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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第三部
27/65

★クラーゴンの討伐

 『ウソだろ…』

 五パーティー(三十人以内)限定でのレイドバトル?だと、冗談ジャパンないぞ。持っ大人数でも良いだろ?このライトニングには、もっと多くの人間が乗れるんだよ。


 それとも…この仕様(人数限定)には何かしらの意味が有るのか?運営さん、単なる気まぐれとかだと怒るよ、マジで。


 ただ、沖合い二キロに出るとイベント戦闘が始まると言う事は、多分このレイドバトルを攻略しないと海で自由に航海する事は出来ないのだろう。うん、早くも逃げ道が潰されてる気がするよ。


 だったら、こっちもそれなりに作戦を練らないとダメだよな。幸いな事に、沖合い二キロと距離が指定されているので、クラーゴンは二キロを越えるまでは向こうから仕掛けて来れないのだろう。それなら、近付かない限りは安全。準備の為の充分な時間も取れると言う事だ。


 それに、人数制限が有るのでメンバーも厳選しないとダメかもな…残念だが、今回は雪ちゃんを連れていけそうもないな。まぁ、雪ちゃんが一人と換算されるかは誰も分からないのだけど。


 『うん!?』

 こんな忙しい時にコールか。少しは空気を読め、空気を。一体、誰…


 『おい、シュン。俺だ、お前のアクアだ。緊急連絡聞いたぞ。俺達も参加させてくれ』

 今日の今日とて、誰よりも早く緊急連絡に反応したらしいアクア。


 また、お前か、いい加減あきあきだよ…と言うか、コールに出るなり早速参戦の要望かよ。もう少し僕を気遣うとか出来ないかな?少しは僕達の心配をしてくれてもバチは当たらないと思うけどな。それに誰がお前のアクアだ。僕にも拒否する権利は有るんだぞ。有る…有るよね?


 それにしても、対応が早いな。まだ、緊急連絡から一分も経ってないはずだよ。


 それと、いつも思っている事だけど、少しは落ち着いて欲しいものだ。まぁ、単純に戦力としては信頼出来るし、そっち方面では計算も出来るアクア()。なによりも、双子の姉(ジュネ)並みに付き合いが長いので、いちいち伝えなくても言いたい事が伝わると言う何よりも大切なメリットが有る。もっとも、人数制限を聞いた時点で参加して貰うつもりだったのだから、断る理由は無い。


 『了解だ。取り敢えず、六人でパーティーを組んでからホームに来い。話はそれからだ』

 それだけを一方的に伝えてコールを切った。僕達も、まだ状況の整理が出来てないんだから、細かく考えても時間の無駄になる可能性が高い。時間は有るのだ、少しはアクア達にも考えて貰えば良いだろう。


 『シュン、こっちにも連絡。ジュネ達も参加したいって言うからOKしたよ』

 僕とアクアが話している間に有ったらしいジュネからのコールを、すでにまとめ終えていたアキラ。本当に優秀ですな。


 ジュネが所属する【ウィザード】は、魔法攻撃に関してはトリプルオーの中でもトップクラスのギルドの一つだ。魔法攻撃手段の少ない僕達にとっては参戦してくれるのは喜ばしい。


 『OK了解だ。ヒナタ、一回造船所に戻ろうか』

 他に僕達の知り合いの中で他に頼りになりそうなのは…今回は参加出来るかは分からないけど、メールだけは入れておこうか。


 『はい、分かりました』

 僕の言葉よりも早く、行動に移していたヒナタ。その声は上空…マストの方から聞こえてきた。


 ヒナタとカゲロウは急いで帆をたたみ、魔動力エンジンを使って船を操る。操舵輪の横にある大きな魔動力の核?らしき物に手をかざしているだけのようにも見える。


 『ヒナタ、魔動力エンジン(それ)って誰でも操作出来るのか?』

 レイドバトルよりも、僕はこっちの方に興味津々だ。


 『はい。操作自体は単純明快(簡単)なのでMPさえ有れば、誰でも操縦が出来ますよ。だから、補助的な役割として採用しました』


 ヒナタが言うには、魔動力エンジンは中心の水晶の部分に手をかざして魔力を込めて船の進路を頭の中で想像するだけで良いらしい。本当に簡単だな。魔力さえあれば、絶対にこっちの方が便利だろう。


 それに、今回は海上と船上でのレイドバトルになるので、この魔動力エンジンの存在が戦局を分ける重要なポイントになるかも知れない。ライトニング自体(そのもの)を操る人の人選を含めて…





 僕達がホームに戻るとアクアとジュネのパーティー、それとメールで誘っていた…


 『シュン、本当に私達も参戦しても宜しいのですか?』

 ガイア達のパーティーがいた。


 『是非お願いしたいな。僕にレイドバトルの経験は、あの時の一回しか無いからな』

 戦力は勿論、戦略面や指揮面でも期待できる希少価値の高い存在がガイア達六人。トリプルオー以外のMMOでも多くのレイドバトルの経験が有るそうだ。流石は、自称ゲーマーの集いだ。


 『おう、戦闘なら俺達に任せておけ』

 相変わらず脳筋発言のレジーア。まぁ、今回はその脳筋をかなり頼りにしているのだけど。


 これで僕達を含めて四パーティーか…魔法攻撃に特化した【ウィザード(ジュネ)】パーティー、全体的にやや打撃攻撃よりの【ワールド(ガイア)】パーティー、バランスが取れた【双魔燈(アクア)】のパーティーと若干補助(サポート)よりの【noir(僕達)】。


 あと、今回の僕の立ち位置を考えるて欲を言えば、回復か補助に特化していて、攻撃も多少は期待出来るがパーティーが欲しいところだな。


 『シュン、さっき広場にレイドバトルの詳細が掲示されてたからスクショ撮って来たよ。見る?』

 僕の回答を得る前にリツがスクリーンショットを展開する。その内容は…



レイドバトル クラーゴン討伐


レイドリーダー シュン(通称黒の職人さん)

黒の職人さんを含む五パーティー(三十人以下)限定

戦闘開始後の逃亡不可

討伐報酬 海エリア・港・造船・客船の開放

個人報酬 ドロップ素材二種・ドロップ武器・アーツの書の中からどれか一つ

敗北ペナルティー 船の破壊(・・・・)とクラーゴン討伐の参加権利の永久剥奪


 『何故だ!?』

 何よりも、ここに来てもまだ黒の職人さんを推してくるのか?そろそろ本人としては消していきたい呼び名なのだけど…


 それにしても、敗北ペナルティーが僕達にとって、かなり痛過ぎる。


 クラーゴン討伐の権利を永久に剥奪される事は別として、完成したばかりの船を破壊される事の方が遥かに(つら)い。ここにいる誰よりもヒナタが耐えられないだろう。


 報酬の一部は予想通りだった。個人報酬の方はそれなりに魅力的だと思うけど参戦は慎重にならないとダメだな。最悪、別の船を製作するまで、クラーゴンを待たせておくのも有りかも知れない。


 『…大丈夫です。絶対に勝ちましょう。勝って、船を守りましょう。いえ、それよりもです。誰に対しても自由で広大なあの海を、誰かに支配されているなんて絶対に許せませんし、我慢出来ません。だから、皆で勝ちましょう』

 誰よりもやる気になっているヒナタ…と言うか、もしかして、これは怒っているのか?


