はリザードの皮の加工にも失敗が有ったけど、慣れたらミスする事なく鞣し作業が出来るようになった。スキルレベルが上がっていた事も有るが、まだまだ今の時点で取れる素材自体のランクが低い事も大きな理由みたいだな。


 続けて、リザードの鞣し皮と鞣し皮を合わせて合皮(ごうひ)にしていく、少しでも頑丈で持ち易く性質の良い物を作りたい。失敗した皮は、また練習用や試作用に使えば良いのだから。






 夕食を食べて、再びログインをして工房を目指すと、革系の工房前に一人佇むアキラがいた。いくら、待ち合わせ前に来て待つ主義者でも二十時間以上前に待っているのはどうかと思うな。まぁ、これは冗談だけど…


 『よっ、アキラ。どうかしたのか?約束の時間には早いからな。まだ鞄は出来てないぞ』

 声をかけてみると、アキラはかなり驚いて焦っている。少しアキラらしくない気もするな。


 あれ?もしかして僕が声をかけたのは失敗だったのかな?ここは、謝って立ち去った方が良いかもな知れないな。触らぬ神に祟りなしだからな。


 『何か邪魔したみたいだな。すまない』


 『あっ、ちょ、ちょっと待って。あっ、あの~さっきは、その、助けてくれてありがとう。改めて考えると助けて貰った時のお礼を言えてない事を思いだして…それとお礼が遅くなってごめん』

 アキラは勢いよく頭を下げる。どうやら、律儀にお礼に来たらしい。予想外にも程が有る。


 『あぁ、その事か別に気にしなくても大丈夫だぞ』


 『ダメだよ。こういう事はちゃんとしないと…』

 これ以上否定しても、逆にお互いが気不味くなるだけかな。さっと了承して済ませた方が得策かもな。


 『そっか、それもそうだね。分かったよ』


 『あの…えっ~と、それとお願いが有るんだけどね。シュンが鞄作るところを見てても良い?』


 『それは別に良いんだけど…見てて楽しいものではないと思うよ』

 そう言って、アキラと二人で工房に入った。


 僕は先程の続きで合皮を作っていく。アキラは無言で手元を見ている。若干、いや、かなり気まずいよな。適当に話題を振ってみるか?


 『アキラは、レナみたいに生産系スキルを取得してないのか?』

 当然、手元は動かしたままだ。レナの名前を出した瞬間、アキラの顔が険しくなったような気もするけど、僕の気のせいかな。


 『うん。興味は有るけど…その何て言うか、手先がね、少し苦手なんだ』

 なるほどな。指先をモジモジして俯いているところを見ると確かに苦手そうだよな。


 『じゃあ、どっちかと言うと、スポーツとか身体を動かす方が得意?』


 『そだね。部活でバスケをしてる』

 部活?学生の僕には馴染みのなるフレーズだな。


 『もしかして、アキラも学生か?』

 周りに聞こえないように小声で聞く。


 『うん。と言っても四月に高校生になったばかりだけどね。そう言う、シュンも学生さん?』


 『僕も同じく高一だ。東京都練馬区在住。アキラは?…あぁ、悪い。リアルの事を聞くなんてマナー違反になるんだったな。すまない。ネットゲームに慣れてなくてな。アクアにも言われてたんだが、本当にすまない』

 はい、失敗しました。アキラが笑っている。うん?苦笑いじゃない?どちらかと言うと嬉しそうなのか?


 『私もそんなに慣れてはないから、大丈夫だよ。それに、実は私も練馬だよ』

 おぉ~!どうやら同郷らしい。世界は狭いらしいな。


 『それは奇遇だな。それと次の作業工程《鞄製作》に入るんだけど時間は大丈夫?ここからは少し長いよ』


 『うん。まだ大丈夫かな』

 本当にこう言う作業を見ているのが楽しいのだろうな。さっきからずっと笑顔だ。それがちょっと可愛いいとも思う。


 まずは、試作品から製作するのが僕のやり方だ。今まで合皮を使った事が無かったが問題無く縫えている。これなら形状の方も多少の自由が利きそうだな。きっと僕の物より丈夫な物が出来るだろう。この調子なら、試作品無しでいきなり本番を作っても問題なさそうだな。


 『最初は、アクアの分から作るか。多少、失敗したとしてもアクアの分だからな。問題は無いだろ(笑)』

 アキラも隣で笑いながら頷いている。



【アク・ア・クア】アクア専用

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ウエストバッグタイプ



 アイテム名は、当然製作者が名を付ける事が出来る。アクアの分は適当だ。メールでオーダーの内容を確認して、続けざまにドームとレナの分も作っていく。アキラの分を意図的に最後にしたのは、長い時間一緒に居たいと言う下心や意地悪をすると言った理由ではなくて、加工作業に付き合ってくれているお礼に、なるべく合皮の生地に慣れた状態で良い物が作りたかったからだ。まぁ、まだ詳細を記したメールが届いてないと言うのも有るけどな。


 ちなみに、正直なところ真相心理(心の奥)では少しでも長く一緒に居たかったと言うのも有ったかも知れないけど。それは、製作に夢中な(今の)シュンには分からない事だ。勿体無い話だけど残念ながら…



【ウエストバッグ】ドーム専用

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材/防御力上昇・微〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ウエストバッグタイプ


【ショルダーバッグ】レナ専用

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材/回避力上昇・小〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ショルダーバッグタイプ



 うんうん。宝石の効果も有り、アクアの分よりも良いものが出来ているな。全てに専用のタグを打って他者の使用を禁止しておく。これで他人に盗まれる心配も無いだろう。


 生地の状態から鞄が出来て行く工程、僕がチクチク縫っていくのを見てアキラは目をキラキラさせている。とても楽しそうだな。実際に楽しく縫っている僕以上に…


 『そう言えば、まだアキラはメールをくれてないよね?鞄は、どんな内容にするんだ?』


 『そうだね。シュンが使ってるものと同じ形が良いかな。色も同じ黒にして欲しい。使い易そうだからね』


 『了解。アイテム名は、どうするか考えておいてくれ』

 これは、既に型が有り、試作を含めると数回作っている為、製作工程が今までの分よりも早い。どんどん縫い進めていける。


 結果的に他の分よりも拘って製作したのにも関わらず他の鞄の半分くらいの時間で縫い終わった。まぁ、ここまで付き合ってくれたからな、少しだけオマケをしておこうかな。


 『ほい、出来たぞ。アイテム名は決まったかな?』


 『う~ん…シュンなら、どう付けるの?』


 僕なら、どう付けるか…アクアの仲間だから、似たような名前で【アキ・ラ・キラ】とか付けようか?いや、流石に嫌がるだろうな。そうなると、思い付かないからな。やっぱり…


 『僕はネーミングにもセンスが無いから、【ボディバッグ(リザード)】とかかな』


 『それでいいよ。私も考えたけど良い案は思い付かなかったからね。内心では、【アキ・ラ・キラ】って付けられたらどうしようかと思ってだけど』

 セッ、セーフ。思い留まって良かったです。



【ボディバッグL】アキラ専用

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材/速度上昇・小〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ボディバッグタイプ



 そして、完成した鞄をアキラに手渡す。気にいってくれたら良いけどな。


 『どう?ちょっと使ってみて。何か問題が有ったら、今直すから』


 『ありがとう。うん。そうだね…凄く使い易いよ。うん。凄く満足してる…けど、シュンこれって、もしかしてだけど宝石を使ってないかな?』

 なんと!早々にオマケの存在がバレらしい。上手く隠したつもりだったんだけどな。それにしても、流石にバレるのが早過ぎないだろうか?