 『ヒナタは良いのか?(ライトニング)が壊されるかも知れないんだぞ?』


 『それも大丈夫です。もし、仮にクラーゴンに破壊されたとしても私が絶対に修理します。それ以前にです、私達が作ったライトニング()は海を独占するような魔物に絶対負けたりしません』

 ヒナタが二つの目を見開いて僕を見詰めてくる。その目力は半端無い。


 『あ~ぁ…ギルマス、これはダメだ。あのヒナタは絶対に止まらないぞ』

 カゲロウが、もう誰が何を言っても無駄だから、覚悟を決めろと言ってくる。仕方が無い、僕も腹を(くく)るとするか。


 『なぁ、シュン、盛り上がっている最中(取り込み中)に悪いんだが…あと一パーティー(六人)は、どうするんだ?』

 自分達の世界に入り込んでいた僕達を無視して、ジュネ達と戦力の分析と把握をしていたアクアが、僕達以外を代表して尋ねてくる。


 『えっ~と、そうだな。今の戦力なら、残りは回復か補助に特化したパーティーで攻撃も多少出来たら嬉しいんだけど、あいにく僕の少ない知り合いには心当たりが無くてな…』

 基本的に、ギルド内だけでほぼ全ての事に自給自足出来る(事足りる)僕達は知り合い自体が少ない。なので、こう言う場合は一番頼りにならない。


 『うん、三ギルドから、人材を、集める』

 唐突にだが的確な意見を延べるジュネ。


 なるほど。戦闘前はパーティーと言う縛りが有るけど、いざ戦闘に入れば戦闘位置(ポジション)は自由。つまり、縛りは無くなるはずだ。例えば、一ヶ所に十人いても良いし、極端な話一人でも良い。これは、以前のレイドバトル(経験)で分かっている。


 多分、今回のレイドバトルは五つのパーティーで戦うと言うよりも、三十人で一つのパーティーって考えた方が正確なのだろう。戦場が船上と言う限定された場所だから、戦闘するエリアがパーティー毎に分かれる事も無いだろう。うん、これはなかなか良い案かも知れないぞ。


 …と言うか、僕達のライトニングは、サイズが大き目の帆船だから戦場にする事も可能だけど…これが、小さい船(筏や釣り船サイズ)だった場合はどうしたんだろう。小さな筏とかで挑む可能性が有ったかも知れない事を考えると結果が怖いな。惨敗感が半端ない…せめて、戦闘になれば救いも有るのだけど、小さな筏だとクラーゴンに攻撃出来る位置まで辿り着けるかも怪しいからな。


 『ガイア、ジュネ、アクア、回復や補助系で特に優秀なプレイヤーを二人ずつ紹介してくれるか?本当に欲を言えば、攻撃魔法か遠距離攻撃も使えるプレイヤーが良い』

 これが可能なら、戦力的な問題は無い気がする。僕のお願いに一つ頷いてコールで希望にそったギルドメンバーを集めだす三人。





 コールから、ものの数分で残りの六人も揃った。


 『えっ~と、皆さん、今回のレイドバトルの為に集まってくれて、ありがとうございます。不運にも、このレイドバトルのレイドリーダーになってしまったシュンです。僕…【noir(僕達)】はこう言う経験が圧倒的に不足していますので、今回は経験豊富なガイアに戦場の指揮(リーダー)は任せようと思います。それに付け加えまして、【noir(ギルド)】で所持しているライトニング()が戦場になりますので、僕は船の操縦全般を受け持とうと思います』


 『『『『『えっ!!?』』』』』

 事前に相談しておいたギルドメンバーを除いた二十四人が一斉に驚く。僕達としては、それほど間違った選択じゃないと思うのだけど…まぁ、確かにレイドリーダーは名誉職だとは思うよ。だが、逆に言えばそれだけだ。僕達に必要なのは名誉ではなくて少しでも高い勝率なのだから。


 『ちょ、ちょっと待て、シュン。俺の聞き間違えか?何でレイドリーダーのお前が一番地味な船の操縦なんだ?』

 他の皆もアクアの意見に頷いている。


 ここにいるプレイヤーは黒の職人さん()の事を知っているので、『何故前線で戦わないのか』とか『怖じ気づいたのか』とも隣にいる人にしか聞こえないような小声で話している。まぁ、後者の意見は必ずしも間違いでは無い気もする。


 『えっ~と、何から説明したら分かり易いのかも分からないんだけど…多少順序が狂うかも知れないが順を追って説明するよ。今回使用するライトニングの動力の一つに魔動力エンジンと言う物が有るんだ。これは操縦者自らのMPを消費して船を動かす代物なんだよ。だから、ライトニングを自由自在に動かす為には出来るだけMPが多くて、魔力の回復力が高い必要が有るだ。僕はこの【白竜(白い銃)】でHPと毒や麻痺等の状態異常回復、こっちの【黒竜(黒い銃)】でMP回復、その両方を使って《付与術》スキルと《付与銃》スキルのコンボで遠距離からでも補助が出来るから、船を操縦して戦場全体を把握しつつ、後方からのサポートも出来る位置の方が都合が良いんだよ。それに、これが最も大きな理由になるんだけど、皆さんもご存知の通り、銃は標的から離れれば離れる程、攻撃力が低くなるな弱点が有るからね、前線では活躍出来そうもないんだよね。まぁ、これは皆が知ってると思うけど…あぁ、そうそう、最後になったけど、ライトニングと言うのは僕達が《造船》スキルで作った帆船の名前で、その見た目通り風を受けて帆の力でも進む事が出来るんだ。本来はこっちの操縦方法がメインなんだけど、今回は背に腹を代えられないと言うか…』

 当然、ファミリアと竜の力の事は喋らない。それ以外でも皆に衝撃を与えるには充分過ぎたらしい。


 今の説明しながらも、MPの減っていたプレイヤーに向けて【黒竜】を使って実演してみると、その実を知っていたギルドメンバー以外の全員が、同じ方向を見詰め口を開けたままの姿勢で固まってしまっている。


 この情景は誰もが一度は通る道なのか…ギルドメンバーですら、『あれは仕方が無いよね』と苦笑いをしているから手に負えない。多分、僕が笑いを取る為に交ぜた、渾身の自虐ネタは耳に入ってなさそうだ。




 『シュン、お前はいつの間にそんな規格外の存在になったんだ?《造船》とか、回復系の武器とか、その他にもあれやこれや…俺は全然聞いてないぞ。それとも、ジュネは知ってたのか?』

 今の説明で規格外の存在って言うのは大げさだと思う。本当に規格外なのは白と黒の存在(竜の力)なのだから。これはギルドメンバーにも秘密だけど。それに、いくら幼馴染みとは言え、いちいち全部を説明する義務は無いはずだ。


 『知らない。あとで、説教、楽しみ』

 おい、ちょっと待って欲しい。最近は、トリプルオーで絡む事が無かったから現状の僕を知らないだけだろ。僕には説教をされる筋合いがないし、最後の言葉はおかしくないかい?それに、秘密主義はお互い様だと思う。


 『まぁ、それは忘れる方向で進む(一旦置いておく)としてだ。これで、皆もガイアが戦場の指揮、僕が船の操縦で異論は無いよな。じゃあ、話もまとまったところで…ガイア、あとは頼むよ』

 これで一つ肩の荷も降りたかな。


 『不本意ですが…本当に不本意ですが、只今シュンから指名されました【ワールド】のギルマスをしているガイアです。船上でのレイドバトルと言う事で、今までとは全く勝手が違うと思います。一つ一つの出来事に戸惑う事も有ると思いますが、精一杯頑張りますので、皆さんヨロシクお願いします』

 不本意と言う言葉を身体全体で現しつつも、僕達の願いを聞き入れてくれるガイア。


 ガイアの挨拶と共に、どこからともなく拍手が巻き起こり、士気が上がるのを感じた。やっぱり、僕よりもガイアの方が圧倒的にリーダーに向いてるじゃないか。これは一種のカリスマだと僕は思う。


 『ありがとうございます。まずは、三十人…シュンを抜いて二十九人を部隊を大きく四つに分けようと思います。一つ目、前線での防御兼追撃は【ワールド】のレジーア。二つ目、回復兼補助は【双魔燈】のレナさん。三つ目、魔法攻撃は【ウィザード】のジュネさん。四つ目、遊撃は【noir】のアキラ。最後にレイド全体の指揮を私が執ります。そして、シュンには最後方から船の操縦兼補助をお任せします。レイドバトルに突入後はパーティーを別れて、各部隊毎に行動して下さい。クラーゴンは、その名前からして大王イカの類いではないかと思われます。想像しやすい触手?脚以外はどんな攻撃をしてくるか予測出来ませんので、防御部隊の皆さんには、その都度かなり無理をお願いする事になると思いますが、ヨロシクお願いします』

 ガイアが、各々の申告に従って部隊を編成していく。この手際は真似したくても出来ないだろう。


 何と言っても、防御班七人に一人ずつ専属の回復役を付ける念のいれようだ。ちなみに、魔法攻撃の七人と遊撃の六人には、部隊毎に各一人の回復役を付けている。これだけで、防御班七人に対して、どれだけ破格の扱いをしているのかが分かるだろう。まぁ、それだけ重要なポジションになるのだけど。


 【noir】の皆は…と言うと、フレイとカゲロウが防御部隊、ヒナタとケイトは回復部隊(配置は二人共が防御部隊専任)、当然だが遊撃部隊のリーダーに選ばれているアキラは遊撃部隊に属する事になっている。ちなみに、指揮を執るガイアも割り振り的にはアキラの遊撃部隊に属していた。


 『各リーダーのところに集まって、部隊毎で軽いミーティングに入って下さい。そのあと、装備やアイテムを確認した人からゲートで順次転送して下さい。そこのゲートで【蒼の洞窟】を選択すれば、直接造船所に着く設定になっています。それでは、一時間後に出航しますのでヨロシクお願いします』

 各自が一斉に各部隊のリーダーの場所に集まって準備に入っていく。


 〔『雪ちゃん、済まないけど、今回のレイドバトルには連れていけないんだ。ホームで良い子にして、お留守番出来るかな?』〕


 〔『ゆき、ちゃんとおるすばんできるの。マナちゃんもミナちゃんもいるから、ぜんぜんさびしくないの。でもでもって、シュンおにいちゃんたちも、なるべくはやくかえってきてね』〕


 〔『了解だ』〕

 うん、可愛らしい。


 各部隊のミーティングで、各々のアーツやスキルを踏まえた戦略が立てられていく。まぁ、それとは別に切り札(ジョーカー)くらいは用意しときたいところだな。


 『お~い!!カゲロウ、少しだけ良いか?』

 僕はレジーアの至極簡単なミーティングを終えて、レイドバトルの準備に入ろうとしていたカゲロウを捕まえる。


 なんせ、レジーアのところから聞こえてきたのは、簡単なスキル構成を含めた自己紹介以外では『俺達は仲間の盾になる。耐え忍べ。以上、ミーティングは終了。各自解散、遅刻はするな』それだけだった。シンプルで分かり易くて脳筋達には充分かも知れないけど、本当に大丈夫だろうか?若干、不安を感じるんだよな…


 まぁ、レジーア自身にもガイアとは別種の妙なカリスマ性が有るみたいで、士気だけは異常に上がっていた。なので、問題は無いだろう。うん、そうだ、僕はそう思いたい。


 『何か用か?ギルマス』


 『あぁ、ちょっとした頼み事が有るんだ…』

 僕は思い付いたばかりのとある秘策をカゲロウに耳打ちした。





 準備の必要が無かった僕は皆よりも一足先に造船所にやってきていた。皆の足を預かる僕としては、少しだけでもライトニングの操縦に慣れておかなければならない。


 『おや?、お主、久しぶりじゃのう。その様子じゃと良い船が出来たみたいじゃの』

 その聞き覚えのある声に振り返るシュン。そこには何故か元持ち主のおじいちゃんがいた。


 『本当にお久しぶりですね。その節は色々とお世話になりました。船の方は無事素晴らしい物が完成しましたよ。それと、おじいちゃんが前に言っていた。この港街に船が全く無い理由は、クラーゴン(魔物)だったんですね』

 ちょっとした異種返しに少しだけ含みを持たせて答える。


 『あの時はすまんかったのう。ワシも隠すつもりは全く無かったのじゃがのう。楽しそうなお主達の顔を見ておると問題の事を言いそびれたのじゃよ。こんな事をワシが言えた義理ではないのは分かっておるが、頼むクラーゴンを倒して皆の…息子達の敵を討ってくれ。頼む…』

 必死で頭を下げてくる。なるほど、そんな設定(裏話)が有ったのか…だけど、息子の敵はちょっと重い。まぁ、合わせる(ロールする)けどね。


 『頭を上げて下さい。僕達にとっては《造船》スキルが絶対に必要な物だったんです。それに、おじいちゃんと話した時から、何となくですけど、何かしらの魔物討伐系の依頼も覚悟してましたし。まぁ、流石にレイドバトルは予想外でしたけど。今は、僕達にも負けられない理由が有ります。安心して待っていて下さい』

 僕は、おじいちゃん一人を残してライトニングへと向かった。





 『主よ、主には船乗りの資質もあるのじゃ』

 事実を知ってか知らずか、シュンの意外な才能遺を誉める白。事実を知る僕としては少し微妙だ。まぁ、顔や態度には出さないけどね。


 事実は魔動力エンジンのお陰で、手をかざすだけで僕の意思(思った)通りに船を動かしているだけだ。右旋回も左旋回も、普通の軌道では有り得ない後退(バック)までもが自由自在。これなら、白が勘違いするのも無理は無いだろう。


 これは本当に便利な機能だな。補助的な役割では無く、僕としてはメイン機能として使いたい。ちなみに、今回は戦闘中に風の影響等をまともに受ける可能性も有るので、帆は畳んでいる。


 『そうか?ありがとな。でも、これは魔動力エンジンの性能と白と黒の竜の力のお陰だぞ』

 魔動力エンジンで前進以外の行程を行うには、思っていたよりもMPの消費が激しい。


 ヒナタが補助的な役割での使用を想定していた理由も分かった気がするな。この消耗具合だと、竜の力の常時回復効果が無ければ、僕のMPでは10分と持たなかっただろう。


 『…消費(MP)の方も大丈夫』


 『了解だ』

 あと、ヒナタには悪いと思うけど、少しだけライトニングを(いじ)らせて貰おうか。


 『《合成》』


 『主よ、その行為は船としては邪道なのじゃ。ヒナタ嬢に対しては裏切りなのじゃ』

 若干引き気味で軽蔑の眼差しを見せる白。黒の方は無関心…と言うか、納得と言った表情を見せている。


 『あのな白、これはだな。今回使わなかったら使わないで良いんだよ。むしろ、使わない方が良いんだ。だけどな、せっかくヒナタが一生懸命作った船を僕達としては壊される訳には絶対にいかないんだ。それは白も分かるだろう?だから、仮にバレた時に僕がヒナタに怒られたとしても万が一の時の作戦くらいは必要だろ?黒、どうだ?上手くいきそうか?』