 『もうバレたのか?かなり長い時間付き合ってくれたから、お礼も兼ねてな。気付いてるか?もうあれから六時間は経ってるぞ。現実でも日付も変わってると思うし。それに、今日は僕も一人じゃなくて作業が楽しかったから、そのお礼だと思ってくれたら良いよ』


 『あっ~~!』

 アキラは、やっと今の時間に気付いようだ。


 『まぁ、そういう事だ』

 そろそろログアウトしようとアキラを促し工房を片付ける。


 『何か問題が有ったら何時でも連絡してくれ。おやすみ』


 『うん。今日は本当に色々とありがとう。おやすみなさい』

 二人揃ってログアウトをした。






 翌日のログインは、昼をかなり過ぎてからだった。まずは、アクアと待ち合わせをして出来上がった鞄を渡す。少し元気が無いような気もするが、『シュン(お前)の気のせいだ』とアクアに言われ、ジュネの鞄を作りに工房へと足を進める。


 革系の工房の中には、何故か何かしら作業中のアキラがいた。


 『あっ、シュン。おはよう。昨日、シュンの作業を見てて、私も生産系のスキルが欲しくなったから、《革製作》を取得したよ。自分で短剣を入れる鞘や防具を作ろうと思う。だからね、また色々教えてね』

 どこか恥ずかしそうに少しだけ頬を緋く染めて話すアキラ。どうやら生産の世界にハマったらしいな。うんうん、生産仲間が増えるのは本当に嬉しい事だな。


 『おはよう。って言うか僕は、人に教えれる程スキルレベルは高くないぞ。でも本当に良いのか?生産系をやりだすとアクア達とパーティー組みにくくなると思うぞ』

 僕だって、まだ生産を始めたばかりなのだ。教えれる程の技術を持っていない。それにパーティーの方は大丈夫なのだろうか?生産系の作業は時間が掛かる物が多いからな。まぁ、《調合》を持つレナがパーティー内にいたから、その辺りも詳しいと思うけど…これが原因でアクアパーティーが解散とかになると流石に寝覚めが悪いんだけどな。


 『あっ、それ辺は大丈夫。ドームとレナは社会人でゴールデンウィークが終わったら、元々βの時みたいに皆でなかなか同じ時間に集まれないの。だから、昨日皆で話し合って、今後は時間が合った時にパーティーを組む事に決まったの。だから、アクアは今日から新しくパーティーを集めるそうだよ』

 それで、アクアは朝から元気が無かったのか…お疲れ様だな。


 『それは、仕方が無い話しなのかも知れないけど、寂しくなるんじゃないか?』

 それはそれ、これはこれだからな。


 『まぁ、寂しくはなるけど、永遠にサヨナラって訳ではないし、それに工房にはシュンがいるし』

 また恥ずかしそうに照れながら言う。少しアキラに気を遣わせてしまったのかな。


 まぁ、好きな事を好きなようにやれるのがトリプルオーの良いところなんだから、自分の好きなようにやれば良いかな。


 『それなら、改めてヨロシクだ。素材集めなら手伝うからな。何時でもパーティーに誘ってくれ』


 『ありがとう。よろしくね、シュン』

 嬉しそうな笑顔を見せる。


 『じゃあ、僕はジュネの分の鞄作るから、アキラも頑張ってな』

 作業を始めようと準備する。


 『シュンくん(・・)…ジュネって?』

 シュンくん?何か違和感が…あぁ、アキラは知らなかったんだっけ。


 『あの銀髪美女エルフのジュネ?』

 あれっ?僕の気のせいだろうか?アキラさんの目が怖いんですけど…


 『えっと…多分そうだと思うけど、知ってるのか?』


 『βで何回かパーティー組んだ事あるし、リアルでも…それより、仲良いの?』

 だから、目が怖いです。


 『そうだな。どちらかと言うと仲は良い方だと思うけど…』


 『へぇ~そうなんだ。どう言う知り合いなのかな?』

 すみません。誰か助けて下さい。ヘルプミ~!