 この件に関して、白からの軽蔑の眼差しを向けられても、一歩引く気のない僕は譲らない。


 『…問題無い。テストする?』


 『あぁ、ちょっとだけな。白、外から見てくれ…どうだ?』


 『主よ、大丈夫そうじゃ…やっぱり、この機能は邪道だと思うのじゃ』

 そんな繰り返して言うほど、邪道なのだろうか?個人的には、かなり素敵だと思うのだけどな…まぁ、切り札第二弾(その2)だな。


 『よし、じゃあ。ホルスターに戻ってくれ』

 そろそろ、約束の時間だ。早かったら、誰かしらが来るだろう。


 二匹は、返事をするよりも早くホルスターに戻る。有る意味では、もう慣れ親しんだ光景の一つ。


 〔『了解じゃ。主よ、先に言っておくのじゃが、くれぐれも竜の力を乱用せねばならぬ状況は避けるのじゃぞ』〕


 〔『分かっている。僕には普通の竜の力の恩恵(HP・MP常時回復)で十分過ぎる。それに、二匹同時(フルパワー)の方は、僕だけでは自由に使えないんだろ?それなら、白と黒が注意しておけば問題は無いさ』〕

 それに、今回はソロ戦ではないからな、最後方の僕が目立つ必要は無いし、その可能性も低いんだよ。





 『皆さん、準備は大丈夫ですか?クラーゴンの大きさも姿も判りませんが、皆さん全員の力を合わせて勝てないものは存在しません。それでは、シュン、最後に一言だけお願いします』

 この時点で準備が出来ていない者は当然いない。だから、このガイアの言う準備とは心の準備の事だ。


 すでに、ライトニングは僕を含む三十人全員を乗せて【ポルト】から二キロ沖の少し手前まで来ている。予定よりも時間が押しているのは…【蒼の洞窟】で二回、ライトニングを見て一回、皆が驚いて、その都度質問攻めにあったからだ。まぁ、答えはレイドのあとで(ノーコメント)で通したけどね。


 製作の陣頭指揮を取っていたヒナタに至っては、ガイア達から船の製作依頼まで請ける始末になっていた。まぁ、メインで製作に関わるであろうヒナタが喜んでいたので、それはそれで良いんだけど。


 ガイアの言葉で完全に上がりきったテンションの皆を目の前にして、一言と言われても困るよな。せめて、これが船に乗る前ならともかく…う~ん、よしっ。


 『皆、絶対に勝つぞぉぉぉぉ~~~!!』

 …と同時に、僕は右手の武器を天を貫くように高々と掲げて見せた。あっ、これ、ちょっと恥ずかしいし、絶対に僕のキャラには合ってな…


 『『『『『『『うぉぉぉぉぉ~~!!!!』』』』』』』

 あんな単純な僕の一言でも、さらに上がる士気。この底無しのテンションには少しだけ疎外感を感じるよ。


 〔『主よ、この場に参戦するような者達なのじゃ。単純なだけなのじゃ』〕

 それについては、僕も否定をしないけど、それを言っては色々な物が台無しだと思う。


 『シュン、お願いします』

 僕は陸からの距離を確認しながらライトニングをゆっくりと前進させる。


 少し進むと、僕達の目の前にとてつもなく大きな渦が現れた。


 『皆さん、前方下から来ます。警戒最大、守備部隊の皆さん前衛はお任せします』

 目の前に現れた大渦に対して的確な指示を飛ばすガイア、それを全く疑う事なく信じて行動に移すプレイヤーの皆さん。二人だけを除いて…


 『違う、逆。後ろ!!』

 船に乗っていたどのプレイヤーよりも早く、アキラが背後からの攻撃に気が付いた。僕もアキラの声とほぼ同時に船を大渦を避けて右斜め前方へと動かしている。白もアキラ同様に背後からの攻撃に気付き知らせてくれていたから出来た行動だ。つまりは白のお手柄。


 どうやら、《探索》スキルなら海に潜む相手の動向も分かるらしい。それにしても、目の前で先制攻撃(大渦)を見せておいて、背後からの先制攻撃(奇襲)とか、レイドボスにしては戦い方が汚な過ぎないか?


 〔『…違う。手を抜くのは逆に失礼』〕

 あぁ、そんな考え方も有るのか、なるほどな。つまりはレイドボスも本気と言う事か、失礼になっても怒らないから、手加減プリ~ズ。


 『うそ…な、何?あれ…あれが、クラーゴンなの?』

 僕が船を右に旋回したところで、水面へと浮かび上がってきたのは巨大な半透明のクラゲ?らしき化け物だった。


 ただ、一度その姿を視認さえ出来れば、《見破》の勝利(かち)で、この戦闘中に限り、どこにいるのかの把握は出来る。


 『OK!!能力(ステータス)の確認が出来た。あれが、クラーゴン(レイドボス)だ。弱点は…風属性。水属性と…嘘だろ!?悪い、弱点は風属性だけだ。水属性と土属性、雷属性の三つは吸収だ。それと、打撃系は効きづらくなってる』

 《見破》を使い、手早くかつ分かるだけのクラーゴンのステータスを報告する。


 『ガイア、レイドボスは大王イカの類いじゃなかったのか』

 クラーゴンの攻撃を上手く避けた数人の内の誰かが叫んでいる。その事は今責めても仕方が無いだろ…まぁ、気持ちは分からなくも無いけど、これは誰にも予想出来なかった事だし、名前から大王イカの化け物(クラーケン)を想像したガイアの意見に、誰も反対もしなかったのだから同罪だと思う。勿論、僕も含めて…


 それに、クラーゴンからの攻撃手段の一つとしてガイアが予想した触手攻撃は当たっていたのだから、全く問題は無いだろう。単に見た目がイカとクラゲで違うだけだ。


 『すみません。それは後程謝罪致します』

 こんな状況でも謝るとは律儀な奴だな…まぁ、そんな殊勝(しゅしょう)な態度を見せられると、指示に従っている僕達としてはテンションは上げるけどな。


 『シュン、本当に吸収ですか?』


 『僕の持つスキルで確認している。それは間違い無い』


 『…分かりました。すいません、作戦を変更します。斬撃系の遠距離アーツと効果の有る属性魔法で攻めます。シュンは船の回避優先でクラーゴンとの距離をアーツの届く範囲まで詰めて下さい』

 クラーゴンを背に一言大きく謝り、崩れた状況を立て直そうとガイアの合図で魔法攻撃部隊の詠唱が始まる。


 『〈エアロストーム〉』


 『〈フレイムファイア〉』


 『〈アイスブリザード〉』


 etc・・・


 おぉ~!ジュネの【ウィザード】大活躍。右手と左手で違う魔法を同時に放つ猛者までいる。


 遠距離攻撃が、このレイドバトルの要になるのが分かっているからか、高威力の魔法が次々に放たれていく。威力を重視している為、一つ一つの魔法の詠唱に掛かる時間も長くなってた。その時間は、僕の拙い操船技術とレジーア達の献身たる防御、弓や扇等を使った遊撃部隊の物理攻撃(アーツ)で時間を稼いでいる。


 それにしても、高位の魔法と言うのはド派手だよな…まるで、夏の夜空に浮かぶ花火のようだ。僕は、あんな高威力の魔法を喰らい続けているクラーゴンに、少しだけ同情してしまった。


 だけど、この分なら戦闘の方は皆に任せて、僕は回避だけに集中しようか。


 〔『それで大丈夫なのじゃ。この距離だと、主の攻撃力には少しも期待できないのじゃ。出番は無いのじゃ』〕

 …無視だ。僕も大絶賛現在進行形で船の操縦と言う大役で活躍してますよ~だ。


 〔『…拗ねてる暇無し』〕


 『ガイア、ダメだ。注意しろ、触手の直線防御は低確率で感電するぞ』

 最前線で皆を庇うように率先してクラーゴンの攻撃を防いでいたレジーアが皆に届くように声を上げる。レジーアの声に反応して全体を確認してみると、一番多くの攻撃を捌いているレジーアの他にも防御部隊の何人かが、感電または軽度の毒を喰らっていた。それに気が付けば、対処の方法も有ると言うもの…僕も回復に合わせ、目立たぬように【白竜】を使って毒の治療も済ませていく。


 〔『白、残念な話だけど、僕にもまともな出番は有ったみたいだな』〕


 〔『主よ、勘違いが甚だしいのじゃ。回復(これ)は【白竜(ワシ)】の見せ場なのじゃ』〕

 少し機嫌を損ねたような声色の白。


 〔『………』〕

 まぁ、どちらかと言うと確かに白の言う通りだと思う。


 『うぉ!?』

 僕に撃たれた事で回復した事に驚くレジーア。念の為にと思って、事前に一度見せているのだから、改めて驚かないで欲しいんだけど。この時のシュンはレジーアが驚いた本当の理由に気付いていなかった。仮に、もしこれが戦闘中では無かったのなら、もしかするとこのミスに気付いていたのかも知れない。


 取り敢えず、態勢を立て直す時間だけは稼がせて貰おうか。だから、どれでも良い。何か、効いてくれ。


 『〈乱〉〈朧〉〈ウインドミスト〉』

 残念ながら、〈朧〉と〈ウインドミスト〉は効果の欠片も無かった。だが、僅かに、本当に僅かな時間だけど、〈乱〉だけは効果が有ったように思える。ならば…


 『〈乱〉〈乱〉らら〈乱〉〈乱〉〈乱〉、〈乱〉〈乱〉らら〈乱〉』

 どこかで聞いた事(夏休みの子供向けアニメ映画の再放送)の有る懐かしいリズムに乗せて連続で仕掛ける。そのリズムを聞いて、振り返ってきた仲間もところどころにいる。


 大量の〈乱〉の連打と戦闘中常時使用している《見破》によって、クラーゴンがステータス異常を受ける瞬間を今度は確認する事が出来た。一回につき三~四秒程度と短い間だけど、その間にクラーゴンは攻撃対象を見失うようなそぶりを見せ、誰もいない場所を攻撃している。例えるなら酒に酔って人と物を勘違いする酔っ払い。


 〈乱〉一回で三~四秒か…流石にレイドボスは強力な仕様だ。まぁ、若干だが、状態異常攻撃に効果が有るだけマシなのかも知れないけどな。


 『ガイア、今の内だ…あと、10秒ぐらいは余裕が有るはずだ』


 〔『白、毒になった奴やMPが少なくなっている仲間を優先的に教えてくれ』〕

 距離が近付いた事により、すでに船の回避に集中する事が精一杯の僕は他を見る余裕が失われていた。なにしろ、ライトニング(僕の操る船)は海の中から空に向かって繰り出されているクラーゴンの攻撃()を多少の余裕を持って回避しながらも、ガイアの要望をみたす為に少しずつ接近しているのだから。


 〔『了解なのじゃ』〕

 仕事を与えた事で、機嫌を直した白。さっきまでとは違い、生き生きとした態度でMPの少ないプレイヤーを見付けてくれる。


 『補助部隊は守備部隊にマジックシールドを、魔法部隊は防御よりも攻撃魔法詠唱を優先して下さい』

 僕も微力ながら〈ウインドシールド〉と〈回避上昇〉を唱えていく。そして…


 『お前には、これをプレゼントだ。〈速度激減〉〈回避激減〉〈攻撃力激減〉〈防御激減〉〈魔法攻撃力激減〉〈魔法防御力激減〉』

 全て《付与術》での合体魔法を、目の前にいるクラーゴンに向けて次々と放っていく、竜の力の恩恵でMP消費は気にしなくても済む。


 以前は、MP消費の関係で使用する事に多少なりとも躊躇が有ったオール減少系の合体魔法は、クラーゴンに対しても確かな手応えを示した。これは《見破》を使って確認するまでもなく、クラーゴンの動きを見た目だけで、はっきりとク弱体化した事を確認出来る。ちなみに、一番分かり易い速度なら、通常時の三~四割減と言ったところか。


 そして、先程の大連繋した魔法攻撃(アーツも含む)に一人だけ参加していなかったジュネが、ようやく動き出す。まるで、水を得た魚のようなはしゃぎっぷり。


 『皆、お待たせ、いくよ。〈サンダーボルト・エターナル〉』


 『…って、おい、ジュネ、ちょっと待て、聞い…』

 僕の言葉は虚しくも木霊した。まるで、手遅れですとでも言うかのように…すでに超高威力の雷属性(・・・)魔法は、ジュネの手元から放たれていた。ジュネは、僕の話を全く聞いてなかったのか?雷属性は吸収(きゅ・う・しゅ・う)


 『ぐぎゃぁぐおぉぉ~~~』

 初めて聞くクラーゴンの泣き(・・)声。


 『…されてない?え、えっ!!なんで?』

 さっきの魔法は名前からしても、その見た目(エフェクト)からしても絶対に高威力の《雷魔法》のはず。


 それにも関わらず、吸収されたり、無効にされるどころか、逆に大ダメージが出ている…と言うか、クラゲを模するクラーゴンも他の魔物みたいに声を出せたんだな。まぁ、口が何処に有るのかは分からないけど、そのお陰で妙な緊張感が醸し出されているのは確かだな。


 『エルフ専用アーツ、〈属性変化〉、おまけ』

 他人からは認識出来ない胸をこれでもかと突き出して、自信満々に答えるジュネ。多分、伝わったのは弟の僕と幼馴染みのアクア、それと【ウィザード】の面々くらいだろう。


 簡単に要約すると、さっきの〈サンダーボルト・エターナル〉には、種族(エルフ)専用のアーツも含まれていたと言う事だ。


 えっ~と、今使った〈属性変化〉は、その名前の通りアーツや魔法の属性を下級扱いされている六属性限定で自由自在に変化させる事が出来るか…ちょっと狡くない?これ。


 これが有れば、一種類の属性魔法しか取得してなくても、弱点を突く事が出来るって事だよな。これはまた極端に特化された(ピーキーな)能力だけど、ジュネの場合は全属性持ちの意味(メリット)が無くなったようにも感じる?少しだけジュネに同情します。