 『まぁ、一応、双子の姉だし。全く似てないから分からないと思うけど…』


 『えっ、双子?姉?えっ!?あっ!ちょっと待って…』

 アキラが困惑している。


 やっぱり他人の目から見ても純と僕の見た目は双子に思えないくらい違うのだろうか、改めるとちょっと凹むな…だが、どこか嬉しそうだな。それよりも、アキラの目に元の優さが戻って良かった。あのままの目で見られ続けると僕の身が持たない事は保証出来るからな。


 『ちなみに、アクアは隣の家に住む幼なじみだ』


 『…シュンの名字はもしかして颯馬?』

 アキラが僕の耳元で囁いて来る。今度は、僕が驚いた。かなり…色んな意味で。


 『実は、私とジュネは同じクラスで友達なんだよ。βで知り合って高校で再会みたいな』

うわっ、どうやらアキラは同じ練馬区の中でも割りとご近所らしい。


 『それって、かなりリアクションに困るんだけど…』

 実際に、かなり驚いてあたふたしている自信が有る。


 『だよね』

 だが、彼女は言葉とは裏腹に凄く嬉しそうだ。決して僕みたいに困ったり焦ったり動揺したりはしてないだろう。


 『取り敢えず、鞄作ってジュネとアクアを呼ぶか?』

 アキラに確認して、二時間後に《革製作》の工房に集合して欲しいとメールを打ち、僕達は気を取り直して作業を進めていく。




 『シュンくん』


 『シュン、アキラ来たぞ』

 二人は揃って時間通りに現れる。昨日の今日だ。アクアも遅刻はしなかった。


 『呼び出して悪いな…ジュネ、その顔は呼び出された理由は、もう分かってるみたいだな』

 僕とアキラは顔を見合わせて、溜め息が出そうになる。


 『うん。もう、バレた?』


 『あぁ、完全にバレたな』

 ついでに依頼の鞄を渡す。ジュネは本当に楽しそうだな。僕とアキラは半分呆れているんだけどな。


 『おい、どういう事だ。俺にも分かるように話してくれ』

 その会話に、一人だけ蚊帳の外にいるアクアが割り込んで来た。


 『簡単に言うぞ。ジュネとアキラの二人はクラスメイトだ。つまり、僕達四人は同じ高校に通っている』


 『えっ!?』

 アクアの開いた口が塞がらない。普通はそうだろうな。僕もアキラも同じ道を二時間前に味わったからな。


 『ジュネは何時から、この事に気付いてたんだ?』


 『正式稼働日、街で、アクアのパーティー、見た時』

 はい。ここに、確信犯がいました。


 『まぁ、そう言う事だよな。おい、アクア、そろそろ戻ってこい』


 『改めて、ヨロシク』

 ジュネのあっさりと淡々とした言葉に、虚をつかれた三人は頷く事しかできなかった。

装備

武器

【デルタシーク】攻撃力30〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾2】攻撃力+10〈特殊効果:なし〉

【ハンドガン】攻撃力15〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾】攻撃力+5〈特殊効果:なし〉

防具

【ゴーグル】防御力3〈特殊効果:命中補正・微〉

【レザーブレスト】防御力15〈特殊効果:なし〉

【布製の服】防御力5〈特殊効果:なし〉

【レザーバングル】防御力8〈特殊効果:なし〉

【レザーブーツ】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ローブマント】防御力10〈特殊効果:なし〉

アクセサリー

【ウルフダブルホルスター】防御力5〈特殊効果:速度上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【左狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【右狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉



《銃士》Lv38

《短銃》Lv43《速度強化》Lv28《回避強化》Lv26《風魔法》Lv31《魔力回復補助》Lv30《付与魔法》Lv29《鞄製作》Lv32《錬金》Lv9《探索》Lv39《家事》Lv22


サブ

《調合》Lv8《鍛冶》Lv6《革製作》Lv12


SP 31


newアーツ

〈跳弾・短銃〉攻撃力×2/消費MP 30

銃弾を壁や地面、天井などに反射させて攻撃する

習得条件/《短銃》スキルLv40


new魔法

〈ウインドシールド〉魔法を1回だけ防ぐ風の盾が現れる/消費MP 15

習得条件/《風魔法》スキルLv30


称号

〈もたざる者〉〈改めてトラウマを得た者〉


new称号

〈略奪愛?〉

他人の仲間を愛の力で奪った者への称号

取得条件/他のパーティーメンバーを全く勧誘せずに魅力だけで奪う

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