 〔『主よ、悠長に《見破》を使っている場合では無いのじゃ』〕


 『つ、津波!?皆、津波が来る、何かに掴まって』

 白とアキラの言葉でクラーゴンを確認すると、多数の脚を上下するの事でクラーゴンの周りを囲むように壁のような波が出来つつあった。


 おいおい、こんな至近距離で全方位向けの津波とか絶対に回避は出来ない。そんな事も言ってられる状況ではないのだけど…


 『全員、何かに掴まれ旋回するぞ』


 『えぇぇぇぇ、急に!?ちょっと待ってぇぇ~~~』

 何もない甲板の中心部にいた男の悲鳴。確か、あれは追加で集められたメンバーの一人。


 『そんなの待っていられるか、なんとかして耐えろ』

 右に旋回して、なるべく波と船がぶつかる面を少なくする。僕に出来る事は少しでも被害を少なくする事。他にも方法は有るが…まだ、こんな序盤で切り札は切れない。


 津波は船に近付くにつれて、その大きさを増し、やがて船全体 を飲み込んだ。


 『ぐぅぅ…しょっぱ』

 耐えろ、耐えろ、耐えろ…皆、頼む。耐えてくれ…


 船の船首を津波と垂直に向けた事が幸いしたのか、上手く津波を受け流す事が出来た。だが、当然被害は少ないはずもなく、甲板部は海水まみれになり、船体にも小さな傷が目立つ。それに…


 『各リーダー、被害状況はどうですか?』


 『俺のところは、全員無事だ。おら、お前ら、いつまで寝てんだ。さっさと後ろを守るぞ』

 ガイアの問いに逸早く反応したレジーアが前衛の態勢を立て直しに掛かる。


 『二人、落ちた』

 甲板の左中央部から聞こえるジュネの声。


 魔法部隊は二人の被害が出たらしい。誰だ?誰が落ちた?大丈夫なのか?


 『私のところは一人、ケイトがいません』


 『マジか!?…ケイト…ケイト』

 くそっ、パーティーチャットも繋がらない…


 〔『白、落ちたケイト達は見付かるか?』〕


 『遊撃部隊は、全員無事』

 アキラのところは無事か…と言う事は、今の攻撃で海に落ちたのは三人か。


 〔『まだ、生きておるようじゃ。一緒に落ちた他の二人も生きておるようじゃ』〕


 〔『よし!!白、頼む。竜になってケイトを探して、出来る事なら助けてくれ』〕


 〔『了解なのじゃ。黒よ、ここは頼むぞ』〕


 〔『…分かった』〕


 『皆さん、落ち着いて下さい。まずは、態勢を立て直しましょう。落ち着くまでは防御優先で』

 状況を把握した優秀な指揮官が、再度皆をまとめ始める。


 『〈朧〉』

 今の内だな。


 〔『白、頼んだ』〕

 白に〈朧〉をかけて、他人の目から隠し後方へと放り投げる。その瞬間に白は竜の姿となり、高速で飛び立った。


 白、頼んだぞ。信じて待つ事しか出来ない…なんて、歯痒いんだ。


 〔『黒も頼む。力を貸してくれ』〕

 【白竜】の代わりに【黒竜】を右手に持つ、左手は魔動力エンジンの操縦で手一杯だからな。


 〔『…回復』〕

 そうだな。僕は、僕に出来る事をしなければ…


 『MP減ってる奴から、順番に回復だ。受け取れ』

 白を装備していないので竜の力を発揮できない。船の操縦も有るので、あまり無茶は出来ないけど、消費の激しい前衛にいる十人くらいは回復させておきたい。


 『アキラ、津波来るの、次も分かる?』


 『次の時もタイミングは分かると思うけど、今回みたいにギリギリになると思うよ…何かするの?ジュネ』


 『それでも良い、教えて、次は止める、必ず』

 アキラにも伝わるくらいの怒りを見せるジュネ。


 久しぶりに(ジュネ)が本気で怒っている。何か、とんでもない事をしでかしそうな雰囲気も有る。弟の僕としては、その事を考えるのも怖いのだけど…


 あっ!!そうだ。僕もジュネに聞きたい事が有るんだった。


 『ジュネ、|エルフ専用のアーツ〈属性変化〉は敵の攻撃に対しても効果は有るのか?』


 『意味不明だけど、それは大丈夫』

 ジュネが少し怒りが削がれたかのような表情で首を傾げている。


 まぁ、伝わらない者には伝わらないだろう。だけど、それは伝わる者にとっては有り難い情報だ。今の僕達の会話を聞いていたカゲロウが僕に向けて指でOKを出していた。僕の意図が伝わっているみたいで良かったよ。


 さて、そろそろこの状況を打開しないとダメだな。考えろ、考えろ…


 『守備部隊、今は防御に専念だ』

 余裕が有るかのようなやり取りをしている間にも、クラーゴンから繰り出される激しい攻撃の全てを、レジーアが守備部隊の先頭に立って捌いていた。それだけでも後ろに控える僕達の士気は充分に上がっている。


 『リツ、アキラ、全員で融合は使えないのか?』

 まぁ、考えに考えて真っ先に思い付いた案が他力本願(融合)だったのだけど…


 『分からない…多分、武器の種類によっては数人単位でなら可能じゃないかな。でも、とっさにやるのは少し難しいと思う』

 少し難しいと言いながらも、アキラは扇のアーツを繰り出し、融合が可能な方法を考えているようだ。


 『アキラ、取り敢えず試してみる?』

 リツの問いに無言で頷いて答えるアキラ。


 『遊撃部隊の皆、風属性アーツ限定で攻撃。ただし、タイミングを合わせるよ、準備して…3・2・1・今』


 『〈翠風扇〉』


 『〈ウインドアロー〉』


 『〈エアジャネリング〉』


 『〈ストームブレード〉』


 etc・・・


 タイミングを合わして遊撃部隊から放たれた緑系統一色の風属性アーツは攻撃の種類毎に一つの塊になり、クラーゴンに向かっていく。その数個の塊に触れた瞬間にクラーゴンの触手?もとい脚を大量にぶった切る…いや、ぶっ飛ばした。


 『おいおい…』

 今まで細々(ちまちま)とダメージ与えていた攻撃が悲しくなるような、とんでもない威力を叩き出した融合アーツ〈|インフィニットハリケーンズ《無限の嵐》〉×3。見た目も大きさも違っていた三つの融合アーツだが、その名前は全て同じものだった。まぁ、一つ一つの違う名前が存在したら、扱いに困る気もする。


 『魔法部隊の皆さんも、同属性魔法の同時撃ちで、あとに続いて下さい』

 僕が物思いに(ふけ)っている間も休む事なく次々と指示を出していくガイア。これなら、本当に攻撃の方は任せておいて大丈夫そうだ。それなら、僕は…


 〔『主よ、無事に見付かったのじゃ。今は三人が一緒になっておるのじゃ』〕


 〔『サンキュ。白、場所は?』〕

 本当にナイスタイミングだよ。


 〔『そこからじゃと、西南西に四百メートルぐらいじゃ。どうやら、ギリギリレイドゾーンの範囲内のようじゃ』〕

 それは色々な意味で助かったかも知れない。


 今回はレイドバトルには人数制限が存在する。と言う事は、以前の|レイドバトル《ツインテールドラゴン戦》のような増援は見込めないと言う事になる。つまりは、一度レイドゾーンの外に出ると再度レイドゾーン内に入れる可能性は低いだろう。そう言う意味でも、僕達(津波で流された三人も含む)は助かっていた。


 〔『分かった。タイミングをみて僕が救助に向かう。白は、その三人に正体がバレても良いから回復を頼むぞ』〕

 こんな状況で、秘密を守っている場合では無いか。あとで、質問攻めになる事も覚悟している。多分、きっと…


 〔『回復はすでにやっておるのじゃ。じゃが、流石はワシらの主なのじゃ』〕


 『ジュネ、また津波来そう』

 再びクラーゴンが残りの脚で波を起こそうとしている。僕達が活路を見出だしたこのタイミングでの待ち構えていたかのような津波。だが、足の数が減っているからか先程までの高さがそこにはない。


 『旋回するぞ、掴ま…』


 『シュンくん、そのままで大丈夫、任せて。〈フリージングワルツ〉』

 一人詠唱に集中していたジュネからの宣言。そして、それは僕達の誰もが言葉の意味を理解する前に視認する事になる。


 『えっ…』

 それは一瞬の出来事だった。ほんの一瞬で、波が…いや、クラーゴンの周りの海全てが凍りついている。ここだけが氷河期(死の世界)のように…勿論、それは津波を起こそうとしたクラーゴンの残された脚も巻き込んで。


 『う、嘘だろう…』

 目の前で起きた出来事に本気で驚くアクア。僕も、ジュネが何かするとは思ってていたけど…これは、やり過ぎだと思う。


 『氷、しばらく大丈夫、足場にして』

 そう宣言して、真っ先に凍り付いた海面(氷の大地)へと降り立つジュネ。そして、当然のように続く【ウィザード】の残されたメンバー達。


 今がチャンスか?


 『皆、一旦氷に降りてくれ。僕は海に落ちた仲間を回収して来る』


 『えっ!?場所は分かるのですか?』


 『大丈夫だ、ガイア。それはもう見付けてある』


 『そん、なっ…』

 レイドバトルが開始して以来、どんな状況でも一人だけ冷静を貫いていたガイアが驚く。まぁ、無理もないけどね。


 『ガイア、信じろ』

 今の僕はこれしか言えない。


 『皆さん、お聞きの通りです。今の内に氷に降りて下さい。このチャンスに総攻撃を開始します。皆さん、サポートをお願いします』

 ガイアは一瞬だけ疑心にまみれた目で僕を見たが、すぐさま次の指示へと移行した。少しは信頼されたのか?ガイアに感謝だな。


 ガイアの指示を請け、皆は氷の大地に降り立ち一気にクラーゴンを目指していく。アクアを筆頭に近距離攻撃がメインのプレイヤー達は、やっと見せ場がやってきたと言った感じで我先にとクラーゴンへと駆け込む。


 さて、僕も向かうとするか、もう一つの戦場へ…


 『黒、白が今いる場所へ案内してくれ』


 『…分かった』

 近くに誰もいなくった事で黒は竜の姿となり、船を先導してくれる。





 『…あそこ』

 少し進むと、すかさず黒が漂流中のケイト達を見付ける。僕も流された三人の無事をこの目で確認する。


 この場合、僕達が助けに来なかったら、どうなってたんだろうな。助けに行かないと言う選択肢が僕には無かったけど、その結果だけは気になるな。


 『ケイト、聞こえるか?』


 『マスターですか?です。クラーゴンはもう倒したのですか?です』

 第一声がそれですか?もう少し何か無かったのだろうか。これだから、ゲーマー達は…


 『いや、まだ戦闘中だ。あそこ見えるか?あそこに有る大きな氷の塊が戦場になっている。悪いけど、僕だけでケイト達を回収し(助け)に来た。取り敢えず、梯子を降ろすから順次乗り込んでくれ、あそこに戻るぞ。それと、白、サンキュ。助かった』

 僕は海に降ろした縄梯子でケイト達を回収し、ライトニングの進路を再びレイドバトルのメイン会場(戦場)に戻す。


 【ウィザード】の二人は黒を見て、また驚いているようだが、事前にケイトが白の事を簡単に説明したのだろう。大した混乱にならなかったのは良かった。それに若干のバットステータスは有るが、ステータスの低下も思ったよりも少ない。まぁ、これはおそらく白のお陰だろう。


 『すぐに戦場に戻るからな。皆も戦闘の準備してくれ』





 僕達が再び戦場へと舞い戻った時、クラーゴンのHPはかなり削られていた。それに比例するように、こちらのMPも尽きかけている。


 『戻ったぞ。ところで、一体何が有ったんだ?』

 MP消費の激しい仲間には、しれっと銃の形態に戻っていた【黒竜】で射撃していく。まぁ、ほぼ全員になるのだけど…そこは竜の力が戻った僕にとって、消費効率・消耗とは全くの無縁。


 『シュン、ありがとう。えっと、始めは氷のお陰で反撃も無く優勢に攻撃してたんだけど…突然氷の下からクラーゴンの脚が突き出て来て、一気に戦局が逆転したの』

 話を要約すると、完全に無警戒だった分厚い氷の下からの攻撃で一気にやられて、その時に受けたダメージの回復を優先させた為に皆のMPが尽きかけていると言う事か。


 『皆さん、落ち着いて態勢を整えて下さい。また、クラーゴンが魔力を溜めています。慌てず急いで船に戻って下さい。申し訳ございませんが、防御部隊はしんがりを務めて下さい』

 ガイアの指示の一方、船ではケイトを中心に救助された三人が、氷の上の仲間に向けて縄梯子を降ろしている。


 『聞いたか?俺達が最後だ。全員を守るぞ。俺達を含めて、誰一人欠ける事は俺が許さねぇ』

 レジーアが防御部隊に気合い注入する。


 『『『『うぉぉぉ~~~~!』』』』

 その気合いの表れと共に防御部隊の面々がクラーゴンへと向き直る。そこで、ただ一人カゲロウだけは僕の方を見ている。


 『ジュネ、頼む。クラーゴンの放つ魔法に対して〈属性変化〉を使ってくれ、属性は風だ』

 そして、その意図が僕にだけは伝わっていた。


 『???』


 『頼む!』


 『今は、分かった事にする、あとで説明、拒否は不可』


 『カゲロウ、こっちの準備は出来たぞ。あとは任せたからな』


 『こっちは大丈夫だ。ギルマス』

 すでに態勢を整えて待ち構えるカゲロウ。


 今のやり取りで【noir】のメンバーだけが、今からカゲロウが何をするのかを理解する。フレイに至っては高みの見物と言った感じで、自分が製作した防具のシリーズボーナス(性能)のチェックでもするかのような眼差しを向けている。まぁ、実際に船の甲板にいるので、カゲロウのいる氷の大地よりも高い場所にいるのだけど。


 『レジーア、残りはお前だけだ。早く上がって来い』

 すでにほとんどの部隊は勿論、守備部隊もカゲロウとレジーアを残して回収が終わっている。


 『いや…アイツは、どうするんだ?』


 『カゲロウなら大丈夫だ。早くしろ』

 レジーアは一人氷の上に残したカゲロウに、若干の後ろめたさを感じながらも船へと戻ってきた。


 『皆さん、魔法が来ます。マジックシールドを…』

 これまでと同様にガイアの指示に従い、使えるプレイヤーは一斉にマジックシールド系のアーツを使用していく。まぁ、僕達はカゲロウとフレイの作った防具の性能を信じているから、使用してないんだけど。


 〔『黒、白、念の為にカゲロウのフォローを頼めるか?』〕


 〔『主よ、了解なのじゃ』〕

 白と黒の二人はさりげなく竜の姿に変身して、これまたさりげなくカゲロウのもとへと飛んでいった。今のを何人かに見られたかも知れないけど、すでに助けた仲間には見られているから、遅いか早いかの違いだろう。


 さぁ、次は僕の方も切り札を切る準備だ。僕は冷静にライトニングに残っている魔力を込めた。


 『皆さん、来ます。防御を…』

 クラーゴンが全魔力を込めた一撃…〈メイルシュトローム〉を僕達ではなく、戦場となる船上(ライトニング)に向けて放ってきた。だが、その一撃は僕達はおろかライトニングにすら当たる事は無く…


 『いくよ、〈属性変化・風〉』


 『こっちもいくぞ~!!〈魔反〉』

 ジュネの〈属性変化〉に続いて、カゲロウが〈魔反〉を使った瞬間、広範囲拡散していた魔法がカゲロウの前で凝縮されながら小さく小さく圧縮されていく…


 『おいおい、これは…』

 それは初めて見た僕には衝撃的な内容だった。カゲロウが自信満々だったので絶対的に信用していたのだけど、これ程の威力とはな…ジュネが〈メイルシュトローム〉の属性を水からクラーゴンの弱点の風に変え、カゲロウが防具の|シリーズボーナス〈魔反〉で二倍にして跳ね返す。


 前半は咄嗟の思い付き(アドリブ)だけど、後半は僕とカゲロウの二人で考えた取って置きの切り札(一撃)。二倍にして跳ね返された圧縮型の〈メイルシュトローム〉は勢いよくクラーゴンにぶつかった。その衝撃は激しく、今までのどの攻撃も鼻で笑えるくらいとてつもない威力だった。一瞬で水面に残っていた氷が全て砕け散っていく、その反動で水蒸気が巻き起こり、辺り一面を真っ白で濃い霧が包んでいく。


 僕達からはクラーゴンがどうなったのかは分からない。





 『ど、どうなった?』

 徐々に晴れていく真っ白な霧。それにつれて辺りの状況も鮮明になっていく。


 『お、おい、ウソだろ!?この船、そ、空に浮いてるぞ』

 誰よりも早くクラーゴンの生存を確認しようとしたアクアが、自分達が置かれている状況を真っ先に確認する。他にも確認したプレイヤーがいるようだけど、そのプレイヤーは高所恐怖症だったのか?ガクガクブルブルと腰を砕きながら震えていた。その点だけは悪い事をしたのかも知れない。


 『カゲロウは!?大丈夫なの?無事?どこにいるの?』

 ヒナタは全く何も見当たらない(・・・・・・・・)海を探している。まぁ、カゲロウは(そこ)にいないからな。()を見ても、見つかる訳は無いんだけど…


 『お~いヒナタ、そっちじゃない。オレは上だ。上、上』

 カゲロウの声のする場所は、何故か空に浮いているライトニングのさらに上空。そこには白と黒の二匹の竜に抱えられたカゲロウの姿があった。


 『あ~良かった~。でも、どうして空にいるの?』


 『俺が〈魔反〉で反射した時に残されていた足場も一緒に崩れたんだが、間一髪のところを白と黒に助けられたんだ。白も黒もサンキュな。それよりも、何でライトニングも空を飛んでいるんだ?』

 カゲロウは白と黒によって安全に船へと降りたつ。


 『そう、それですよ。そんな機能を私は付けてません』

 唯一理由を知っているだろうと言う確信を持って、ヒナタとカゲロウが僕に詰めよってきた。まぁ、事前に説明していなかったのだから、こうなる事も分かっていたけど。


 『まぁ、少し待ってくれ、二人共。取り敢えず、その話はあとだ。クラーゴンの生存を確認する方が先だ、そうだろ?アキラ、どうだ?』


 〔『主よ、くれぐれも先に言っておくのじゃが、この件についてはワシと黒は本当に無関係なのじゃ。だから、あとで援護する気も無いのじゃ』〕


 〔『あぁ、分かっている。僕も白と黒のせいにする気は全く無いから、その点だけは安心してろ』〕

 船を守る為とは言え、ヒナタに無断で改造した罪は僕が償うよ。僕一人でな…



 〔緊急連絡、緊急連絡。ただ今、シュン様のパーティーが緊急イベント【レイドバトル クラーゴンの討伐】を攻略致しました。なお、今回のレイドバトルに参加していないプレイヤー様にも【ポルト】沖での《レイドバトル》は発生しますので、是非ともお楽しみ下さい。そして、只今より海エリアが全プレイヤー様に開放されました。今後もトリプルオーをお楽しみ下さい。以上、運営からの緊急連絡でした。繰り返します…〕


 『良いタイミングで緊急連絡だね。うん、一応私も確認してみたけど、クラーゴンは倒したみたいだよ』

 運営からの緊急連絡と時を同じくしてのアキラからの終戦の報告。


 『そうか、良かった。終わったな…』

 僕が名目上、このレイドバトルの責任者だ。死者0でレイドバトルを終える事が出来て、本当に良かった。このあと、ここにいる全員で打ち上げでもしたい気分だ。ホームに食材とか残ってたかな?


 『ちょい待ち、今終わったと言ったんか?シュンは何が終わったと思ってるんや?』


 『いや、今レイドバトルは終わったんだけど…』


 『レイドバトル(それ)空飛ぶ船(これ)は別の話や。ウチらも船の事は、しっかりと聞かせて貰うで』

 僕にとっては全く良くなかったらしい。


 船の甲板中央ではフレイ(風神)カゲロウ(雷神)が、雷門の前のように仁王立ちで身構えていた。ちなみに、この雷門には本来なら中央に有るはずの進むべき道は存在していない。完全な行き止まり。


 そのケイト()カゲロウ()を見ると、さっと視線を逸らされ、僕の背後には笑顔の下に鬼の形相を隠し持つような雰囲気のヒナタ(阿修羅)が…まるで四面楚歌。


 覚悟はしていたけど、はっきり言って恐怖でしかない。それも、クラーゴン(レイドボス)以上の恐怖…


 『シュン、俺達もだ。色々と話して貰うからな』

 一緒に闘ったアクア達も一様にして白と黒を指差している。こちらも覚悟を決める必要が有るらしい。


 完全に打ち上げの雰囲気でも、そんな気分でも無くなった。例えるなら…そう、冤罪で捕まった裁判で判決(有罪)が出るのを待つ被告人の気分だろう。

装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【白竜Lv23】攻撃力0/回復力143〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv20】攻撃力0/回復力140〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv36

《双銃士》Lv56

《魔銃》Lv56《双銃》Lv51《拳》Lv35《速度強化》Lv82《回避強化》Lv84《旋風魔法》Lv33《魔力回復補助》Lv82《付与術》Lv50《付与銃》Lv59《見破》Lv77


サブ

《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv48《木工職人》Lv30《鞄職人》Lv49《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv5《機械製作》Lv1《料理》Lv34《造船》Lv15《家守護神》Lv12《合成》Lv18


SP 72


称号

〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉

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